微分係数と導関数

ここでは、§6.1で学んだ瞬間の速度を、より一般的に扱うための方法について考えていこう。

平均変化率

平均変化率について

平均の速度で見たように、$x-t$ グラフ上の2点を通る直線の傾きは平均速度を意味していた。ここでは $x-t$ グラフに限ることなく、一般の関数 $y=f(x)$ について、この平均速度にあたるものを考えてみよう。

(注)

関数 $y=f(x)$ において、$x$ の値が $a$ から $b$ まで変化するとき $b-a$ を $x$ の増分 (increment of x) といい $\Delta{x}$ と表し $f(b)-f(a)$ を $y$ の増分 (increment of y) といい $\Delta{y}$ と表す。

(注)
平均変化率
平均変化率

また、$x$ の増分に対する $y$ の増分の割合 \[\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}~\left(=\dfrac{\Delta{y}}{\Delta{x}}\right)\] のことを、$x$ の値が $a$ から $b$ まで変化するときの $f(x)$ の平均変化率 (average rate of change) という。

これは図の直線 $l$ の傾きを表す。

平均の速度 とは、$x-t$ グラフにおける平均変化率のことであるといいかえられる。

微分係数と接線

微分係数の定義

瞬間の速度 で見たように、瞬間速度は平均速度 $\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}$ の $\Delta{t}$ を限りなく $0$ に近づけるときの極限値、つまり $\displaystyle\lim_{\Delta{t}\to0}\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}$ として与えられた。ここでも $x-t$ グラフに限ることなく、一般の関数 $y=f(x)$ について、この瞬間速度にあたるものを考えてみよう。

微分係数の定義
微分係数の定義

関数 $f(x)$ において、$\Delta{x}=x-a$、$\Delta{y}=f(x)-f(a)$ とすると、$a$ からある $x$ まで変化するときの平均変化率は $\dfrac{\Delta{y}}{\Delta{x}}=\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}$ である。

ここで、$x$ を限りなく $a$ に近づけることにより $\Delta{x}=x-a$ は限りなく $0$ に近づき、このときこの平均変化率 $\dfrac{\Delta{y}}{\Delta{x}}$ の値が、ある決まった値に近づくならば、その極限値を関数 $y=f(x)$ の $x=a$ における微分係数 (differential coefficient) といい、$f'(a)$ と表す。つまり \[f'(a)=\displaystyle\lim_{x\to{a}}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\tag{1}\label{bibunkeisunotegi}\] と定義する。

微分係数の定義の別法

微分係数の定義
微分係数の定義

また、$\Delta{x}=h$、つまり $x-a=h$ とおくと、$x=a+h$ であるから \begin{align} \dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}&=\dfrac{f(a+h)-f(a)}{a+h-a}\\ &=\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h} \end{align} であり、$x$ を $a$ に近づけることは $h$ を $0$ に近づけることに等しいから、微分係数 $f'(a)$ は \[f'(a)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\] と表すこともできる。

まとめると次のようになる。

微分係数

関数 $y=f(x)$ の $x=a$ における微分係数 $f'(a)$ は \[f'(a)=\displaystyle\lim_{x\to{a}}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\] と定義する。$x=a+h$ とおけば \[f'(a)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\] とも書ける。

