重複組合せについて
重複組合せ$_nH_r$の定義
の目が描いてある正四面体のさいころを2回振って, 出た目の組(順番は考えない)をすべて書き出すと
の10通りとなる.これは,『同じものを含む順列』の考え方を利用し,次のように計算することができる.
無題
まず,各組はの順に並べて表すことにする.例えば, を1個,を1個使って作られる組はと表す.この組に対して,さいころの目を表す2個の $\bigcirc$ と,異なる4文字の“しきり”を表す $(4−1)=3$ 個の $\mid$ からなる順列を,右図のように対応させる. つまり,3つの“しきり” $\mid$ で4つの場所ができるので,その場所にある $\bigcirc$ の個数が,それぞれさいころの の個数を表すものとするのである.
無題
例えば,上の10組のうちの, や や などは, $\bigcirc$ と $\mid$ の順列で右図のように表すことができる.
こうすると,結局,区別しない2個の $\bigcirc$ と区別しない3個の $\mid$ の計5個のものを並べたときの順列を計算すればよいから, 『同じものを含む順列』より
$\text{C}(2,3)=\dfrac{5!}{2!3!}=10$ 通り
と数えることができる.
ここで, $n$ 個のものから,繰り返し用いることを許して, $r$ 個とって作る組について定義しておこう.
重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ の定義
「区別する $n$ 個のものから,繰り返し用いることを許して, $r$ 個取り出して作った組」 のことを $n-r$
この例では
\[_{4}\mathrm{H}_{2}=\text{C}(2,~3)=\frac{5!}{2!3!}=10\]である.
重複組合せ$_nH_r$の計算
区別する $n$ 個のものから,繰り返し用いることを許して, $r$ 個取り出して作る組の総数 $_{n}\mathrm{H}_{r}$ も,先程の例と同じように考えることができる.
まず,右図のように, $r$ 個の $\bigcirc$ と,( $n$ 個の入る場所を作るための) $n−1$ 個の“しきり” $\mid$ を並べる. こうしておいてから,区別しない $r$ 個の $\bigcirc$ と区別しない $n−1$ 個の $\mid$ の計 $r+n−1$ 個のものを並べたときの 『同じものを含む順列』を計算すればよいので
\[_{n}\mathrm{H}_{r}=\text{C}(r,~n-1)=\ _{r+n-1}\mathrm{C}_{r}\]となる.普通 $_{n}\mathrm{H}_{r}$ を計算するには,このように $\bigcirc$ と $\mid$ の並べ方を考えて $_{r+n−1}\mathrm{C}_{r}$ に帰着してから計算するとよい.
さて,ここでさらに $_{r+n−1}\mathrm{C}_{r}$ の計算をすすめてみると
\begin{align} &_{r+n-1}\mathrm{C}_{r}\\ =\ &\frac{(r+n-1)!}{(n-1)!r!}\\ =\ &\frac{\overbrace{(r+n-1)(r+n-2)\cdots{n}}^{r個の積}(n-1){\cdots}2{\cdot}1}{(n-1)\cdots2\cdot1\cdot{r!}}\\ =\ &\frac{\overbrace{n(n+1)\cdots(n+r-2)(n+r-1)}^{r個の積}}{r(r-1)\cdots2\cdot1} \end{align}つまり
\begin{align} _{n}\mathrm{H}_{r}=&\frac{\overbrace{n(n+1)\cdots(n+r-2)(n+r-1)}^{r個の積}}{r(r-1)\cdots2\cdot1} \end{align}と計算することもできる.この式は, $_{n}\mathrm{C}_{r}$ と比較すると覚えやすい.例えば
\begin{align} _{6}\mathrm{C}_{3}&=\frac{\overset{下がっていく}{\overrightarrow{6\cdot5\cdot4}}}{3\cdot2\cdot1},\ _{6}H_{3}=\frac{\overset{上がっていく}{\overrightarrow{6\cdot7\cdot8}}}{3\cdot2\cdot1} \end{align}である.
以上,まとめると
重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ の計算
区別する $n$ 個のものから,繰り返し用いることを許して, $r$ 個取り出して作る組の総数 $_{n}\mathrm{H}_{r}$ は,同じものを含む順列の考え方で計算でき
\begin{align} _{n}\mathrm{H}_{r}=&\ \text{C}(r,n-1)\\ =&\ _{r+n-1}\mathrm{C}_{r}\\ =&\ \frac{\overbrace{n(n+1)\cdots(n+r-2)(n+r-1)}^{r個の積}}{r(r-1)\cdots2\cdot1} \end{align}となる.
重複組合せの計算練習
次の値を求めよ.
