式の計算
この章で学ぶことは、大きく分けて2つある。1つは、式をつぎつぎに掛けていって細かい式の和で表すこと(展開)であり、 もう1つは、細かい式の和を大きな式の積で表すこと(因数分解)である。どちらも一見複雑な式を見通しよく扱うために大切な方法である。
多項式
単項式とは何か
$3abx^2$ のように、いくつかの文字や数を掛け合わせてできる式を単項式 (monomial) という。
係数の図
単項式において、数の部分を係数 (coefficien) といい、掛け合わせる文字の個数を次数 (degree) という。たとえば、$3abx^2$ の係数は $3$ で、次数は $4$ である(右図参照)。
特に、$1$ や $-3$ などの数は、文字を含まない単項式とみなし、次数は $0$ とする。ただし、単項式 $0$ については次数を考えないものとする。
また、$0$ でない2つの単項式について、次数が $m$ の式と次数が $n$ の式の積は、次数 $m+n$ の式になる。
単項式において、特定の文字に着目することがある。このとき、その他の文字を数と同様に扱う。たとえば、単項式 $3abx^2$ では以下のようになる。
文字 $x$ の単項式と考えた場合 | $3abx^2=(3ab)x^2$、次数は $2$、係数は $3ab$ | |
文字 $a$ の単項式と考えた場合 | $3abx^2=(3bx^2)a$、次数は $1$、係数は $3bx^2$ |
単項式の次数
次の多項式について、[ ]内の文字に着目したときの次数と係数を答えよ。
- $3x^4y^5$ [$x$], [$y$], [$x$と$y$]
- $2abxy^2$ [$x$], [$y$], [$x$と$y$]
- $x$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{4}$、係数は $\boldsymbol{3y^5}$ である。
- $y$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{5}$、係数は $\boldsymbol{3x^4}$ である。
- $x$ と $y$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{9}$、係数は $\boldsymbol{3}$ である。
- $x$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{1}$、係数は $\boldsymbol{2aby^2}$ である。
- $y$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{2}$、係数は $\boldsymbol{2abx}$ である。
- $x$ と $y$ に着目すると、次数は $\boldsymbol{3}$、係数は $\boldsymbol{2ab}$ である。
多項式とは何か
$2a-3b2+ab$ のように、いくつかの単項式の和や差として表される式を多項式 (polynomial) という(整式 (integralexpression) ともいう)。
多項式の項のうち、文字の部分が同じであるものを同類項 (similarterm) という。多項式は、同類項を1つにまとめて簡単にすることができる。
たとえば、多項式 $5a^2b+3ab−a^2b+2ab$ は、次のようにまとめることができる。 \begin{align} &5a^2+3ab-ab^2+2ab\\ &=(5-1)a^2b+(3+2)ab\\ &\blacktriangleleft 同類項どうしは係数を合わせて1つにまとめる\\ &=4a^2b+5ab \end{align}
多項式においても、特定の文字以外を、数とみなすことがある。
$0$ 次の項のことを、定数項 (constant term) という。
多項式の次数
次の多項式を同類項でまとめよ。また、[]内の文字に着目したとき何次式か。
- $x^3+xy^2-3xy^2[x]、[y]$
- $\begin{align}x^4&+(a^2-a)x^3y+2bxy^2\\&+ax^3y-4bxy^2[x]、[y]\end{align}$
- 同類項でまとめると
\[x^3+xy^2-3xy^2=x^3-2xy^2\]
- $x$ に着目すると、項 $x^3$ の次数は $3$、項 $2xy^2$ の次数は $1$ であるから、
3次式
である。 - $y$ に着目すると項 $x^3$ の次数は $0$ (定数項)、項 $-2xy^2$ の次数は $2$ であるから、
2次式
である。
- $x$ に着目すると、項 $x^3$ の次数は $3$、項 $2xy^2$ の次数は $1$ であるから、
-
同類項でまとめると
\begin{align}
&x^4+(a^2-a)x^3y\\
&+2bxy^2+ax^3y-4bxy^2\\
=&x^4+(a^2-a+a)x^3y+(2-4)bxy^2\\
=&\boldsymbol{x^4+a^2x^3y-2bxy^2}
\end{align}
- $x$ に着目すると項 $x^4$ の次数は $4$、項 $a^2x^3y$ の次数は $3$、項 $-2bxy^2$ の次数は $1$ であるから、
4次式 である。 - $y$ に着目すると項 $x^4$ の次数は $0$、項 $a^2x^3y$ の次数は $1$、項 $-2bxy^2$ の次数は $2$ であるから、
2次式 である。
- $x$ に着目すると項 $x^4$ の次数は $4$、項 $a^2x^3y$ の次数は $3$、項 $-2bxy^2$ の次数は $1$ であるから、
降べき・昇べきの順
多項式は、ある文字に着目した次数についてまとめると、式が扱いやすい。
たとえば、多項式 $-3x^2-7+4x^3+x$ を
- ($x$ について)次数が低くなる順に整理すると $4x^3-3x^2+x-7$
- ($x$ について)次数が高くなる順に整理すると $-7+x-3x^2+4x^3$
- 次数が低くなる順に多項式を整理することを降べきの順 (descending order of power) に整理するといい
- 次数が高くなる順に多項式を整理することを昇べきの順 (ascending order of power) に整理するという。
吹き出し降べきの順
今後は基本的に、降べきの順に整理する習慣をつけよう。
いくつかの例外を除き(その場合は降べきの順でなくてよい)ほとんどの場合、それによって式の見通しがよくなる。
降べきの順
次の多項式を $x$ について降べきの順に整理し、各項の係数をいえ。
- $3x^2-12xy+4+3x^2-2x+5$
- $2x^2+2y^2-3xy+4y^2+2xy-x^2$
- まず同類項でまとめてから、降べきの順に整理する。 \begin{align} &3x^2-12xy+4+3x^2-2x+5\\ =&(3+3)x^2+(-12y-2)x+(4+5)\\ =&\boldsymbol{6x^2+(-12y-2)x+9} \end{align} これより、$x^2$ の係数は $6$、$x$ の係数は $-12y-2$、定数項は $9$ である。
- まず同類項でまとめてから、降べきの順に整理する。 \begin{align} &2x^2+2y^2-3xy+4y^2+2xy-x^2\\ =&(2-1)x^2+(2-3)xy+(2+4)y^2\\ =&\boldsymbol{x^2-xy+6y^2} \end{align} これより、$x^2$ の係数は $1$、$x$ の係数は $-y$、定数項は $6y^2$ である。
多項式の加法・減法
多項式の加法・減法について
多項式の加法と減法は、同類項をまとめることによって行われる。
たとえば、$A=3x^2-2x+1$、$B=2x^2+7x-3$ のとき
多項式の加法 \begin{align}A+B&=(3x^2-2x+1)+(2x^2+7x-3)\\ &=3x^2-2x+1+2x^2+7x-3\\ &=(3+2)x^2+(-2+7)x+(1-3)\\ &=5x^2+5x-2\end{align}
多項式の減法 \begin{align}A-B &=(3x^2-2x+1)-(2x^2+7x-3)\\ &=3x^2-2x+1-2x^2-7x+3\\ &=(3-2)x^2+(-2-7)x+(1+3)\\ &=x^2-9x+4\end{align}
多項式の加法と減法
$A=3x^2-2x+1$、$B=2x^2+7x-3$ のとき、次の式の計算をしなさい。
- $A+B$
- $A-B$
- \begin{align} A+B&=(3x^2-2x+1)\\ &+(2x^2+7x-3)\\ &=3x^2-2x+1+2x^2+7x-3\\ &=(3+2)x^2\\&+(-2+7)x+(1-3)\\ &=\boldsymbol{5x^2+5x-2} \end{align}
- \begin{align} A-B&=(3x^2-2x+1)\\ &-(2x^2+7x-3)\\ &=3x^2-2x+1-2x^2-7x+3\\ &=(3-2)x^2\\&+(-2-7)x+(1+3)\\ &=\boldsymbol{x^2-9x+4}\\ \end{align} 上の計算は、同類項を縦にそろえて並べ、次のようにもできる。
多項式の加法と減法の解答の図
多項式の乗法
指数と指数法則
指数
実数 $a$ の $n$ 個の積 $\overbrace{a\times a\times\cdots\times{a}}^{{n}}$ を $a^n$ と書き、「$a$ の $n$ 乗」と読む(右図参照)。このとき、$a$ の右上に書かれた数 $n$ のことを指数 (exponent) という。
指数が $1$ のときは指数を書かない。実際、$a^1=a$ である。
$a^2$ のことを $a$ の平方 (square)、$a^3$ のことを $a$ の立法 (cube) という。
また、$a,~a^2,~a^3,~\cdots$ を総称して $a$ の指数 (power) という。
累乗に関して、一般に次のような指数法則 (power law) が成り立つ
指数法則
$m$、$n$ が自然数のとき一般に次のような性質が成り立つ。
- $a^ma^n=a^{m+n}$
- $(a^m)^n=a^{mn}$
- $(ab)^n=a^nb^n$
- 例1. \begin{align} &a^2\times a^4=(\underbrace{a\times a}_{2})\times(\underbrace{a\times{a}\times a\times a}_{4})\\ &=a^6~(=a^{2+4}) \end{align}
- 例2. \begin{align}(a^2)^4&=(\underbrace{a\times a}_{2})\times(\underbrace{a\times{a}}_{2})\\ &\times(\underbrace{a\times a}_{2})\times(\underbrace{a\times a}_{2})=a^8~(=a^{2\times 4}) \end{align}
- 例3. \begin{align} (a\times b)^4=(a\times b)&\times(a\times b)\times(a\times b)\\ &\times(a\times b)=a^4\times b^4 \end{align}
指数法則の練習
次の式を計算して簡単にせよ。
- $x^2\times{x^3}$
- $(x^2)^3$
- $(x^3)^5$
- $(xy^2)^3$
- $x^2\times{x^3}=x^{2+3}=\boldsymbol{x^5}$ $\blacktriangleleft$ 指数法則の1.を使った。
- $(x^2)^3=x^{2\times3}=\boldsymbol{x^6}$ $\blacktriangleleft$ 指数法則の2.を使った。
- $(x^3)^5=x^{3\times5}=\boldsymbol{x^{15}}$ $\blacktriangleleft$ 指数法則の2.を使った。
- $(xy^2)^3=x^3(y^2)^3=\boldsymbol{x^3y^6}$ $\blacktriangleleft$ 指数法則の3.を使った。
多項式の乗法について
分配法則 $A(B+C)=AB+AC$ や $(A+B)C=AC+BC$ は多項式においても成立する。 これを使って、たとえば $(x^2+3)(x^2-4x+5)$ は次のように計算できる。 \begin{align} &(x^2+3)(x^2-4x+5)\\ =&(x^2+3)A\\ =&x^2A+3A\\ =&x^2(x^2-4x+5)+3(x^2-4x+5)\\ =&x^4-4x^3+5x^2+3x^2-12x+15\\ =&x^4-4x^3+8x^2-12x+15 \end{align} ここでは、$x^2-4x+5$ を $A$ とおいて計算したが、それを省略して次のように計算することもできる。
多項式の分配
このように、多項式どうしの積を計算して単項式だけの和にすることを展開 (expansion) するという
多項式の展開
次の式を展開せよ。
- $(x+3)(2x+1)$
- $(4x-1)(2x+3)$
- $(x+4)(2x^2-8x+5)$
- $(3x-x^2)(5x^2-2x+1)$
- \begin{align} &(x+3)(2x+1)\\=&2x^2+x+6x+3\\ =&\boldsymbol{2x^2+7x+3} \end{align}
- \begin{align} &(4x-1)(2x+3)\\=&8x^2+12x-2x-3\\ =&\boldsymbol{8x^2+10x-3} \end{align}
- \begin{align} &(x+4)(2x^2-8x+5)\\ =&2x^3-8x^2+5x+8x^2-32x+20\\ =&\boldsymbol{2x^3-27x+20} \end{align}
- \begin{align} &(3x-x^2)(5x^2-2x+1)\\ =&15x^3-6x^2+3x-5x^4+2x^3-x^2\\ =&\boldsymbol{-5x^4+17x^3-7x^2+3x} \end{align}
多項式の乗法の公式
中学の復習
以下の公式はすでに中学で学習している。 左の「i.うまい計算のやり方」で、計算できるよう繰り返し練習しよう。
平方の公式
1.