吹き出し微分係数の定義の別法

この2つの式は、どちらも同じことを表しているが、片方だけに固執せず、問題に応じて臨機応変に使い分けられるようになるのがよい。

定義域から微分係数を求める~その1~

$f(x)=x^2$、$g(x)=x^3$ とするとき、次の値を求めよ。

  1. $f'(3)$
  2. $g'(-2)$

  1. 微分係数 $f'(3)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(x)-f(3)}{x-3}\\ &\blacktriangleleft f'(3)=\displaystyle\lim_{x\to3}\dfrac{f(x)-f(3)}{x-3}\\ =&\dfrac{x^2-3^2}{x-3}\\ =&\dfrac{x^2-9}{x-3}\\ =&\dfrac{(x-3)(x+3)}{x-3}\\ =&x+3\\ &\blacktriangleleft 定義よりx\neq3なので,\\ &{\quad}x-3で約分した\\ &\to6~(x\to3) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(3)=6}$。
    【別解】
    \begin{align} &\dfrac{f(3+h)-f(3)}{h}\\ &\blacktriangleleft f'(3)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(3+h)-f(3)}{h}\\ =&\dfrac{(3+h)^2-3^2}{h}\\ =&\dfrac{h^2+6h}{h}\\ =&h+6\\ &\blacktriangleleft 定義よりh\neq0なので,~hで約分した\\ &\to6~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(3)=6}$。
  2. 微分係数 $g'(-2)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{g(x)-g(-2)}{x-(-2)}\\ &\blacktriangleleft g'(-2)=\displaystyle\lim_{x\to-2}\dfrac{g(x)-g(-2)}{x-(-2)}\\ =&\dfrac{x^3-(-2)^3}{x+2}\\ =&\dfrac{(x+2)(x^2-2x+4)}{x+2}\\ &\blacktriangleleft a^3-b^3\\ &=(a-b)(a^2+ab+b^2)を使った\\ =&x^2-2x+4\\ &\blacktriangleleft 定義よりx\neq-2なので,\\ &{\quad}x+2で約分した\\ &\to12~(x\to-2) \end{align} よって、$\boldsymbol{g'(-2)=12}$。
    【別解】
    \begin{align} &g(-2+h)-g(-2)\\ =&(-2+h)^3-(-2)^3\\ =&12h-6h^2+h^2 \end{align} より \begin{align} \dfrac{g(-2+h)-g(-2)}{h}&=12-6h+h\\ &\to12~(h\to0) \end{align} $\blacktriangleleft$ 定義より $h\neq0$ なので、$h$ で約分した
    よって、$\boldsymbol{g'(-2)=12}$。

定義域から微分係数を求める~その2~

$f(x)=2x^2-4x+3$、$g(x)=x^3+2x^2+1$ とするとき、次の値を求めよ。

  1. $f'(3)$
  2. $g'(-2)$

  1. 微分係数 $f'(3)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(x)-f(3)}{x-3}\\ &\blacktriangleleft f'(3)=\displaystyle\lim_{x\to3}\dfrac{f(x)-f(3)}{x-3}\\ =&\dfrac{2x^2-4x+3-(2\cdot3^2-4\cdot3+3)}{x-3}\\ =&\dfrac{2(x^2-3^2)-4(x-3)}{x-3}\\ =&\dfrac{2(x-3)(x+3)-4(x-3)}{x-3}\\ =&2x+2\\ &\blacktriangleleft 定義よりx\neq3なので,\\ &{\quad}x-3で約分した\\ &\to8~(x\to3) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(3)=8}$。
    【別解】
    \begin{align} &\dfrac{f(3+h)-f(3)}{h}\\ &\blacktriangleleft f'(3)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(3+h)-f(3)}{h}\\ =&\{2(3+h)^2-4(3+h)+3\\ &\qquad-(2\cdot3^2-4\cdot3+3)\}\div{h}\\ =&\dfrac{8h+2h^2}{h}\\ =&8+2h\\ &\blacktriangleleft 定義よりh\neq0なので,~hで約分した\\ &\to8~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(3)=8}$。
  2. 微分係数 $g'(-2)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{g(x)-g(-2)}{x-(-2)}\\ &\blacktriangleleft g'(-2)=\displaystyle\lim_{x\to-2}\dfrac{g(x)-g(-2)}{x-(-2)}\\ =&\bigg[x^3+2x^2+1\\ &\qquad-\left\{(-2)^3+2\cdot(-2)^2+1\right\}\bigg]\\ &\qquad\div(x+2)\\ =&\dfrac{(x^3+2^3)+2(x^2-2^2)}{x+2}\\ =&\{(x+2)(x^2-2x+4)\\ &\qquad+2(x+2)(x-2)\}\div(x+2)\\ =&x^2\\ &\blacktriangleleft 定義よりx\neq-2なので,\\ &{\quad}x+2で約分した\\ &\to4~(x\to-2) \end{align} よって、$\boldsymbol{g'(-2)=4}$。
    【別解】
    \begin{align} & g(-2+h)-g(-2)\\ =&(-2+h)^3+2(-2+h)^2+1\\ &\qquad-\left\{(-2)^3+2\cdot(-2)^2+1\right\}\\ =&4h-4h^2+h^3 \end{align} より \begin{align} \dfrac{g(-2+h)-g(-2)}{h}&=4-4h+h^2\\ &\to4~(h\to0) \end{align} $\blacktriangleleft$ 定義より $h\neq0$ なので、$h$ で約分した
    よって、$\boldsymbol{g'(-2)=4}$。

