いろいろな数
「数とは何か?」この質問に答えるのは難しい。私達は普段から数を使い、(試験以外では)何不自由無く暮らしている。では、昔から人々が「数」をやすやすと利用してきたかというと、そうではない。「数」は有史以来、発見されつづけ、作られつづけたものなのである。この節では、中学までに学んださまざまな「数」を簡単に整理し、「数」を図で表す方法(数直線)を確認する。
自然数
自然数とは何か
ものの数を数えるとき、表現の仕方はいろいろだが、私たちは順序をつけて考えている。 たとえば
- 日本語ならば
- 一、二、三、四、・・・
- 英語ならば
- one、two、three、four、・・・
- ドイツ語ならば
- ein、zwei、drei、vier、・・・
- フランス語ならば
- un、deux、trois、quatre、・・・
愛着ある飼い猫のように、その個性が重要な場合には、数を数えることに意味は無い。 しかし、$100$ 匹の羊を放牧するときのように、ある程度心理的距離のあるものを管理する場合には、数を数えることには大きな意味がある。数を数えておかないと、夕刻、羊を小屋にしまうとき、迷子の羊がいてもわからなくなってしまう。
ものの数を数える行為によって生まれる数、$1$、$2$、$3$、$\cdots$ を自然数 (natural number)という。
自然数
$1,~2,~3,~\cdots$ のような数
たとえば、次の数は全て自然数である。 \[1,~3,~42,~100,~23789\] 私達がすでに使っている $\dfrac{2}{3}$ や $-3$ などは、'数'ではあるが自然数ではない。
自然数の図示
自然数の様子を図で見えるようにするため、以下のようなことを考えよう。
まず、向きのある直線(下図では右向き)上に原点 $\text{O}$ をとり、適当な長さをもった線分を、原点 $\text{O}$ からすきまが無いように直線の向きと同じ側に次々と並べる。そして、線分のつなぎ目に自然数を対応させていく。
自然数の数直線の図
このようにすると、線分のつなぎ目の点として自然数を表現できる。
この自然数の図示によって生まれた、上図のような数を表す直線のことを数直線 (number line) という。数直線上のある点 $\text{X}$ について「点 $\text{X}$ に対応する数が $a$ であること」を、$\text{X}(a)$ と書く。たとえば、下図では点 $\text{X}$ に対応する数が $3$ であるので、$\text{X}(3)$ である。
例のある自然数の数直線の図
整数
整数とは何か
自然数をものの個数と見ている限り、自然数どうしの差のうち、たとえば、$3-5$ には意味が無い。 なぜなら、$3$ 個のものから $5$ 個のものを差し引くことはできないからである。
しかし、$1000$ 円の貸しがある人から $600$ 円借りた場合には、差し引きが
- $1000-600=400$ (円)
- $1000-1400=-400$ (円)
このような、自然数にマイナス($-$)のついた数と、$0$、自然数をあわせて整数 (integer number) という。
たとえば、次の数は全て整数である。 \[-2568,~-23,~-3,~0,~4,~57\]
整数の図示
整数の様子を図でみるためには、自然数のときと同じような操作を、原点 $\text{O}$ の左側にも
整数の数直線の図
今後、数直線上の両端にある記号「$\cdots$」は省略する。
有理数
有理数とは何か
$6$ 個のものを $3$ 個 $1$ 組にすると、$6\div3=2$ 組ができる。 この $2$ という数は、$6$ の $3$ に対する比 (ratio) の値を表している。比の値は整数になることもあるが、$6$ の $5$ に対する比の値、つまり、$6\div5$ は整数では表せない。そこで新しい数 $\dfrac{6}{5}$ をつくる。
ある整数を $a$ とすると、一般に $\dfrac{a}{1}$ と表すことができるので、整数は有理数である。
有理数のうち、$\dfrac{4}{3}$ と $\dfrac{8}{6}$ などは、約分 (reduction) $\dfrac{\not{8}^{4}}{\not{6}_{3}}=\dfrac{4}{3}$ という作業を通じて、どちらも $\dfrac{4}{3}$ として同一視できる。この $\dfrac{4}{3}$ のように、もうこれ以上約分できない有理数のことを
たとえば、次の数は全て有理数である。 \[-\dfrac{8}{3},~-2,~0,~\dfrac{11}{19},~\dfrac{18}{9},~26\]
有理数
