線形3項間漸化式の解法

線形3項間漸化式

次の問題について考えてみよう.

例題

$a_1=2,a_2=5,a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n\ (n\geqq1)$ で定まる数列 $\{a_n\}$ の一般項 $a_n$ を $n$ の式で表せ.

まず,上の式の $n$ に $n=1,2,3,4,5,6,\cdots,n$ を代入,具体的に数列を書き並べてみると

\begin{align} a_3&=5a_2-6a_1=5\times5-6\times2=13\\ a_4&=5a_3-6a_2=5\times13-6\times5=35\\ a_5&=5a_4-6a_3=5\times35-6\times13=97\\ a_6&=5a_5-6a_4=5\times97-6\times35=275\\ \vdots \end{align}

より

\begin{array}{c} n&:&1&2&3&4&5&6&\cdots&n\\ \{a_n\}&:&2&5&13&35&97&275&\cdots&\boxed{?} \end{array}

となるが,数列 $\{a_n\}$ は等差数列でも等比数列でもないので, $\boxed{?}$ の部分はすぐにはわからない.

等比数列の漸化式に帰着させる

(無題)

線形2項間漸化式のときのように線形3項間漸化式でも等比数列に帰着させて,一般項を求める方針で考えてみよう.

\begin{align} pa_{n+2}+qa_{n+1}+ra_n=0\tag{1}\label{touhisuretunikityaku1}\\ a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)\tag{2}\label{touhisuretunikityaku2} \end{align}

漸化式 $\eqref{touhisuretunikityaku1}$ を等比数列型漸化式 $\eqref{touhisuretunikityaku2}$ に変形することができれば,数列 $\{a_{n+1}-\alpha a_n\}$ の一般項を求めることができる.

なお, $\alpha,\beta$ を3項間漸化式における特性方程式の解と呼ぶ. $\alpha,\beta$ は次の方程式から求める.

\[px^2+qx+r=0\]

実際の解法は例題を使って確認しよう.

線形3項間漸化式の解法

例題

$a_1=2,a_2=5,a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n\ (n\geqq1)$ で定まる数列 $\{a_n\}$ の一般項 $a_n$ を $n$ の式で表せ.

漸化式 $a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$ は,方程式

\[x^2=5x-6\]

を満たす $x$ ,つまり

\begin{align} &x^2-5x+6=0\\ \Leftrightarrow\ &(x-2)(x-3)=0\\ \therefore\ &x=2,3 \end{align}

を用いて

\begin{align} a_{n+2}-2a_{n+1}=3(a_{n+1}-2a_n)\tag{1}\label{senkei3koukanzenkasikinokaihou1}\\ a_{n+2}-3a_{n+1}=2(a_{n+1}-3a_n)\tag{2}\label{senkei3koukanzenkasikinokaihou2} \end{align}

と2通りに変形できる.

  1. $\eqref{senkei3koukanzenkasikinokaihou1}$ について
  2. $b_n=a_{n+1}-2a_n$ とおくと,数列 $\{b_n\}$ は $b_{n+1}=3b_n$ を満たすので

    \begin{align} &b_n=b_1\cdot3^{n-1}\\ \Leftrightarrow\ &a_{n+1}-2a_n\\ &\qquad=(a_2-2a_1)3^{n-1}\\ \therefore\ &a_{n+1}-2a_n=3^{n-1}\tag{3}\label{senkei3koukanzenkasikinokaihou3} \end{align}

    $\blacktriangleleft$ 等比数列の一般項

  3. $\eqref{senkei3koukanzenkasikinokaihou2}$ について
  4. $c_n=a_{n+1}-3a_n$ とおくと,数列 $\{c_n\}$ は $c_{n+1}=2c_n$ を満たすので

    \begin{align} &c_n=c_1\cdot2^{n-1}\\ \Leftrightarrow\ &a_{n+1}-3a_n\\ &\quad=(a_2-3a_1)2^{n-1}\\ \therefore\ &a_{n+1}-3a_n=-2^{n-1}\tag{4}\label{senkei3koukanzenkasikinokaihou4} \end{align}

    $\blacktriangleleft$ 等比数列の一般項

    $\eqref{senkei3koukanzenkasikinokaihou3}-\eqref{senkei3koukanzenkasikinokaihou4}$ より

    \[a_n=3^{n-1}+2^{n-1}\]

解法をまとめておこう.