導関数

導関数とは何か

$x=a$ での微分係数を求める

$f(x)=x^2$ とし、次の問いに答えよ。

  1. $f'(a)$ を求めよ。
  2. 1の結果に $a=3$、$-2$ を代入することにより、$f'(3)$、$f'(-2)$ を求めよ。

  1. 微分係数 $f'(a)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}\\ &=\dfrac{(a+h)^2-a^2}{h}\\ &=\dfrac{a^2+2ah+h^2-a^2}{h}\\ &=2a+h\\ &\to2a~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(a)=2a}$。
  2. 1の $a$ に $a=3$ を代入することにより \[\boldsymbol{f'(3)=6}\] また、$a=-2$ を代入することにより \[\boldsymbol{f'(-2)=-4}\] となる。

上の例題2の結果は、定義式から微分係数を求める~その1~ の1と2の答えと確かに一致する。

このように、同じ関数の微分係数は、いちいち定義式に戻り計算しなくても
「$x=a$ における微分係数 $f'(a)$ を求めておいて、$a$ に必要な値を代入する」
ことによって求められる。いいかたを変えれば、$a$ を変数とみれば $f'(a)$ は $a$ の関数になっているということである。変数であることをわかりやすくするため、$a$ を $x$ におきかえた $f'(x)$ を以下では使うことにする。

導関数

関数 $f(x)$ において、極限 $\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ が存在するとき、これを $f(x)$ の導関数 (derived function) といい、$f'(x)$ で表す。すなわち \[f'(x)=\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\] である。

導関数の表し方

関数 $y=f(x)$ の導関数の表し方にはいくつかあり、$f'(x)$ の他にも $y'$ や $\dfrac{dy}{dx}$ や $\dfrac{d}{dx}f(x)$ で表すこともある。

$\dfrac{dy}{dx}$ は、$x$ の増分 $h$ を $\Delta{x}$、$y$ の増分 $f(x+h)-f(x)$ を $\Delta{y}$ としたとき \[f'(x)=\displaystyle\lim_{\Delta{x}\to0}\dfrac{\Delta{y}}{\Delta{x}}\] と書けることに由来する。$\dfrac{dy}{dx}$ は「ディーエックスぶんのディー・ワイ」ではなく「ディーワイ、ディーエックス」と読む。

たとえば、$y=x^2$ の導関数は \[y'=2xや\dfrac{dy}{dx}=2x\] などと表す。

また、$x$ の関数 $f(x)$ から導関数 $f'(x)$ を求めることを、$f(x)$ を $\boldsymbol{x}$ について微分 (differential) するという。関数を微分した結果を示すのに \[(x^2)'=2x\] と書くこともある。

導関数を求める

次の関数の導関数 $f'(x)$ を求めよ。

  1. $f(x)=x$
  2. $f(x)=x^2$
  3. $f(x)=x^3$
  4. $f(x)=2x^3-x^2$

  1. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)-x}{h}\\ &=1\\ &\to1~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=1}$ となる。
  2. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)^2-x^2}{h}\\ &=\dfrac{2xh+h^2}{h}\\ &=2x+h\\ &\to2x~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=2x}$ となる。
  3. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} \dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\dfrac{(x+h)^3-x^3}{h}\\ &=\dfrac{3x^2h+3xh^2+h^3}{h}\\ &=3x^2+3xh+h^2\\ &\to3x^2~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=3x^2}$ となる。
  4. 導関数 $f'(x)$ の定義より \begin{align} &\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ =&\dfrac{2(x+h)^3-(x+h)^2-(2x^3-x^2)}{h}\\ =&\dfrac{2(3x^2h+3xh^2+h^3)-(2xh+h^2)}{h}\\ =&\dfrac{(6x^2-2x)h+(3x-1)h^2+h^3}{h}\\ =&6x^2-2x+(3x-1)h+h^2\\ &\to6x^2-2x~(h\to0) \end{align} よって、$\boldsymbol{f'(x)=6x^2-2x}$ となる。

