三角関数のグラフ
三角関数はグラフに描くとサインカーブという独特の曲線を描く。ここでは、そのグラフについて調べていこう。
$y={\sin}x$のグラフとその周辺のグラフ
三角関数の表しかた
三角関数の表しかた
$\sin\theta$などの三角関数を定義したとき,$\theta$は角度を意味していた.
しかし,三角関数を,ある数$\theta$に対応する数を与える式,とより抽象的にみるならば, $\theta$の意味を角度に限定する必要はない. このため,変数を$\theta$で表さず,$y = \sin x$のように$x$で表すことも多く, 以下でもそのように扱っていく.
$y={\sin}x$ のグラフ
関数$y = \sin x$について,$0 \leqq x \leqq 2\pi$の範囲で $x$と$y$の関係を表にすると,以下のようになる. $x$の値は$\dfrac{1}{6}\pi$刻みでとってある.
$x$ | $\cdots$ | $ \ 0 \ $ | $\dfrac{1}{6}\pi$ | $\dfrac{1}{3}\pi$ | $\dfrac{1}{2}\pi$ | $\dfrac{2}{3}\pi$ | $\dfrac{5}{6}\pi$ | $ \ \pi \ $ |
$y$ | $\cdots$ | $0$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $1$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $0$ |
$x$ | $\dfrac{7}{6}\pi$ | $\dfrac{4}{3}\pi$ | $\dfrac{3}{2}\pi$ | $\dfrac{5}{3}\pi$ | $\dfrac{11}{6}\pi$ | $2\pi$ | $\cdots$ |
$y$ | $-\dfrac{1}{2}$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $-1$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $-\dfrac{1}{2}$ | $0$ | $\cdots$ |
この関係をグラフで表すと次の図のようになる.
$y=\sin{x}$ のグラフの図その1
たとえば,前の図の点$\text{A}$の$y$座標は動径のなす角が$\dfrac{2}{3}\pi$であるときの動点$\text{A}'$の$y$座標である.
前の図の各点をなめらかにつなぐと次の図のようになる.
$y=\sin{x}$ のグラフの図その2
さらに,$x$の値が$2\pi$増えるごとに$\sin x$は同じ値を取ることに注意して, 任意の実数を定義域としたグラフを書くと,次の図のようになる.
$y=\sin{x}$ のグラフの図その3
この$y = \sin x$のグラフに表れる曲線のことを,正弦曲線(sine curve) という.
正弦曲線の値域の長さの半分を振幅(amplitude) という. $y = \sin x$の振幅は$1$である.
周期関数の定義
周期関数の定義
$y=\sin{x}$のように,$x$の変化に応じて同じ値をとる関数は,次のようにまとめることができる.
周期関数の定義
関数$f(x)$が,ある正の実数$p$に対して次の条件
どんな実数$x$に対しても$f(x)=f(x+p)$が成立
を満たすとき,この関数$f(x)$のことを周期関数(periodic function) という.また,上の条件を満たす実数$p$のうち,正の値で最小のものを, この周期関数$f(x)$の周期(period) という.
$f(x)=\sin{x}$とおくと, 任意の実数$x$について$f(x)=f(x+2\pi)$が成り立つので, 関数$y=f(x)=\sin x$は周期関数であり,周期は$2\pi$である. グラフ$y=f(x)$においては「$x$が$2\pi$増加するたびに同じ形が表れる」ことになる.
$y=\sin x$のグラフの特徴
$y=\sin{x}$ のグラフの特徴の図その1
振幅$1$,周期$2\pi$の正弦曲線であり,$y$切片は$0$.
$x$の値の増加に対し,$y$の値は増加と減少を交互に繰り返す.
$y=A{\sin}x$ のグラフとその性質
$y=A\sin x$のグラフとその性質
たとえば,$y=\sin x$のグラフを$y$軸方向に$3$倍すると$y=3\sin x$のグラフになり, $y=\sin x$のグラフを$y$軸方向に$-3$倍すると$y=-3\sin x$のグラフになる.