- $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$
- $(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$
- うまい計算のやり方 \begin{align} (3x+2)^2&=\underbrace{9x^2+2\cdot(3x)\cdot2+4}_{慣れると省略できる}\\ &=9x^2+12x+4 \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} (3x+2)^2&=(3x+2)(3x+2)\\ &=9x^2+6x+6x+4\\ &=9x^2+12x+4 \end{align}
和と差の積の公式
2.$(a+b)(a−b)=a^2−b^2$
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(5x+2y)(5x-2y)\\ &=\underbrace{(5x)^2-(2y)^2}_{慣れると省略できる}\\ &=25x^2-4y^2 \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(5x+2y)(5x-2y)\\ &=25x^2-10xy+10yx-4y^2\\ &=25x^2-4y^2 \end{align}
1次式の積
3.$(x + b)(x + d) = x^2 + (b + d)x + bd$
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(x+3y)(x-4y)\\ &=\underbrace{x^2+(3y-4y)x+(3y)\cdot(-4y)}_{慣れると省略できる}\\ &=x^2-xy-12y^2 \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(x+3y)(x-4y)\\ &=x^2-4xy+3yx-12y^2\\ &=x^2-xy-12y^2 \end{align}
1次式の積
$(ax+b)(cx+d)$ を展開すると
式の展開
であるから、$(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd$ が成り立つ。
これを使い、たとえば $(2x+3y)(5x-4y)$ は次のように計算する。
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(2x+3y)(5x-4y)\\ &=\underbrace{10x^2+(-8y+15y)x+(3y)\cdot(-4y)}_{慣れると省略できる}\\ &=10x^2+7xy-12y^2 \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(2x+3y)(5x-4y)\\ &=10x^2-8xy+15yx-12y^2\\ &=10x^2+7xy-12y^2 \end{align}
1次式の積の公式
4.$(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd$
吹き出し1次式の積
この公式 $x$ の項 $(ad+bc)$ は「(外側の項の掛け算)+(内側の項の掛け算)」と覚えると よい。
多項式の展開~1次式の積の公式
次の多項式を展開し整理せよ。
- $(x+2)(2x+1)$
- $(2x+3)(3x-2)$
- $(5x-3y)(2x-y)$
- $\left(\dfrac{1}{3}x-2y\right)\left(2x-\dfrac{1}{2}y\right)$
- $(x+2)(2x+1)=\boldsymbol{2x^2+5x+2}$
- $(2x+3)(3x-2)=\boldsymbol{6x^2+5x-6}$
- \begin{align} &(5x-3y)(2x-y)\\ =&\boldsymbol{10x^2-11xy+3y^2} \end{align}
- \begin{align} &\left(\dfrac{1}{3}x-2y\right)\left(2x-\dfrac{1}{2}y\right)\\ =&\dfrac{2}{3}x^2+\left(-\dfrac{1}{6}-4\right)xy+y^2\\ =&\boldsymbol{\dfrac{2}{3}x^2-\dfrac{25}{6}xy+y^2} \end{align}
立法の公式1
$(a+b)^3$ を展開すると
3乗の式の展開
であるから、$(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$ が成り立つ。
これを使い、たとえば $(2x+y)^3$ は次のように計算する。
- うまい計算のやり方(○) \begin{align} &(2x+y)^3\\ =&\underbrace{(2x)^3+3\cdot(2x)^2 y+3\cdot(2x) y^2+y^3}_{慣れると省略できる}\\ =&8x^3+12x^2y+6xy^2+y^3 \end{align}
- 普通の計算のやり方(×) \begin{align} &(2x+y)^3\\ =&(2x+y)(2x+y)^2\\ =&(2x+y)(4x^2+4xy+y^2)\\ =&8x^3+8x^2y+2xy^2+4x^2y+4xy^2+y^3\\ =&8x^3+12x^2y+6xy^2+y^3 \end{align}
立方の公式1
5.
- $(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$
- $(a−b)^3=a^3−3a^2b+3ab^2−b^3$
吹き出し立法の公式1
参考として \begin{align} &(a+b)^4=a^4+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4\\ &(a+b)^5\\ =&a^5+5a^4b+10a^3b^2+10a^2b^3+5ab^4+b^5 \end{align} である。一般の $(a+b)^n$ の展開についてはFTEXT数学Aで学ぶ。
立法の公式2
$(a+b)(a^2-ab+b^2)$ を展開すると
展開式
であるから、$(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$ が成り立つ。
これを使い、たとえば $(3x+1)(9x^2-3x+1)$ は次のように計算する。
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(3x+1)(9x^2-3x+1)\\ &=\underbrace{(3x+1)\left\{(3x)^2-(3x)\cdot1+1^2\right\}}_{慣れると省略できる}\\ &=27x^3+1 \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(3x+1)(9x^2-3x+1)\\ &=27x^3-9x^2+3x+9x^2-3x+1\\ &=27x^3+1 \end{align}
また、同様に $(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$ も成り立つ。
立法の公式2
6.
