等式の証明

式$2x+y$と$x+y+x$は形は違えども、$x$や$y$がどのような値をとっても式の値は等しくなる。このように式の形が異なっていても、その値は同じになるとうことを示すには、証明というステップを踏む必要がある。以下では、ある式とある式が等しいことを示す、『等式の証明』に関して考えていこう。

恒等式

多項式とはなんであったか

FTEXT 数学Iで学んだように,いくつかの単項式の和や差として表される式を多項式(polynomial) といった. たとえば, $4x^2 − 3x + 5$ は,$x$ の2次多項式である. この式の $x$ にはさまざまに変化する値が代入されると想定されるが,このような $x$ を 変数(variable)と呼ぶ. それに対して,この式の $4$ や $− 3$ や $5$ のように,一定の値のまま変化しないものを 定数(constant)と呼ぶ.

これらの言葉をつかうと,定数 $a_0,~ a_1,~\cdots,~ a_n$ を係数とする変数 $x$ の式

\[a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0\]

を $x$ の多項式と定義できる。

多項式の相等

$2 + 3 = 5$ という等式は, $2 + 3$ という数が $5$ という数と等しいという,関係を表したものである. この例は数の関係を表したものであるが, 関係はなにも数に限ったことではなく,多項式についても同様に関係を表すことができる. 多項式と多項式の関係の1つである,多項式の相等を以下に定義しておこう.

多項式の相等

2つの$n$次多項式 $f(x),g(x)$

\[f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0\] \[g(x)=b_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+b_1x+b_0\]

において,すべての係数が等しい,すなわち

\[a_n=b_n,~a_{n-1}=b_{n-1},~\cdots\] \[\qquad\qquad,~a_1=b_1,~a_0=b_0\]

が成り立つとき, $f(x)$ と $g(x)$ は多項式として等しいという.

たとえば,多項式 $f(x) = 3x^2 − 4x + 7$ と多項式 $g(x) = 3x^2 − 4x + 7$ は, すべての係数が等しいので,多項式として等しいといえる. しかし,多項式 $h(x) = 3x^2 − 5x + 7$ は,すべての係数が等しいわけではないので, 多項式として等しいとはいえない.

恒等式とは何か

式 $x^2 = − x + 2$ は $x = 1$ または $x = − 2$ のとき成り立つ等式である. このように,特別な値を入れたときだけ成り立つ等式を方程式(equation)という.

これに対して,式 $x^2 − x = x(x − 1)$ のように, $x$ にどのような値を代入しても成り立つ等式のことを 恒等式こうとうしき(identity)である.

値を代入する文字,すなわち変数は1つとは限らない. たとえば, $(x − y)(x + y) = x^2 − y^2$ は, $x,y$ にどのような値を代入しても成り立つので恒等式と考える.

恒等式の定義

ある等式において,その変数にどのような値を代入しても, 常に等式が成り立つとき,その等式をそれらの文字についての恒等式(identity)という.

一般に,式の変形によって導かれる等式は,どれも恒等式である. たとえば, $(x − 1)(x − 3)$ を展開すると $x^2 − 4x + 3$ となるので,等式

\[(x-1)(x-3)=x^2-4x+3\]

は恒等式である.

恒等式〜その1〜

次の等式のうち,恒等式はどれか.

  1. $(x+3)(x+1)-5(x+1)$
    $\qquad\qquad\qquad=(x-2)(x+1)$
  2. $(x+y)(x-y)+x^2+2x=(x+y)^2$
  3. $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x+1}=\dfrac{1}{x(x+1)}$

  1. 左辺を展開すると

    (左辺)

    \begin{eqnarray} &=&x^2+4x+3-5x-5\\ &=&x^2-x-2\\ &=&(x-2)(x+1)= \end{eqnarray}

    (右辺)

    ゆえに,

    恒等式である.

  2. 両辺に, $x = 1,y = 0$ を代入すると

    ← $x = 1,y = 0$ はひとつの例である

    (左辺) $=(1+0)(1-0)$
    $\qquad\qquad+1^2+2\cdot 1=4$

    (右辺) $=(1+0)^2=1$

    左辺の値と右辺の値が異なるので

    恒等式ではない.