$y=A\sin{x}$ のグラフとその性質の図その1
$y=A\sin x$のグラフの特徴
$y=\sin x$のグラフを,$y$軸方向に$A$倍したグラフである,
振幅は $| A |$ ,周期は関数$y=\sin x$と同じ$2\pi$である.
$y=\sin(x-\alpha)$ のグラフ
$y=\sin(x-\alpha)$のグラフ
例として,2つの関数
\begin{align} y&=\sin x\\ y&=\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right) \end{align}の関係を考えてみよう.
$x$ | $\cdots$ | $ \ 0 \ $ | $\dfrac{1}{6}\pi$ | $\dfrac{1}{3}\pi$ | $\dfrac{1}{2}\pi$ |
$\sin x$ | $\cdots$ | $0$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $1$ |
$\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$ | $\cdots$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $-\dfrac{1}{2}$ | $0$ | $\dfrac{1}{2}$ |
$x$ | $\dfrac{2}{3}\pi$ | $\dfrac{5}{6}\pi$ | $ \ \pi \ $ | $\cdots$ |
$\sin x$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\dfrac{1}{2}$ | $0$ | $\cdots$ |
$\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $1$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ | $\cdots$ |
$y=\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$の$y$の値と$y=\sin x$の$y$の値を一致させるには, $y=\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$の$x$に,$y=\sin x$の$x$より$\dfrac{1}{3}\pi$大きい値を代入しなければならない.
$y=\sin(x-\alpha)$ のグラフの図その1
つまり,$y=\sin \left(x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$の正弦曲線は,$y=\sin x$のグラフを$x$軸方向に$\dfrac{1}{3}\pi$だけ平行移動した正弦曲線であると分かる.
このことは,上の表においても確認することができる.
$y=\sin(x-\alpha)$のグラフ
$y=\sin(x-\alpha)$のグラフは,$y=\sin x$のグラフを
「$x$軸方向に$\alpha$平行移動」
したグラフ,周期と振幅も$y=\sin x$と同じであり,それぞれ$2\pi$と$1$である.
$y={\sin}bx$ のグラフ
$y=\sin bx$のグラフ
例として,関数$y=f(x)=\sin 3x$ のグラフについて考えてみよう.この関数は
$f(0)=\sin 0 =0,~f\left(\dfrac{2}{3}\pi\right)=\sin 2\pi =0,$
$~f\left(\dfrac{4}{3}\pi\right)=\sin 4\pi =0,~f(2\pi)=\sin 6\pi =0$
となり,結局,$x$が$0$から$2\pi$まで増加する間に,$y$は3度同じ値を繰り返すことが分かる.
$y=\sin{bx}$ のグラフの図その1
こうして,$y=\sin x$のグラフを,$y$軸に対して$x$軸方向に$\dfrac{1}{3}$倍したグラフが, 関数$y = \sin3x$のグラフであると分かる.
$y=\sin bx$のグラフ
$y=\sin bx$のグラフは,$y=\sin x$のグラフを$x$軸方向に$b$倍したものであり
周期は$\dfrac{2\pi}{|b|}$,振幅は$1$である.
三角関数のグラフ〜その1〜
以下の関数のグラフを書け.また,周期と振幅を求めよ.
- $y=\sin\left(x+\dfrac{1}{3}\pi\right)$
- $y=2\sin\left(x-\dfrac{1}{2}\pi\right) $
- $y=\sin 2x$
- $y=\sin \dfrac{x}{3}$
$y=\sin\left\{x- \left(-\dfrac{1}{3}\pi\right)\right\}$なので,$y=\sin x$のグラフを$x$軸方向に$-\dfrac{1}{3}\pi$平行移動したグラフになる.
周期は$2\pi$,振幅は$1$である.
←$y = \sin x$と同じ
$y=2\sin x$のグラフを$x$軸方向に$\dfrac{1}{2}\pi$平行移動したグラフになる.
周期は$2\pi$,振幅は$2$である.
←$y = 2\sin x$と同じ
$y=\sin 2x$は,$y=\sin x$の周期を$\dfrac{1}{2}$にしたグラフになる.