- $(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$
- $(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$
吹き出し無題
左辺の $a\pm b$ と右辺の $a^3\pm b^3$ は符号が一致する、と覚えておこう。ただし、この公式を展開のために使う機会はほとんどなく、立方の公式2の逆利用における「因数分解」でよく利用される。
多項式の展開~立方の公式~
次の多項式を展開し整理せよ。
- $(2x+1)^3$
- $(3a-2)^3$
- $(x+2)(x^2-2x+4)$
- $(ab-3)(a^2b^2+3ab+9)$
- \begin{align} &(2x+1)^3\\ =&(2x)^3+3\cdot(2x)^2\cdot1\\ &+3\cdot(2x)\cdot1^2+1^3\\ =&\boldsymbol{8x^3+12x^2+6x+1} \end{align}
- \begin{align} &(3a-2)^3\\ =&(3a)^3+3\cdot(3a)^2\cdot(-2)+(-2)^3\\ =&\boldsymbol{27a^3-54a^2+36a-8}\end{align}
- \begin{align} &(x+2)(x^2-2x+4)\\ =&x^3+2^3=\boldsymbol{x^3+8} \end{align}
- \begin{align} &(ab-3)(a^2b^2+3ab+9)\\ =&(ab)^3-3^3=\boldsymbol{a^3b^3-27} \end{align}
多項式の展開の練習~その1~
- \[\left(\dfrac{1}{2}x+\dfrac{1}{3}y\right)^2=\boldsymbol{\dfrac{x^2}{4}+\dfrac{xy}{3}+\dfrac{y^2}{9}}\] $\blacktriangleleft$ 平方の公式参照
- \[\left(3a-\dfrac{1}{2}b\right)^2=\boldsymbol{9a^2-3ab+\dfrac{1}{4}b^2}\] $\blacktriangleleft$ 平方の公式参照
- \[(2x-5y)(2x+5y)=\boldsymbol{4x^2-25y^2}\] $\blacktriangleleft$ 和と差の積の公式参照
- \begin{align} &(-2ab+3c)(2ab+3c)\\ =&(3c-2ab)(3c+2ab)\\ =&\boldsymbol{9c^2-4a^2b^2} \end{align} $\blacktriangleleft$ 公式を使えるよう足す順番を変更
- \[(x+5)(x-8)=\boldsymbol{x^2-3x-40}\] $\blacktriangleleft$ 和と差の積の公式参照
- \[(a^2-3)(a^2+7)=\boldsymbol{a^4+4a^2-21}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積参照
- \[(2x+1)(x-3)=\boldsymbol{2x^2-5x-3}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積参照
- \[(3a-2)(4a+1)=\boldsymbol{12a^2-5a-2}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積の公式参照
- \[(x-3)^3=\boldsymbol{x^3-9x^2+27x-27}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積の公式参照
- \begin{align} &(2x+4y)^3\\ =&2^3\cdot(x+2y)^3\\ &\quad\blacktriangleleft 指数法則3.参照\\ =&8(x^3+6x^2y+12xy^2+8y^3)\\ &\quad\blacktriangleleft 立方の公式1参照\\ =&\boldsymbol{8x^3+48x^2y+96xy^2+64y^3} \end{align}
- \begin{align} &(2x-5)(4x^2+10x+25)\\ =&\boldsymbol{8x^3-125} \end{align} $\blacktriangleleft$ 立方の公式2参照
- \begin{align} &(p+q)(3p^2-3pq+3q^2)\\=&3(p+q)(p^2-pq+q^2)\\ =&3(p^3+q^3)\\ &\quad\blacktriangleleft 公式を使えるようにした\\ =&\boldsymbol{3p^3+3q^3}\\ &\quad\blacktriangleleft 立方の公式2参照 \end{align}
展開の工夫
式の一部をまとめる
『多項式の乗法の公式』で学んだ公式を工夫して用いると、 複雑な式の計算がかなり容易にできるようになる。 ここでは、展開の工夫として代表的な2つの方法を取り上げる。
多項式の一部を1つの文字とみなすと、今までの公式がより広く使える。
まず、$(a+b+c)^2$ の展開を考ええてみよう。$A=a+b$ とおくと \begin{align} &(a+b+c)^2\\ =&(A+c)^2\\ &\blacktriangleleft A=a+bとおき、\\ &\qquad式の一部を一つの文字とみなす\\ =&A^2+2Ac+c^2\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&(a+b)^2+2(a+b)c+c^2\\ &\blacktriangleleft Aをa+bに戻す\\ =&a^2+2ab+b^2+2ca+2bc+c^2\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\\ &\blacktriangleleft この順番にすると式が見やすい \end{align} であるから、$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$ が成り立つ。
これを使い、たとえば $(2x+y-3)^2$ は次のように計算する。
- うまい計算のやり方 \begin{align} &(2x+y-3)^2\\ =&(2x)^2+y^2+(-3)^2+2\cdot2xy\\ &\underbrace{\qquad+2\cdot y(-3)+2\cdot(-3)2x}_{慣れると省略できる}\\ =&4x^2+y^2+9+4xy-6y-12x \end{align}
- 普通の計算のやり方 \begin{align} &(2x+y-3)^2\\ =&(2x+y-3)(2x+y-3)\\ =&4x^2+2xy-6x+2yx+\\ &y^2-3y-6x-3y+9\\ =&4x^2+y^2+9+4xy-6y-12x \end{align}
3項の平方の公式
7.$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$
次に、$(x+y−z)(x−y+z)$ の展開を考えてみよう。
$-y+z=-(y-z)$ に注意し、2ヶ所にある $y-z$ を $A$ とおくとよい。 \begin{align} &(x+y-z)(x-y+z)\\ =&\{x+(y-z)\}\{x-(y-z)\}\\ &\blacktriangleleft -y+z=-(y-z)\\ =&(x+A)(x-A)\\ &\blacktriangleleft A=y-zとおき、\\ &\qquad式の一部を1つの文字とみなす\\ =&x^2-A^2\\ &\blacktriangleleft 和と差の積の公式\\ =&x^2-(y-z)^2\\ &\blacktriangleleft Aをy-zに戻す\\ =&x^2-(y^2-2yz+z^2)\\ &\blacktriangleleft 平方の公式\\ =&x^2-y^2+2yz-z^2\\ &\blacktriangleleft 符号に注意して(~~)を外す\\ \end{align}
吹き出し無題
はじめのうちは、共通部分を $A$ や $X$ などでおきかえるが、慣れてきたらおきかえずに計算できるよう練習しよう。
多項式の展開の練習~その2~
- $(3a-b+3c)^2$
- $(a^2+a-1)^2$
- $(x+y+z)(x+y-z)$
- $(2a-b+c)(2a+b+c)$
- \begin{align} &(3a-b+3c)^2\\ =&\boldsymbol{9a^2+b^2+9c^2-6ab+18ca}\\ &\quad\blacktriangleleft 3項の平方の公式参照 \end{align}
- \begin{align} &(a^2+a-1)^2\\ =&(a^2)^2+a^2+(-1)^2+2\cdot a^2\cdot a\\ &+2\cdot a\cdot(-1)+2\cdot(-1)\cdot a^2\\ &\quad\blacktriangleleft 3項の平方の公式参照\\ =&\boldsymbol{a^4+2a^3-a^2-2a+1} \end{align}
- $(x+y)$ が共通していることに注意して \begin{align} &(x+y+z)(x+y-z)\\ =&(x+y)^2-z^2\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{x^2+2xy+y^2-z^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 平方の公式参照 \end{align}
- $(2a+c)$ が共通していることに注意して \begin{align} &(2a-b+c)(2a+b+c)\\ =&(2a+c)^2-b^2\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{4a^2+4ac+c^2-b^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 平方の公式参照 \end{align}
掛け算の順序の工夫
$35\times 6$ の計算は、$35\times2\times3=70\times3=210$ とすると楽である。多項式の展開においても、掛け算の順序を考えると計算が楽にできることがある。 \begin{align} &(a-b)^2(a+b)(a^2+ab+b^2)\\ =&(a-b)(a+b)(a-b)(a^2+ab+b^2)\\ =&\{(a-b)(a+b)\}\{(a-b)(a^2+ab+b^2)\}\\ =&(a^2-b^2)(a^3-b^3)\\ =&a^5-a^3b^2-a^2b^3+b^5\end{align}
前から順に計算するととても大変
$(a-b)$ は $(a+b)$ と相性がいいし
$(a-b)$ は $(a^2+ab+b^2)$ とも相性がいい
和と差の積の公式参照と立方の公式1参照
多項式の展開の練習~その3~
- $(x+1)(x-1)(x^2+1)$
- $(a-2)(a+2)(a^2+4)(a^4+16)$
- $(x-1)(x-3)(x+3)(x+1)$
- $(a-1)(a-2)(a^2-3a)$
- まずは $(x+1)(x-1)$ から計算する。 \begin{align} &(x+1)(x-1)(x^2+1)\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&(x^2-1)(x^2+1)\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{x^4-1} \end{align}
- まず、$(a-2)(a+2)$ から計算をはじめる。 \begin{align} &(a-2)(a+2)(a^2+4)(a^4+16)\\ =&(a^2-4)(a^4+4)(a^4+16)\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&(a^4-16)(a^4+16)\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{a^8-256}\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照 \end{align}
- $x-1$ と $x+1$ の積を計算し、$(x-3)$ と $(x+3)$ の積を計算し、最後にこの両者の積を計算する。 \begin{align} &(x-1)(x-3)(x+3)(x+1)\\ =&(x-1)(x+1)(x-3)(x+3)\\ =&(x^2-1)(x^2-1)(x^2-9)\\ &\quad\blacktriangleleft 和と差の積の公式参照\\ =&\boldsymbol{x^4-10x^2+9}\\ &\quad\blacktriangleleft 1次式の積の公式参照 \end{align}
- \begin{align} &(a-1)(a-2)(a^2-3a)\\ =&(a^2-3a+2)(a^2-3a)\\ =&(a^2-3a)^2+2(a^2-3a)\\ &\quad\blacktriangleleft a^2-3a が共通している\\ =&a^4-6a^3+9a^2+2a^2-6a\\ &\quad\blacktriangleleft a^2-3a を A とおくと、\\ &\qquad(A+2)A=A^2+2A となるため\\ =&\boldsymbol{a^4-6a^3+11a^2-6a} \end{align}
基本的な因数分解
因数と因数分解
多項式の展開とは逆に、1つの多項式 $A$ を2つ以上の多項式 $B$、$C$、$\cdots$ の積で表すことを、$A$ の因数分解 (factorization) といい、$B$ や $C$ などを、$A$ の因数 (factor) という。
共通因数
多項式において、各項に共通する因数を共通因数 (common factor) という。
多項式の各項に共通因数があれば、それをかっこの外にくくり出し因数分解できる。
共通因数による因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $a^4-2a$
- $6a^2b+4ab^2-2ab$
- $p(2x-y)+q(y-2x)$
- $3a(x-y)+6b(x-y)+9c(y-x)$
- $a^4$ と $-2a$ の共通因数は $a$ であるから \begin{align} &a^4-2a\\ =&\boldsymbol{a(a^3-2)}\\ &\blacktriangleleft 共通因数 a をくくり出す \end{align} \begin{array}{c||c|} &a^3&-2\\\hline{a}&a^4&-2a\\\hline \end{array}
- $6a^2b$ と $4ab^2$ と $-2ab$ の共通因数は $2ab$ であるから \begin{align} &6a^2b+4ab^2-2ab\\ =&\boldsymbol{2ab(3a+2b-1)}\\ &\blacktriangleleft 共通因数である 2ab をくくり出す \end{align} \begin{array}{c||c|} &3a&2b&-1\\\hline2ab&6a^2b&4ab^2&-2ab\\\hline \end{array}
- $y-2x=-(2x-y)$ であるから $2x-y$ が共通因数となる。 \begin{align} &p(2x-y)+q(y-2x)\\ =&p(2x-y)-q(2x-y)\\ =&\boldsymbol{(p-q)(2x-y)}\\ &\blacktriangleleft 共通因数である 2x-y でくくる \end{align} \begin{array}{c||c|} &p&-q\\\hline2x-y&p(2x-y)&-q(2x-y)\\\hline \end{array}
- $y-x=-(x-y)$ であるから $x-y$ が共通因数となる。 \begin{align} &3a(x-y)+6b(x-y)+9c(y-x)\\ =&3a(x-y)+6b(x-y)-9c(x-y)\\ =&\boldsymbol{3(x-y)(a+2b-3c)}\\ &\blacktriangleleft 共通因数である 3(x-y) でくくる \end{align} \begin{array}{c||c|} &a&2b&-3c\\\hline\hspace{-.1em}3(x-y)\hspace{-.1em}&\hspace{-.1em}3a(x-y)\hspace{-.1em}&\hspace{-.1em}6b(x-y)\hspace{-.1em}&\hspace{-.1em}-9c(x-y)\hspace{-.1em}\\\hline \end{array}
多項式の因数分解の公式
『平方の公式』を逆に利用した因数分解
平方の公式の逆利用
1.