  3. 両辺に, $x = 1$ を代入すると

    ← $x = 1$ はひとつの例である

    (左辺) $=\dfrac{1}{1}+\dfrac{1}{1+1}=\dfrac{3}{2}$

    (右辺) $=\dfrac{1}{1(1+1)}=\dfrac{1}{2}$

    左辺の値と右辺の値が異なるので

    恒等式ではない.

    以上から,恒等式は

    1.

    である.

多項式が恒等的に0になる条件

$a_0,a_1,a_2$ を定数とするとき,等式 $a_2x^2+a_1x+a_0=0$ が $x$ についての恒等式となるのは, 係数 $a_0,a_1,a_2$ にどのような条件が備わっているときなのか調べてみる.

$a_2x^2+a_1x+a_0=0$ が $x$ についての恒等式であるならば, $x$ にどのような値を代入しても,この等式は成り立つので, たとえば, $x=-1,x=0,x=1$ をそれぞれ代入すると

\begin{cases} a_2-a_1+a_0=0 \\ a_0=0 \\ a_2+a_1+a_0=0 \end{cases}

が必要であり,この連立方程式を解くと

\[a_2=a_1=a_0=0\]

となる(下の $\Longrightarrow$ の証明). 逆に, $a_2=a_1=a_0=0$ とすると,等式$a_2x^2+a_1x+a_0=0$ は明らかに $x$ についての恒等式となる(下の $\Longleftarrow$ の証明).

以上より,次のことが成り立つ.

「 $a_2x^2+a_1x+a_0=0$ が $x$ についての恒等式である」 $\Longleftrightarrow a_2=a_1=a_0=0$

この例では2次式の等式について考えたが,一般に,同類項を整理した後の多項式について,次のことが成り立つ.

多項式が恒等的に$0$になる条件

多項式 $f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots$
$\qquad\qquad\qquad\qquad+a_1x+a_0$ において

\[f(x)=0\]

が恒等式となるのは, $f(x)$ の各項の係数がすべて $0$ になる,すなわち

\[a_n=a_{n-1}=\cdots=a_1=a_0=0\]

のときである.

この証明は,付録多項式が恒等的に $0$ になる条件の証明で行う.

吹き出し多項式が恒等的に0になる条件

この証明は,このあと習う知識を必要とし,しかも少々難しいので,初読の際には読み飛ばしてよい.

暗記多項式の恒等式

2つの $n$ 次の多項式 $f(x),g(x)$ をそれぞれ

\[f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots\]\[\qquad\qquad\qquad\qquad+a_1x+a_0\] \[g(x)=b_nx^n+b_{n-1}x^{n-1}+\cdots\]\[\qquad\qquad\qquad\qquad+b_1x+b_0\]

とおく.このとき,等式

\[f(x)=g(x)\]

が恒等式となるのは, $f(x)$ と $g(x)$ が多項式として等しいとき,すなわち

\[a_n=b_n~,~~a_{n-1}=b_{n-1}~,~~\cdots\] \[~,~~a_1=b_1~,~~a_0=b_0\]

が成り立つときであることを上の多項式が恒等的に $0$ になる条件を使い証明せよ.

等式 $f(x) = g(x)$ が恒等式であることと,等式 $f(x) − g(x) = 0$ が恒等式であること,すなわち

\[(a_n-b_n)x^n+(a_{n-1}-b_{n-1})x^{n-1}+\cdots\] \[\qquad\qquad+(a_1-b_1)x+a_0-b_0=0\]

が恒等式となることとは同値である.

←このあとすぐに習う『等式の証明について』の知識を使った

この恒等式が成り立つのは,多項式が恒等的に $0$ になる条件より

\[a_n-b_n=0~,~~a_{n-1}-b_{n-1}=0~,~~\cdots~\] \[\qquad\qquad,~~a_{1}-b_1=0~,~~a_0-b_0=0\]

すなわち

\[a_n=b_n~,~~a_{n-1}=b_{n-1}~,~~\cdots\] \[~,~~a_1=b_1~,~~a_0=b_0\]

が成り立つときである.

この例題の内容をまとめると,次のようになる.

多項式の相等と恒等式

$f(x),g(x)$ を多項式とするとき

\[f(x)=g(x)\]

が恒等式となるのは, $f(x)$ と $g(x)$ の次数が等しく,両辺の同じ次数の項の係数がそれぞれ等しいとき,すなわち 多項式として等しいときである.