周期は$2\pi\div 2 =\boldsymbol{\pi}$,振幅は$1$である.
$y=\sin \dfrac{1}{3}x$は,$y=\sin x$の周期を$3$倍したグラフになる.
←$\dfrac{1}{\frac{1}{3}}=3$倍
周期は$2\pi\times 3 =\boldsymbol{6\pi}$,振幅は$1$である.
$y=A\sin(bx-\alpha)$ のグラフ
$y=A\sin(bx-\alpha)$のグラフ
たとえば,関数$y=2\sin \left(3x-\dfrac{\pi}{4}\right)$について考えてみよう.
この関数の式は,$y=2\sin 3\left(x-\dfrac{\pi}{12}\right)$と書けるので,次のことが分かる.
振幅は$2$である.
周期は$y=2\sin 3x$と同じ$\dfrac{2}{3}\pi$である.
$y=2\sin 3x$を$x$軸方向に$\dfrac{1}{12}\pi$平行移動したグラフになる.つまり,$x=\dfrac{\pi}{12}$のとき$y=\sin 0$であり, $x=\dfrac{3}{4}\pi\left(=\dfrac{\pi}{12}+\dfrac{2}{3}\pi\right)$のとき,$y=\sin 2\pi$である.
以上より,グラフは次のようになる.
$y=A\sin(bx-\alpha)$ のグラフの図その1
$y=A\sin(bx-\alpha)$のグラフ
$y=A\sin(bx-\alpha)=A\sin b\left(x-\dfrac{\alpha}{b}\right)$のグラフは,$y=A\sin bx$のグラフを 「$x$軸方向に$\dfrac{\alpha}{b}$平行移動」 したグラフである.
周期も振幅も$y=A\sin bx$と同じであり,それぞれ$\dfrac{2\pi}{|b|},A$である.
三角関数のグラフを書く手順
三角関数のグラフを書く手順
三角関数のグラフを書く時は,おおよそ次のiii., ii., i.の順で考えるとよい.つまり
- iii.$y$座標が$\sin 0$になるときの$x$の値を求める.正弦曲線はそこから始まる.
- ii.周期を求め,$y$座標が$\sin 2\pi$になるときの$x$の値を求める.これにより,iii.で求めた値から始まる正弦曲線の1周期分の終端が決まる.
- i.振幅を決める.最後に,$y$切片を計算できる場合は計算する.
三角関数のグラフ〜その2〜
以下の関数のグラフを書け.
- $y=\sin\left(2x-\dfrac{1}{3}\pi\right)$
- $y=2\sin\left(2x+\dfrac{1}{2}\pi\right) $
- $y=\sin\left(\dfrac{x}{3}+\dfrac{\pi}{3}\right) $
$y=\sin2\left(x- \dfrac{1}{6}\pi\right)$なので
$y=2\sin2\left\{x- \left(-\dfrac{1}{4}\pi\right)\right\}$なので
$y=\sin\dfrac{1}{3}\left\{x- \left(-\pi\right)\right\}$なので
$y={\cos}x$、$y={\tan}x$のグラフとその周辺のグラフ
$y={\cos}x$ のグラフ
$y=\cos x$のグラフ
$\cos x=\sin\left(x+ \dfrac{\pi}{2}\right)$,つまり $y=\sin{x}$のグラフを$x$軸方向に$-\dfrac{\pi}{2}$平行移動させたものが,$y=\cos{x}$のグラフである. それゆえ,$y=\cos x$のグラフも正弦曲線になる.
グラフ$y=\cos{x}$の$1$周期分を次の図の太線で示した.
$y=\cos{x}$ のグラフの図その1
$y=\cos x$のグラフの特徴
周期が$2\pi,$振幅が$1$の正弦曲線であり,$y$切片が$1$である.
$y={\tan}x$ のグラフ
$y=\tan x$のグラフ
関数$y = \tan x$について,$-\dfrac{\pi}{2} \leqq x \leqq \dfrac{\pi}{2}$の範囲で $x$と$y$の関係を表にすると,以下のようになる.$ x$の値は$\dfrac{1}{6}\pi$刻みでとってある.
