数学II 第3章 三角関数 — 三角関数の加法定理とその応用

ここでは、三角関数の加法定理を学ぶ。また、加法定理から導かれる重要な等式、倍角・半角の公式、三角関数の合成について学ぶ。

三角関数の加法定理

正弦と余弦の加法定理

2つの角の和や差の三角関数は,それぞれの角の三角関数で表すことができる. まずはじめに

となることを証明してみよう.

【証明】

図のように,点と点をとると, 2点間の距離の公式より

である.

原点Oを中心とする単位円上に、動径の表す角がαである点P(cos α, sin α)と、βである点Q(cos β, sin β)があり、線分PQで結ばれている。

次に,図のように,2点を原点を中心にだけ回転させた図形を考える. このとき,動径のなす角は となり,点に移る. 回転移動によっての長さは変わらないので,2点間の距離の公式より

よって

座標平面上の単位円上に、動径OPの表す角がα-βである点P(cos(α-β), sin(α-β))がとられている。x軸上の点Q(1, 0)および原点Oを結ぶ三角形OPQが描かれている。

暗記1正弦と余弦の加法定理の導出

上のを利用して,次の等式を証明せよ.

解答を見る
  1. におきかえると

    の三角比

  2. におきかえると

  3. 2.でにおきかえると

    の三角比

§

定理1正弦と余弦の加法定理

問題1正弦と余弦の加法定理

  1. であることに注意して,の値を求めよ.
  2. であることに注意しての値を求めよ.
解答を見る
  1. 加法定理をもちいて

  2. 加法定理をもちいて

問題2三角関数の加法定理と平面図形

図のようにがあり, とする.

  1. の値を求めよ.
  2. を中心に回転移動し,になったとする. このとき,の座標を求めよ.
座標平面上に、原点O、x軸上の点X、x座標が2でy座標が1の点Aを結んだ△AOXが描かれている。∠AOXの角度はαと表示されている。
解答を見る
  1. より,

  2. 図のように書くことができ,

    座標平面上に、原点O、x軸上の点X、点Aを結ぶ実線の図形と、回転後の点X'、点A'を示す破線の図形がある。線分OAとx軸正の向きのなす角はπ/3、点Aのx座標は2、線分OA'とy軸のなす角はαである。

    なので

    であり,

    正弦と余弦の加法定理

    より,

    をそれぞれ倍した

正接の加法定理

正弦と余弦の加法定理から,次のような正接の加法定理を導くことができる.

【証明】

←分母と分子をで割った

暗記2正接の加法定理の導出

上のを利用して,次の等式を証明せよ.

解答を見る

におきかえると

の三角比

§

定理2正接の加法定理

問題3正接の加法定理

で, のとき,次の問いに答えよ.

  1. の値を求めよ.
  2. の値を求めよ.
解答を見る
  1. 正接の加法定理より

  2. および, より, である.

2直線のなす角

正接の加法定理を利用すると,2直線のなす角の正接の値を求めることができる. そのことを次の例題で確認しよう.

問題42直線のなす角〜その1〜

直線 について,以下の問いに答えよ.

  1. 直線軸の正の向きとなす角をとするとき,の値を求めよ. ただし,角は反時計回りを正の向きとする.
  2. 2直線のなす鋭角をとする.正接の加法定理を利用しの値を求めよ.
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  1. 直線の傾きはそれぞれ,なので,

    である.

  2. なので

    より, となる.

座標平面上に2直線 y=2x-1 と y=1/3 x+1/3 があり、各直線がx軸の正の向きとなす角がそれぞれα、βと表されている。また、2直線の交わる部分に、そのなす角θが示されている。 以下では,交わる2直線 のなす鋭角について,一般的に考えてみよう.

座標平面上に交わる2直線 y=m1 x+n1 と y=m2 x+n2、およびそれらを原点を通るように平行移動した直線 y=m1 x と y=m2 x があり、どちらの2直線のなす鋭角も θ と示されている。

図のように,直線を平行移動しても2直線のなす角は変わらないので, の場合について考えてゆけばよい.

直線 軸の正の向きとなす,正の角をそれぞれ とする.

正接の値は直線の傾きを表していたので, である.

いま,正接の加法定理から

と計算できる.