線形3項間漸化式の解法

$\text{STEP}1$

漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ から特性方程式 $x^2=px+q$ をつくる.

$\text{STEP}2$

特性方程式 $x=\alpha,\beta$ を利用して,漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ を

\begin{align} a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta (a_{n+1}-\alpha a_n)\\ a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha(a_{n+1}-\beta a_n) \end{align}

と2通りに変形する.

$\text{STEP}3$

$b_n=a_{n+1}-\alpha a_n,c_n=a_{n+1}-\beta a_n$ とおき,2本の漸化式を書き換えて

\begin{align} b_{n+1}=\beta b_n\\ c_{n+1}=\alpha c_n \end{align}

等比数列の一般項の公式を使い,数列 $\{b_n\},\{c_n\}$ の一般項を求める.

\begin{align} b_n=b_1\beta^{n-1}\\ c_n=c_1\alpha^{n-1} \end{align}

$\text{STEP}4$

置き換えた数列をもとに戻して

\begin{align} a_{n+1}-\alpha a_n=(a_2-\alpha a_1)\beta^{n-1}\\ a_{n+1}-\beta a_n=(a_2-\beta a_1)\alpha^{n-1} \end{align}

$a_{n+1}$ を消すため,辺々引き算する.

\begin{align} &-\alpha a_n-(-\beta a_n)\\ &\quad=(a_2-\alpha a_1)\beta^{n-1}-(a_2-\beta a_1)\alpha^{n-1}\\ \Leftrightarrow\ &(\beta-\alpha)a_n\\ &\quad=(a_2-\alpha a_1)\beta^{n-1}-(a_2-\beta a_1)\alpha^{n-1} \end{align}

$\text{STEP}5$

$a_n$ について解けば完成.

\[a_n=\frac{a_2-\alpha a_1}{\beta-\alpha}\beta^{n-1},b_n=\frac{a_2-\beta a_1}{\beta-\alpha}\alpha^{n-1}\]

線形3項間漸化式を解くのに,特性方程式 $x^2=px+q$ を使うとよいのはわかったが,この特性方程式はいったいどのような考え方からくるのだろうか.ここでは,それを検証する.

線形3項間漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ を解くために,「等比数列に帰着させる」ことを考えていた.等比数列に帰着させるためには,適当な数 $\alpha,\beta$ を用いて,線形3項間漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ を

\[a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)\tag{1}\label{henkeigo}\]

と変形したい.なぜなら,このように変形できれば,数列 $\{a_{n+1}- a_n\}$ は等比数列になるからである.

では,このような $\alpha,\beta$ はどのように求めればよいのかというと, $\eqref{henkeigo}$ を展開・整理した式

\[a_{n+2}=(\alpha+\beta)a_{n+1}-\alpha\beta a_n\]

と,もともとの漸化式

\[a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n\]

の係数を比較して

\begin{align} \alpha+\beta&=p\\ \alpha\beta&=-q \end{align}

を満たすような $\alpha,\beta$ であればよい.

このような $\alpha,\beta$ を求めるためには,解と係数の関係の逆より

\[x^2-px-q=0\]

という2次方程式を解けばよい.

ここで,この方程式を解くのではなく,変形すると

\[x^2=px+q\]

となるが,これは線形3項間漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の $a_{n+2}$ を $x^2$ , $a_{n+1}$ を $x$ , $a_n$ を1に形式的に置き換えたものに他ならない.そして,この方程式を特性方程式と名付けるのである.

結局,線形3項間漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ は,特性方程式 $x^2=px+q$ の解 $\alpha,\beta$ を用いて

\[a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)\]

と変形され,等比数列に帰着されるのである.