数学II 第1章 式と証明 — 多項式の除法
多項式の除法の基本定理
整数の割り算(多項式の除法)
まず,小学校以来慣れ親しんできた,整数の除法(integer division)について復習する.
たとえば,右図のような計算により,
となる.
このとき,
(割られる数)
また,(割る数)
整数の除法とは何か,つまり整数
を満たす整数

注 普段割り算で行う筆算は,この
や を求めるための手段に過ぎない.
多項式の次数の表し方
まず,多項式の次数を表す記号を定義しておこう.
多項式
たとえば,
多項式の除法について
整数の除法に続き,今度は多項式の除法(polynomial division)について考えてみる.
たとえば,「
と変形することであると定義する. ただし,このとき
多項式
と変形できたとき,
特に,余り
さきほどの例では,商
となる.各自,以下の2点について確認しておこう.
- 上の式の右辺を展開すると左辺と等しいこと
の次数が余りの次数より大きいこと
以下では,多項式の除法の計算方法についてみていく.
多項式の除法の計算方法
多項式の除法の計算方法
ここでは,
解答を見る
STEP1
まず,整数の割り算と同じように,下図のように書いておく.この例題では,割られる多項式には

STEP2

STEP3
下図のようにして,

STEP4
STEP2と同じように,

STEP5
同じように,

STEP6
最下段の

この結果から
となることがわかり,商は
多項式の除法の計算方法
慣れてきたら
や などを省略し,係数だけを並べて筆算するとよい. 上の計算では次のようになる. 多項式の除法の一意性の図
解答を見る
STEP1
まず,右辺を展開したときに
STEP2
このままでは,右辺の
STEP3
しかし,このままでは,右辺の
STEP4
しかし,このままでは,右辺の
STEP5
最後に,右辺の定数項
この結果から,商は
多項式の除法の計算方法
以上2つの方法を見てきたが,慣れると『暗算形式』の方が『筆算形式』より素早く計算できる. 多項式の係数に分数が含まれる場合など,暗算での計算が難しくなる場合には『筆算形式』を使うとよい.
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの,商と余りを求めよ.
解答を見る
計算すると(筆算形式は下図を参照)
となるので,商は
,余りはである. 
多項式の除法~その1~の解答の図その1 計算すると(筆算形式は下図を参照)
となるので,商は
,余りはである. 
多項式の除法~その1~の解答の図その2 計算すると(筆算形式は下図を参照)
となるので,商は
,余りは である.
多項式の除法~その1~の解答の図その3 計算すると(筆算形式は下図を参照)
となるので,商は
,余りは である.
多項式の除法~その1~の解答の図その4
で割ると,商が ,余りが になる多項式を求めよ. を割ると,商が ,余りが になる多項式を求めよ.
解答を見る
求める多項式を
とすると,商が ,余りが であるから多項式の除法~その2~の解答の図 求める多項式を
とおくと であるから,求める多項式は
である.
多項式の除法の一意性
ここまで計算してきた経験から,多項式の除法では,商や余りが必ず存在し,さらにそれらが一通りに定まることは明らかであろう.
一般に,ある定義で定められたものがただ一通りに定まることを一意性(uniqueness)という .次に,多項式の除法の一意性について,まとめておこう.
注 たとえば,1次方程式
の解は1つしかないので,「1次方程式の解は一意的に定まる」などと使う.
多項式
を満たす多項式
ただ一通りに
存在する.
【証明:背理法】
【証明:背理法】
多項式
と2通りに表されたとする.
となる.
また,このとき③の左辺は
以上より,商と余りが一致することが示されたので,多項式の除法の商と余りは一通りに定まることが証明された.
1次の多項式の除法の計算方法
1次の多項式の除法の計算方法
多項式の除法において,特に1次式で割る場合には,前節で紹介した2つの方法以外にも, 覚えておきたい計算方法が2つある.
組立除法
ここでは,
ここではまず,組立除法(synthetic division)という計算方法について学ぶ.
と表せるが,右辺を展開して整理すると

となるので,両辺の係数を比較することにより
が成り立つ.
これから,
と計算できる.
この計算の手順は,右上の図のように考えればよい.