このことから, $x$ の多項式 $f(x),g(x)$ についての等式 $f(x)=g(x)$ が恒等式となるための条件として,

i) $x$ に具体的な値を代入して両辺が等しくなる(代入法)

ii)左右両辺の同じ次数の係数が等しくなっている(係数比較法)

上記のいずれの条件でもよいことがわかる.

以下では,この2つを活用して,恒等式を求めてみよう.

恒等式〜その2〜

次の等式が恒等式となるように,定数 $a,b,c,d$ の値を定めよ.

  1. $x^2+3x=ax^2+bx+c$
  2. $x^2=a(x-1)^2+b(x-1)+c$
  3. $x^2=ax(x+1)+b(x-1)+c$
  4. $x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2$
    $\qquad\qquad\quad+c(x-1)+d$
  5. $x^3=ax(x+1)(x+2)$
    $\qquad+bx(x+1)+cx+d$

  1. 両辺の $x^2$ の係数を比較すると, $\boldsymbol{a=1}$ である.

    両辺の $x$ の係数を比較すると, $\boldsymbol{b=3}$ である.

    両辺の定数項を比較すると, $\boldsymbol{c=0}$ である.

  2. 両辺の $x^2$ の係数を比較すると, $\boldsymbol{a=1}$ である.

    $x = 1$ を代入すると

    ←右辺には $x − 1$ という形の式があるので, $x = 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&1^2=1(1-1)^2+b(1-1)+c\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{c=1} \end{eqnarray}

    また, $x = 0$ を代入すると

    ← $0$ 以外の数でもかまわないが,一番計算が簡単にできる $0$ を使った

    \begin{eqnarray} &&0^2=1(0-1)^2+b(0-1)+1\\ &&\Leftrightarrow~0=1-b+1\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{b=2} \end{eqnarray}
  3. 両辺の $x^2$ の係数を比較すると, $\boldsymbol{a=1}$ である.

    $x = 1$ を代入すると

    ←右辺には $x − 1$ という形の式があるので,$x = 1$を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&1^2=1\cdot1(1+1)+b(1-1)+c\\ &&\Leftrightarrow~2+c=1\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{c=-1} \end{eqnarray}

    また, $x = − 1$ を代入すると

    ←右辺には $x + 1$ という形の式があるので, $x = − 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&(-1)^2=1(-1)(-1+1)\\ &&\qquad+b(-1-1)-1\\ &&\Leftrightarrow~-2b-1=1\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{b=-1} \end{eqnarray}
  4. 両辺の $x^3$ の係数を比較すると, $a=\boldsymbol{1}$ である.

    $x = 1$ を代入すると

    ←右辺には $x − 1$ という形の式があるので, $x = 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&1^3=a(1-1)^3+b(1-1)^2\\ &&\qquad+c(1-1)+d\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{d=1} \end{eqnarray}

    右辺を展開すると

    (右辺)

    \begin{eqnarray} &&=1(x^3-3x^2+3x-1)\\ &&\quad+b(x^2-2x+1)+cx-c+1 \\ &&=x^3+(b-3)x^2\\ &&\quad+(-2b+c+3)x-c \end{eqnarray}

    $x^2$ と $x$ の項の係数を比較すると

    \begin{cases} b-3=0\\ -2b+c+3=0 \end{cases}

    この連立方程式を解くと, $\boldsymbol{b=3},\boldsymbol{c=3}$ となる.

    【別解:微分法を用いる】

    $x = 1$ を代入すると

    ←右辺には $x − 1$ という形の式があるので, $x = 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&1^3=a(1-1)^3+b(1-1)^2\\ &&\qquad+c(1-1)+d\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{d=1} \end{eqnarray}

    与式の両辺を微分すると

    $3x^2=3a(x-1)^2$
    $\qquad+2b(x-1)+c\tag{1}\label{takousikisono21}$

    これに $x = 1$ を代入すると

    ←右辺には $x − 1$ という形の式があるので, $x = 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    $3\cdot 1^2=3a(1-1)^2+2b(1-1)+c$

    $\Leftrightarrow~\boldsymbol{c=3}$

    $\eqref{takousikisono21}$の両辺をさらに微分すると

    $6x=6a(x-1)+2b\tag{2}\label{takousikisono22}$

    これに$x = 1$を代入すると

    ←右辺には$x − 1$という形の式があるので,$x = 1$を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&6\cdot 1=6a(1-1)+2b\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{b=3} \end{eqnarray}

    $\eqref{takousikisono22}$の両辺をさらに微分すると

    \[6=6a\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=1}\]
  5. 右辺の $x^3$ の係数は $a$ なので, $\boldsymbol{a=1}$ である.