$x$ | $\cdots$ | $-\dfrac{1}{2}\pi$ | $-\dfrac{1}{3}\pi$ | $-\dfrac{1}{6}\pi$ | $ \ 0 \ $ | $\dfrac{1}{6}\pi$ | $\dfrac{1}{3}\pi$ | $\dfrac{1}{2}\pi$ | $\cdots$ |
$\tan{x}$ | $\cdots$ | ― | $-\sqrt{3}$ | $-\dfrac{\sqrt{3}}{3}$ | $0$ | $\dfrac{\sqrt{3}}{3}$ | $\sqrt{3}$ | ― | $\cdots$ |
$y=\tan{x}$ のグラフの図その1
$y=\tan{x}$ のグラフの図その2
これをグラフで表し,曲線でつなぐと前の図のようになる。
たとえば,単位円の半径は$1$なので,$\text{A}'$の$y$座標は$\tan \dfrac{1}{3} \pi$となり, これは,$\text{A}$の$y$座標と一致する.
さらに,$x$の値が$\pi$増えるごとに,$\tan$の値は同じ値を取ったので,$ x$を任意の実数を定義域としてグラフを書くと,上の図のようになる.
$y=\tan{x}$ のグラフの図その3
ここで,$x=\dfrac{\pi}{2}$の近くでは$y = \tan x$のグラフがどうなっているか考えてみよう. 次の図は,$x=\dfrac{\pi}{2}$の付近のグラフを拡大したものである.
- $x$が$0$から$\dfrac{\pi}{2}$に向かって大きくなるにつれ,$y$座標は無限大へ近づき,グラフは直線$x=\dfrac{\pi}{2}$に限りなく近づく.
- $x$が$\pi$から$\dfrac{\pi}{2}$に向かって小さくなるにつれ,$y$座標は負の無限大へ近づき,グラフは直線$x=\dfrac{\pi}{2}$に限りなく近づく.
$y=\tan x$のグラフの特徴
周期が$\pi$の曲線である.
$x=\dfrac{\pi}{2} +n\pi$($n$は整数)が漸近線になる.
$y=A\cos(bx+a)$、$y=A\tan(bx+a)$ のグラフ
基本的には,$y = A\sin(bx + \alpha)$の時と同じように考えればよい.
たとえば,関数 $y=4\cos\left(2x-\dfrac{\pi}{3}\right)$ の場合は,$y=4\cos2\left(x-\dfrac{\pi}{6}\right)$ とも表せるので,次のことが分かる.
- $y$ 座標が $\cos0$ になるのは $x=\dfrac{1}{6}\pi$ のとき.
- 周期は $\dfrac{2\pi}{2}=\pi$,$y$ 座標が $\cos2\pi$ になるのは $x=\dfrac{1}{6}\pi+\pi=\dfrac{7}{6}\pi$ のとき.
- 振幅は $4$,$y$ 切片は $4\cos\left(-\dfrac{1}{3}\pi\right)=2$ である.
$y=A\cos(bx+a)$、$y=A\tan(bx+a)$ のグラフの図その1
三角関数のグラフ〜その3〜
以下の関数のグラフを書きなさい.漸近線があればその式を求めなさい.
- $y=\cos\left(2x-\dfrac{\pi}{3}\right)$
- $y=\cos\left(\dfrac{x}{3}+\dfrac{\pi}{3}\right) $
- $y=\tan\left(x-\dfrac{\pi}{2}\right) $
- $y=\tan\left(2x+\dfrac{\pi}{3}\right) $
$y=\cos2\left(x- \dfrac{1}{6}\pi\right)$なので
$y=\cos\dfrac{1}{3}\left\{x-(-\pi)\right\}$なので
$y = \tan x$を$x$軸方向に$\dfrac{\pi}{2}$平行移動すればよいので
漸近線は直線$x = n\pi$($n$は整数)になる.
$y=\tan2\left(x+\dfrac{\pi}{6}\right)$なので
漸近線は直線$x=\dfrac{\pi}{12} +\dfrac{n}{2} \pi$($n$は整数)になる.