関数のグラフ

導関数は端的に言えば接線の傾きを表すものである。これを応用することにより、関数のグラフの概形を描くことができる。その方法について学んでいこう。

関数の増減と極大・極小

区間とは何か

$a$、$b$ を実数とするとき \[a\lt{x}\lt{b}~,~a\leqq{x}\leqq{b}~,~a\lt{x}~,~x\leqq{b}\] などの不等式を満たす実数 $x$ の集合を、$x$ の区間 (interval) という。

関数の増減

関数の増減

関数 $f(x)$ のある区間 $I$ において、$I$ に含まれる任意の値 $s$、$t$ について関数 $f(x)$ において、ある区間の任意の値 $s$、$t$ について \[s{\lt}t~\Longrightarrow~f(s){\lt}f(t)\] が成り立つとき、$f(x)$ はその区間 $I$ で単調増加 (monotonically increasing) するという。また \[s{\lt}t~\Longrightarrow~f(s){\gt}f(t)\] が成り立つとき、$f(x)$ はその区間 $I$ で単調減少 (monotonically decreasing) するという。

関数 $f(x)$ について、$x$ の値が増加するとき、$f(x)$ の値が増加したり、減少したりする様子は、$y=f(x)$ のグラフが右上がりなのか、右下がりなのかで視覚的に確認できる。

単調増加・単調減少のグラフ

単調増加・単調減少のグラフ

導関数の符号と関数の増加・減少の関係

関数 $y=f(x)$ のグラフ上の点 $(a,~f(a))$ に近い部分では、この関数のグラフはこの点における接線とほぼ一致しているとみなしてよい。接線の傾きは $f'(a)$ で与えることができるので、関数 $f(x)$ の増減は、$f'(x)$ の符号の正負と結びつけて考えることができる。

増加する関数のグラフ
増加する関数のグラフ

増加する関数 $f(x)$ では、$y=f(x)$ のグラフは右図のようになる。このとき、このグラフ上の各点での接線は右上がりとなるので、その傾きは常に正の値をとることがわかる。逆に、グラフ上の各点における接線の傾きが正であるならば、その関数は増加していることがわかる。

つまり、ある区間での関数 $f(x)$ とその導関数 $f'(x)$ について \[f'(x)\gt0~{\Longleftrightarrow}f(x)\] は単調増加がいえる。

減少する関数のグラフ
減少する関数のグラフ

また、右図のように、グラフ上の各点における接線の傾きが負であるならば、その関数は減少していることがわかる。

つまり、ある区間での関数 $f(x)$ とその導関数 $f'(x)$ について \[f'(x)\lt0~{\Longleftrightarrow}f(x)\] は単調減少がいえる。

さらにまた、ある区間で常に $f'(x)=0$ のとき、$y=f(x)$ のグラフの接線は常に $x$ 軸と平行となる。このとき、グラフ自体も $x$ 軸と平行となり、その区間では $f(x)$ は一定の値をとる。

増減の例

増減の例
増減の例

具体的な関数の例として、2次関数 $f(x)=-x^2+4x$ としてを考えてみよう。$y=f(x)$ のグラフは \begin{align} y&=-x^2+4x\\ &=-(x-2)^2+4 \end{align} であるから、頂点の座標は $(2,~4)$ とわかり、右図のようになる。

この図から

  1. $x\lt2$ のときは、$f(x)$ は増加
  2. $x\gt2$ のときは、$f(x)$ は減少
ということがわかるが、このことは、$f(x)$ の導関数 \[f'(x)=-2x+4\] を用いて、次のように理解することもできる。
  1. $-2x+4\gt0$ つまり、$x\lt2$ のとき「$f'(x)\gt0$ となるので」、$f(x)$ は増加している。
  2. $-2x+4\lt0$ つまり、$x\gt2$ のとき「$f'(x)\lt0$ となるので」、$f(x)$ は減少している。

$f'(x)$ の符号と関数の増加・減少の関係

関数 $f(x)$ の値の増減は、$f(x)$ の導関数 $f'(x)$ を用いて

  1. $f'(x)\gt0$ となる $x$ の値の範囲では、$y$ の値は増加する
  2. $f'(x)\lt0$ となる $x$ の値の範囲では、$y$ の値は減少する
と判断できる。

吹き出し増減の例

これから先扱おうとしている関数は、2次関数のように簡単に増加・減少のわかるものではない。そのため、この導関数 $f'(x)$ の正・負から、関数の増加・減少を判断できるようにしておかなければならない。