- $a^2+2ab+b^2=(a+b)^2$
- $a^2-2ab+b^2=(a-b)^2$
平方の公式を逆に利用した因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $x^2+6x+9$
- $4x^2-12xy+9y^2$
- $a^4+4a^2+4$
- \begin{align} &x^2+6x+9\\ =&x^2+2{\cdot}3x+3^2\\ =&\boldsymbol{(x+3)^2} \end{align} \begin{array}{c||c|} &x&3\\\hline{x}&x^2&3x\\\hline 3&3x&9\\\hline \end{array}
- \begin{align} &4x^2-12xy+9y^2\\ =&(2x)^2-2\cdot(2x)(3y)+(3y)^2\\ =&\boldsymbol{(2X-3y)^2} \end{align} \begin{array}{c||c|} &2x&-3y\\\hline2x&4x^2&-6xy\\\hline -3y&-6xy&9y^2\\\hline \end{array}
- $a^2=A$ とおくと、$a^4=A^2$ であるので、 \begin{align} &a^4+4a^2+4\\ =&A^2+4A+4\\ =&(A+2)^2\\ =&\boldsymbol{(a^2+2)^2}\\ &\blacktriangleleft 慣れればおきかえずにできる \end{align} \begin{array}{c||c|} &a^2&2\\\hline{a^2}&a^4&2a^2\\\hline 2&2a^2&4\\\hline \end{array}
吹き出し無題
因数分解後の式は、「展開」してみると因数分解前の式と同じになので、 自分の実行した因数分解が正しいかどうかは、展開することによって確認できる。 少し面倒だが、因数分解した後には、かならず展開して確認するようにしよう。 まちがった因数分解をしても何にもならないのだから…。
2重根号
$\sqrt{8+2\sqrt{15}}$ とは「2乗して $8+2\sqrt{15}$ になる正の数」を表す。このような、根号の中に根号が含まれる式を2重根号 (doubleradicalsign) という。一見複雑な形をしているが、実は $\sqrt{8+2\sqrt{15}}=\sqrt{5}+\sqrt{3}$ である。実際、$\sqrt{5}+\sqrt{3}$ を2乗すると$\left(\sqrt{5}+\sqrt{3}\right)^2=5+3+2\sqrt{15}=8+2\sqrt{15}$ となる。
2重根号を外す仕組みは、以下のようにして考えられる。
$a\gt0,~b\gt0$ のとき、$\left(\sqrt{a}+\sqrt{b}~\right)^2=a+b+2\sqrt{ab}$ であり、$\sqrt{a}+\sqrt{b}\gt0$ であるから \begin{align} &\sqrt{a+b+2\sqrt{ab}}\\ =&\sqrt{\left(\sqrt{a}+\sqrt{b}~\right)^2}=\sqrt{a}+\sqrt{b}\tag{1}\label{2jukongo1} \end{align} また、$a{\gt}b{\gt}0$ のとき、$\left(\sqrt{a}-\sqrt{b}~\right)^2=a+b-2\sqrt{ab}$ であり、$\sqrt{a}-\sqrt{b}\gt0$ であるから \begin{align} &\sqrt{a+b-2\sqrt{ab}}\\ =&\sqrt{\left(\sqrt{a}-\sqrt{b}~\right)^2}=\sqrt{a}-\sqrt{b}\tag{2}\label{2jukongo2} \end{align} これら $\eqref{2jukongo1}$、$\eqref{2jukongo2}$ を用いると、根号を2重に含む式を簡単にできる場合がある。
たとえば、$\sqrt{8+2\sqrt{15}}$ は $\eqref{2jukongo1}$ を用いて \begin{align} &\sqrt{8+2\sqrt{15}}\\ =&\sqrt{(5+3)+2\sqrt{5\cdot3}}\\ =&\sqrt{\left(\sqrt{5}+\sqrt{3}~\right)^2}\\ =&\sqrt{5}+\sqrt{3} \end{align} として、2重根号をはずすことができる。
2重根号をはずす
次の2重根号をはずせ。
- $\sqrt{9-2\sqrt{14}}$
- $\sqrt{7+4\sqrt{3}}$
- $\sqrt{3-\sqrt{5}}$
- \begin{align} &\sqrt{9-2\sqrt{14}}\\ =&\sqrt{(\sqrt{7}-\sqrt{2})^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 足して9、掛けて14になる数を探す\\ &\qquad({\bigcirc}-{\triangle})^2 を作るときは、{\bigcirc}\gt{\triangle} \\ &\qquadを満たすように作るとよい。\\ =&\boldsymbol{\sqrt{7}-\sqrt{2}} \end{align}
- \begin{align} &\sqrt{7+4\sqrt{3}}\\ =&\sqrt{7+2\sqrt{12}}\\ &\quad\blacktriangleleft まず \sqrt{{\bigcirc}\pm2\sqrt{\triangle}} の形になおし、\\ &\qquad変形ができるようにする。\\ =&\sqrt{(\sqrt{4}+\sqrt{3})^2}\\ &\quad\blacktriangleleft 平方の形にした\\ &\qquad(足して 7、掛けて 12 になる数を探す)\\ =&\sqrt{4}+\sqrt{3}\\ &\quad\blacktriangleleft 2重根号をはずした\\ =&\boldsymbol{2+\sqrt{3}} \end{align}
- \begin{align} &\sqrt{3-\sqrt{5}}\\ =&\sqrt{3-\sqrt{5}}\times\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}}\\ &\quad\blacktriangleleft 内側の \sqrt{~~} の前に 2 が無くても、分母・\\ &\qquad分子に \sqrt{2} を掛けて 2\sqrt{~~} の形を作る\\ =&\frac{\sqrt{6-2\sqrt{5}}}{\sqrt{2}}\\ =&\frac{\sqrt{(\sqrt{5}-\sqrt{1})^2}}{\sqrt{2}}\\ &\quad\blacktriangleleft 足して 6、掛けて 5 になる数を探す。\\ &\qquad({\bigcirc}-{\triangle})^2 を作るときは、\\ &\qquad{\bigcirc}\gt{\triangle} を満たすように作るとよい。\\ =&\frac{\sqrt{5}-1}{\sqrt{2}}=\boldsymbol{\frac{\sqrt{10}-\sqrt{2}}{2}}\\ &\quad\blacktriangleleft 最後は分母を有理化しておく \end{align}
『和と差の積の公式』を逆に利用した因数分解
和と差の積の公式の逆利用
2.$a^2-b^2=(a+b)(a-b)$
和と差の積の公式を逆に利用した因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $a^2-9$
- $4x^2−25y^2$
- $a^4−1$
- $(a−b)^2−c^2$
- \begin{align} &a^2-9\\=&a^2-3^2\\ =&\boldsymbol{(a+3)(a-3)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &a&-3\\\hline{a}&a^2&-3a\\\hline 3&3a&-9\\\hline \end{array}
- \begin{align} &4x^2-25y^2\\=&(2x)^2-(5y)^2\\ =&\boldsymbol{(2x+5y)(2x-5y)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &2x&-5y\\\hline2x&4x^2&-10xy\\\hline 5y&10xy&-25xy\\\hline \end{array}
- $a^2=A$ とおくと、$a^4=A^2$ であるので、
$\blacktriangleleft$ 慣れれば $A$ を使わずにできる \begin{align} &a^4-1\\=&A^2-1^2\\ =&(A+1)(A-1)\\ =&(a^2+1)(a^2-1)\\ &\qquad\blacktriangleleft a^2-1 はまだ分解できる\\ =&\boldsymbol{(a^2+1)(a+1)(a-1)} \end{align} - $a-b=X$ とおけば、
$\blacktriangleleft$ 慣れれば $X$ を使わずにできる \begin{align} &(a-b)^2-c^2\\ =&X^2-c^2\\ =&(X+c)(X-c)\\ =&\boldsymbol{(a-b+c)(a-b-c)} \end{align} \begin{align} &(a-b)^2-c^2\\=&{(a-b)+c}{(a-b)-c}\\ =&\boldsymbol{(a-b+c)(a-b-c)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &a-b&-c\\\hline{a-b}&(a-b)^2&-(a-b)c\\\hline c&(a-b)c&-c^2\\\hline \end{array}
吹き出し無題
${\bigcirc}^2-{\triangle}^2$の形を見たら因数分解、とすぐに気付けるようになろう。
『1次式の積の公式』を逆に利用した因数分解
1次式の積の公式の逆利用
- 3.$x^2+(b+d)x+bd=(x+b)(x+d)$
- 4.$\begin{align}&acx^2+(ad+bc)x+bd\\=&(ax+b)(cx+d)\end{align}$
まず、簡単な例として $x^2+5x+6$ の因数分解の手順を考えてみよう。
STEP1 \begin{array}{c||c|} &&\\\hline&\boldsymbol{x^2}&\\\hline &&\boldsymbol{6}\\\hline \end{array} 展開して $x^2+5x+6$ になる1次式の積を考えるため、まず上図のように表を書く。表のます目の中には、$x^2$ の項と定数項を斜めに書いておく。
STEP2 \begin{array}{c||c|} &\boldsymbol{x}&\boldsymbol{6}\\\hline\boldsymbol{x}&x^2&\\\hline \boldsymbol{1}&&6\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} &\boldsymbol{x}&\boldsymbol{3}\\\hline\boldsymbol{x}&x^2&\\\hline \boldsymbol{2}&&6\\\hline \end{array} $x^2$ を分解すると $x\times{x}$ になり、$6$ を分解すると $1\times6$ または $2\times3$ になることから、上の2つの表を作る
(6の分解には、$(-1)\times(-6)$や$(-2)\times(-3)$なども考えられる。しかし、$x$の係数が正の数$5$なので、この因数分解ではその可能性はない)
STEP3 \begin{array}{c|c|} \times&x&6\\\hline{x}&x^2&\boldsymbol{6x}\\\hline1&\boldsymbol{x}&6\\\hline \end{array} \begin{array}{c|c|} \bigcirc&x&3\\\hline{x}&x^2&\boldsymbol{3x}\\\hline2&\boldsymbol{2x}&6\\\hline \end{array} 表の残りの部分を埋めることにより、新しくできた右の太字の式を加えて、$x$ の係数が $5$ になっているほうを選び、それを利用して因数分解すれば完成である \[x^2+5x+6=(x+2)(x+3)\]