- $_{7}\mathrm{H}_{2}$
- $_{4}\mathrm{H}_{3}$
- $_{5}\mathrm{H}_{3}$
- $_{3}\mathrm{H}_{5}$
- $_{7}\mathrm{H}_{2}=\ _{7+2-1}\mathrm{C}_{2}=\dfrac{8\cdot7}{2\cdot1}=\boldsymbol{28}$
- $_{4}\mathrm{H}_{3}=\ _{4+3-1}\mathrm{C}_{3}=\dfrac{6\cdot5\cdot4}{3\cdot2\cdot1}=\boldsymbol{20}$
- $_{5}\mathrm{H}_{3}=\ _{5+3-1}\mathrm{C}_{3}=\dfrac{7\cdot6\cdot5}{3\cdot2\cdot1}=\boldsymbol{35}$
- $_{3}\mathrm{H}_{5}=\ _{3+5-1}\mathrm{C}_{5}=\dfrac{7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3}{5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}=\boldsymbol{21}$
$_{7}\mathrm{H}_{2}=\dfrac{7\cdot8}{2\cdot1}$ と計算してもよい
$_{4}\mathrm{H}_{3}=\dfrac{4\cdot5\cdot6}{3\cdot2\cdot1}$ と計算してもよい
$_{5}\mathrm{H}_{3}=\dfrac{5\cdot6\cdot7}{3\cdot2\cdot1}$ と計算してもよい
$_{3}\mathrm{H}_{5}=\dfrac{3\cdot4\cdot5\cdot6\cdot7}{5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}$ と計算してもよい
ボールと箱のモデル5
例えば, $_{5}\mathrm{H}_{3}$ の定義は
「区別する5個のものから,繰り返し用いることを許して,3個とりだしてつくる組の総数」
であったが,これはボールと箱のモデルを使って
「区別しない3個のボールを,区別する5個の箱に配る(何個でもよい)場合の総数」
といいかえることができる.それには,次のように考えるとよい.
説明文
準備として,ボールは区別しないので,それを $\bigcirc,\bigcirc,\bigcirc$ とし, 箱は区別するので番号をつけ,それを としておく.
例えば,区別しない3個のボールを,区別する5個の箱に,図のように配ったとする.
このときは,5−3重複組合せのうちの $\{2,2,5\}$ と対応すると考えることができる.
また逆に,5−3重複組合せのうちの $\{2,2,5\}$ は,図のようなボールの配り方に対応すると考えることができる.
これ以外の5−3重複組合せも,ボールの箱への配り方と1対1に対応するので, 結局,ボールの箱への配り方の総数は $_{5}\mathrm{H}_{3}$ と一致するといえる.
一般に,次のようにまとめることができる.
重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ のボールと箱のモデル
重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ はボールと箱のモデルを用いて
「区別しない $r$ 個のボールを,区別する $n$ 個の箱に配る(何個でもよい)場合の総数」
と考えることができる.
吹き出し無題
ただし,この考え方ではうまく計算できないので,実際に計算するときには重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ の定義でみたように,“ $\bigcirc$ と $\mid$ の並べ方”の問題へ帰着することになる.
重複組合せ
- 3種類の果物,りんご,かき,なしを使って,7個入りの果物かごを作る.1つも入らない種類があってもよいとすると,何通りの果物かごができるか求めよ.
- 1. で,3種類の果物を最低1個は入れるものとすると,何通りの果物かごができるか求めよ.
- 【解1:重複組合せで考える】
- 【解1:重複組合せで考える】
区別する3種類のものを,重複を許して7つ取り出し組を作ればよいので
$_{3}\mathrm{H}_{7}=\ _{3+7-1}\mathrm{C}_{7}=\boldsymbol{36}$ 通り
$\uparrow\ _{3}\mathrm{H}_{7}=\dfrac{3\cdot4\cdot5\cdot6\cdot7\cdot8\cdot9}{7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}$
と計算してもよい
【解2:同じものを含む順列に帰着させる】
7個のものを $\bigcirc$ を使って
と表すことにする.
これらを2つの“しきり” $\mid$ によって,3つの区間に分け,左から順にりんご,かき,なしと対応させる. こうすると,例えば
\begin{align} \bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}は,りんご1個,かき2個,なし4個を表し
\begin{align} \bigcirc\bigcirc\bigcirc\mid\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}は,りんご3個,かき0個,なし4個を表す.
7個の $\bigcirc$ と2個の $\mid$ の計9個のものを1列に並べる並べ方の数が,考える果物かごの数である. よって
$\text{C}(7,2)=\ _{7+2}\mathrm{C}_{2}=\boldsymbol{36}$ 通り
$\uparrow$ 同じものを含む順列
まず,りんご,かき,なしから1つずづ計3個取り出しておく.残りの4つについて,重複を許して組を作ればよいので
$_{3}\mathrm{H}_{4}=\ _{3+4-1}\mathrm{C}_{4}=\boldsymbol{15}$ 通り
$\uparrow\ _{3}\mathrm{H}_{4}=\dfrac{3\cdot4\cdot5\cdot6}{4\cdot3\cdot2\cdot1}$
と計算してもよい
【解2:『資源配分』に帰着させる】
$\uparrow$ この解法について詳しくは,次の資源配分を参照のこと
1. と同様に,7個のものを $\bigcirc$ を使って
と表すことにする.
りんご,かき,なしそれぞれから,最低1個はとりだすので,今度は2つの“しきり” $\mid$ を6ヶ所ある $\bigcirc$ の“すきま”にいれ,3つの区間に分け,左から順にりんご,かき,なしと対応させる.こうすると,例えば
\begin{align} \bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}は,りんご1個,かき2個,なし4個を表し
\begin{align} \bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc \end{align}は,りんご4個,かき1個,なし2個を表す.
7個の $\bigcirc$ によって作られる,6ヶ所の“すきま”から2個の $\mid$ の入る場所を選ぶ選び方の数が,考える果物かごの数である.よって
$_{6}\mathrm{C}_{2}=\boldsymbol{15}$ 通り