1次関数とそのグラフ

ここでは、1次関数のグラフの描き方について復習していこう。中学で学習済みの内容ではあるが、2次関数のグラフを書くために必要な視点から、まとめておく。

1次関数のグラフ

1次関数の定義

1次関数の定義

関数 $f(x)$ が $x$ の1次式で表されるとき、つまり、$a(\neq0)$、$b$ を定数として \[f(x)=ax+b\] の形で表されるとき、$f(x)$ は $x$ の1次関数 (linear function) であるという。

関数 $f(x)$ が $x$ の1次式で表されるとき、つまり、$a(\neq0)$、$b$ を定数として \[f(x)=ax+b\] の形で表されるとき、$f(x)$ は $x$ の1次関数 (linearfunction) であるという。

たとえば、以下の $x$ の関数 $f(x)$ は、すべて1次関数である。 \begin{align} &f(x)=x+2\\ &f(x)=3x-\frac{1}{2}\\ &f(x)=-2x+\sqrt{2} \end{align}

$y=ax$ のグラフ

1次関数 $y=ax+b$ において、まずは $b=0$ の場合、つまり $y=ax$ のグラフについて考えてみよう。このタイプのグラフは次のような特徴があった。

$y=ax$のグラフの特徴

$a\gt0$のグラフ
$a\gt0$のグラフ
$a\lt0$のグラフ
$a\lt0$のグラフ

  1. 原点を通る直線である。
    1. $\boldsymbol{a\gt0}$ のとき
      • $x$ が増加するとき、$y$ も増加するため、グラフは右上がり
      • $a$ が大きいほど、右上がりは急
    2. $\boldsymbol{a\lt0}$ のとき
      • $x$ が増加するとき、$y$ は減少するため、グラフは右下がり
      • $|a|$ が大きいほど、右下がりは急
直線の($x$ 軸に対する)傾き具合を決める、$a$ の値を傾き (slope) という。

傾き $a$ は「$x$ が $1$ 増加したときの $y$ の増加量」になっている。$a$ が負のときは $y$ の増加量が負になり、$y$ は減少していることになる。

$y=ax+b$ のグラフ

次に、一般の1次関数 $y=ax+b$ のグラフについて考えてみよう。

2つの1次関数のグラフ
2つの1次関数のグラフ

例として2つの1次関数 \begin{align} &y=\dfrac{1}{2}x\\ &y=\dfrac{1}{2}x+1 \end{align} の関係を考えてみよう。

2つの1次関数の関係の図

2つの1次関数の関係の図
(注)

上の表から、$y=\dfrac{1}{2}x+1$ のグラフは、$y=\dfrac{1}{2}x$ のグラフを $y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動した直線であるとわかる。

また、原点より $y$ 軸方向に $1$ 大きい点 $(0,~1)$ を通ることがわかる。

$y=ax+b$ のグラフ

$y=ax+b$ のグラフは、$y=ax$ のグラフを
「y軸方向にbだけ平行移動」
した直線である。このときの $b$ の値を$\boldsymbol{y}$切片 (y-intercept) という。

$y=a(x-p)$ のグラフ

2つの1次関数のグラフ
2つの1次関数のグラフ

例として2つの1次関数 \begin{align} &y=2x\\ &y=2(x-3) \end{align} の関係を考えてみよう。

2つの1次関数の関係の図

2つの1次関数の関係の図
(注)

上の表から、$y=2(x-3)$ のグラフは、$y=2x$ のグラフを $x$ 軸方向に $3$ だけ平行移動した直線になるとわかる

また、このグラフは原点より $x$ 軸方向に $3$ 大きい点 $(3,~0)$ を通る。

$y=a(x-p)$ のグラフ

$y=a(x-p)$ のグラフは、$y=ax$ のグラフを
「$x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動」
した直線である。このときの $p$ の値を$\boldsymbol{x}$切片 (x-intercept) という。

$y=a(x-p)+q$ のグラフ

最後に、$y=a(x-p)$ の右辺に $q$ を加えた \[y=a(x-p)+q\] という形をした1次関数のグラフについて考えてみよう。

$y=2(x-3)+1$ のグラフ
$y=2(x-3)+1$ のグラフ

たとえば $y=2(x-3)+1$ のグラフについて考えてみよう。これは、$y=2x$ のグラフを $x$ 軸方向に $3$ 平行移動した \[y=2(x-3)\] のグラフを、さらに $y$ 軸方向に $1$ 平行移動した \[y=2(x-3)+1\] のグラフを表している。

また、$y=2(x-3)+1$ のグラフは、原点より $x$ 軸方向に $3$ 大きく、$y$ 軸方向に $1$ 大きい点 $(3,~1)$ を通ることがわかる。

$y=a(x-p)+q$ のグラフ

$y=a(x-p)+q$ のグラフは、$y=ax$ のグラフを
「$x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動し、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動」
した直線である。また、このグラフは $(p,~q)$ を通る。