1次式の積の公式を逆に利用した因数分解~その1~
次の式を因数分解せよ。
- $x^2+10x+21$
- $x-2-6x+8$
- $a^2+3ab−18b^2$
- $a^2-4a-32$
- \begin{align} &x^2+10x+21\\ =&x^2+(3+7)x+3\cdot7\\ =&\boldsymbol{(x+3)(x+7)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 下の表には、因数分解するときに作られるであろう表の例(一部)を載せてある。 \begin{array}{c||c|} \times&x&21\\\hline{x}&x^2&21x\\\hline1&x&21\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&x&7\\\hline{x}&x^2&7x\\\hline3&3x&21\\\hline \end{array}
- \begin{align} &x^2-6x+8\\ =&x^2+(-2-4)x+(-2)(-4)\\ =&\boldsymbol{(x-2)(x-4)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \times&x&-8\\\hline{x}&x^2&-8x\\\hline-1&-x&8\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&x&-4\\\hline{x}&x^2&-4x\\\hline-2&-2x&8\\\hline \end{array}
- \begin{align} &a^2+3ab-18b^2\\ =&a^2+(-3b+6b)a+(-3b)(6b)\\ =&\boldsymbol{(a-3b)(a+6b)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \times&a&18b\\\hline{a}&a^2&18ab\\\hline-b&-ab&-18b^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \times&a&9b\\\hline{a}&a^2&9ab\\\hline-2b&-2ab&-18b^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&a&6b\\\hline{a}&a^2&6ab\\\hline-3b&-3ab&-18b^2\\\hline \end{array}
- \begin{align} &a^2-4a-32\\ =&a^2+(4-8)a+4\cdot(-8)\\ =&\boldsymbol{(a+4)(a-8)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&a&-8\\\hline{a}&a^2&-8a\\\hline4&4a&-32\\\hline \end{array}
次に、少し難しい例として $3x^2+11x+6$ の因数分解を考えてみよう。
STEP1
展開して $3x^2+11x+6$ になる1次式の積を考えるため、まず右のように表を書く。さきほどと同じように、表のます目の中には、$x^2$ の項と定数項を斜めに書いておく。
\begin{array}{c||c|}
&&\\\hline&\boldsymbol{3x^2}&\\\hline&&\boldsymbol{6}\\\hline
\end{array}
STEP2
$3x^2$ を分解すると $x\times{3x}$ になり、$6$ を分解すると $1\times6$ または $2\times3$ になることから、右の4つの表を作る($6$ の分解には、$(-1)\times(-6)$ や $(-2)\times(-3)$ なども考えられる。しかし、やはりさきほどと同じように、$x$ の係数が正の数 $11$ なので、この因数分解ではその可能性はない)
\begin{array}{c||c|}
&3x&6\\\hline{x}&3x^2&\\\hline1&&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
&3x&3\\\hline{x}&3x^2&\\\hline2&&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
&3x&2\\\hline{x}&3x^2&\\\hline3&&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
&3x&1\\\hline{x}&3x^2&\\\hline6&&6\\\hline
\end{array}
STEP3
表の残りの部分を埋めることにより、新しくできた右の太字の式を加えて、$x$ の係数が $11$ になっているものを選び、それを利用して因数分解すれば完成である。
\begin{array}{c||c|}
\times&3x&6\\\hline{x}&3x^2&6x\\\hline1&3x&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
\times&3x&3\\\hline{x}&3x^2&3x\\\hline2&6x&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
\bigcirc&3x&2\\\hline{x}&3x^2&2x\\\hline3&9x&6\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
\times&3x&1\\\hline{x}&3x^2&x\\\hline6&18x&6\\\hline
\end{array}
\[3x^2+11x+6=(x+3)(3x+2)\]
吹き出し無題
上では説明の都合上、少々多めに表を作ったが、慣れてくると正解の表を一発でかけるようになる。初めのうちは試行錯誤して、コツをつかむことが大切である。
1次式の積の公式を逆に利用した因数分解~その2~
次の式を因数分解せよ。
- $2x^2+3x+1$
- $5a^2+7ab+2b^2$
- $8x^2-10xy+3y^2$
- $12a^2+7a-12$
$\blacktriangleleft$ 因数分解するときに作られるであろう、たすきがけの例(の一部)を載せておく。
- \begin{align} &2x^2+3x+1\\ =&2x^2+(2+1)x+1\\ =&\boldsymbol{(x+1)(2x+1)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&2x&1\\\hline{x}&x^2&x\\\hline1&2x&1\\\hline \end{array}
- \begin{align} &5a^2+7ab+2b^2\\ =&5a^2+(5+2)ab+2b^2\\ =&\boldsymbol{(a+b)(5a+2b)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&5a&2b\\\hline{a}&5a^2&2ab\\\hline{b}&5ab&2b^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \times&5a&b\\\hline{a}&5a^2&ab\\\hline2b&10ab&2b^2\\\hline \end{array}
- \begin{align} &8x^2-10xy+3y^2\\ =&8x^2+(-6-4)xy+3y^2\\ =&\boldsymbol{(2x-y)(4x-3y)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \times&8x&-3y\\\hline{x}&8x^2&-3xy\\\hline-y&-8xy&3y^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \times&8x&-y\\\hline{x}&8x^2&-xy\\\hline-3y&-24xy&3y^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&4x&-3y\\\hline2x&8x^2&-6xy\\\hline-y&-4xy&3y^2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \times&4x&-y\\\hline2x&8x^2&-2xy\\\hline-3y&-12xy&3y^2\\\hline \end{array}
- \begin{align} &12a^2+7a-12\\ =&12a^2+(16-9)a-12\\ =&\boldsymbol{3b(3a+2)(a-2)} \end{align} \begin{array}{c||c|} \times&4a&3\\\hline3a&12a^2&9a\\\hline-4&-16a&-12\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&4a&-3\\\hline3a&12a^2&-9a\\\hline4&16a&-12\\\hline \end{array}
『3項の平方の公式』を逆に利用した因数分解
3項の平方の公式の逆利用
5.$a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)^2$
3項の平方の公式を逆に利用した因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $a^2+4b^2+c^2+4ab+4bc+2ca$
- $4x^2+y^2+1+4xy+2y+4x$
- $4a^2+b^2+1+4ab−2b−4a$
- $x^2+4y^2+9z^2−4xy+12yz−6zx$
- \begin{align} &a^2+4b^2+c^2+4ab+4bc+2ca\\ =&a^2+(2b)^2+c^2\\ &\qquad+2\cdot{a(2b)}+2\cdot{(2b)c}+2\cdot{ca}\\ =&\boldsymbol{(a+2b+c)^2} \end{align} \begin{array}{c|c|} &a&2b&c\\\hline{a}&a^2&2ab&ac\\\hline2b&2ab&4b^2&2bc\\\hline{c}&ac&2bc&c^2\\\hline \end{array}
- \begin{align} &4x^2+y^2+1+4xy+2y+4x\\ =&(2x)^2+y^2+1^2+2\cdot(2x) y\\ &\qquad+2\cdot y\cdot 1+2\cdot 1\cdot{x}\\ =&\boldsymbol{(2x+y+1)^2} \end{align} \begin{array}{c|c|} &2x&y&1\\\hline2x&4x^2&2xy&2x\\\hline{y}&2xy&y^2&y\\\hline1&2x&y&1\\\hline \end{array}
- \begin{align} &4a^2+b^2+1+4ab-2b-4a\\ =&(2a)^2+b^2+(-1)^2+2\cdot(2a)b\\ &\qquad+2\cdot b(-1)+2\cdot(-1)a\\ =&\boldsymbol{(2a+b-1)^2} \end{align} \begin{array}{c|c|} &2a&b&-1\\\hline2a&4a^2&2ab&-2a\\\hline{b}&2ab&b^2&-b\\\hline-1&-2a&-b&1\\\hline \end{array}
- \begin{align} &x^2+4y^2+9z^2-4xy+12yz-6zx\\ =&x^2+(2y)^2+(3z)^2+2\cdot{x(-2y)}\\ &\qquad+2\cdot{(-2y)(-3z)}+2\cdot{(-3z)x}\\ =&\boldsymbol{(x-2y-3z)^2} \end{align} \begin{array}{c|c|} &x&-2y&-3z\\\hline{x}&x^2&-2xy&-3xz\\\hline-2y&-2xy&4y^2&6yz\\\hline-3z&-3xz&6yz&9z^2\\\hline \end{array}
『立法の公式1』を逆に利用した因数分解
立方の公式1の逆利用
6.
