順列について
順列$_{n}\text{P}_{r}$の定義
並べ方の樹形図
4枚のカード $\fbox{A}$ , $\fbox{B}$ , $\fbox{C}$ , $\fbox{D}$ から2枚のカードを引いて,これらを1列に 並べる場合の数は次のように求めることができる.
まず,1枚目のカードの取り方は,4枚のカードのどれを取ってもよいから4通りある.
そして,1枚目のカードが決まれば,2枚目のカードの取り方は,残りの3枚のカードの中から1枚取るから3通りある.
つまり,1枚目のカードの取り方4通りに対して,2枚目のカードの取り方が3通りに定まるから, 2枚のカードの並べ方は『積の法則』より
$4\times3=12$ 通り
となる.
右の図は,2枚のカードの並べ方12通りを樹形図と平図を用いて表したものである.
ここで,n個のものからr個とって並べる順列を定義しておこう.
順列 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ の定義
「区別するn個のものからr個取り出して1列に並べた列」のことを 順列(permutation)といい, その並べ方の総数を $\boldsymbol{_{n}\mathrm{P}_{r}}$ と表す
上の例では, $_{4}\mathrm{P}_{2}=4\times3=12$ である.
順列$_{n}\text{P}_{r}$の計算
区別する $n$ 個のものから $r$ 個取り出して1列に並べる順列の数 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ は,上の例と同じように考えることができる.
1番目のものの取り方は $n$ 通りあり, 2番目のものの取り方はそのそれぞれに対して $n − 1$ 通りあり, 3番目のものの取り方はそのそれぞれに対して $n − 2$ 通りあり, $\cdots$ $r$ 番目のものの取り方はそのそれぞれに対して $n − (r − 1)$ 通りある.
したがって,『積の法則』より
\begin{align} _{n}\mathrm{P}_{r}&=\underbrace{n(n-1)\cdots(n-r+1)}\tag{1}\label{zyunretunPrnokeisan1}_{r個の積} \end{align}と計算できることがわかる.
特に, $r$ が $n$ に等しいとき,つまり $r = n$ のときには, $_{n}\mathrm{P}_{n}=n(n-1)(n-2)\cdots\cdots3\cdot2\cdot1$ となる.右辺は1から $n$ までの すべての自然数の積であり,これを $n$ の階乗(factorial)といい,記号 $\boldsymbol{n!}$ で表す. つまり
\[n!=\ _{n}\mathrm{P}_{n}=n(n-1)(n-2)\cdots\cdots3\cdot2\cdot1\]である.
また, $r < n$ のとき, $_{n}\mathrm{P}_{r}$ の分母・分子に $(n − r)!$ をかけることにより
\begin{align} &_{n}\mathrm{P}_{r}=_{n}\mathrm{P}_{r}\times\dfrac{(n-r)!}{(n-r)!}\\ =&\dfrac{n(n-1)\cdots(n-r+1)(n-r)\cdots2\cdot1}{(n-r)\cdots2\cdot1} \end{align}と変形なるので,分子は $n!$ で表すことができ
\[_{n}\mathrm{P}_{r}=\dfrac{n!}{(n-r)!}\tag{2}\label{zyunretunPrnokeisan2}\]となる.
$r = n$ のとき, $\eqref{zyunretunPrnokeisan2}$ は形式的に $_{n}\mathrm{P}_{n}=\frac{n!}{0!}$ と表せるが, $_{n}\mathrm{P}_{n} = n!$ となって欲しいので, $0! = 1$ と定めることにする. こうすれば, $\eqref{zyunretunPrnokeisan2}$ は $r = n$ のときにも成り立つ.
以上, $\eqref{zyunretunPrnokeisan1}$ , $\eqref{zyunretunPrnokeisan2}$ をまとめると
順列 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ の計算
順列 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ は
\begin{align} _{n}\mathrm{P}_{r}=&\ n(n-1)(n-2)\cdots\cdots(n-r+1)\\ =&\dfrac{n!}{(n-r)!} \end{align}と計算できる.ただし,n,rは0以上の整数とし, $n\geqq{r}$ とする.
吹き出し無題
よくあるまちがいとして, $_{n}\mathrm{P}_{0}=0$ としてしまうというのがある. 上の式によれば,
$_{n}\mathrm{P}_{0}=\dfrac{n!}{(n-0)!}=1$ である. このことは, $_{n}\mathrm{P}_{0}$ すなわち「区別する $n$ 個のものから $0$ 個取り出して1列に並べる場合の数」は, 「1個も並べない」という1通りである,と
こじつけ
で覚えてしまうとよい.
また, $\eqref{zyunretunPrnokeisan2}$ の $_{n}\mathrm{P}_{r}=\frac{n!}{(n-r)!}$ は,ただ計算上で成り立つだけでなく
とりあえず, $n$ 個の区別するものをすべて並べて $n!$ 通りの樹形図を作ってから,(左から $r$ 個のものにしか着目しないので)関係のない 右から $n − r$ 個の並べ方の違いについては無視するため, $(n − r)!$ 通りで1束にして数えたもの
と考えることもできる.このことの具体例を示すため,以下には $_{4}\mathrm{P}_{4}( = 4!)$ と $_{4}\mathrm{P}_{2}$ の対応を樹形図で表した. $_{4}\mathrm{P}_{2}$ 通りは, $_{4}\mathrm{P}_{4}$ 通りの順列において $(4 − 2)!$ 通りで割って1束にしたものであることを確認しよう.