たとえば,
商は
と求まる.
解答を見る
組立除法を実行すると

となるので,商は
で展開するということ
x−a で展開するということ
たとえば,多項式
のように表すことができる(右辺を展開して左辺と等しくなることを確かめてみよ). このような変形を行ったとき,右辺のような形の式のことを
このように変形するには,次の手順を踏めばよい.
STEP1
まず,
STEP2
次に,
STEP3
最後に,同類項どうしで整理する.
このような変形を利用して,1次式の割り算を考えることもできる.
解答を見る
まず,
次に,この式を
最後に,中括弧の中を展開すると
となるので,結局
と変形できる.
多項式の除法の一意性 より,(
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの,商と余りを 組立除法と
, , , ,
解答を見る
【解1:組立除法】
組立除法を行うと

多項式の除法(再)の解答の図その1 となるので,商は
,余りはである. 【解2:
で展開する方法】となるので,商は
,余りはである. 【解1:組立除法】
組立除法を行うと

多項式の除法(再)の解答の図その2 となるので,商は
,余りはである. 【解2:
で展開する方法】となるので,商は
,余りはである. 【解1:組立除法】
組立除法を行うと

多項式の除法(再)の解答の図その3 となるので,商は
,余りはである. 【解2:
で展開する方法】となるので,商は
,余りはである. 【解1:組立除法】
組立除法を行うと

多項式の除法(再)の解答の図その4 となるので,商は
,余りはである 【解2:
で展開する方法】となるので,商は
,余りはである.
剰余の定理と因数定理
剰余の定理
多項式
たとえば,
である.
注 この表し方は\FTEXT 数学Iで,関数の表し方として学んだ. 多項式polynomialの頭文字をとり
で表すこともある.
を で割ったときの余りを求めよ. の値を計算せよ.
解答を見る
割り算を実行すると
組立除法を使うなら図 となるので,余りは
である.
上の例題では,
多項式
が成り立つ.この式に
となり,
多項式
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの余りだけ求めよ(商は求めなくてよい).
, , , ,
解答を見る
- 剰余の定理より,
- 剰余の定理より,
- 剰余の定理より,
- 剰余の定理より,
剰余の定理
余りを求めるだけならば剰余の定理が大変な威力を発揮する.
多項式
解答を見る
この式の
となり,
多項式
次の各問に答えよ.
- 多項式
を で割ると 余り, で割ると 余る. を で割ったときの余りを求めよ. - 多項式
を で割ると 余り, で割ると余る. を で割ったときの余りを求めよ. - 多項式
を で割ると 余り, で割ると余る. を で割ったときの余りを求めよ.
解答を見る
【解1:除法の式を変形して解く】
を で割ったときの商を とすると,余りが だから 多項式の除法の一意性より とおける.さらに,
を で割ったときの商を ,余りを とすると であるここで,剰余の定理より
を使ったとなる.よって,求める余りは
である.【解2:余りの多項式をおく】
を で割ったときの,商を,余りを とすると多項式の除法の一意性より である.ここで,剰余の定理より
を使った を使ったこれを解くと
であるから,求める余りは, である.【解1:除法の式を変形して解く】
を で割ったときの商をとすると,余りが だから 多項式の除法の一意性より とおける.さらに,
を で割ったときの商を ,余りを とすると である.である.ここで,剰余の定理より
を使ったとなる.よって,求める余りは
である.【解2:余りの多項式をおく】
を で割ったときの,商を,余りを とすると多項式の除法の一意性より ここで,剰余の定理より
なので, , を使った を使った を使ったこれを解くと
であるから,求める余りは, , である.【解1:除法の式を変形して解く】
を で割ったときの商をとすると,余りが だから 多項式の除法の一意性より とおける.さらに,
を で割ったときの商を ,余りを とおくと, であるここで,剰余の定理より
を使ったであるから,求める余りは
である.【解2:余りの多項式をおく(微分法を使う)】
を で割ったときの商をとすると,余りが だから 多項式の除法の一意性より とおける.この式を
で微分すると 微分の計算法則の関数の積の微分法を使った は多項式なので,これをとおくと いま,
を でわったときの商を,余りを とおくと, を因数に持つ多項式であるから
を使った さらに,剰余の定理より
を使った を使ったこれを解くと
であるから,求める余りは, , である.
因数定理
多項式
が成り立つ.この式に
となり,
特に,
と表すことができる. さらにいいかえるならば,
「
この因数定理(factor theorem)を利用して,多項式の因数分解をすることができる. 次の例題で具体的にみていこう.
因数定理を利用して,次の式を因数分解せよ.
解答を見る
とおく.
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図
2.
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図
3.
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図