座標平面上に原点を通る2直線 y=m1 x と y=m2 x があり、x軸の正の向きとなす角がそれぞれ α、β と表されている。2直線のなす角は θ と示されている。
  1. ,すなわち のとき

    座標平面上に原点を通る2直線 y=m_1 x と y=m_2 x があり、x軸の正の向きとなす角がそれぞれ α と β で示されている。また、原点の下側で2直線がなす角が θ とされている。
  2. ,すなわち のとき

    いずれにしても, なので,次のようにまとめられる.

§

定理32直線のなす角

直交しない2直線

のなす鋭角をとすると

と表すことができる.

座標平面上に、右上がりの2直線 y=m_1 x+n_1 と y=m_2 x+n_2 が描かれている。第1象限で2直線が交わっており、そのなす鋭角がθと示されている。

問題52直線のなす鋭角〜その2〜

  1. 2直線 なす角をとするとき,の値を求めよ.
  2. 直線 とのなす角がである直線の傾きを求めよ.
解答を見る
  1. それぞれ傾きは なので

  2. 傾きはである2直線のなす角がなので

    よって, または であればよいので,

2倍角・半角の公式

2倍角の公式

三角関数の加法定理において, とすると, 次の2倍角の公式(formula of double angle)が得られる.

§

定理42倍角の公式

証明

正弦の加法定理 において, とすると

また,正接の加法定理 において, とすると

暗記32倍角の公式の導出

余弦の2倍角の公式

を証明せよ.

解答を見る

余弦の加法定理 において, とすると

より, だから

より, だから

半角の公式

2倍角の公式から,次の半角の公式(formula of half angle)を得る.

§

定理5半角の公式

暗記4半角の公式の導出

次の『半角の公式』を証明せよ.

解答を見る
  1. 余弦の倍角の公式 より

    ここで,とおきかえて

  2. 余弦の倍角の公式 より

    ここで,とおきかえて

  3. より

    を使った

    ここで,とおきかえて

問題6半角の公式の利用

とするとき,の式で表せ.

解答を見る

より

また,倍角の公式より

なので

三角関数の合成

三角関数の合成について

の形をしている式は,加法定理をもちいてより簡単な形に直すことができる.

図のように,の係数を座標とし,の係数を座標とする点をとり, 線分軸の正の向きとなす,正の向きの角をとすると

だから

で式全体をくくった

を使った

←加法定理を使った

この変形のことを,三角関数の合成(combination of trigonometric function)という.

座標平面上に原点Oと点(a, b)を結ぶ線分が描かれている。線分の長さは√(a^2+b^2)で、x軸の正の部分となす角の大きさはαである。
§

定理6三角関数の合成

を満たすをもちいて

と変形できる.

座標平面上に原点Oと点(a, b)を結ぶ線分があり、その長さは√(a^2+b^2)と記されている。この線分とx軸の正の部分とのなす角がαである。

問題7三角関数の合成

次の三角関数を合成して, の形に変形せよ.の値が求められるときには求めよ(ただし, とする).

解答を見る
  1. 座標平面上に、原点Oと点(1, 1)を結ぶ線分が描かれている。線分の長さは√2で、x軸の正の部分となす角はπ/4である。点(1, 1)から両軸へ破線が引かれている。

  2. 座標平面上に、原点Oと点(-1, √3)を結ぶ線分が描かれている。線分の長さは2で、x軸の正の部分となす角は2/3πである。点(-1, √3)から両軸へ破線が引かれている。

  3. 座標平面上に、原点Oと点(3, -4)を結ぶ線分が描かれている。線分の長さは5で、x軸の正の部分から反時計回りに測ったなす角がαと示されている。

ただし,は図のような角度である.