    $x = 0$ を代入すると

    \[\boldsymbol{d=0}\]

    また, $x = − 1$ を代入すると

    ←右辺には $x + 1$ という形の式があるので, $x = − 1$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&(-1)^3=1(-1)(-1+1)(-1+2)\\ &&\qquad+b(-1)(-1+1)+c(-1)+0\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{c=1} \end{eqnarray}

    さらに, $x = − 2$ を代入すると

    ←右辺には $x + 2$ という形の式があるので, $x = − 2$ を代入することで不明な文字が少ない式をたてることができる

    \begin{eqnarray} &&(-2)^3=1(-2)(-2+1)(-2+2)\\ &&\qquad+b(-2)(-2+1)+1(-2)+0\\ &&\Leftrightarrow~\boldsymbol{b=-3} \end{eqnarray}

【恒等式〜その3〜】

$k$ が任意の値をとるとき,常に次の等式が成り立つように, $x,y$ の値を求めよ.

\[(2k-1)x+(k-1)y-k+3=0\]

左辺を展開し, $k$ についてまとめると

\[(2x+y-1)k-x-y+3=0\]

これが $k$ がいかなる値でも成り立つのは

\begin{cases} 2x+y-1=0 \\ -x-y+3=0 \end{cases}

のとき.

← $(2x+y-1)k-x-y+3=0\cdot k+0$ と考えて両辺の係数を比較した

この連立方程式を解くと $\boldsymbol{x=-2},\boldsymbol{y=-5}$ である.

2つ以上の変数に関する恒等式

$a,b,c,d,e,f$ を定数とするとき

\[ax^2+by^2+cxy+dx+ey+f=0\]

が $x,y$ についての恒等式であるとき,係数にはどのような関係が成り立つのか考えてみる.

まず,左辺を $x$ について整理すると

\[ax^2+(cy+d)x+(by^2+ey+f)=0\]

となるが,まず $x$ についての恒等式であるから,多項式が恒等的に $0$ になる条件より次のことが成り立つ.

\[a=0~,~~cy+d=0~,~~by^2+ey+f=0\]

また,これらが $y$ についての恒等式でもあるから,結局得られるのは

\[a=0~,~~b=0~,~~c=0\] \[~,~~d=0~,~~e=0~,~~f=0\]

となる.

一般に,次にようにまとめることができる.

2つ以上の文字に関する恒等式

複数の変数に関する等式が恒等式となる条件は,同類項でまとめたあとの各項の係数がすべて $0$ になることである.

等式の証明について

等式の証明を考える

恒等式 $A = B$ を証明するには, $A$ か $B$ の一方を変形して,他方を導けばよい.

たとえば

\[(x^2+x+1)(x^2-x+1)\] \[=x^4+x^2+1\]

を証明するには

\begin{eqnarray} \text{(左辺)}&=&(x^2+x+1)(x^2-x+1)\\ &=&x^4-x^3+x^2+x^3\\ &&-x^2+x+x^2-x+1\\ &=&x^4+x^2+1\\ &=&\text{(右辺) } \end{eqnarray}

とすればよい.

しかし,問題によっては $A = B$ と同値である

  1. $A = C$ かつ $B = C$
  2. $A − B = 0$

などの等式を証明する方が簡単なときもあるので,適宜使い分ける.

等式の証明〜その1〜

以下の等式を証明せよ.

  1. $(x+y)^2-(x-y)^2=4xy$
  2. $(a^2-b^2)(c^2-d^2)$
    $=(ac+bd)^2-(ad+bc)^2$
  3. $(x^3+1)(x^2+x+1)$
    $=(x+1)(x^4+x^2+1)$

  1. 左辺を展開し整理すると

    (左辺)

    \begin{eqnarray} &&=x^2+2xy+y^2-(x^2-2xy+y^2)\\ &&=4xy= \end{eqnarray}

    (右辺)

    となる.