さらに,
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図

より,
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図

さらに,
であるから,因数定理より
よって説明文
組立除法を使うなら図

より,
多項式
係数
に対し,既約分数
である(ただし,約数には負の数も含めるとする).
この定理の証明は多項式の因数を見つけるための定理を参照のこと.
因数定理
は (定数項の約数) (最高次の係数の約数)と覚えるとよい.
たとえば,
と,これらにマイナスをつけた数がある.
これらを順に
などと調べていくと,
と因数分解できる.
次の多項式を因数分解せよ
解答を見る
とおくと となるの候補は がある
であるから
は判別式の値が負となるので,これ以上因数分解できない
となる.
2.
となる の候補は
がある
であるから
となる.また,
となる.
多項式の約数と倍数
多項式の約数と倍数について
多項式
となる多項式
という
たとえば,
公約数・公倍数
いくつかの多項式に共通な約数を,それらの多項式の公約数(common divisor)といい, 公約数の中で次数の最も高いものを最大公約数(greatest common divisor)という.
また,いくつかの多項式に共通な倍数を,それらの多項式の公倍数(common multiple)といい, 公倍数の中で次数の最も低いものを最小公倍数(least common multiple)という.
次の各組の多項式の最大公約数と最小公倍数を求めよ. ただし,答えの式は展開しなくてもよい.
解答を見る
なので,最大公約数は ,
最小公倍数は
分数式の計算
分数式とは何か
たとえば
などは,どれも分数式である.
多項式と分数式を合わせて,有理式(rational expression)という.
分数式では,普通の分数と同じように,分母,分子に
分数式
ただし,
これらの変形を行えば,普通の分数と同じように約分(reduction of fraction to its lower terms)や通分(reduction fractions to common denominator)ができる.
次の分数式を約分せよ.
解答を見る
実際に約分をすると
分子を因数分解すると
分母・分子を因数分解すると
分母・分子を因数分解すると
分数式の分母と分子に共通な因数がないとき,この分数式は既約(irreducible)であるという.
分数式の乗法と除法
分数式の乗法と除法は,普通の分数の場合と同じように,次の規則にしたがって計算する.
たとえば
と計算することができる.
次の式を計算せよ.
解答を見る
分数式の加法と減法
分数式の加法と減法は,普通の分数の場合と同じように,次の規則にしたがって計算する.
分母が異なる分数式どうしは,通分してから計算する.
たとえば
と計算することができる.
次の式を計算せよ.
解答を見る
次の式が恒等式となるように,定数
解答を見る
両辺に,
を掛けるととなる.
両辺に
を代入すると両辺に
を代入すると両辺に
を代入すると を用いた, 両辺に,
を掛けるととなる.
両辺に
を代入すると両辺に
を代入すると両辺に
を代入すると
元記事: http://www.ftext.org/text/section/108(取得日 2026-08-07)
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