三角関数を含む関数・方程式・不等式

三角関数を含む関数・方程式・不等式について

問題8三角関数を含む関数・方程式・不等式〜その1〜

  1. 関数 の最大値・最小値を求めよ.
  2. のとき,方程式 を解きなさい.
  3. のとき,不等式 を解きなさい.
解答を見る

拡張された三角関数の相互関係を用いてにそろえた

とおく. より なので

についての2次関数の最大・最小の問題になった

上に凸の放物線 y=-t^2-2t+2 のうち、tが-1から1までの範囲が実線、その外側が破線で描かれている。t=-1で最大値3、t=1で最小値-1をとる点に黒丸が付いている。

図より,

のとき最大値, のとき最小値

をとる. なので

原点Oを中心とする単位円に、t=sinθ=1 となる上端の点と t=sinθ=-1 となる下端の点が示されている。x軸の正の向きから各点の動径までの回転が矢印で描かれている。

のとき最大値

のとき最小値

原点Oを中心とする単位円に、cosθ=0 となるy軸上の2点と cosθ=-1 となる左端の点が示され、x軸の正の向きから各点の動径までの回転が矢印で描かれている。

の範囲で を満たすは,図より

拡張された三角関数の相互関係を用いてにそろえた.

の係数を正にするため,両辺をで割ってから因数分解した

原点Oを中心とする単位円で、y座標が0から1/2までの帯が網掛けされている。0<sinθ<1/2 を満たす弧が左右2か所に太線で描かれ、その端の点はすべて白丸である。

の範囲で上の不等式を満たすの範囲は,図の太線部分である.すなわち

問題9三角関数を含む関数・方程式・不等式〜その2〜

  1. 関数 の最大値・最小値を求めよ.
  2. のとき,方程式 を解きなさい.
  3. のとき,方程式 を解きなさい.
  4. のとき,不等式 を解きなさい.
  5. のとき,不等式 を解きなさい.
解答を見る

2倍角の公式を用いてにそろえた.

とおく. より なので

下に凸の放物線 y=2t^2-2t-1 のうち、tが-1から1までの範囲が実線、その外側が破線で描かれている。t=-1で最大値3、t=1/2で最小値-3/2をとる。

図より,

のとき最大値, のとき最小値

をとる. なので

原点Oを中心とする単位円に、t=sinθ=1/2 となる2点と t=sinθ=-1 となる下端の点へ動径が引かれ、x軸の正の向きからの回転が矢印で示されている。

のとき最大値

のとき最小値

2倍角の公式を用いて共通因数を作った.

原点Oを中心とする単位円に、sinθ=1/2 となる2点と cosθ=0 となるy軸上の2点へ動径が引かれ、x軸の正の向きからの回転が矢印で示されている。

の範囲で , を満たすは,図より

半角の公式を用いてにそろえた.

原点Oを中心とする単位円に、cosθ=0 となるy軸上の2点と cosθ=1 となる右端の点が示され、x軸の正の向きから各点の動径までの回転が矢印で描かれている。

の範囲で , を満たすは,図より

2倍角の公式を用いてでそろえた

原点Oを中心とする単位円で、x座標が-1/2以下の左側と1以上の右側が網掛けされている。cosθ≦-1/2 を満たす左の弧が太線で描かれ、cosθ=1 となる右端の点にも黒丸がある。

の範囲で上の不等式を満たすの範囲は,図の網掛け部分である.すなわち

半角の公式を用いてでそろえた

原点Oを中心とする単位円で、x座標が-1以下の左側の領域が網掛けされている。cosθ≦-1 を満たすのは左端の点(-1, 0)だけで、原点からその点へ向かう動径が太線で描かれている。

の範囲で上の不等式を満たすの範囲は,図の太線部分である.すなわち

問題10三角関数を含む関数・方程式・不等式〜その3〜

  1. のとき,方程式 を解きなさい.
  2. のとき,不等式 を解きなさい.
  3. 関数 の最大値・最小値を求めよ.
解答を見る
  1. 三角関数の合成より

    座標平面上に、原点Oと点(1, -√3)を結ぶ長さ2の線分が描かれている。この線分とx軸の正の部分とのなす角は -π/3 である。

    とおくと

    座標平面上に原点Oを中心とする単位円があり、点線 y=1/2 と交わる2本の動径が描かれている。x軸の正の部分から各動径への角θ'が矢印で示され、sin θ'=1/2 と添えられている。

    より, である. この範囲で を満たすは,図より

    なので

  2. 三角関数の合成より

    xy平面上に原点Oと点(1, 1)を結ぶ線分が描かれており、x軸とy軸の1の位置から点(1, 1)へ破線が引かれている。線分の長さは√2で、x軸の正の部分となす角はπ/4である。

