漸化式の基本
漸化式の基本
漸化式の基本
初項5,公比3の等比数列 $\{a_n\}$ の一般項は,第1章で学んだ通り,次のように表される.
\[a_n=5\cdot3^{n-1}\]この数列を漸化式で表現すると,次のようになる.
\begin{align} a_{n+1}&=3a_n\tag{1}\label{zenkasikinokihon1}\\ a_1&=5\tag{2}\label{zenkasikinokihon2} \end{align}ここで逆に,条件 $\eqref{zenkasikinokihon1},\eqref{zenkasikinokihon2}$ が与えられた数列を考えると, $\eqref{zenkasikinokihon2}$ より初項が定まり,あとは $\eqref{zenkasikinokihon1}$ に順に $n=1,2,3,\cdots$ と代入することにより
\begin{align} a_2&=3\cdot a_1=15\\ a_3&=3\cdot a_2=45\\ a_4&=3\cdot a_3=135\cdots \end{align}とただ一通りに数列 $\{a_n\}$ が定められる.
このように,数列のある項と別のある項との間に成り立つ関係式のことを,漸化式と定義していた.
漸化式から数列の項を求める(再掲)
次の条件によって定められる数列 $\{a_n\}$ の第5項までを書き出せ.
- $a_1=1,a_{n+1}=a_n+n^2$
- $a_1=2,a_{n+1}=3a_n+2$
- $a_1=1,a_{n+1}=5a_n+2^n$
- $a_1=1,a_{n+1}=5a_n+n$
- $a_1=2,a_2=5,a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$
- $a_1=2,a_{n+1}=\dfrac{2a_n+2}{a_n+3}$
-
\begin{align}
a_1&=1\\
a_2&=1+2^2=5\\
a_3&=5+3^2=14\\
a_4&=14+4^2=30\\
a_5&=30+5^2=55
\end{align}
より, $\boldsymbol{1,5,14,30,55}$ である.
\begin{align} a_1&=2\\ a_2&=3\cdot2+2=8\\ a_3&=3\cdot8+2=26\\ a_4&=3\cdot26+2=80\\ a_5&=3\cdot80+2=242 \end{align}より, $\boldsymbol{2,8,26,80,242}$ である.
\begin{align} a_1&=1\\ a_2&=5\cdot1+2=7\\ a_3&=5\cdot7+2^2=39\\ a_4&=5\cdot39+2^3=203\\ a_5&=5\cdot203+2^4=1031 \end{align}より, $\boldsymbol{1,7,39,203,1031}$ である.
\begin{align} a_1&=1\\ a_2&=5\cdot1+1=6\\ a_3&=5\cdot6+2=32\\ a_4&=5\cdot32+3=163\\ a_5&=5\cdot163+4=819 \end{align}より, $\boldsymbol{1,6,32,163,819}$ である.
\begin{align} a_1&=2\\ a_2&=5\\ a_3&=5\cdot5-6\cdot2=13\\ a_4&=5\cdot13-6\cdot5=35\\ a_5&=5\cdot35-6\cdot13=97 \end{align}より, $\boldsymbol{2,5,13,35,97}$ である.
\begin{align} a_1&=2\\ a_2&=\frac{2\cdot2+2}{2+3}=\frac{6}{5}\\ a_3&=\frac{2\cdot\frac{6}{5}+2}{\frac{6}{5}+3}=\frac{22}{21}\\ a_4&=\frac{2\cdot\frac{22}{21}+2}{\frac{22}{21}+3}=\frac{86}{85}\\ a_5&=\frac{2\cdot\frac{86}{85}+2}{\frac{86}{85}+3}=\frac{342}{341} \end{align}より, $\boldsymbol{2,\dfrac{6}{5},\dfrac{22}{21},\dfrac{86}{85},\dfrac{342}{341}}$ である.
実は上記の例題の問題は全て異なるタイプの漸化式となっている.以降では,それらをひとつひとつピックアップして学んでいく.その前に,それぞれの特徴を簡単に説明しておこう.
- 階差型漸化式
- 線形2項間漸化式
- 変形階差型漸化式( $r^2$ タイプ)
- 変形階差型漸化式( $n^k$ タイプ)
- 線形3項間漸化式
- 分数型漸化式
$a_{n+1}$ と $a_n$ の係数が同じであるタイプ.条件式から階差数列 $b_n=a_{n+1}-a_n$ の式を導くことができ,階差数列から一般項を求める.これについては階差数列ですでに学んだ.
$a_{n+1}$ と $a_n$ の係数が異なっており,かつ定数が加えられるタイプ.特性方程式という特殊な方程式を活用し,一般項を求める.
$a_{n+1}$ と $a_n$ の係数が異なっており,かつ $r^2$ が加えられるタイプ.特性方程式か階差数列を利用して,一般項を求める.
$a_{n+1}$ と $a_n$ の係数が異なっており,かつ $n^k$ が加えられるタイプ.一般的には階差数列を利用して,一般項を求める.
$a_{n+2}$ と $a_{n+1}$ と $a_n$ の3項による関係式が与えられるタイプ.3項間漸化式の特性方程式を活用し,一般項を求める.
分数型となっているタイプ.一般的には分数型漸化式の特性方程式を活用し,一般項を求める.
なお漸化式の基本的な解き方として,等比数列の形に帰着させることを覚えておくと良い.以降では各タイプを具体的にみていくことにする.