また、$y=2(x-3)+1$ は、計算によって $y=2x-5$ や $y=2\left(x-\dfrac{5}{2}\right)$ とも表せるので、$y=2x$ を $y$ 軸方向に $-5$ 平行移動したものともいえるし、$x$ 軸方向に $\dfrac{5}{2}$ 平行移動したものともいえる。このことを、上のグラフで確認しておくこと。

「1次関数 $y=ax+b$ のグラフ」のことを
「直線 $y=ax+b$」
ということがある。このときの $y=ax+b$ は、直線の方程式 (equation of line) といわれる。

1次関数のグラフ

次の1次関数のグラフはすべて、$y=2x$ のグラフを平行移動してできる。それぞれ、$x$ 軸方向、$y$ 軸方向にいくつ平行移動が行われたのか、式の形から読み取れ。

また、それぞれのグラフを座標平面上に描け。

  1. $y=2(x+2)$
  2. $y=2(x+3)-1$

  1. 1の図
    $y=2\left\{x-(-2)\right\}$ であるので、$y=2x$ のグラフを $x$ 軸方向に $-2$ 平行移動したグラフである。座標平面上に表すと右図のようになる。
  2. 2の図
    $y=2\left\{x-(-3)\right\}-1$ であるので、$y=2x$ のグラフを $x$ 軸方向に $-3$ 平行移動し、$y$ 軸方向に $-1$ 平行移動したグラフである。座標平面上に表すと右図のようになる。

1次関数の決定

変化の割合と傾き$a$

関数 $f(x)$ において、ある $x$ の範囲における「$x$ の増加量に対する $f(x)$ の増加量の比」を,その $x$ の範囲における変化の割合 (rateofchange) という。

$x$ 座標が,$x_0$ から $x_1$ に増加するときの $f(x)$ の変化の割合は \begin{align} (変化の割合)&=\dfrac{(f(x)の増加量)}{(xの増加量)}\\ &=\dfrac{f(x_1)-f(x_0)}{x_1-x_0} \end{align}

変化の割合と傾きの関係の図
変化の割合と傾きの関係の図

右図のように、直線 $y=ax+b$ が異なる2点 $(x_0,~ax_0+b)$、$(x_1,~ax_1+b)$ を通るとき

\begin{align} &(変化の割合)\\ =&\frac{(ax_1+b)-(ax_0+b)}{x_1-x_0}\\ =&\frac{ax_1-ax_0}{x_1-x_0}\\ =&\frac{a(x_1-x_0)}{x_1-x_0}\\ =&a\end{align} となり、1次関数の変化の割合は傾きと等しいことがわかる。

直線の傾き $a$

直線の傾きの図
直線の傾きの図

  • 1次関数の変化の割合は、常にそのグラフの傾きに等しい。
  • 異なる2点 $(x_0,~y_0)$、$(x_1,~y_1)$ を通る直線の傾き $a$ は次の式で求められる。 \[a=\dfrac{y_1-y_0}{x_1-x_0}\left(=\dfrac{\text{(yの増加量)}}{\text{(xの増加量)}}\right)\]

傾き $a$ を求める

次の条件にあった1次関数の傾きを求めよ。

  1. $x$ が $3$ 増えれば $y$ は $6$ 増える1次関数
  2. $x$ が $3$ 増えれば $y$ は $6$ 減る1次関数
  3. グラフが2点 $(0,~0)$、$(3,~6)$ を通る1次関数
  4. グラフが2点 $(-3,~5)$、$(2,~-5)$ を通る1次関数

  1. $(傾き)=\dfrac{\text{(yの増加量)}}{\text{(xの増加量)}}=\dfrac{6}{3}=\boldsymbol{2}$
  2. $(傾き)=\dfrac{\text{(yの増加量)}}{\text{(xの増加量)}}=\dfrac{-6}{3}=\boldsymbol{-2}$
    $\blacktriangleleft$ 「$6$ 減る」ことと「$-6$ 増える」ことは同じ
  3. 傾きは $\dfrac{6-0}{3-0}=\boldsymbol{2}$
    $\blacktriangleleft$ 直線の傾き $a$ 参照
  4. 傾きは$\dfrac{-5-5}{2-(-3)}=\dfrac{-10}{5}=\boldsymbol{-2}$
    $\blacktriangleleft$ 直線の傾き $a$ 参照

1次関数を決定する

$y=a(x-p)+q$ のグラフで学んだことを用い、条件に合った1次関数の式を求めてみよう。

直線の傾きと通る1点が与えられた場合

グラフが次の条件を満たす1次関数を求めよ。

  1. 傾きが $3$ で、点 $(2,~1)$ を通る。
  2. 傾きが $2$ で、$y$ 切片が $1$ である。
  3. 傾きが $2$ で、$x$ 切片が $3$ である。

  1. 傾きが $3$ で、点 $(2,~1)$ を通る直線の方程式は \begin{align} &y=3(x-2)+1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=3x-5}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}
  2. $y$ 切片が $1$ であるということは、点 $(0,~1)$ を通るということであるから \begin{align} &y=2(x-0)+1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=2x+1}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}
  3. $x$ 切片が $3$ であるということは、点 $(3,~0)$ を通るということであるから \begin{align} &y=2(x-3)+0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=2x-6}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}