$x^n$の導関数

『導関数を求める』の例題から、$(x)'=1$、$(x^2)'=2x$、$(x^3)'=3x^2$ がわかった。このことより、$n$ が自然数のとき \[(x^n)'=nx^{n-1}\] が推測できる。

$x^n$ の導関数

$f(x)=x^n$ のとき、$f'(x)=nx^{n-1}$ であることを証明せよ。ただし、$n$ は自然数とする。
※FTEXT 数学Aで学んだ『2項定理』を使う。

2項定理より \begin{align} f(x+h)&=(x+h)^n\\ &={_{n}\text{C}_{0}}x^n+{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}h+\\ &\qquad{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h^2+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^n \end{align} であるから \begin{align} &\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ &=\{_{n}\text{C}_{0}x^n+{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}h+{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h^2\\ &\qquad+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^n-x^n\}\div{h}\\ &={_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}+{_{n}\text{C}_{2}}x^{n-1}h+\cdots+{_{n}\text{C}_{n}}h^{n-1}\\ &\blacktriangleleft _{n}\text{C}_{0}=1であるから_{n}\text{C}_{0}x^n=x^n\\ &\quadなので-x^nと打ち消しあった\\ &\to{_{n}\text{C}_{1}}x^{n-1}~(h\to0)\\ &=nx^{n-1} \end{align} つまり、$f'(x)=nx^{n-1}$ である。

また、$f(x)=1$ の導関数は \[\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}=\dfrac{1-1}{h}=0\to0~(h\to0)\] となり、$x^0=1$ であるから次のようにまとめることができる。

$x^n$ の導関数

$n$ は $0$ 以上の整数とする。関数 $f(x)=x^n$ の導関数 $f'(x)$ は \[f'(x)=nx^{n-1}\] となる。

吹き出し$x^n$ の導関数

「$x^n$ の肩の指数 $n$ が降りてきて、その値が一つ減る」などと覚えるとよい。

微分の計算法則

微分の計算法則について

微分の計算に関して、次のような法則が成り立つ。これらを使うと、複雑な関数の微分がより簡単にできる。

微分の計算法則

関数 $f(x)$、$g(x)$ の導関数 $f'(x)$、$g'(x)$ が存在するとき

  1. $\left\{f(x){\pm}g(x)\right\}'=f'(x){\pm}g'(x)$
  2. $\left\{kf(x)\right\}'=kf'(x)$
  3. $\left\{f(x)g(x)\right\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$
    (関数の積の微分法)
  4. $\left\{f(ax+b)\right\}'=af'(ax+b)$

  1. \begin{align} &\left\{f(x){\pm}g(x)\right\}'\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\big[\left\{f(x+h){\pm}g(x+h)\right\}\\ &\qquad-\left\{f(x){\pm}g(x)\right\}\big]\div{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\big[\left\{f(x+h)-f(x)\right\}\\ &\qquad\pm\left\{g(x+h)-g(x)\right\}\big]\div{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\bigg\{\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ &\qquad\pm\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}\bigg\}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ &\qquad\pm\lim_{h\to0}\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}\\ =&f'(x){\pm}g'(x) \end{align}
  2. \begin{align} &\left\{kf(x)\right\}'\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{kf(x+h)-kf(x)}{h}\\ =&k\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\\ =&kf'(x) \end{align}
  3. \begin{align} &\left\{f(x)g(x)\right\}'\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\big[\left\{f(x+h)-f(x)\right\}g(x+h)\\ &\qquad+f(x)g(x+h)-f(x)g(x)\big]\\ &\qquad\div{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\big[\left\{f(x+h)-f(x)\right\}g(x+h)\\ &\qquad+f(x)\left\{g(x+h)-g(x)\right\}\big]\div{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\bigg\{\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}g(x+h)\\ &\qquad+f(x)\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}\bigg\}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}g(x+h)\\ &\qquad+\displaystyle\lim_{h\to0}f(x)\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}\\ =&f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \end{align}
  4. \begin{align} &\left\{f(ax+b)\right\}'\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f(a(x+h)+b)-f(ax+b)}{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f((ax+b)+ah)-f(ax+b)}{h}\\ =&\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{f((ax+b)+ah)-f(ax+b)}{ah}\\ &\qquad\times{a}\\ =&f'(ax+b)\cdot{a}\\ =&af'(ax+b) \end{align}

