対数の定義

第4章の指数と指数関数では、「2を2乗したり3乗したりするといくつになるのか」ということを考えてきた。この章では、逆に「2は何乗すると4や8になるのか」という視点から話をすすめていく。その中で「2は何乗すると5になるのか」の何乗のように、普通の分数のような形ではあらわせない数を表す方法である"対数"を以下で学んでいく。

対数の導入

$2^x=8$や$2^x=\dfrac{1}{2}$となる$x$を求める

無題
無題

$2^x = 8$や$2^x = \dfrac{1}{2}$となる$x $を求める

たとえば,指数関数$y = 2^x$で$y = 8$とすると

\begin{align} 2^x=8 \end{align}

となるが,$2^3 = 8$であるから,この式を満たす$x$ は$3$である.

また,$y=\dfrac{1}{2}$とすると

\begin{align} 2^x=\dfrac{1}{2} \end{align}

となるが,$2^{-1}=\dfrac{1}{2}$であるから,この式を満たす$x $は $− 1$である.

$2^x=5$となる$x$を求める

無題
無題 (注)

$2^x = 5$となる$x$を求める

このように,$y $の値からすぐに$x $の値が求まることもあるが,たとえば$y = 5$として

\begin{align} 2^x=5 \end{align}

となる$x$の値は,下の例題でみるように無理数なので,小数や分数で表すことができない.

しかし,図からわかるように,$2^x = 5$となる$x $が存在しているのは確かなので,このxを

\begin{align} \log_2{5} \end{align}

と表すことにする .

吹き出し$2^x=5$となる$x$を求める

「$3$乗したら$5$になる値」は無理数なので,新たに記号を作り$\sqrt[3]{5}$と表した. 同じように「$2^x = 5$となる$x$ の値」も無理数なので,新たに記号を作り$\log_25$と表す.$\log$ という記号を何度か使ってみるまでは,少々違和感を感じるかもしれないが, 慣れの問題であると達観し,落ち着いて取り組もう.

$\log_25$が無理数であることの証明

$\log_25$が無理数であることを証明せよ.

【解答:背理法】

$\log_25$が有理数であると仮定する.$\log_25$は正の数なので,自然数$m,n$をもちいて $\log_25=\dfrac{m}{n}$,すなわち

\begin{align} 2^\frac{m}{n}=5 \end{align}

と表せることになる.

しかし,両辺を$n$乗すると

\begin{align} 2^m=5^n \end{align}

となり,左辺は偶数,右辺は奇数となるので矛盾する.

よって,$\log_25$は無理数である.

対数の定義について

無題
無題 (注)

対数の定義について

ここで,対数の定義をしておこう.

指数関数の定義でみたように, 指数関数$y = a^x$のグラフでは,どのような正の実数$M$に対しても

\begin{align} a^x=M \end{align}

となる$x$の値がただ1つ定まる. この値を,$a$を底(base)とする$M$の対数(logarithm)といい

\begin{align} x=\log_a{M} \end{align}

で表す. また,この$M$のことを$\log_aM$の真数(aniti-logarithm)という.

なお,指数関数の定義での$a > 0,a\neq1$という条件は,対数でも同様とする.

対数の定義

$a > 0,a\neq1,M > 0$のとき

\begin{align} a^x=M~\Longleftrightarrow~x=\log_a{M} \end{align}

とする.特に,$\log_aa^x=x$である.

たとえば,$2$を底とする$8$の対数,すなわち$\log_28$は,$2^3 = 8$だから

\begin{align} \log_28=\log_22^3=3 \end{align}

である.また,$3$を底とする$\dfrac{1}{9}$の対数,すなわち$\log_3\dfrac{1}{9}$は,$3^{-2}=\dfrac{1}{9}$だから

\begin{align} \log_3\dfrac{1}{9}=\log_33^{-2}=-2 \end{align}

である.

吹き出し対数の定義について

無題
無題

指数と対数は,瞬時に書き換えられるようにしておかなければならない. 「$a$ の$x $乗は$M$」と唱えながら,図のようなイメージ で変換できるように練習しよう.