直線の通る2点が与えられた場合

グラフが次の条件を満たす1次関数を求めよ。

  1. 2点 $(-2,~-7)$、$(1,~-1)$ を通る。
  2. 2点 $(-5,~-9)$、$(5,~7)$ を通る。
  3. $x$ 切片が $3$、$y$ 切片が $5$ である。

  1. 傾きは \[\dfrac{-1-(-7)}{1-(-2)}=2\] $\blacktriangleleft$ 直線の傾き $a$
    である。

    通る点を $(-2,~-7)$ として
    $\blacktriangleleft$ 通る点を $(1,~-1)$ としてもよい \begin{align} &y=2{x-(-2)}-7\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=2x-3}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}

  2. 傾きは \[\dfrac{7-(-9)}{5-(-5)}=\dfrac{8}{5}\] \blacktriangleleft 直線の傾き $a$
    である。

    通る点を $(-5,~-9)$ として
    $\blacktriangleleft$ 通る点を $(5,~7)$ としてもよい \begin{align} &y=\dfrac{8}{5}{x-(-5)}-9\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=\dfrac{8}{5}x-1}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}

  3. 求めたい関数のグラフは、$x$ 切片が $3$ なので $(3,~0)$ を通り、$y$ 切片が $5$ なので $(0,~5)$ を通る。

    つまり、傾きは \[\dfrac{5-0}{0-3}=-\dfrac{5}{3}\] $\blacktriangleleft$ 直線の傾き $a$
    であるから、通る点を $(3,~0)$ として
    $\blacktriangleleft$ 通る点を $(0,~5)$ としてもよい \begin{align} &y=-\dfrac{5}{3}(x-3)+0\\ \Leftrightarrow&~\boldsymbol{y=-\dfrac{5}{3}x+5}\\ &\blacktriangleleft y=a(x-p)+qのグラフ \end{align}

切片が与えられたときの直線の方程式

右の図のように原点を通らない直線で、$x$ 切片が $x_0$、$y$ 切片が $y_0$ である直線は、傾きが $-\dfrac{y_0}{x_0}$ であり $(0,~y_0)$ を通るので、$y=-\dfrac{y_0}{x_0}x+y_0$ となる。

原点を通らない直線
原点を通らない直線

この式全体を $y_0$ で割ると \begin{align} &\dfrac{y}{y_0}=-\dfrac{x}{x_0}+1\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{x}{x_0}+\dfrac{y}{y_0}=1 \end{align} となる。

切片が与えられたときの直線の方程式

$x$ 切片が $x_0$、$y$ 切片が $y_0$ の直線の方程式は $\dfrac{x}{x_0}+\dfrac{y}{y_0}=1$ で表される。

上の例題の3は、$x$ 切片が $3$、$y$ 切片が $5$ であるから \begin{align} &\dfrac{x}{3}+\dfrac{y}{5}=1\\ \Leftrightarrow~&5x+3y-15=0\\ \Leftrightarrow~&y=-\dfrac{5}{3}x+5 \end{align} となりさきほどの解答と確かに一致する。

1次関数の対称移動

$x$軸に関する対称移動

$x$軸対称の2本のグラフ
$x$軸対称の2本のグラフ

たとえば、1次関数 \[y=2x+1\] と、右辺全体に $-1$ を掛けた1次関数 \[y=-2x-1\] のグラフは、右図のように互いに $x$ 軸対称となっている。

これは、2つの1次関数に関して「同じ $x_0$ という値に対して、$y_0$ の値の絶対値は同じだか、符号は逆になるため」と考えれば明らかであろう。

$x$ 軸対称なグラフの関係

1次関数 $f(x)=ax+b$ において $y=f(x)$ のグラフと $y=−f(x)$ のグラフは、互いに $x$ 軸対称になる。

$y$軸に関する対称移動

$y$軸に対称な2本の直線
$y$軸に対称な2本の直線

次に、1次関数 \[y=\dfrac{4}{3}x-2\tag{1}\label{yjikunitaisurutaisyoido1}\] と、右辺の $x$ を $-x$ で置き換かえた1次関数 \[y=\dfrac{4}{3}(-x)-2=-\dfrac{4}{3}x-2\tag{2}\label{yjikunitaisurutaisyoido2}\] のグラフを図示すると、下図のように互いに $y$ 軸対称となっている。

これは、2つの1次関数に関して「同じ $y_0$ という値をとるのが、$\eqref{yjikunitaisurutaisyoido1} $ では $x_0$、$\eqref{yjikunitaisurutaisyoido2}$ では $-x_0$ のときであるため」と考えれば納得できるだろう。具体的にいえば、$\eqref{yjikunitaisurutaisyoido1}$ の $x$ に $3$ を代入すると $y=2$ となり、$\eqref{yjikunitaisurutaisyoido2}$ の $x$ に $-3$ を代入すると同じく $y=2$ になるということである。

$y$ 軸対称なグラフの関係

1次関数 $f(x)=ax+b$ において $y=f(x)$ のグラフと $y=f(-x)$ のグラフは、互いに $y$ 軸対称になる。