関数を微分する

次の関数を微分せよ。

  1. $y=2x^2-5x-3$
  2. $y=\dfrac{2}{3}x^3+\dfrac{1}{2}x-\dfrac{1}{3}$
  3. $y=(x^3+1)(x^2+5)$
  4. $y=(5x-2)^4$

  1. 微分すると \begin{align} y'&=(2x^2-5x-3)'\\ &=(2x^2)'-(5x)'-(3)'\\ &=2(x^2)'-5(x)'-(3)'\\ &=2\cdot2x-5-0\\ &=\boldsymbol{4x-5} \end{align}
  2. 微分すると \begin{align} y'&=\left(\dfrac{2}{3}x^3+\dfrac{1}{2}x-\dfrac{1}{3}\right)'\\ &=\left(\dfrac{2}{3}x^3\right)'+\left(\dfrac{1}{2}x\right)'-\left(\dfrac{1}{3}\right)'\\ &=\dfrac{2}{3}(x^3)'+\dfrac{1}{2}\left(x\right)'-\left(\dfrac{1}{3}\right)'\\ &=\dfrac{2}{3}\cdot3x^2+\dfrac{1}{2}-0\\ &=\boldsymbol{2x^2+\dfrac{1}{2}} \end{align}
  3. 微分すると \begin{align} y'&=\left\{(x^3+1)(x^2+5)\right\}'\\ &=(x^3+1)'(x^2+5)\\ &\qquad+(x^3+1)(x^2+5)'\\ &=3x^2(x^2+5)+(x^3+1)2x\\ &=\boldsymbol{5x^4+15x^2+2x} \end{align}
  4. 微分すると \begin{align} y'&=\left\{(5x-2)^4\right\}'\\ &=5\times4(5x-2)^3\\ &=\boldsymbol{20(5x-2)^3} \end{align}

接線・法線の方程式

接線の方程式
接線の方程式

微分係数 $f'(a)$ の意味は、右図の直線 $\text{AT}$ の傾きである。

一般に、曲線 $y=f(x)$ 上の2点 $\text{A}$、$\text{B}$ をとり、点 $\text{B}$ をこの曲線上で点 $\text{A}$ に近づけていくとき、直線 $\text{AB}$ が点 $\text{A}$ を通るある直線 $\text{AT}$ に限りなく近づくならば、この直線 $\text{AT}$ を曲線 $y=f(x)$ の接線 (tangent) といい、この点 $\text{A}$ をこの接線の接点 (point of tangency) という。

つまり

関数 $y=f(x)$ の $x=a$ における微分係数 $f'(a)$ は、この関数のグラフ上の点 $(a,~f(a))$ における接線の傾き

である。

FTEXT 数学Iでも学んだように、傾きが $m$ で点 $(x_0,~y_0)$ を通る直線の方程式は \[y=m(x-x_0)+y_0\] と表せたので、次のようにまとめることができる。

接線の方程式

接線の方程式
接線の方程式

関数 $y=f(x)$ 上の点 $(a,~f(a))$ における接線の方程式は \[y=f'(a)(x-a)+f(a)\] となる。

曲線 $y=f(x)$ 上の点 $(a,~f(a))$ を通り、この点における接線に直交する直線のことを法線 (normal) という。接線の傾き $f'(a)$ に垂直な傾きは、$f'(a)\neq0$ のとき $-\dfrac{1}{f'(a)}$ であるから、法線に関して次のようにまとめることができる。

法線の方程式

法線の方程式
法線の方程式

関数 $y=f(x)$ 上の点 $(a,~f(a))$ における法線の方程式は、$f'(a)\neq0$ のとき \[y=-\dfrac{1}{f'(a)}(x-a)+f(a)\] となる。