整数 $a$ と $0$ でない整数 $b$ によって $\dfrac{a}{b}$ の形で表せる数を、有理数という。
有理数では、$0$ を分母とすることはない、すなわち $0$ で割り算することはないことに注意しよう。もし、仮に $\dfrac{1}{0}$ などという数を認めて、その値がたとえば $0$ だったとすると、$\dfrac{1}{0}=0$ の両辺に、$0$ を掛けて
\[\begin{align}
&\dfrac{1}{\not{0}}\times\not{0}=0\times0\\
\Leftrightarrow&1=0
\end{align}\]
というおかしな結果(
有理数どうしの比の値
たとえば、有理数 $\dfrac{2}{3}$ と有理数 $\dfrac{10}{7}$ の比の値 $\dfrac{2}{3}\div\dfrac{10}{7}$ は、$\dfrac{\dfrac{2}{3}}{\dfrac{10}{7}}$ のように表すこともできる。このように、$\dfrac{a}{b}$ の分子または分母が、さらに分数で表されているとき、この全体の分数を
複分数は、「分母にある分数の分母」と「分子にある分数の分母」の最小公倍数を分母と分子に掛けることにより、普通の分数の形(分母も分子も整数の形)になおすことができる。よって、複分数も有理数である。
$\dfrac{\frac{2}{3}}{\frac{10}{7}}$ の場合は、3と7の最小公倍数21を分母と分子に掛けて次のようになる。 \[\begin{align}\dfrac{\dfrac{2}{3}}{\dfrac{10}{7}}&=\dfrac{\dfrac{2}{3}\times21}{\dfrac{10}{7}\times21}\\&=\dfrac{\dfrac{2}{\not{3}^{1}}\times\not{21}^{7}}{\dfrac{10}{\not{7}^{1}}\times\not{21}^{3}}=\dfrac{\not{2}^{1}\times7}{\not{10}^{5}\times3}=\dfrac{7}{15}\end{align}\]
複分数
次の複分数を、普通の分数の形になおしなさい。
- $\dfrac{\dfrac{1}{4}}{\dfrac{1}{7}}$
- $\dfrac{\dfrac{5}{8}}{\dfrac{25}{9}}$
- $\dfrac{\dfrac{11}{6}}{0.3}$
- $\dfrac{\dfrac{1}{4}}{\dfrac{1}{7}}=\dfrac{\dfrac{1}{4}\times28}{\dfrac{1}{7}\times28}=\dfrac{\dfrac{1}{\not{4}^{1}}\times\not{28}^{7}}{\dfrac{1}{\not{7}^{1}}\times\not{28}^{4}}=\boldsymbol{\dfrac{7}{4}}$
- $\begin{align}\dfrac{\dfrac{5}{8}}{\dfrac{25}{9}}&=\dfrac{\dfrac{5}{8}\times72}{\dfrac{25}{9}\times72}\\&=\dfrac{\dfrac{5}{\not{8}^{1}}\times\not{72}^{9}}{\dfrac{25}{\not{9}^{1}}\times\not{72}^{8}}=\dfrac{\not{5}^{1}\times9}{\not{25}^{5}\times8}=\boldsymbol{\dfrac{9}{40}}\end{align}$
- $\dfrac{\dfrac{11}{6}}{0.3}=\dfrac{\dfrac{11}{6}\times30}{0.3\times30}=\dfrac{\dfrac{11}{\not{6}^{1}}\times\not{30}^{5}}{9}=\boldsymbol{\dfrac{55}{9}}$
有理数と少数
有理数は筆算により 小数 (decimal number) になおすことができる。
有限小数と無限小数
たとえば、右図のような筆算を行うと
- $\dfrac{5}{4}=1.25$ のように、割りきれて 有限小数 (finite decimal) になるもの
- $\dfrac{7}{22}=0.3181818\cdots$ のように、割り切れず 無限小数 (infinite decimal) になるもの
循環小数は、循環する部分がわかるように、記号「$\cdot$」(ドット)を使う。たとえば、$\dfrac{7}{22}$ は $\dfrac{7}{22}=0.3181818\cdots=0.3\dot{1}\dot{8}$ と表す。
