対偶法
対偶法とは何か
対偶は同値でみたように、命題 $p{\Rightarrow}q$ と $\overline{q}{\Rightarrow}\overline{p}$ は同値、すなわちこの2つの命題の真偽に関する意味は同じになるので、命題 $p{\Rightarrow}q$ を証明する代わりに、命題 $\overline{q}{\Rightarrow}\overline{p}$ を証明してもいい。このようないいかえにより、証明する論法のことを対偶法 (contraposition) という。
例えば
「すべての整数 $n$ について、$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数である」
という命題を証明してみよう。
$n^2$ は同じ $n$ を2回かけたものなのだから、$n^2$ が偶数なら $n$ も偶数であることは自明ともいえるが、いざ証明せよといわれると難しい。
そこで、この命題の対偶である
「すべての整数 $n$ について、$n$ が奇数ならば $n^2$ は奇数である」
を考えてみよう。こちらの命題であるならば、次のように解答を作ることができる。
【解答】
奇数 $n$ はある整数 $k$ を用いて、$n=2k+1$ と表すことができるから
\begin{align}
n^2=&(2k+1)^2\\
=&4(k^2+k)+1
\end{align}
$4(k^2+k)$ は偶数であるから、それに $1$ を加えた $n^2$ は奇数である。
対偶法
次の命題を証明せよ。
- すべての整数 $m,n$ について、$mn$ が奇数ならば、$m,n$ はともに奇数である。
- すべての実数 $x,y$ について、$x^2+y^2=0$ ならば、$x=0$ かつ $y=0$ である。
この命題の対偶は
「すべての整数 $m,n$ について、$m$ または $n$ が偶数であるならば $mn$ は偶数である」
となる。偶数 $m$ はある整数 $k$ を用いて、$m=2k$ と表すことができるから \[mn=2kn\] となり、$mn$ は偶数である。
$n$ が偶数である場合も、ある整数 $l$ を用いて、$n=2l$ と表すことができるから、 \[mn=2ml\] となり、$mn$ は偶数である。
以上より、対偶の命題が証明されたので、もとの命題
「すべての整数 $m,n$ について、$mn$ が奇数ならば $m,n$ はともに奇数である」
も証明された。この命題の対偶は
「すべての実数 $x,y$ について、$x\neq0$ または $y\neq0$ であるならば $x^2+y^2\neq0$ である」
となる。まず、一般に実数 $x$ において、$x^2\geqq0$ であり、$x^2=0$ となるのは $x=0$ のときに限る。これは実数 $y$ についても同様である。
いま、実数 $x$ が $x\neq0$ のとき、$x^2\gt0$ となるから \[x^2+y^2\gt0\] となり、$x^2+y^2\neq0$ である。
また、実数 $y$ が $y\neq0$ のとき、$y^2\gt0$ であるから \[x^2+y^2\gt0\] となり、$x^2+y^2\neq0$ である。
以上より、対偶の命題が証明されたので、もとの命題
「すべての実数 $x,y$ について、$x^2+y^2=0$ ならば $x=0$ かつ $y=0$ である」
も証明された。