  2. 両辺をそれぞれ展開し整理すると

    (左辺)

    \[=a^2c^2-a^2d^2-b^2c^2+b^2d^2\]

    (右辺)

    \begin{eqnarray} &&=a^2c^2+2abcd+b^2d^2\\ &&\qquad\qquad-(a^2d^2+2abcd+b^2c^2)\\ &&=a^2c^2-a^2d^2-b^2c^2+b^2d^2 \end{eqnarray}

    よって,(左辺) $=$ 右辺)がいえる.

    ←「 $A = C$ かつ $B = C$ 」ならば「 $A = B$ 」という論法を使った}

  3. 左辺を変形して

    (左辺)

    \begin{eqnarray} &&=(x+1)(x^2-x+1)(x^2+x+1)\\ &&=(x+1)\{(x^2+1)^2-x^2\}\\ &&=(x+1)(x^4+x^2+1)= \end{eqnarray}

    (右辺)

    となる.

等式の証明〜その2〜

以下の等式を証明せよ.

  1. $\dfrac{1}{x+2}+\dfrac{1}{x-2}=\dfrac{2x}{x^2-4}$
  2. $\dfrac{1}{x+1}+\dfrac{1}{y+1}$
    $\qquad=\dfrac{1-xy}{(x+1)(y+1)}+1$
  3. $\dfrac{2}{x+2}-\dfrac{1}{x+3}$
    $\qquad+\dfrac{x}{(x+2)(x+3)}=\dfrac{2}{x+3}$

  1. 左辺を通分して計算していくと

    (左辺)

    $=\dfrac{x-2}{(x+2)(x-2)}+\dfrac{x+2}{(x+2)(x-2)}$

    $=\dfrac{x-2+x+2}{(x+2)(x-2)}=\dfrac{2x}{x^2-4}=$

    (右辺)

    となる.

  2. 両辺をそれぞれ通分して計算していくと

    (左辺)

    $=\dfrac{y+1}{(x+1)(y+1)}+\dfrac{x+1}{(x+1)(y+1)}$

    $=\dfrac{x+y+2}{(x+1)(y+1)}$

    (右辺)

    $=\dfrac{1-xy}{(x+1)(y+1)}+\dfrac{(x+1)(y+1)}{(x+1)(y+1)}$

    $=\dfrac{1-xy+xy+x+y+1}{(x+1)(y+1)}$

    $=\dfrac{x+y+2}{(x+1)(y+1)}$

    よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.

  3. 左辺を通分して計算していくと

    (左辺)

    $=\dfrac{2x+6}{(x+2)(x+3)}-\dfrac{x+2}{(x+2)(x+3)}$
    $\qquad+\dfrac{x}{(x+2)(x+3)}$

    $=\dfrac{2x+4}{(x+2)(x+3)}$

    $=\dfrac{2(x+2)}{(x+2)(x+3)}=\dfrac{2}{x+3}=$

    (右辺)

    となる.

条件つきの等式の証明

等式の中には,恒等式ではないが,ある条件のもとではつねに成り立つ等式がある.

たとえば, $a^2 − 2b^2 = ab$ は恒等式ではない( $a = b = 1$ を考えてみよ). しかし,$a + b = 0$ という条件の下では常に成り立つ. これを証明するには,条件 $a + b = 0$ から $b = − a$ が成り立つことを利用して

(左辺) $= a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$

(右辺) $= a( − a) = − a^2$

より,(左辺)$=$(右辺)とすればよい.

一般に,ある条件のもとで成り立つ等式を証明するには,その条件式を証明すべき式に代入すればよい. そのことを次の例題で学んでいこう.

条件つきの等式の証明-その1-

次の等式を証明せよ.

  1. $a + b = 0$ のとき, $ab + a^2 = 0$
  2. $a + b = 0$ のとき, $a^2 − 2b^2 = ab$
  3. $ x + y = 1$ のとき,
    $\qquad x^2 + y^2 + 1 = 2(x + y − xy)$

  1. 左辺を変形すると

      (左辺)$ = a(a + b) = 0$           $\blacktriangleleft a+b=0$ を使った

     よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.