$_{4}\mathrm{P}_{4}$ と $_{4}\mathrm{P}_{2}$ の樹形図
例題:順列の計算練習
次の値を求めよ.
- $_{5}\mathrm{P}_{2}$
- $_{7}\mathrm{P}_{4}$
- $_{6}\mathrm{P}_{3}$
- $_{10}\mathrm{P}_{8}$
具体的な数を計算したいときには, $\eqref{zyunretunPrnokeisan1}$ を使う.
- $_{5}\mathrm{P}_{2}=5\cdot 4=\boldsymbol{20}$
- $_{7}\mathrm{P}_{4}=7\cdot 6\cdot 5\cdot 4=\boldsymbol{840}$
- $_{6}\mathrm{P}_{3}=6\cdot 5\cdot 4=\boldsymbol{120}$
- \begin{align} _{10}\mathrm{P}_{8}&=10\cdot 9\cdot 8\cdot 7\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\\ &=\boldsymbol{1814400} \end{align}
例題:順列~その1~
- $1,2,3,4,5,6$ の6個の数字を使って3桁の整数を作るとき何通りの方法があるか.ただし,同じ文字は二度使えないものとする.
- 30人のクラスがある.このクラスで,委員長,副委員長,書記をそれぞれ一名ずつ決めるとき,何通りの決め方があるか.
- 3桁の整数は,異なる6個の数字から3つ選んで並べることにより作ることができるから
- 委員長,副委員長,書記をそれぞれ一名ずつ決めるには,30人の中から3人を選んで横1列並べ, 左から順に委員長,副委員長,書記とすればよいので
$_{6}\mathrm{P}_{3}=6\cdot 5\cdot 4=\boldsymbol{120}$ 通り
$_{30}\mathrm{P}_{3}=30\cdot 29\cdot 28=\boldsymbol{24360}$ 通り
例題:順列~その2~
5個の整数 $0,1,2,3,4$ があり,この中から異なる数字を用いて整数を作る.
- 3桁の整数は何通り作れるか.
- 3桁の整数で,かつ百の位と十の位が奇数のものは何通り作れるか.
- 百の位にあるのは $0,1,2,3,4$ のうち0を除いた ←最高位の数字は0にならないことに注意
- 奇数は1と3の2種類がある. 百の位と十の位に関しての順列は $_{2}\mathrm{P}_{2}$ 通り.このそれぞれに対して, 一の位には残りの0,2,4の3種類の数字が入るので
4種類,このそれぞれに対して 十の位にあるのは百の位で選んだ以外の数字で4種類,さらにこのそれぞれに対して 一の位にあるのは百の位と十の位にない3種類がある.よって
$4\cdot 4\cdot 3=\boldsymbol{48}$ 通り
《別解:補集合を考える》
5種類の文字から3つ選んで並べたときの順列 $_{5}\mathrm{P}_{3}$ 通りから, 百の位の数が0であるときの順列 $_{4}\mathrm{P}_{2}$ 通りを引くことによって
$_{5}\mathrm{P}_{3}-_{4}\mathrm{P}_{2}=\boldsymbol{48}$ 通り
$_{2}\mathrm{P}_{2}\cdot 3=\boldsymbol{6}$ 通り
順列~その3~
7つの整数 $1,2,3,4,5,6,7$ を1列に並べる.
- 6と7が隣り合うものは何通りあるか.
- 5と6と7が隣り合うものは何通りあるか.
- 両端が1と2になるものは何通りあるか.
- 隣り合う6と7の2つを合わせて1つのものとして考え,全体で6つのものの順列を考え
- 隣り合う5と6と7の3つを合わせて1つのものとして考え,全体で5つのものの順列を考え
- 両端には1と2の順列を考え2通り.
$6!$ 通り
このそれぞれに対して,6と7の並び方は,67と76の2通りあるので
$6!\times2=\boldsymbol{1440}$ 通り
$5!$ 通り
このそれぞれに対して,5と6と7の並び方は, $3!$ 通りあるので
$5!\times3!=\boldsymbol{720}$ 通り
このそれぞれに対して,両端でない文字は $5!$ 通りの並び方があるので
$5!\times2=\boldsymbol{240}$ 通り
吹き出し無題
ものを並べる問題で,“隣り合う”ものを考える場合には,その隣り合うものをひとまとめにして考えるとよい.
ボールと箱のモデル1
$_{5}\mathrm{P}_{3}$ の定義は
「区別する5個のものから3個とりだして1列に並べるときの並べ方の総数」
であったが,これは以下に示すボールと箱のモデルを使って
「区別する3個のボールを,区別する5個の箱に多くても1個配る場合の総数」
といいかえることができる.
準備として,ボールは区別するので番号をつけ,それを①,②,③とし, 箱も区別するので番号をつけ,それを
としておく.
まず,ボール①を箱に配ることを考えると,箱は5つあるので5通りの場合がある.
次に,ボール②を箱に配ることを考えると,すでにボール①は箱に配られていて 残りの箱は4つあるので,4通りの場合がある.
さらに,ボール③を箱に配ることを考えると,すでにボール①と②は 箱に配られていて残りの箱は3つあるので,3通りの場合がある.
以上から,ボールの箱への配り方は $5\times4\times3$ 通りあり,これは $_{5}\mathrm{P}_{3}$ と一致する.
一般に,次のようにまとめることができる.
順列 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ のボールと箱のモデル
順列 $_{n}\mathrm{P}_{r}$ はボールと箱のモデルを用いて
「区別する $r$ 個のボールを,区別する $n$ 個の箱に高々1個配る場合の総数」
と考えることができる.