重複試行
独立試行とは何か
独立事象で見たように, 硬貨投げの事象とさいころ投げの事象は互いに影響を及ぼさなかった.
一般に,試行 $T_1,T_2$ について,それぞれの結果の起こり方が互いに影響を与えないとき, この2つの試行は独立(independent)である, または独立試行(independent trials)であるという.
重複試行とその確率
「1つのさいころを続けて5回投げる」のように,互いに影響を与えない同じ試行を繰り返すとき, この一連の独立な試行のことを
暗記重複試行の確率
さいころを5回投げるとき,1の目が2回出る確率 $P_2$ を求めよ.
さいころを5回投げて2回だけ1の目が出るのは,表のように
\[_{5}\mathrm{C}_{2}=10通り\]あり,これらの事象 $A_1,A_2,\cdots,A_{10}$ は 互いに排反であるので, $P_2$ を求めるには $A_1,A_2,\cdots,A_{10}$ の確率をそれぞれ計算してそれらの和を求めればよい.
$\blacktriangleleft$ 表で $\bigcirc$ は1の目が出ることを表し、 $\times$ は1以外の目が出ることを表している.
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|}\hline 事象\setminus回&1&2&3&4&5\\\hline A_1&\bigcirc&\bigcirc&\times&\times&\times\\\hline A_2&\bigcirc&\times&\bigcirc&\times&\times\\\hline A_3&\bigcirc&\times&\times&\bigcirc&\times\\\hline A_4&\bigcirc&\times&\times&\times&\bigcirc\\\hline A_5&\times&\bigcirc&\bigcirc&\times&\times\\\hline A_6&\times&\bigcirc&\times&\bigcirc&\times\\\hline A_7&\times&\bigcirc&\times&\times&\bigcirc\\\hline A_8&\times&\times&\bigcirc&\bigcirc&\times\\\hline A_9&\times&\times&\bigcirc&\times&\bigcirc\\\hline A_{10}&\times&\times&\times&\bigcirc&\bigcirc\\\hline \end{array}今, $A_1$ の起こる確率 $P(A_1)$ は,各回の試行が独立であるから
\[P(A_1)=\frac{1}{6}\cdot\frac{1}{6}\cdot\frac{5}{6}\cdot\frac{5}{6}\cdot\frac{5}{6}=\left(\frac{1}{6}\right)^2\left(\frac{5}{6}\right)^3\]となる.
他の事象 $A_2,A_3,\cdots,A_{10}$ の起こる確率もそれぞれ $\left(\dfrac{1}{6}\right)^2\left(\dfrac{5}{6}\right)^3$ となるので,求める確率 $P_2$ は
\[P_2={_5}\mathrm{C}{_2}\left(\frac{1}{6}\right)^2\left(\frac{5}{6}\right)^3=\boldsymbol{\frac{625}{3888}}\]となる.
上記の例題において,1の目の出る回数 $x$ は $x=0,1,2,3,4,5$ のいずれかである.1の目が $x$ 回出る確率を $P_x$ で表すと, $P_2$ 以外も $P_2$ と同様に考えて
\begin{align} P_0=&{_5}\mathrm{C}{_0}\left(\frac{5}{6}\right)^5\\ P_1=&{_5}\mathrm{C}{_1}\left(\frac{1}{6}\right)^1\left(\frac{5}{6}\right)^4\\ P_2=&{_5}\mathrm{C}{_2}\left(\frac{1}{6}\right)^2\left(\frac{5}{6}\right)^3\\ P_3=&{_5}\mathrm{C}{_3}\left(\frac{1}{6}\right)^3\left(\frac{5}{6}\right)^2\\ P_4=&{_5}\mathrm{C}{_4}\left(\frac{1}{6}\right)^4\left(\frac{5}{6}\right)^1\\ P_5=&{_5}\mathrm{C}{_5}\left(\frac{1}{6}\right)^5 \end{align}となり,一般に次のことがいえるのがわかる.
重複試行の定理
ある試行において,事象 $A$ の起こる確率を $p$ ,その余事象 $\overline{A}$ の起こる確率を $q\ (=1-p)$ とすると,この試行を $n$ 回繰り返すとき,事象 $A$ が $x$ 回起こる確率は
\[{_n}\mathrm{C}{_x}p^xq^{n-x}\]となる.
重複試行の確率
$\bigcirc$ か $\times$ をつけて答える6題の問題に,でたらめに $\bigcirc$ か $\times$ をつけるとき,次の問に答えよ.
- 全部の解答が間違っている確率を求めよ.
- 3題だけが正解である確率を求めよ.
- 少なくとも2題が正解である確率を求めよ.
- 6題それぞれについて,間違う確率は $\dfrac{1}{2}$ だから,求める確率は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^6=\boldsymbol{\dfrac{1}{64}}$ となる.
- 6題のうち3題を何題目で間違うかには $_{6}\mathrm{C}_{3}$ 通りの場合があるから \[{_6}\mathrm{C}{_3}\left(\frac{1}{2}\right)^3\left(\frac{1}{2}\right)^3=\frac{5}{16} \]
- 「少なくとも2題が正解である」の余事象は「全部の解答が間違っているか,または1題だけが正解である」である. 全部の解答が間違っている確率は1. で求めたので,1題だけが正解である確率を以下で求める.
$\blacktriangleleft$ 重複試行の定理
6題のうち1題を何題目で正解するかは $_{6}\mathrm{C}_{1}$ 通りの場合があるから
\[{_6}\mathrm{C}{_1}\left(\frac{1}{2}\right)^1\left(\frac{1}{2}\right)^5=\frac{3}{32}\]$\blacktriangleleft$ 重複試行の定理
よって,求める確率は
\[1-\left(\frac{1}{64}+\frac{3}{32}\right)=\boldsymbol{\frac{57}{64}}\]