- $a^3+3a^2b+3ab^2+b^3=(a+b)^3$
- $a^3-3a^2b+3ab^2-b^3=(a-b)^3$
立方の公式1を逆に利用した因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $x^3+9x^2y+27xy^2+27y^3$
- $8a^3+12a^2b+6ab^2+b^3$
- $x^3-6x^2+12x-8$
- $27x^3-54x^2y+36xy^2-8y^3$
- \begin{align} &x^3+9x^2y+27xy^2+27y^3\\ =&x^3+3\cdot{x^2(3y)}+3\cdot{x(3y)^2}+(3y^3)\\ =&\boldsymbol{(x+3y)^3} \end{align}
- \begin{align} &8a^3+12a^2b+6ab^2+b^3\\ =&(2a)^3+3\cdot{(2a)^2b}+3\cdot{(2a)b^2}+b^3\\ =&\boldsymbol{(2a+b)^3} \end{align}
- \begin{align} &x^3-6x^2+12x-8\\ =&x^3-3\cdot x^2\cdot 2+3\cdot x\cdot 2^2-2^3\\ =&\boldsymbol{(x-2)^3} \end{align}
- \begin{align} &27x^3-54x^2y+36xy^2-8y^3\\ =&(3x)^3-3\cdot{(3x)^2(2y)}\\ &\qquad+3\cdot{(3x)(2y)^2}-(2y)^3\\ =&\boldsymbol{(3x-2y)^3} \end{align}
吹き出し無題
このタイプの因数分解では、$\boldsymbol{a^3}+\bigcirc+\triangle+\boldsymbol{b^3}$をみて、とりあえず$(a + b)^3$としておいてから、それを展開して確かめるという手順を踏むとよい。
『立法の公式2』を逆に利用した因数分解
立方の公式2の逆利用
7.
- $a^3+b^3=(a+b)(a^2−ab+b2)$
- $a^3−b^3=(a−b)(a^2+ab+b^2)$
立方の公式2を逆に利用した因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $x^3+27$
- $8a^3+1$
- $8x^3−27y^3$
- $64a^3−125b^3$
- \begin{align} &x^3+27\\ =&x^3+3^3b\\ =&\boldsymbol{(x+3)(x^2-3x+9)}\\ \end{align} \begin{array}{c||c|} &x^2&-3x&9\\\hline{x}&x^3&-3x^2&9x\\\hline3&3x^2&-9x&27\\\hline \end{array}
- \begin{align} &8a^3+1\\ =&(2a)^3+1^3\\ =&\boldsymbol{(2a+1)(4a^2-2a+1)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &4a^2&-2a&1\\\hline2a&8a^3&-4a^2&2a\\\hline1&4a^2&-2a&1\\\hline \end{array}
- \begin{align} &8x^3-27y^3\\ =&(2x)^3-(3y)^3\\ =&\boldsymbol{(2x-3y)(4x^2+6xy+9y^2)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &4x^2&6xy&9y^2\\\hline2x&8x^3&12x^2y&18xy^2\\\hline-3y&-12x^2y&-18xy^2&-27y^3\\\hline \end{array}
- \begin{align} &64a^3-125b^3\\ =&(4a)^3-(5b)^3\\ =&\boldsymbol{(4a-5b)(16a^2+20ab+25b^2)} \end{align} \begin{array}{c||c|} &16a^2&20ab&25b^2\\\hline4a&64a^3&80a^2b&100ab^2\\\hline-5b&-80a^2b&-100ab^2&-125b^3\\\hline \end{array}
吹き出し無題
$\bigcirc^3\pm\triangle^3$ の形の因数分解は忘れやすいので気をつけよう。また、$2^3=8$、$3^3=27$、$4^3=64$、$5^3=125$、$6^3=216$、$7^3=343$、$8^3=512$、$9^3=729$ などは、整数の $3$ 乗(立方数という)であることに気づけるようにしておこう。
因数分解の公式のまとめ
最も大事なことは、「いつ、どの因数分解を使うのか」見極めることである。
因数分解の練習~その1~
次の式を因数分解せよ。
- $a^2-14ab+49b^2$
- $2x^2-x-3$
- $343a^3-8b^3$
- $4x^2+23x-6$
- $3b^2-27c^2$
- $3x^3+81y^3$
- $2a^4-32$
- $x^8-1$
- $a^6-b^6$
- $5(x+y)^2-8(x+y)-4$
- $(a+b)^2+10c(a+b)+25c^2$
- \[a^2-14ab+49b^2=\boldsymbol{(a-7b)^2}\] $\blacktriangleleft$ 平方の公式の逆利用参照
- \[2x^2-x-3=\boldsymbol{(2x-3)(x+1)}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積の公式の逆利用参照
- \begin{align} &343a^3-8b^3\\ =&\boldsymbol{(7a-2b)(49a^2+14ab+4b^2)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 立方の公式2の逆利用参照
- \[4x^2+23x-6=\boldsymbol{(4x-1)(x+6)}\] $\blacktriangleleft$ 1次式の積の公式の逆利用参照
- \begin{align} &3b^2-27c^2=3(b^2-9c^2)\\ =&\boldsymbol{3(b+3c)(b-3c)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 立方の公式2の逆利用参照
- \begin{align} &3x^3+81y^3\\ =&3(x^3+27y^3)\\ =&\boldsymbol{3(x+3y)(x^2-3xy+9y^2)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 立方の公式2の逆利用参照
- \begin{align} &2a^4-32\\ =&2(a^4-16)\\ =&2(a^2+4)(a^2-4)\\ =&\boldsymbol{2(a^2+4)(a+2)(a-2)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 和と差の積の公式の逆利用参照
- \begin{align} &(x^8-1)\\ =&(x^4+1)(x^4-1)\\ =&(x^4+1)(x^2+1)(x^2-1)\\ =&\boldsymbol{(x^4+1)(x^2+1)(x+1)(x-1)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 和と差の積の公式の逆利用参照
-
\begin{align}
&a^6-b^6\\
=&(a^3+b^3)(a^3-b^3)\\
=&{{(a+b)(a^2-ab+b^2)}}\\
&\qquad{{(a-b)(a^2+ab+b^2)}}\\
=&\boldsymbol{(a+b)(a-b)}\\
&\qquad\boldsymbol{(a^2-ab+b^2)(a^2+ab+b^2)}
\end{align}
$\blacktriangleleft$ 和と差の積の公式の逆利用参照
$\blacktriangleleft$ 立方の公式2の逆利用参照 - $x+y=X$とおくと \begin{align} &5X^2-8X-4\\ =&(5X+2)(X-2)\\ =&\boldsymbol{(5x+5y+2)(x+y-2)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 1次式の積の公式の逆利用参照
- $a+b=X$とおくと \begin{align} &X^2+10cX+25c^2\\ =&(X+5c)^2\\ =&\boldsymbol{(a+b+5c)^2} \end{align} $\blacktriangleleft$ 平方の公式の逆利用参照
難度の高い因数分解
次数の低い文字に着目する因数分解
2つ以上の文字を含む多項式では、最も次数の低い文字に着目して整理すると、因数分解がしやすくなることが多い。
$a^2+ab-3a+b-4$ という式には、共通因数も無く、どの公式にも当てはまらないが \begin{align} &a^2+ab-3a+b-4\\ =&(a+1)b+a^2-3a-4\\ =&(a+1)b+(a-4)(a+1)\\ =&(a+1)(a+b-4)\\ \end{align}
$a$ については $2$ 次式、$b$ については $1$ 次式
次数の低い $b$ について、降べきの順に整頓
定数項を因数分解したら $a+1$ が共通因数になった
$b+a-4$ は順番を入れ替えておこう
次数の低い文字に着目する因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $a^2+ab+bc+ca$
- $x^2−2xy+2y−1$
- $x^2+2xy+3x+4y+2$
- $a^3+ab^2+b^2+1$
- $b$ について降べきの順に整理すると
\begin{align}
&a^2+ab+bc+ca\\
=&(a+c)b+(a^2+ca)\\
=&(a+c)b+(a+c)a\\
=&\boldsymbol{(a+b)(a+c)}
\end{align}
$c$ で整理してもよい
共通因数を見抜いて因数分解してもよい。また、$a$ の2次式と見て、次に学ぶ2文字2次式の因数分解で考えてもよい。 - $y$ について降べきの順に整理すると \begin{align} &x^2+2xy-2y-1\\ =&(x-1)2y+(x^2-1)\\ =&(x-1)2y+(x-1)(x+1)\\ =&\boldsymbol{(x-1)(x+2y+1)} \end{align} $x$ の次数は $2$、$y$ の次数は $1$
- $y$ についての降べきの順に整理すると \begin{align} &x^2+2xy+3x+4y+2\\ =&(2x+4)y+(x^2+3x+2)\\ =&(x+2)2y+(x+1)(x+2)\\ =&\boldsymbol{(x+2)(x+2y+1)} \end{align} $x$ の次数は $2$、$y$ の次数は $1$
- $b$ についての降べきの順に整理すると \begin{align} &a^3+ab^2+b^2+1\\ =&(a+1)b^2+(a^3+1)\\ =&(a+1)b^2+(a+1)(a^2-a+1)\\ =&\boldsymbol{(a+1)(a^2+b^2-a+1)} \end{align} $a$ の次数は $3$、$b$ の次数は $2$
2文字2次式の因数分解
ここでは、$x$ についても $y$ についても次数が同じ $x^2+4xy+3y^2+x+5y-2$ という式の因数分解について考えてみよう。
【方法1:1次式の積の公式の逆利用を使う】