有理数と循環小数
分数は小数で、小数は分数で表せ。
- $\dfrac{9}{16}$
- $\dfrac{5}{37}$
- $0.625$
- $0.\dot{4}2\dot{9}$
- (割り算を実行すればよい) $\boldsymbol{0.5625}$
- (割り算を実行すればよい) $\boldsymbol{0.\dot{1}3\dot{5}}$
- $0.625$ を分数で表すと $\dfrac{625}{1000}$。約分して $\boldsymbol{\dfrac{5}{8}}$ となる。
- まず \[x=0.429429429\cdots\tag{1}\label{yuurisuu1}\] とおく。循環の周期をそろえるために、これを1000倍すると \[1000x=429.429429\cdots\tag{2}\label{yuurisuu2}\] となる。$\eqref{yuurisuu2}-\eqref{yuurisuu1}$より \[\begin{array}{rrlrl}&1000x&=&429&.429429\cdots\\-)&x&=&0&.429429\cdots\\\hline&999x&=&429\end{array}\] よって、$x=\dfrac{429}{999}=\boldsymbol{\dfrac{143}{333}}$となる。
有理数の図示
$\dfrac{1}{2}$ を数直線上で表すには、下図のように $0$ と $1$ をつなぐ線分の2等分点をとり、その点に$\dfrac{1}{2}$ を対応させればよい。また、 $\dfrac{5}{2}$ ならば $\dfrac{1}{2}\times5$ と考えて、$0$ と$\dfrac{1}{2}$ をつなぐ線分を5つつないで得られる線分の右端の点を対応させればよい。
有理数の数直線の図
一般に、$\dfrac{a}{b}$ を数直線上で表すには、まず $0$ と $1$ をつなぐ線分の $b$ 等分点をとり、そのうち原点に一番近い点に $\dfrac{1}{b}$ を対応させる。そして、$0$ と $\dfrac{1}{b}$ をつなぐ線分を $a$ 個つないで得られる線分の端の点を、$\dfrac{1}{b}{\times}a$ に対応させればよい。
有理数の間には必ず有理数がある
例えば $\dfrac{1}{3}$ と $\dfrac{2}{3}$ の間には \[\dfrac{1}{3}=\dfrac{10}{30}\lt\overset{10と20の平均値}{\dfrac{15}{30}}\lt\dfrac{20}{30}=\dfrac{2}{3}\] として、$\dfrac{15}{30}=\dfrac{1}{2}$ という有理数が存在する。
有理数の間には必ず有理数がある
一般に、2つの有理数 $\dfrac{a}{b},~\dfrac{c}{d}~\left(\dfrac{a}{b}\lt\dfrac{c}{d}\right)$ において \[\dfrac{a}{b}=\dfrac{ad}{bd}\lt\overset{adとbcの平均値}{\dfrac{\dfrac{ad+bc}{2}}{bd}}\lt\dfrac{bc}{bd}=\dfrac{c}{d}\] とすれば、2つの有理数の間に新しい有理数を考えることができる。
こうして、2つの異なる有理数をどのように選んでも、その間に必ず有理数が存在することがわかる。
2つの異なる有理数の間には必ず有理数があるのだから、これを数直線上のいろいろな場所で考えると、数直線上には有理数に対応する点がびっしり詰まっているとわかる。
無数の有理数の数直線の図
実数
無理数とは何か
さきほどの有理数の話から、数直線上にはびっしりと有理数が詰まっていることがわかった。では、今度は逆に、数直線上の点で表される値のすべてが、有理数として表せるのかについて考えてみよう。
無理数を数直線で表した図
たとえば、2辺の長さがそれぞれ $1$ である直角二等辺三角形の斜辺の長さ $x$ は、三平方の定理より \begin{align}&1^2+1^2=x^2\\{\Leftrightarrow}&x^2=2\end{align} すなわち、$x=\sqrt{2}$ で表される値であるが、これは下の図のように数直線上の点として表すこともできる。
では、この点に対応する有理数はあるのか、つまり、$\sqrt{2}$ は有理数なのだろうか。 それを次の例題で確認しよう。
暗記有理数ではないことの証明
$\sqrt{2}$ が有理数でないことを証明せよ。
