正接$(\tan)$
三角形の表記に関する注意
三角形の例
$\triangle\text{A}\text{B}\text{C}$ において、以下のように略することが多い。 \[\angle\text{A},~\angle\text{B},~\angle\text{C}の大きさ\longrightarrowそれぞれA,~B,~C\] \[辺\text{BC},~\text{CA},~\text{AB}の長さ\longrightarrowそれぞれa,~b,~c\] 今後、特に断りのない限りこの記法にしたがうこととする。
直角三角形の表記に関する注意
直角三角形の例
図のような直角三角形 $\text{ABC}$ を $\angle\text{A}$ からみるとき
- 辺 $\text{AB}$ のことを斜辺 (hypotenuse)
- 辺 $\text{BC}$ のことを対辺 (opposite side)
- 辺 $\text{CA}$ のことを底辺 (base)
このうち底辺、対辺は、$\angle\text{A}$ から直角をみることによって相対的に決まる。図で描かれたときに、下の部分にあるから底辺というのではない。
角度を変えた直角三角形
たとえば、次の図のように斜めになっている直角三角形でも、点 $\text{A}$ からみたときの斜辺、対辺、底辺は、それぞれ辺$\text{AB}$、$\text{BC}$、$\text{CA}$ となる。
この章の図にある“目”のマークは、本文中で「~からみたときの」とある場合の説明の補助として使われている。自分も同じ所から見つめているつもりになって、図形を考えてみよう。
川を渡らずに川幅を知る方法
川の図
次の図において、川を渡ることなく、C点から対岸のB点までの距離BCを求めるにはどうしたらよいだろうか。
まず、C点から見て、直線CBと直角の方向にA点を適当に定め、C点からA点までの距離を測る。
たとえば、これは40mであったとする。次に、A点から見て、直線ABと直線ACのつくる角の大きさを測る。たとえば、これは $35^\circ$ であったとする。
$\triangle\text{ABC}$ の縮図
$\triangle\text{ABC}$ は $\angle\text{C}$ が直角の直角三角形であるから、この縮図 $\triangle\text{A'B'C'}$ を、たとえば、$\text{A'C'}=3\text{cm}$ として描くと図のようになる。
そこで、辺$\text{B'C'}$ の長さを測ると約 $\fbox{ア}\text{cm}$ になっている(実際に
ここで、$\triangle\text{ABC}$ と $\triangle\text{A'B'C'}$ は相似であるから \[\dfrac{\text{CB}}{\text{AC}}=\dfrac{\text{C'B'}}{\text{A'C'}}\fallingdotseq\dfrac{\fbox{ア}}{3}=\fbox{イ}\] が成り立つ。この値は、いわばACに対するCBの倍率であることに注意しよう。
実際には、$\text{AC}=40\text{m}$ であったから \[\text{BC}\fallingdotseq\text{AC}\times\fbox{イ}=40\text{m}\times\fbox{イ}=\fbox{ウ}\text{m}\] と計算できる。
このように、実際に川を渡らずとも距離BCが求められたのは、適当な縮図 $\triangle\text{A'B'C'}$ を使い、ACに対するCBの倍率(比)を計算したためである。この値は縮図の大きさによらない、$35^\circ$ という角度に関する固有の値である。
$\fbox{ア},~\fbox{イ},~\fbox{ウ}$ の答え \[\fbox{ア}=2.1,~\fbox{イ}=0.70,~\fbox{ウ}=28\]
正接の定義
一般に、$\angle\text{C}$ が直角である直角三角形$\text{ABC}$ において、$\angle\text{A}$ から見たときの $\dfrac{(対辺)}{(底辺)}=\dfrac{\text{CB}}{\text{AC}}$ の値は、$\triangle\text{ABC}$ の大きさに関係無く、$\angle\text{A}$ の大きさだけで決まる。
直角三角形の図
たとえば、図の $\triangle\text{AB'C'}$ は $\triangle\text{ABC}$ の0.75倍の大きさで描かれているので、 \[\dfrac{\text{C'B'}}{\text{AC'}}=\dfrac{0.75\times\text{CB}}{0.75\times\text{AC}}=\dfrac{\text{CB}}{\text{AC}}\] となり、直角三角形の大きさとは関係ないことがわかる。
ここで、この $\dfrac{(対辺)}{(底辺)}$ の値を $A$ の
正接の定義
正接の定義を表す図
図の直角三角形 $\text{ABC}$ において \[\tan{A}=\dfrac{a}{b}\] とする。
吹き出し正接の定義
正接の覚え方
$\tan{A}$ の値 $\dfrac{a}{b}$ は、図のように $\tan$ の頭文字 $t$ の筆記体の書き順に合わせ、「$b$ 分の $a$」と記憶するとよい。
$\tan{A}$ は、$\angle\text{A}$ からみたときの底辺に対する対辺の倍率を表していて、さきほどの川の例では、$(底辺):(対辺)=b:a=1:\tan{35^\circ}\fallingdotseq1:0.7$ であった。
正接の定義
正接の定義の図
次の図において、$\tan{A}$、$\tan{B}$ をそれぞれ求めよ。
正接の定義の図
図より \[\tan{A}=\boldsymbol{\dfrac{4}{3}}\] \[\tan{B}=\dfrac{2}{4}=\boldsymbol{\dfrac{1}{2}}\]