指数を対数になおす

次の等式を$x = \log_aM$の形に書きなおせ.

  1. $3^4=81$
  2. $10^{-2}=0.01$
  3. $16^{-\frac{1}{4}}=0.5$

  1. 「$3$の$4$乗は$81$である」は「$4$は$3$を底とする$81$の対数である」ということと同じ.

    つまり

    \begin{align} 3^4=81~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{4=\log_3{81}} \end{align} $\blacktriangleleft$ 対数の定義
  2. 「$10$の $− 2$乗は$0.01$である」は「$ − 2$は$10$を底とする$0.01$の対数である」ということと同じ. つまり

    \begin{align} 10^{-2}=0.01~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{-2=\log_{10}{0.01}} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義
  3. 「$16$の$-\dfrac{1}{4}$乗は$0.5$である」は「$-\dfrac{1}{4}$は$16$を底とする$0.5$の対数である」ということと同じ. つまり

    \begin{align} 16^{-\frac{1}{4}}=0.5~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{-\dfrac{1}{4}=\log_{16}{0.5}} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義

対数を指数になおす

次の等式を$a^x = M$の形に書きなおせ.

  1. $2=\log_{10}100$
  2. $\dfrac{1}{3}=\log_82$
  3. $-3=\log_5\dfrac{1}{125}$

  1. 「$2$は$10$を底とする$100$の対数である」は「$10$の$2$乗は$100$である」ということと同じ.

    つまり

    \begin{align} 2=\log_{10}100~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{10^2=100} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義
  2. 「$\dfrac{1}{3}$は$8を底とする$2の対数である」は「$8$の$\dfrac{1}{3}$乗は$2$である」ということと同じ. つまり

    \begin{align} \dfrac{1}{3}=\log_82~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{8^\dfrac{1}{3}=2} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義
  3. 「 $− 3$は$5$を底とする$\dfrac{1}{125}$の対数である」は「$5$の $− 3$乗は$\dfrac{1}{125}$である」ということと同じ. つまり

    \begin{align} -3=\log_5\dfrac{1}{125}~\Longleftrightarrow~\boldsymbol{5^{-3}=\dfrac{1}{125}} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義

定義から対数の値を求める

次の式の値を求めよ.

  1. $\log_4{64}$
  2. $\log_{27}9 $
  3. $\log_2\dfrac{1}{\sqrt{2}}$
  4. $\log_{\frac{1}{4}}\dfrac{1}{2}$

  1. $\log_464 = x$とおくと

    \begin{align} &\log_4{64}=x\\ \Leftrightarrow~&4^x=64\\ \Leftrightarrow~&4^x=4^3 \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義

    $\Leftrightarrow~\boldsymbol{x=3}$

    【別解】

    対数の定義より$\log_4{64}=\log_44^3=\boldsymbol{3}$

  2. $\log_279 = x$とおくと

    \begin{align} &\log_{27}9=x\\ \Leftrightarrow~&27^x=9\\ \Leftrightarrow~&3^{3x}=3^2 \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義 \begin{align}\Leftrightarrow~&3x=2\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\dfrac{3}{2}} \end{align}
  3. $\log_{2}\dfrac{1}{\sqrt{2}}=x$とおくと

    \begin{align} &\log_{2}\dfrac{1}{\sqrt{2}}=x\\ \Leftrightarrow~&2^x=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\\ \Leftrightarrow~&2^{x}=2^{-\dfrac{1}{2}} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義

    $\Leftrightarrow~\boldsymbol{x=-\dfrac{1}{2}}$

  4. $\log_{\dfrac{1}{4}}\dfrac{1}{2}=x$とおくと

    \begin{align} &\log_{\dfrac{1}{4}}\dfrac{1}{2}=x\\ \Leftrightarrow~&\left(\dfrac{1}{4}\right)^x=\dfrac{1}{2}\\ \Leftrightarrow~&\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2x}=\dfrac{1}{2} \end{align} $\blacktriangleleft$対数の定義 \begin{align} \Leftrightarrow~&2x=1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\dfrac{1}{2}} \end{align}