まず、$x^2+4xy+3y^2+x+5y−2$ を $x$ の式とみて、降べきの順に整理する。 \begin{align} x^2+(4y+1)x+3y^2+5y-2 \end{align} 次に、$x$ を含まない項について因数分解する。 \begin{align} x^2+(4y+1)x+(3y-1)(y+2) \end{align}
1次式の積の公式の逆利用のときと同じように、下のような表を描き、隙間を埋めていく。 \begin{array}{c||c|} &x&y+2\\\hline{x}&x^2&\\\hline3y-1&&(3y-1)(y+2)\\\hline \end{array} より \begin{array}{c||c|} \bigcirc&x&y+2\\\hline{x}&x^2&(y+2)x\\\hline3y-1&(3y-1)x&(3y-1)(y+2)\\\hline \end{array} と表を作れるから \[(x+y+2)(x+3y-1)\] と因数分解できる。
【方法2:$3$ マス $\times$ $3$ マスの表を書く】
STEP1
因数分解する式
\[\boldsymbol{x^2}+4xy\boldsymbol{+3y^2}+x+5y\boldsymbol{-2}\]
の、$x^2$の項($x^2$)、$y^2$の項($3y^2$)、定数項($−2$)を下図のように、$3\times 3$の表に書き込む
\begin{array}{c||c|}
&&&\\\hline&\boldsymbol{x^2}&&\\\hline&&\boldsymbol{3y^2}&\\\hline&&&\boldsymbol{-2}\\\hline
\end{array}
STEP2
左上から順にます目を埋めていく。
まずは $x^2$ の分解を考えたものが下図である。
\begin{array}{c||c|}
&\boldsymbol{x}&&\\\hline\boldsymbol{x}&x^2&&\\\hline&&3y^2&\\\hline&&&-2\\\hline
\end{array}
STEP3
$3y^2=3y\times{y}$ と分解できるから、ます目を埋めると下図のようになる。このとき、新しくできた $xy$ と $3xy$ を足したものが、因数分解する式の $4xy$
\[x^2\boldsymbol{+4xy}+3y^2+x+5y-2\]
と等しくなるような分解を考える($3y^2=(-3y)\times(-y)$ の分解では、$-4xy$ となるので考えなくてよい)
\begin{array}{c||c|}
&x&y&\\\hline{x}&x^2&\boldsymbol{xy}&\\\hline3y&\boldsymbol{3xy}&3y^2&\\\hline&&&-2\\\hline
\end{array}
STEP4
最後に、定数項($-2$)の分解を考える。
下の2つは、$x$ と $-2x$ を足しても
\[x^2+4xy+3y^2\boldsymbol{+x}+5y-2\]
にならないのでその時点で失敗。
\begin{array}{c||c|}
\times&x&y&1\\\hline{x}&x^2&xy&\boldsymbol{x}\\\hline3y&3xy&3y^2&\\\hline-2&\boldsymbol{-2x}&&-2\\\hline
\end{array}
\begin{array}{c||c|}
\times&x&y&-2\\\hline{x}&x^2&xy&\boldsymbol{-2x}\\\hline3y&3xy&3y^2&\\\hline1&\boldsymbol{x}&&-2\\\hline
\end{array}
最後の空欄を埋め、その和が
\[x^2+4xy+3y^2+x\boldsymbol{+5y}-2\]
となるものが正解の表となる。
\begin{array}{c||c|} \times&x&y&-1\\\hline{x}&x^2&xy&-x\\\hline3y&3xy&3y^2&\boldsymbol{-3y}\\\hline2&2x&\boldsymbol{2y}&-2\\\hline \end{array} \begin{array}{c||c|} \bigcirc&x&y&2\\\hline{x}&x^2&xy&2x\\\hline3y&3xy&3y^2&\boldsymbol{6y}\\\hline-1&-x&\boldsymbol{-y}&-2\\\hline \end{array} 以上から \[(x+3y-1)(x+y+2)\] と因数分解できることがわかる。
2文字2次式の因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $2x^2+5xy+3y^2+2x+4y-4$
- $6x^2-5xy-6y^2+4x+7y-2$
- 【方法1】
与式を $x$ について降べきの順に整理すると \begin{align} &2x^2+5xy+3y^2+2x+4y-4\\ =&2x^2+(5y+2)x+3y^2+4y-4\\ =&2x^2+(5y+2)x\\ &\qquad+(3y-2)(y+2) \end{align} となり、表は \[\begin{array}{c||c|} &x&\\\hline2x&2x^2&\\\hline&&(3y-2)(y+2)\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &x&y+2\\\hline2x&2x^2&(2y+4)x\\\hline3y-2&(3y-2)x&(3y-2)(y+2)\\\hline \end{array}\] と作れるので、 \begin{align} &2x^2+5xy+3y^2+2x+4y-4\\ =&\boldsymbol{(2x+3y-2)(x+y+2)} \end{align} となる。 - 【方法2】
$3$ マス $\times$ $3$ マスの表は \[\begin{array}{c||c|} &x&&\\\hline2x&2x^2&&\\\hline&&3y^2&\\\hline&&&-4\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &x&y&\\\hline2x&2x^2&2xy&\\\hline3y&3xy&3y^2&\\\hline&&&-4\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &x&y&2\\\hline2x&2x^2&2xy&4x\\\hline3y&3xy&3y^2&6y\\\hline-2&-2x&-2y&-4\\\hline \end{array}\] と作れるので、 \begin{align} &2x^2+5xy+3y^2+2x+4y-4\\ =&\boldsymbol{(2x+3y-2)(x+y+2)} \end{align} となる。
- 【方法1】
- 【方法1】
与式を $x$ について降べきの順に整理すると \begin{align} &6x^2-5xy-6y^2+4x+7y-2\\ =&6x^2+(-5y+4)x\\ &\qquad-(6y^2-7y+2)\\ =&6x^2+(-5y+4)x\\ &\qquad-(3y-2)(2y-1) \end{align} となり、表は \[\begin{array}{c||c|} &3x&\\\hline2x&6x^2&\\\hline&&-(3y-2)(2y-1)\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &3x&2y-1\\\hline2x&6x^2&(4y-2)x\\\hline-(3y-2)&(-9y+6)x&-(3y-2)(2y-1)\\\hline \end{array}\] と作れるので、 \begin{align} &6x^2-5xy-6y^2+4x+7y-2\\ =&\boldsymbol{(2x-3y+2)(3x+2y-1)} \end{align} となる。 - 【方法2】
$3\times3$ の表は \[\begin{array}{c||c|} &3x&&\\\hline2x&6x^2&&\\\hline&&-6y^2&\\\hline&&&-2\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &3x&2y&\\\hline2x&6x^2&4xy&\\\hline-3y&-9xy&-6y^2&\\\hline&&&-2\\\hline \end{array}\\ \downarrow\\ \begin{array}{c||c|} &3x&2y&-1\\\hline2x&6x^2&4xy&-2x\\\hline-3y&-9xy&-6y^2&3y\\\hline2&6x&4y&-2\\\hline \end{array}\] と作れるので、 \begin{align} &6x^2-5xy-6y^2+4x+7y-2\\ =&\boldsymbol{(2x-3y+2)(3x+2y-1)} \end{align} となる。
- 【方法1】
複2次式の因数分解
ここでは、$x^2$ を1つのかたまりとして表される多項式のなかでも、特に複2次式とよばれる多項式についての因数分解について考えよう。
複2次式の定義
$a$、$b$、$c$ を実数の定数とするとき \[ax^4+bx^2+c\] という形の多項式を複2次式 (compound quadratic expression) という。 ただし、$a\neq0$ とする。
例として、次の2つの複2次式の因数分解についてみてみよう。
- $x^4-13x^2+36$
- $x^4+2x^2+9$
- $x^4-13x^2+36$ の因数分解
この複2次式は、$x^2=X$ とおくと、$X^2-13X+36=(X-4)(X-9)$ であるから \begin{align} &x^4-13x^2+36\\ =&(x^2-4)(x^2-9)\\ =&(x+2)(x-2)(x+3)(x-3) \end{align} と因数分解できる。 - $x^4+2x^2+9$ の因数分解
この複2次式は、$x^2=X$ とおいても、$X^2+2X+9$ となるだけで因数分解が進まない。
そこで、$x^4$ と $9$ に着目すると \begin{align} &x^4+2x^2+9\\ =&x^4+6x^2+9-4x^2\\ &\blacktriangleleft 2x^2に4x^2を加え\\ &\qquad平方の形が作れるようする\\ =&\underbrace{(x^2+3)^2}_{平方の形にする。}-(2x)^2\\ &\blacktriangleleft \bigcirc^2-\triangle^2の形\\ =&\left\{(x^2+3)+2x\right\}\left\{(x^2+3)-2x\right\}\\ =&(x^2+2x+3)(x^2-2x+3) \end{align} となり因数分解ができる。
複2次式の因数分解
複2次式 $ax^4+bx^2+c$ の因数分解には
- $x^2=X$ とおくことにより因数分解できる場合
- $ax^4$ と $c$ に着目し、$x^2$ の項を付け加えて因数分解できる場合
吹き出し無題
1.の方法でうまくいかない場合に、2.の方法を試すと覚えておくとよい。 詳しくは『付録A.2』参照
複2次式の因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $x^4−7x^2−8$
- $x^4+x^2+1$
- $x^2=X$ とおくと \begin{align} &x^4-7x^2-8\\ =&X^2-7X-8\\ =&(X+1)(X-8)\\ =&\boldsymbol{(x^2+1)(x^2-8)} \end{align}
- $x^4$ と $1$ に着目して \begin{align} &x^4+x^2+1\\ =&x^4+2x^2+1-x^2\\ =&(x^2+1)^2-x^2\\ =&(x^2+1+x)(x^2+1-x)\\ =&\boldsymbol{(x^2+x+1)(x^2-x+1)} \end{align}