  2. $a + b = 0$より,$b = − a$ なので

      (左辺)$=a^2 − 2( − a)^2 = − a^2$        $\blacktriangleleft b=-a$ を使った

      (右辺) $= a( − a) = − a^2$

     よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.

  3. $x + y = 1$ より,$y = 1 − x$ なので

      (左辺) $= x^2 + (1 − x)^2 + 1$          $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った

          $= x^2 + 1 − 2x + x^2 + 1 = 2(x^2 − x + 1)$

      (右辺)$=2{x + (1 − x) − x(1 − x)}$        $\blacktriangleleft y=1-x$ を使った

    $= 2(x + 1 − x − x + x^2) $
    $= 2(x^2 − x + 1)$

      よって,(左辺) $=$ (右辺)がいえる.

条件つきの等式の証明-その2-

次の等式を証明せよ.

  1. $xy = 1$ のとき,
    $\qquad\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{1}{x}\right)=4$
  2. $x+\dfrac{1}{x}=3$ のとき,
    $\qquad x^2+\dfrac{1}{x^2}=7$
  3. $xyz = 1$ のとき,
    $\qquad\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{yz}+\dfrac{1}{zx}=x+y+z$

  1. $xy = 1$ より,$x\neq 0$ であるから,$y=\dfrac{1}{x}$ と変形できる.

    これを左辺にもちいると

    (左辺) $=\left(x+x\right)\left(\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x}\right)$

          $=2x\cdot\dfrac{2}{x}$

          $=4=$ (右辺) となる.

  2. $x+\dfrac{1}{x}=3$ を左辺にもちいると

    (左辺) $=\left(x+\dfrac{1}{x}\right)^2-2\cdot x\cdot \dfrac{1}{x}$         $\blacktriangleleft a^2+b^2=(a+b)^2-2ab$ という変形を使った

          $=3^2-2=7$              $\blacktriangleleft x+\dfrac{1}{x}=3$ を使った

    より,(左辺) $=$ (右辺)である.

  3. $xyz = 1$ より, $z=\dfrac{1}{xy}$ なので

    (左辺) $=\dfrac{1}{xy}+\dfrac{1}{y\cdot\dfrac{1}{xy}}+\dfrac{1}{\dfrac{1}{xy}\cdot x}$

         $=\dfrac{1}{xy}+x+y$

          $=x+y+z=$ (右辺)     $\blacktriangleleft z=\dfrac{1}{xy}$ を使った

    となる.

比例式を条件にもつ等式の証明

$a:b = x:y$ の定義は $bx = ay$ である. 特に $x,y$ が $0$ でないとき,$\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}$ と変形できる. この $\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}$ のように,比の値が等しいことを示す式を比例式(proportional expression)という.

比例式を条件とする場合には,比の値を $k$,すなわち$ \dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}=k$ などとおき, $a = xk$ かつ $b = yk$ の形で利用すると計算しやすい.

また

\[a:b:c=x:y:z\]

を, $a,b,c$ の連比(continued ratio)といい, $a:b = x:y$ かつ $b:c = y:z$ かつ$c:a = z:x$ ,すなわち

$bx = ay $ かつ $cy = bz$ かつ $ az = cx$

と定義する. こちらの場合も, $x,y,z$ が $0$ でないとき,$\dfrac{a}{x}=\dfrac{b}{y}=\dfrac{c}{z}$ と変形できる.

比例式を条件にもつ等式の証明

$0$ でない実数 $a,~b,~c,~d,~x,~y,~z$ において,次の等式を証明せよ.

  1. $a:b = c :d$ のとき,
    $\qquad\dfrac{a^2+b^2}{c^2+d^2}=\left(\dfrac{b}{d}\right)^2$
  2. $a:b = c :d$ のとき,
    $\qquad\dfrac{a^2+c^2}{b^2+d^2}=\dfrac{ac}{bd}$
  3. $a:b:c = x :y :z$ のとき,
    $\qquad\dfrac{a^2+b^2+c^2}{x^2+y^2+z^2}=\dfrac{ab+bc+ca}{xy+yz+zx}$

  1. $a = ck,b = dk$ とおくと         $\blacktriangleleft$ 比例式の利用

    (左辺) $=\dfrac{c^2k^2+d^2k^2}{c^2+d^2}$       $\blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った

    $=\dfrac{k^2(c^2+d^2)}{c^2+d^2}=k^2$

    $=\dfrac{d^2k^2}{d^2}=k^2$

    より,(左辺) $=$ (右辺)である.

