一般の命題の数学的帰納法
一般の命題の数学的帰納法
一般の命題の場合でも,その命題を等式で表してやれば,等式の数学的帰納法と同様になる.
基本的な数学的帰納法~その3~
2以上の自然数 $n$ において
$p$ の整式 $p^n+(1-p)n-1$ は $(1-p)^2$ で割りきれる $\tag{1}\label{meidainokinoho1}$
ことを証明せよ.
- $n=1$ のとき \begin{align} &p^2+(1-p)\cdot2-1\\ =\ &p^2-2p+1\\ =\ &(1-p)^2 \end{align}
- $n=m$ のとき( $m$ はある自然数とする) $\eqref{meidainokinoho1}$ が成り立つと仮定する,つまり \begin{align} &p^m+(1-p)m-1\\ &\qquad\qquad=(1-p)^2Q(p)\tag{2}\label{meidainokinoho2} \end{align}
となるので,確かに $\eqref{meidainokinoho1}$ は成り立つ.
を満たす $p$ の整式 $Q(p)$ が存在すると仮定する.
$\blacktriangleleft$ 一般に,「整式 $f(x)$ が $(1-p)^2$ で割りきれる」とは $f(x)=(1-p)^2Q(x)$ となるような整式 $Q(x)$ が存在することである
このとき, $\eqref{meidainokinoho1}$ で $n=m+1$ とおいた等式
\begin{align} &p^{m+1}+(1-p)(m+1)-1\\ &\qquad\qquad\qquad=(1-p)^2R(p)\tag{3}\label{meidainokinoho3} \end{align}を満たす $p$ の整式 $R(p)$ が存在することを以下に示す.
仮定 $\eqref{meidainokinoho2}$ を使えるような形をうまくつくる
\begin{align} &(\eqref{meidainokinoho3}の左辺)\\ =&p\cdot p^m+m+1-pm-p-1\\ =&p\cdot p^m+m-pm-p\\ =&p\{\underbrace{p^m+(1-p)m-1}_{\eqref{meidainokinoho2}の左辺を強引につくる}\}\underbrace{-p\{(1-p)m-1\}}_{ずれた分のつじつま合わせ}\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad+m-pm-p\\ =&p(1-p)^2Q(p)-mp(1-p)\\ &\qquad+p+m-pm-p\quad\because{\eqref{meidainokinoho2}}\\ =&p(1-p)^2Q(p)-pm+mp^2+m-pm\\ =&p(1-p)^2Q(p)+m(p^2-2p+1)\\ =&p(1-p)^2Q(p)+m(1-p)^2\\ =&(1-p)^2(pQ(p)+m)\\ &\uparrow共通因数(1-p)^2でくくった \end{align}$Q(p)$ は整数だから $pQ(p)+m$ も整式となり,これを $R(p)$ とおくと
\begin{align} &(\eqref{meidainokinoho3}の左辺)\\ =&(1-p)^2R(p)\\ =&(\eqref{meidainokinoho3}の右辺)\\ \end{align}よって, $n=m$ のとき $\eqref{meidainokinoho1}$ が成り立つと仮定すれば, $n=m+1$ の場合も $\eqref{meidainokinoho1}$ が成り立つことがいえた.
1. 2. によって,数学的帰納法からすべての自然数 $n$ について, $\eqref{meidainokinoho1}$ は成り立つ.