極大・極小とは何か

極大・極小のグラフ
極大・極小のグラフ

関数 $f(x)$ の値が $x=a$ を境目として、右図のように増加から減少に変わるとき

$f(x)$ は $x=a$ で極大 (maximum) になる

といい、$f(a)$ を極大値 (muximal value) という。

また、関数 $f(x)$ の値が $x=b$ を境目として、減少から増加に変わるとき

$f(x)$ は $x=b$ で極小 (minimum) になる

といい、$f(b)$ を極小値 (minimal value) という。

極大値と極小値を合わせて極値 (extreme value) という。

$f'(x)$ の符号と極大・極小

関数 $f(x)$ について、$f'(x)=0$ となる $x$ の値の前後における $f'(x)$ の符号が

  1. 正から負に変化するとき、$f(x)$ は極大
  2. 負から正に変化するとき、$f(x)$ は極小
となる。

増減表を用いたグラフの描き方

増減表の書き方

導関数の符号の変化がわかると、かなり正確なグラフを描くことができるようになる。ここでは、関数の増減をまとめるための増減表 (table of increasing and decreasing) の書き方について、次の例題を通じて学んでいこう。

導関数を利用したグラフの書き方

関数 $f(x)=x^3-6x^2+9x$ において、次の問いに答えよ。

  1. $f'(x)$ を求めよ。
  2. $f'(x)=0$ となる $x$ の値を求めよ。
  3. $f'(x)\gt0$ となる $x$ の値の範囲、および $f'(x)\lt0$ となる $x$ の値の範囲を求めよ。
  4. $f'(x)=0$ となるときの、$f(x)$ の値を求めよ。
  5. 1~4を利用して、下の増減表の空欄を埋めよ。
    $x$$\cdots$$\cdots$$\cdots$
    $f'(x)$
    $f(x)$
    ただし
    1. $x$ の欄には、2で求めた値
    2. $f'(x)$ の欄には、$-$、$0$、$+$ のいずれか
    3. $f(x)$ の欄には $\nearrow$ (増加を表す記号)、$\searrow$ (減少を表す記号)、値が入る。
  6. 5を利用して、$y=f(x)$ のグラフを描け。

  1. $f(x)=x^3-6x^2+9x$ を微分すると \[f'(x)=\boldsymbol{3x^2-12x+9}\] となる。
  2. 1より \begin{align} f'(x)=&3x^2-12x+9\\ =&3(x-1)(x-3) \end{align} と因数分解できるので、$f'(x)=0$ となる $x$ は、$x=\boldsymbol{1,~3}$。
  3. $\blacktriangleleft$ 下のように $y=f'(x)$ のグラフを考えてもよい
    3の図
    まず、2より $f'(x)=0$ となる $x$ は $1,3$ であり、これを数直線上に表すと

    3の図

    となる。これより
    1. (1)つまり $x\lt1$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{負}\underbrace{(x-3)}_{負}\] となり、$f'(x)\gt0$ となるのがわかる。
    2. (2)つまり $1\lt{x}\lt3$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{正}\underbrace{(x-3)}_{負}\] となり、$f'(x)\lt0$ となるのがわかる。
    3. (3)つまり $3\lt{x}$ のとき \[f'(x)=3\underbrace{(x-1)}_{正}\underbrace{(x-3)}_{正}\] となり、$f'(x)\gt0$ となるのがわかる。
    以上 i~iii より、$f'(x)\gt0$ となるのは $x\lt1$、$3\lt{x}$ のときであり、$f'(x)\lt0$ となるのは $1\lt{x}\lt3$ のときである。
  4. 2より、$f'(x)=0$ となるのは、$x=1,~3$ のときだから \[f(1)=1^3-6\cdot1^2+9\cdot1=\boldsymbol{4}\] \[f(3)=3^3-6\cdot3^2+9\cdot3=\boldsymbol{0}\] と求まる。
    • $\boldsymbol{\text{STEP}1}$ $\boldsymbol{x}$ の欄を埋める

      ここには、$f'(x)=0$ となる $x$ を入れる。2の結果より

      $x$$\cdots$$\boldsymbol{1}$$\cdots$$\boldsymbol{3}$$\cdots$
      $f'(x)$
      $f(x)$
      となる。

    • $\boldsymbol{\text{STEP}2}$ $f'(x)$ の欄を埋める

      $\text{STEP}1$ で埋めた欄のすぐ下の欄には $0$ が入る。なぜなら、$\text{STEP}1$ で埋めた $x$ の値は、$f'(x)$ が $0$ になるときの $x$ の値だからである。また、それ以外の部分には3の結果を利用して正ならば $+$、負ならば $-$ を埋める。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$\boldsymbol{+}$$\boldsymbol{0}$$\boldsymbol{-}$$\boldsymbol{0}$$\boldsymbol{+}$
      $f(x)$
    • $\boldsymbol{\text{STEP}3}$ $f(x)$ の欄を埋める