$f'(a)=0$ のとき、法線の方程式は $x=a$ となる。

曲線上の点が与えられた場合の接線の求め方

次の曲線において、与えられた $x$ 座標での曲線上の点における接線の方程式を求めよ。また、その点での法線の方程式も求めよ。

  1. $y=x^3-x$、$x=2$
  2. $y=-2x^3+x^2$、$x=-1$
  3. $y=x^4+2x^3$、$x=-2$
  4. $y=-x^5$、$x=1$

  1. まず、$f(x)=x^3-x$ とおくと \[f(2)=2^3-2=6\] であるから曲線上の点の座標は $(2,~6)$ とわかる。また、$f'(x)=3x^2-1$ より \[f'(2)=3\cdot2^2-1=11\] 以上より、求める接線の方程式は \begin{align} &y=11(x-2)+6\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=11x-16} \end{align} 法線の方程式は \begin{align} &y=-\dfrac{1}{11}(x-2)+6\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=-\dfrac{1}{11}x+\dfrac{68}{11}} \end{align}
  2. まず、$f(x)=-2x^3+x^2$ とおくと \[f(-1)=-2(-1)^3+(-1)^2=3\] であるから曲線上の点の座標は $(-1,~3)$ とわかる。また、$f'(x)=-6x^2+2x$ より \[f'(-1)=-6(-1)^2+2(-1)=-8\] 以上より、求める接線の方程式は \begin{align} &y=-8(x+1)+3\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=-8x-5} \end{align} 法線の方程式は \begin{align} &y=\dfrac{1}{8}(x+1)+3\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=\dfrac{1}{8}x+\dfrac{25}{8}} \end{align}
  3. まず、$f(x)=-x^4+2x^3$ とおくと \[f(-2)=-(-2)^4+2(-2)^3=0\] であるから曲線上の点の座標は $(-2,~0)$ とわかる。また、$f'(x)=4x^3+6x^2$ より \[f'(-2)=4(-2)^3+6(-2)^2=-8\] 以上より、求める接線の方程式は \begin{align} &y=-8(x+2)+0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=-8x-16} \end{align} 法線の方程式は \begin{align} &y=\dfrac{1}{8}(x+2)+0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=\dfrac{1}{8}x+\dfrac{1}{4}} \end{align}
  4. まず、$f(x)=-x^5$ とおくと \[f(1)=-1^5=-1\] であるから曲線上の点の座標は $(1,~-1)$ とわかる。また、$f'(x)=-5x^4$ より \[f'(1)=-5\cdot1^4=-5\] 以上より、求める接線の方程式は \begin{align} &y=-5(x-1)-1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=-5x+4} \end{align} 法線の方程式は \begin{align} &y=\dfrac{1}{5}(x-1)-1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=\dfrac{1}{5}x-\dfrac{6}{5}} \end{align}

接線の傾きが与えられた場合の接線の求め方

次の曲線の接線のうち、与えられた傾きとなる接線の方程式を求めよ。

  1. $y=x^2-3x+2$、傾き $3$
  2. $y=2x^2-x+5$、傾き $7$
  3. $y=x^3+3x-2$、傾き $6$
  4. $y=x^3-6x$、傾き $6$

  1. まず、$f(x)=x^2-3x+2$ とおくと、$f'(x)=2x-3$。傾きが $3$ より \begin{align} &2x-3=3\\ \Leftrightarrow~&x=3 \end{align} また、$f(3)=3^2-3\cdot3+2=2$ より、接点の座標は $(3,~2)$。

    よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=3(x-3)+2\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=3x-7} \end{align}

  2. まず、$f(x)=2x^2-x+5$ とおくと、$f'(x)=4x-1$。傾きが $7$ より \begin{align} &4x-1=7\\ \Leftrightarrow~&x=2 \end{align} また、$f(2)=2\cdot2^2-2+5=11$ より、接点の座標は$(2,~11)$。

    よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=7(x-2)+11\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=7x-3} \end{align}

  3. まず、$f(x)=x^3+3x-2$ とおくと、$f'(x)=3x^2+3$。傾きが $6$ より \begin{align} &3x^2+3=6\\ \Leftrightarrow~&x=\pm1 \end{align} また、$f(1)=1^3+3\cdot1-2=2$、$f(-1)=(-1)3+3(-1)-2=-6$ より、接点の座標は $(1,~2)$ または $(-1,~-6)$。

    よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=6(x-1)+2\\ \Leftrightarrow~&y=6x-4\\ &y=6(x+1)-6\\ \Leftrightarrow~&y=6x \end{align} まとめると、$\boldsymbol{y=6x-4,~y=6x}$

  4. まず、$f(x)=x^3-6x$ とおくと、$f'(x)=3x^2-6$。傾きが $6$ より \begin{align} &3x^2-6=6\\ \Leftrightarrow~&x=\pm2 \end{align} また、$f(2)=2^3-6\cdot2=-4$、$f(-2)=(-2)3-6(-2)=4$ より、接点の座標は $(2,~-4)$ または $(-2,~4)$。

    よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=6(x-2)-4\\ \Leftrightarrow~&y=6x-16\\ &y=6(x+2)+4\\ \Leftrightarrow~&y=6x+16 \end{align} まとめると、$\boldsymbol{y=6x-16,~y=6x+16}$

曲線上の点以外の点が与えられた場合の接線の求め方

次の曲線の接線のうち、与えられた点を通る接線の方程式を求めよ。

  1. $y=x^2+1$、$(2,~5)$
  2. $y=2x^2-3x+1$、$(0,~-1)$
  3. $y=x^3-1$、$(0,-17)$
  4. $y=x^3+2x-6$、$(4,~2)$

  1. $f(x)=x^2+1$ とおくと、$f'(x)=2x$。$(t,~f(t))$ における $f(x)$ の接線の方程式は \begin{align} &y=2t(x-t)+t^2+1\\ \Leftrightarrow~&y=2tx-t^2+1 \end{align} となる。これが $(2,~5)$ を通るとき \begin{align} &5=2t\cdot2-t^2-1\\ \Leftrightarrow~&t^2-4t+4=0\\ \Leftrightarrow~&t=2 \end{align} よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=2\cdot2\cdot x-2^2+1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=4x-3} \end{align}
  2. $f(x)=2x^2-3x+1$ とおくと、$f'(x)=4x-3$。$(t,~f(t))$ における $f(x)$ の接線の方程式は \begin{align} &y=(4t-3)(x-t)+2t^2-3t+1\\ \Leftrightarrow~&y=(4t-3)x-2t^2+1 \end{align} となる。これが $(0,~-1)$ を通るとき \begin{align} &-1=-2t^2+1\\ \Leftrightarrow~&2t^2-2=0\\ \Leftrightarrow~&t=\pm1 \end{align} よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=(4\cdot1-3)x-2\cdot1^2+1\\ \Leftrightarrow~&y=x-1\\ &y=\left\{4(-1)-3\right\}x-2(-1)^2+1\\ \Leftrightarrow~&y=-7x-1 \end{align} まとめると、$\boldsymbol{y=x-1,~y=-7x-1}$。
  3. $f(x)=x^3-1$ とおくと、$f'(x)=3x^2$。$(t,~f(t))$ における $f(x)$ の接線の方程式は \begin{align} &y=3t^2(x-t)+t^3-1\\ \Leftrightarrow~&y=3t^2x-2t^3-1 \end{align} となる。これが $(0,~-17)$ を通るとき \begin{align} &-17=-2t^3-1\\ \Leftrightarrow~&-2t^3=-16\\ \Leftrightarrow~&t=2 \end{align} よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=3\cdot2^2x-2\cdot2^3-1\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=12x-17} \end{align}
  4. $f(x)=x^3+2x-6$ とおくと、$f'(x)=3x^2+2$。$(t,~f(t))$ における $f(x)$ の接線の方程式は \begin{align} &y=(3t^2+2)(x-t)+t^3+2t-6\\ \Leftrightarrow~&y=(3t^2+2)x-2t^3-6 \end{align} となる。これが $(4,~2)$ を通るとき \begin{align} &2=12t^2+8-2t^3-6\\ \Leftrightarrow~&-2t^3+12t^2=0\\ \Leftrightarrow~&t=0,~6 \end{align} よって、求める接線の方程式は \begin{align} &y=(3\cdot0^2+2)x-2\cdot0^3-6\\ \Leftrightarrow~&y=2x-6\\ &y=\left\{3\cdot6^2 +2\right\}x-2\cdot6^3-6\\ \Leftrightarrow~&y=110x-438 \end{align} まとめると、$\boldsymbol{y=2x-6,~y=110x-438}$。