3文字3次式の因数分解
立方の公式1でも触れたが、$(a+b)^3$ を展開すると \[(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\] であるから \begin{align} &a^3+b^3=(a+b)^3-3a^2b-3ab^2\\ \Leftrightarrow&a^3+b^3=(a+b)^3-3ab(a+b)\tag{1}\label{3moji3jisikinoinsubunkai} \end{align} が成り立つ。これを用いることにより、$a^3+b^3+c^3−3abc$ は、次の例題でみるように因数分解できる。
暗記3文字3次式の因数分解
$a^3+b^3+c^3-3abc$ を因数分解せよ。
\begin{align} &a^3+b^3+c^3-3abc\\ =&\left\{a^3+b^3\right\}+c^3-3abc\\ &\blacktriangleleft a^3+b^3に着目して\cdots\\ =&\left\{(a+b)^3-3ab(a+b)\right\}+c^3-3abc\\ &\blacktriangleleft \eqref{3moji3jisikinoinsubunkai}を使った\\ =&(a+b)^3-3ab(a+b)+c^3-3abc\\ =&\underbrace{(a+b)^3+c^3}_{◯}\underbrace{-3ab(a+b)-3abc}_{□}\\ &\blacktriangleleft 今度は(a+b)^3+c^3に着目する\\ =&\underbrace{\left\{(a+b)+c\right\}\left\{(a+b)^2-(a+b)c+c^2\right\}}_{◯}\\ &\qquad\underbrace{-3ab\left\{(a+b)+c\right\}}_{□}\\ &\blacktriangleleft ◯の部分は、a+b=X、c=Yとみて\\ &{\qquad}X^3+Y^3=(X+Y)(X^2−XY+Y^2)\\ &\qquadの因数分解を使った\\ =&(a+b+c)\left\{a^2+2ab+b^2-ac-bc+c^2\right\}\\ &\qquad-3ab(a+b+c)\\ =&(a+b+c)\\ &\qquad(a^2+2ab+b^2-ac-bc+c^2-3ab)\\ &\blacktriangleleft 共通因数(a+b+c)でくくった\\ =&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\ \end{align}
3変数3次式の因数分解
\begin{align}&a^3+b^3+c^3-3abc\\ =&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\end{align}
吹き出し無題
この因数分解は忘れやすいので、上のように結果を導出できるように練習しておくとよい。
3文字3次式の因数分解
次の式を因数分解せよ。
- $27a^3+8b^3+c^3-18abc$
- $x^3+y^3-1+3xy$
- \[\begin{align} &(3a)^3+(2b)^3+c^3-3(3a)(2b)c\\ =&\boldsymbol{\left(3a+2b+c\right)}\\ &\boldsymbol{(9a^2+4b^2+c^2}\\ &\qquad\boldsymbol{-6ab-2bc-3ca)} \end{align}\]
- \[\begin{align} &x^3+y^3+(-1)^3-3xy(-1)\\ =&\boldsymbol{\left(x+y-1\right)}\\ &\qquad\boldsymbol{\left(x^2+y^2+1-xy+y+x\right)} \end{align}\]
いろいろな因数分解
どの因数分解の手段を用いるかどうかは、だいたい次の優先順位で考えるとよい。 方針がわからないときは、ひとまずこの順序で考えてみよう。
- 共通因数を見つける
- 次数の小さい文字に注目し、降べきの順に並べる。
- 公式を使えないか考える。
因数分解の練習~その2~
次の式を因数分解せよ。
- $xy-x-y+1$
- $a^2+b^2+ac-bc-2ab$
- $x^2(y-z)+y^2(z-x)+z^2(x-y) $
- $ab(a-b)+bc(b-c)+ca(c-a) $
- $x^4+x^2+1$
- $a^4+64$
- $x^2-xy-12y^2+5x+y+6$
- $2x^2-y^2-xy+3x+3y-2$
- \begin{align} &xy-x-y+1\\ =&(y-1)x-(y-1)\\ =&\boldsymbol{(x-1)(y-1)} \end{align} $\blacktriangleleft$ $x$ と $y$ はともに1次式なので、とりあえず $x$ で整理する
- $c$ について降べきの順に整理すると \begin{align} &(a-b)c+a^2+b^2-2ab\\ =&(a-b)c+(a-b)^2\\ =&(a-b)c+(a-b)(a-b)\\ =&\boldsymbol{(a-b)(a-b+c)} \end{align} $\blacktriangleleft$ $a$ と $b$ は2次であり $c$ は1次であるから $c$ で整理する
- $x$ について降べきの順に整理すると \begin{align} &(y-z)x^2-(y^2-z^2)x+y^2z-yz^2\\ =&(y-z)x^2\\ &\qquad-(y+z)(y-z)x+yz(y-z)\\ =&(y-z)\left\{x^2-(y+z)x+yz\right\}\\ =&\boldsymbol{(y-z)(x-y)(x-z)} \end{align} $\blacktriangleleft$ すべての文字は2次で等しいので、とりあえず $x$ で整理する
- $a$について降べきの順に整理すると \begin{align} &(b-c)a^2-(b^2-c^2)a+b^2c-bc^2\\ =&(b-c)a^2\\ &\qquad-(b+c)(b-c)a+bc(b-c)\\ =&(b-c)\left\{a^2-(b+c)a+bc\right\}\\ =&\boldsymbol{(b-c)(a-b)(a-c)} \end{align} $\blacktriangleleft$ すべての文字は2次で等しいので、とりあえず $a$ で整理する
- $x^4$ と $1$ に着目して \begin{align} &x^4+1+x^2\\ =&(x^2+1)^2-2x^2+x^2\\ =&(x^2+1)^2-x^2\\ =&(x^2+1+x)(x^2+1-x)\\ =&\boldsymbol{(x^2+x+1)(x^2-x+1)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 複2次式の因数分解参照
- $a^4$ と $64$ に着目して \begin{align} &(a^2+8)^2-16a^2\\ =&(a^2+8+4a)(a^2+8-4a)\\ =&\boldsymbol{(a^2+4a+8)(a^2-4a+8)} \end{align} $\blacktriangleleft$ 複2次式の因数分解参照
- $x$ について降べきの順にし、定数項を因数分解すると
\begin{align}
&x^2-xy-12y^2+5x+y+6\\
=&x^2+(-y+5)x-(12y^2-y-6)\\
=&x^2+(-y+5)x-(3y+2)(4y-3)
\end{align}
となる。これを元に表を書けば
\begin{array}{c||c|}
&x&3y+2\\\hline{x}&x^2&(3y+2)x\\\hline-(4y-3)&(-4y+3)x&-(3y+2)(4y-3)\\\hline
\end{array}
となるので、$\boldsymbol{(x-4y+3)(x+3y+2)}$ と因数分解できる。
$\blacktriangleleft$ 難度の高い因数分解 2文字2次式の因数分解参照 \begin{array}{c||c|} &x&-3y&2\\\hline{x}&x^2&3xy&2x\\\hline-4y&-4xy&-12y^2&-8y\\\hline3&3x&9y&6\\\hline \end{array} という表を作ってもよい。 - $x$ について降べきの順にし、定数項を因数分解すると
\begin{align}
&2x^2-y^2-xy+3x+3y-2\\
=&2x^2+(-y+3)x-(y^2-3y+2)\\
=&2x^2+(-y+3)x-(y-1)(y-2)
\end{align}
となる。これを元に表を書けば
\begin{array}{c||c|}
&x&-(y-2)\\\hline2x&2x^2&(-2y+4)x\\\hline(y-1)&(y-1)x&-(y-1)(y-2)\\\hline
\end{array}
となるので、$\boldsymbol{(x-y+2)(2x+y-1)}$ と因数分解できる。
$\blacktriangleleft$ 難度の高い因数分解 2文字2次式の因数分解参照 \begin{array}{c||c|} &x&-y&2\\\hline2x&2x^2&-2xy&4x\\\hline{y}&xy&-y^2&2y\\\hline-1&-x&y&-2\\\hline \end{array} という表を作ってもよい。
因数分解と式の値
因数分解には、式の因数を見えるようにする働きがある。 この点を生かせば、値を整数や自然数に限った次のような問題を解くことができる。
因数分解と式の値
- 多項式 $F=ab-3a+2b-6$ について、次の問いに答えなさい。
- $F$ を因数分解しなさい。
- $F=6$ を満たす自然数 $(a,~b)$ の組をすべて求めなさい。
- $mn+2m-n=3$ を満たす整数 $(m,~n)$ の組をすべて求めなさい。
- \begin{align} F&=a(b-3)+2(b-3)\\ &=\boldsymbol{(a+2)(b-3)}\\ &\quad\blacktriangleleft aについて整理した \end{align}
a.の結果から \[(a+2)(b-3)=6\] となる自然数 $a$、$b$ を求めればよい。
$6$ を自然数の範囲で約数の積に分解すると、$6=6\times1$、$~3\times2$、$~2\times3$、$~1\times6$ である。$a+2$ は $3$ 以上でないといけないことに注意すれば
$\blacktriangleleft$ 自然数は、$1$ 以上の値である。 \begin{cases} a+2=6\\ b-3=1 \end{cases} \begin{cases} a+2=3\\ b-3=2 \end{cases} のいずれかが必要である。それぞれの式から $\boldsymbol{(a,~b)=(4,~4),~(1,~5)}$ と求められる。
- 文字 $m$、$n$ を含む項を因数分解する。
\begin{align}
&mn+2m-n=3\\
\Leftrightarrow~&m(n+2)-n=3\\
&\quad\blacktriangleleft mで整理した\\
\Leftrightarrow~&m(n+2)-(n+2)=3-2\\
&\quad\blacktriangleleft 両辺から 2 を引いた\\
\Leftrightarrow~&(m-1)(n+2)=1
\end{align}
$1=1\times1$または$(-1)\times(-1)$であるので
\begin{cases}
m-1=1\\
n+2=1
\end{cases}
\begin{cases}
m-1=-1\\
n+2=-1
\end{cases}
のいずれかが必要である。それぞれの式から $\boldsymbol{(m,~n)=(2,~-1),~(0,~-3)}$ と求められる。