(ある事柄を証明するとき、仮にその事柄が間違っているものとして話をすすめると矛盾が導かれることを示し、そのことによってもとの事柄が成り立つと結論する論法がよく用いられる。この論法のことを背理法 (reduction to absurdity) という。背理法について詳しくはFTEXT 数学Aで学ぶ。)
$\sqrt{2}$ が有理数であると仮定する。つまり
\[\sqrt{2}=\dfrac{a}{b}\]
と表される「
この両辺を2乗すると \begin{align} &2=\dfrac{a^2}{b^2}\\ \therefore&2b^2=a^2\tag{1}\label{murisuu1} \end{align} ここで、左辺は $2$ の倍数なので、右辺 $a^2$ も $2$ の倍数である。したがって、$a$ も $2$ の倍数である。
そこで、$a=2a'$ ( $a'$ は整数)とおくと、$\eqref{murisuu1}$ は \[\begin{align} &2b^2=(2a')^2\\ \Leftrightarrow~~&2b^2=4{a'}^2\\ \therefore&b^2=2{a'}^2 \end{align}\] ここで、右辺は $2$ の倍数なので、左辺 $b^2$ も $2$ の倍数となり、$b$ も $2$ の倍数となる。しかし、そうすると、$a$、$b$ がともに $2$ の倍数ということになり、最初の「既約分数である」という仮定に矛盾する。したがって、$\sqrt{2}$ は有理数ではない。
この例題からわかるように、数直線上の点として表されるような値でも、有理数ではない数が存在する。そして、その数を無理数 (irrational number) という。
循環しない無限小数
$\sqrt{2}$ は、$2$ 乗して $2$ になる正の数である。$1^2=1$、$2^2=4$ であるから $\sqrt{2}$ は $1$ と $2$ の間にある。ここで、$1.4^2=1.96\lt2$、$1.5^2=2.25\gt2$ であるから \[1.4\lt\sqrt{2}\lt1.5\] がいえる。さらに、$1.41^2=1.9881\lt2$、$1.42^2=2.0164\gt2$ であるから \[1.41\lt\sqrt{2}\lt1.42\] がいえる。同じようにして \[1.41421\lt\sqrt{2}\lt1.41422\] などがいえ、$\sqrt{2}$ にいくらでも近い有限小数を次々に求めることができる。
これを限りなく繰り返すとき、両辺に現れる無限小数 \[1.4142135623\cdots\] は $\sqrt{2}$ を表すと考えられ、この小数は循環することがない。もし、循環してしまうと $\sqrt{2}$ が有理数になってしまう。
なお、無理数の近似値を筆算によって求める方法については、『付録』を参照せよ。
実数とは何か
数直線上の点として表される数、すなわち有理数と無理数をあわせた数を実数 (real number) という。
有理数と無理数を考えることにより、数直線上の点はすきま無くみっちり埋まる。
たとえば \[-\sqrt{23},~-2\sqrt{3},~5\sqrt{2},~\sqrt{987}\] などは、どれも無理数である。また \[\begin{align} \text{円周率}~&\pi=3.1415926\cdots\\ \text{ネイピア数}~&e=2.7182818\cdots \end{align}\] も無理数であることが知られている。
今後、$a$、$b$、$x$ など、文字で数を表すとき、特にことわりが無ければ、その数は実数であるとする。
以上見てきたいろいろな数について、まとめると次のようになる。
数の分類
数の分類
次の実数について、以下の問に答えよ。 \[\begin{align}&3,~-2,~0,~\dfrac{2}{5},~-\dfrac{2}{5},~\sqrt{3},\\&1.\dot{5}\dot{2},~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2,~2\pi\end{align}\]
- 自然数を選べ。
- 整数を選べ。
- 有理数を選べ。
- 無理数を選べ。
- $\boldsymbol{3,~\dfrac{36}{6},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}$
- $\boldsymbol{3,~-2,~0,~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}$
- $\begin{align}&\boldsymbol{3,~-2,~0,~\dfrac{2}{5},~-\dfrac{2}{5},}\\&\boldsymbol{1.\dot{5}\dot{2},~\dfrac{36}{6},~-\sqrt{16},~\left(\sqrt{5}~\right)^2}\end{align}$