    とおくと

    原点Oを中心とする単位円において、x軸より下の領域が網掛けされている。網掛け領域に含まれる下半円の弧が太線で表され、両端のx=-1とx=1の点は白丸になっている。

    より, なので,この範囲で上の不等式を満たすは, 図の網掛け部分である.すなわち

    なので

  3. 三角関数の合成より

    座標平面上に、原点Oと点(1, √3)を結ぶ線分が描かれており、その長さは2である。この線分とx軸の正の部分とのなす角はπ/3である。

    とおくと,

    この三角関数は

    より, なので,

    のとき最大値, のとき最小値

    なので

    のとき,最大値

    のとき,最小値

問題11 とおく

関数 について以下の問いに答えよ.

  1. とする.の式で表せ.
  2. のとりうる値を求めよ.
  3. の最大値・最小値と,それぞれを与えるの値を求めよ.
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  1. なので

    これを代入すれば

  2. 三角関数の合成より

    xy座標平面上に、原点Oと点(1, 1)を結ぶ線分が描かれている。この線分の長さは√2で、x軸の正の部分となす角はπ/4と示されている。

    座標平面上の単位円に、x軸の正の向きとなす角が π/4 である動径が描かれている。その動径から反時計回りに半周した反対側の動径までの円弧が、太線で強調されている。

    より, なので 図より である.

    つまり, のとりうる範囲は

  3. 1.,2.より, である.これをについて平方完成すると

    放物線 y=1/2 t^2-t-1/2 のうち、横軸の-1から√2までの範囲が実線で描かれている。点(-1, 1)と、y=-1となる頂点付近に黒丸が付いている。

    となる.図より,

    のときで最大, のとき で最小

    となる.それぞれのときのの値を求めると

    以上をまとめて,

    のときで最大

    のとき で最小

3倍角の公式

暗記53倍角の公式の導出

だけの式で表せ.また,だけの式で表せ.

解答を見る

正弦と余弦の加法定理 2倍角の公式 拡張された三角関数の相互関係 正弦と余弦の加法定理 2倍角の公式 拡張された三角関数の相互関係

§

定理73倍角の公式

問題123倍角の公式の利用

のとき,不等式 を満たすを求めよ.

解答を見る

なので

の範囲でこれを解いて,

単位円上に、cos x = -1/2、cos x = 0、cos x = 1/2 を満たす3つの点が表されている。原点Oからの動径が太線で描かれ、各点を通る縦の破線が添えられている。

三角関数の和と積の公式

積和の公式

加法定理を組み合わせることにより,次のような公式が得られる.

§

定理8三角関数の積を和に変換する公式

証明
  1. 正弦についての加法定理

    において, より

  2. 同じく より

暗記6積和の公式の導出

次の等式を証明せよ.

解答を見る
  1. 余弦についての加法定理

    において, より

  2. 同じく より

和積の公式

三角関数の積を和に変換する公式について

とおくと, より より であるから, 次の公式を得る.

§

定理9三角関数の和を積に変換する公式

問題13三角関数を含む方程式・不等式〜その4〜

  1. のとき,方程式 を解け.
  2. のとき,不等式 を解け.
解答を見る
  1. に着目.

    に着目しても共通因数を作れるが,分数が出てきて煩雑である.

    三角関数の和を積に変換する公式

    ←共通因数ができた

    三角関数の和を積に変換する公式

    それぞれの方程式を解くと

    より

    より

    より

    よって,

  2. に着目.

    に着目しても共通因数を作れるが,分数が出てきて煩雑である.

    三角関数の和を積に変換する公式

    ←共通因数ができた

    三角関数の和を積に変換する公式

    ここで, より である.

    1. ,つまり, のときは不適.
    2. より, となる.

    のとき

    を解くと

    上の式を,下の式をとする.

    数直線x上に、範囲②である0から2/5π、4/5πから6/5π、8/5πから2πと、範囲③である1/2πから3/2πが示され、共通部分である4/5πから6/5πに斜線が引かれている。

    なので,

    のとき

    を解くと

    上の式を,下の式をとする.

    数直線上に丸4と丸5の範囲が示され、共通部分である2/5πから1/2πの間と、3/2πから8/5πの間の2か所に斜線が引かれている。端点はすべて白丸である。

    なので,

    以上をまとめて

最終更新: 2026-08-13

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