      $\text{STEP}2$ より $x=1$ や $x=3$ の値の前後では、$f'(x)$ の符号が変わっているので、$f(x)$ は $x=1$ で極大、$x=3$ で極小となる。まず、4で得た極大値 $f(1)=4$ や、極小値 $f(3)=0$ を増減表に埋める。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
      $f(x)$$\boldsymbol{4}$$\boldsymbol{0}$

      最後に $f'(x)$ が $+$ の欄の下には、$f(x)$ が増加するという意味で $\nearrow$、$f'(x)$ が $-$ の欄の下には、$f(x)$ が減少するという意味で $\searrow$ を書き加えて増減表が完成する。

      $x$$\cdots$$1$$\cdots$$3$$\cdots$
      $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
      $f(x)$$\nearrow$$4$$\searrow$$0$$\nearrow$
  5. $\blacktriangleleft$ $f(0)=0$ なので、$y=f(x)$ のグラフは原点 $(0,~0)$ を通ることに注意
    5で得られた増減表を利用して $y=f(x)$ のグラフを描くと、以下のようになる。

    6の図

導関数を利用したグラフの描画

次の各々の関数において、$y=f(x)$ のグラフを描け。

  1. $f(x)=x^3-x^2-x+2$
  2. $f(x)=-x^3+3x$
  3. $f(x)=x^3-2x^2+2x-1$
  4. $f(x)=\dfrac{1}{4}x^4-\dfrac{3}{2}x^2-2x+2$

  1. $f(x)$ を微分すると \begin{align} f'(x)=&3x^2-2x-1\\ =&(3x+1)(x-1) \end{align} これより、増減表は

    $x$$\cdots$$-\dfrac{1}{3}$$\cdots$$1$$\cdots$
    $f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
    $f(x)$$\nearrow$$f\left(-\dfrac{1}{3}\right)$$\searrow$$f(1)$$\nearrow$
    となる。ここで、$f\left(-\dfrac{1}{3}\right)$、$f(1)$ の値は \begin{align} f\left(-\dfrac{1}{3}\right)=&\left(-\dfrac{1}{3}\right)^3-\left(-\dfrac{1}{3}\right)^2\\ &\qquad-\left(-\dfrac{1}{3}\right)+2\\ =&\dfrac{59}{27} \end{align} \[f(1)=1^3-1^2-1+2=1\] である。

    1の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  2. $f(x)$ を微分すると \begin{align} f'(x)=&-3x^2+3\\ =&-3(x+1)(x-1) \end{align} これより、増減表は

    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$1$$\cdots$
    $f'(x)$$-$$0$$+$$0$$-$
    $f(x)$$\searrow$$f(-1)$$\nearrow$$f(1)$$\searrow$
    となる。ここで、$f(-1)$、$f(1)$ の値は \[f(-1)=-(-1)^3+3\cdot(-1)=-2\] \[f(1)=-1^3+3\cdot1=2\] である。

    2の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  3. $f(x)$ を微分すると \[f'(x)=3x^2-4x+2\] ここで、$3x^2-4x+2$ の判別式 $D/4$ は \[\dfrac{D}{4}=2^2-3\cdot2=-2\lt0\] なので、$f'(x)$ はつねに正である。

    3の図

    よって、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

  4. $f(x)$ を微分すると

    $\blacktriangleleft$ $f'(-1)=0$ なので『因数定理』(p.63) を利用して因数分解した。
    \begin{align} f'(x)=&x^3-3x-2\\ =&(x+1)^2(x-2) \end{align} これより、増減表は
    $x$$\cdots$$-1$$\cdots$$2$$\cdots$
    $f'(x)$$-$$0$$-$$0$$+$
    $f(x)$$\searrow$$f(-1)$$\searrow$$f(2)$$\nearrow$
    となる。ここで、$f(-1)$、$f(2)$ の値は \begin{align} f(-1)=&\dfrac{1}{4}\cdot(-1)^4-\dfrac{3}{2}\cdot(-1)^2\\ &\qquad-2\cdot(-1)+2\\ =&\dfrac{11}{4}\\ f(2)=&\dfrac{1}{4}\cdot2^4-\dfrac{3}{2}\cdot2^2-2\cdot2+2\\ =&-4 \end{align} である。

    4の図

    以上より、$y=f(x)$ のグラフは、右図のようになる。

関数の最大・最小

3次関数のグラフ

3次関数のグラフの種類

3次関数のグラフの特徴

3次関数のグラフと3次不等式