  2. $a = ck,b = dk$ とおくと         $\blacktriangleleft$ 比例式の利用

    (左辺)= $\dfrac{c^2k^2+c^2}{d^2k^2+d^2}$          $\blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った

    $=\dfrac{c^2(k^2+1)}{d^2(k^2+1)}=\dfrac{c^2}{d^2}$

    (右辺)$=\dfrac{c^2k}{d^2k}=\dfrac{c^2}{d^2}$               $ \blacktriangleleft a = ck,b = dk$ を使った

    より,(左辺) $=$ (右辺)である.

  3. $a = xk,b = yk,c = zk$ とおくと        $\blacktriangleleft$ 比例式の利用

    (左辺)= $\dfrac{x^2k^2+y^2k^2+z^2k^2}{x^2+y^2+z^2}$      $\blacktriangleleft a = xk,b = yk,c = zk$ を使った

       $=\dfrac{k^2(x^2+y^2+z^2)}{x^2+y^2+z^2}=k^2$

    (右辺) $=\dfrac{xyk^2+yzk^2+xzk^2}{xy+yz+zx}$      $ \blacktriangleleft a = xk,b = yk,c = zk$ を使った

    $=\dfrac{k^2(xy+yz+xz)}{xy+yz+zx}=k^2$

    より,(左辺) $=$ (右辺)である.

対称式

対称式の定義

次の6つの式

$1) x+y \ \ \ 2) xy \ \ \ 3) x^2+y^2$

$4) \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y} \ \ \ 5) 2x^3+3y^2 \ \ \ 6) \dfrac{2}{x}+\dfrac{y}{2}$

において,各式の中の $x$ と $y$ を入れ換えてみると

$1)' x+y \ \ \ 2)' yx \ \ \ 3)' y^2+x^2$

$4)' \dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{x} \ \ \ 5)' 2y^3+3x^2 \ \ \ 6)' \dfrac{2}{y}+\dfrac{x}{2}$

となる.

ここで,式 $1)'~4)'$ はそれぞれ元の式 $1)~4)$ と恒等的に等しく, $5)'$ と $6)'$ はそれぞれ元の $5)$ , $6)$ と等しくない.

このように,文字を入れ換えても,式が変わるものと変わらないものとがあり, 変わらないものを対称式という.

対称式の定義

式の中の文字 $x, y$ を入れ換えても,同じ式となる式のことを, その文字に関する対称式(symmetric expression)という.

対称式の中でも特に

\[x+y\] \[xy\]

の2式を,基本対称式(elementary symmetric expression)という.

対称式の基本定理

証明は高校の程度を越えるが,一般に次のことが知られている.

対象式の基本定理

すべての対称式は,基本対称式の和,差,積,商の組合せで表すことができる.

対象式を基本対象式の組み合わせで表す

$x + y = A,xy = B$ とするとき,次の各式を $A,B$ を用いて表せ.

  1. $x^2+y^2$
  2. $x^3+y^3+x+y$
  3. $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$
  4. $\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}$

  1. $ x^2+y^2$

    $=(x+y)^2-2xy$

    $=\boldsymbol{A^2-2B}$

  2. $x^3+y^3+x+y$

    $=(x+y)^3-3xy(x+y)+(x+y)$

           $\blacktriangleleft x^3 + y^3 = (x + y)^3 − 3xy(x + y)$ を利用した

      $=\boldsymbol{A^3-3AB+A}$

  3. $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}$

    $=\dfrac{y}{xy}+\dfrac{x}{xy}$

          $\blacktriangleleft$ 通分した

    $=\dfrac{x+y}{xy}$

    $=\boldsymbol{\dfrac{A}{B}}$

  4. $\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}$

    $=\dfrac{y^2}{xy}+\dfrac{x^2}{xy}$        $\blacktriangleleft$ 通分した

    $=\dfrac{x^2+y^2}{xy}$        $\blacktriangleleft$ (1)が使える形にした $=\boldsymbol{\dfrac{A^2-2B}{B}}$