2次関数と接線の交点~その1~

2次関数 $f(x)=\dfrac{1}{2}x^2-4x+14$ について以下の問いに答えよ。

  1. 放物線 $y=f(x)$ 上の点 $\text{A}(2,~8)$ における接線 $l$ の方程式を求めよ。
  2. 放物線 $y=f(x)$ 上の点 $\text{B}(8,~14)$ における接線 $m$ の方程式を求めよ。
  3. 放物線 $y=f(x)$ と $l$ と $m$ を同一平面上に描き、$l$ と $m$ の交点の $x$ 座標を求めよ。

  1. $f'(x)=x-4$ であるから、点 $\text{A}(2,~8)$ における接線 $l$ の傾きは \[f'(2)=2-4=-2\] となるので、$l$ の方程式は \begin{align} &y=-2(x-2)+8\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=-2x+12} \end{align}
  2. $f'(x)=x-4$ であるから、点 $\text{B}(8,~14)$ における接線 $m$ の傾きは \[f'(8)=8-4=4\] となるので、$m$ の方程式は \begin{align} &y=4(x-8)+14\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{y=4x-18} \end{align}
  3. $l:y=-2x+12$ と $m:y=4x-18$ を連立して \begin{cases} y=-2x+12\\ y=4x-18 \end{cases} を解くと、$(x,~y)=(5,~2)$。よって、$l$ と $m$ の交点の $x$ 座標は $\boldsymbol{5}$。グラフは右のようになる。

2次関数と接線の交点

放物線 $y=ax^2$ 上の2点 $\text{A}(s,~s^2)$、$\text{B}(t,~t^2)$ における接線をそれぞれ $l$、$m$ とするとき、$l$ と $m$ の交点の $x$ 座標が、点 $\text{A}$、$\text{B}$ の中点の $x$ 座標となることを示せ。ただし、$s\neq{t}$ とする。

まず、接線 $l$ の方程式を求める。

$f(x)=ax^2$ とおくと、$f'(x)=2ax$ であるから、点 $\text{A}(s,~s^2)$ における $l$ の傾きは \[f'(s)=2as\] となるので、$l$ の方程式は \begin{align} &y=2as(x-s)+as^2\\ \Leftrightarrow~&y=2asx-as^2\tag{1}\label{sessenhosennohotesiki1} \end{align} 接線 $m$ も同様にして \[y=2atx-at^2\tag{2}\label{sessenhosennohotesiki2}\] $\eqref{sessenhosennohotesiki1}$ と $\eqref{sessenhosennohotesiki2}$ を連立して \begin{cases} y=2asx-as^2\\ y=2atx-at^2 \end{cases} 上式から下式をひいて $y$ を消去すると \begin{align} &2asx-as^2=2atx-at^2\\ \Leftrightarrow~&2ax(s-t)=a(s^2-t^2)\\ \Leftrightarrow~&x=\dfrac{a(s+t)(s-t)}{2a(s-t)}=\dfrac{s+t}{2} \end{align} よって、$l$ と $m$ の交点の $x$ 座標は、点 $\text{A}$ と点 $\text{B}$ の中点の $x$ 座標 $\dfrac{s+t}{2}$ とつねに等しくなる。

放物線の接線の交点

放物線上の異なる2点 $\text{A}$、$\text{B}$ における接線をそれぞれ $l$、$m$ とするとき、$l$ と $m$ の交点の $x$ 座標は点 $\text{A}$、$\text{B}$ の中点の $x$ 座標と等しい。

吹き出し接線・法線の方程式

『2次関数と接線の交点~その1~』の例題の3でも、接線 $l$ と $m$ の交点の座標が、それら接線の接点の $x$ 座標の中間である $\dfrac{2+8}{2}=5$ になっていることを確認しよう。