- $\boldsymbol{\sqrt{3},~2\pi}$
絶対値
絶対値とは何か
絶対値についての数直線の図
数直線上で、原点 $\text{O}$ と点 $\text{A}(a)$ の距離のことを $a$ の絶対値 (absolute value) といい、$|a|$ と書く。たとえば \[|2|=2,~|-4|=4\] である。この例からわかるように
- 正の数はその値がそのまま絶対値となり、
- 負の数は符号を変えた数が絶対値となる。
絶対値
$|a|$ は場合に分けて \[|a|=\begin{cases}a&(a\geqq0)\\-a&(a\lt0)\end{cases}\] と表すことができる。絶対値について \[|a|\geqq0~~,~~|a|=|-a|\] が成り立つ。
絶対値を示す数直線
数直線上の2点 $\text{A}(a)$ と $\text{B}(b)$ の距離 $\text{AB}$ は、$a{\leqq}b$ のときでも、$b{\lt}a$ のときでも、ともに \[\text{AB}=|b-a|\] で表すことができる。
暗記絶対値の性質
$a$、$b$ に関して次の等式が成り立つことを証明せよ。ただし、3.では $b\neq0$ とする。
- $|a|^2=a^2$
- $|ab|=|a||b|$
- $\left|\dfrac{a}{b}\right|=\dfrac{|a|}{|b|}$
絶対値の中身が「$0$ 以上か」「負か」で、絶対値の外れ方が違ってくるので、場合に分けて証明する。
- a) $a\geqq0$ のとき、$|a|=a$ であるから \[(左辺)=|a|^2=a^2=(右辺)\]
- b) $a\lt0$ のとき、$|a|=-a$ であるから \begin{align}(左辺)&=|a|^2=(-a)^2\\&=a^2=(右辺)\end{align}
- 右欄外の表のように、4つの場合に分けて考える。
- 1) $a\geqq0$、$b\geqq0$ のとき
$ab\geqq0$、$|a|=a$、$|b|=b$ であるから \[(左辺)=|ab|=ab\] \[(右辺)=|a||b|=ab\] となり成立。 - 2) $a\geqq0$、$b\lt0$ のとき
$ab\leqq0$、$|a|=a$、$|b|=-b$ であるから \[(左辺)=|ab|=-ab\] \[(右辺)=|a||b|=a(-b)=-ab\] となり成立。 - 3) ii)の証明において、$a$ と $b$ を入れ替えればiii)の証明になっているので、成立する。
- 4) $a\lt0$、$b\lt0$ のとき
$ab\gt0$、$|a|=-a$、$|b|=-b$ であるから \[(左辺)=|ab|=ab\] \[(右辺)=|a||b|=(-a)(-b)=ab\]
- 1) $a\geqq0$、$b\geqq0$ のとき
- まず、
$\left|\dfrac{1}{b}\right|=\dfrac{1}{|b|}\tag{1}\label{zettaiti1}$ であることを示す。
- a) $b\gt0$ のとき
$\dfrac{1}{b}\gt0$、$|b|=b$ であるから \[(\eqref{zettaiti1}の左辺)=\left|{\dfrac{1}{b}}\right|=\dfrac{1}{b}\] \[(\eqref{zettaiti1}の右辺)=\dfrac{1}{|b|}=\dfrac{1}{b}\] となり成立。 - b) $b\lt0$ のとき
$\dfrac{1}{b}\lt0$、$|b|=-b$ であるから \[(\eqref{zettaiti1}の左辺)=\left|{\dfrac{1}{b}}\right|=-\dfrac{1}{b}\] \[(\eqref{zettaiti1}の右辺)=\dfrac{1}{|b|}=\dfrac{1}{-b}=-\dfrac{1}{b}\] となり成立。
- a) $b\gt0$ のとき
絶対値の性質
$a$、$b$に関して次の等式が成り立つ。ただし、3では$b\neq0$とする。
- $|a|^2=a^2$
- $|ab|=|a||b|$
- $\left|\dfrac{a}{b}\right|=\dfrac{|a|}{|b|}$
吹き出し絶対値の性質
絶対値に関するこれらの等式は、式変形の方法の1つとしてこれからよく用いる。初めは、
- は2乗すると絶対値は外れる(付く)
- は掛け算のところで絶対値は切れる(つながる)
- は割り算のところで絶対値は切れる(つながる)