写像
自動販売機にお金を入れボタンを押すと、商品がでてくる。自動販売機は内部の仕組みはわからなくても、「お金を入れボタンを押す」ことと「飲み物がでてくる」ことは何らかの規則で対応しているのはわかる。このように、途中の仕組みを無視して、何かと何かの対応のみに着目することが便利な場合もある。数学ではこの対応のことを写像と呼ぶ。
写像について
写像とは何か
ここでは、集合と集合の対応を調べることによって、写像や関数という考え方を学んでいこう。
向かう駅 | 料金(円) |
渋谷 | $190$ |
新宿 | $190$ |
横浜 | $450$ |
仙台 | $5780$ |
大阪 | $8510$ |
博多 | $13440$ |
札幌 | $14070$ |
このことを「集合」を用いて表すことを考えよう。
まず、向かう駅の集合 $A$ を \[A=\{渋谷,新宿,横浜,仙台,大阪,博多,札幌\}\] とし、料金の集合 $B$ を \[B=\{190,450,5780,8510,13440,14070\}\] とする。
写像を表す図
このように集合 $A$、$B$ を作ると、図のように $A$ の各要素に $B$ の要素が1つずつ対応する。
一般に、2つの集合 $A$、$B$ において、ある規則によって $A$ のどの要素にも、$B$ の要素が1つずつ対応しているとき、この規則を $A$ から $B$ への写像 (mapping) といい、記号 $f$ などを用いて \[\boldsymbol{f:A\longrightarrow{B}}\] と書く。
写像 $f:A\longrightarrow{B}$ において、集合 $A$ を $f$ の定義域 (domain of definition) という。
また、写像 $f:A\longrightarrow{B}$ によって、$A$ の要素 $a$ に対応する $B$ の要素を $f(a)$ と書き、これを $f$ による $a$ の像 (image)、または $f$ の $a$ における値 (value) という。
さらに、この像(値)全体の集合 \[\{f(a)|a\in{A}\}\] を写像 $f$ の値域 (range) という。
先程の例でいうなら、定義域は \[A=\{渋谷,新宿,横浜,仙台,大阪,博多,札幌\}\] であり、値域は \[B=\{190,450,5780,8510,13440,14070\}\] である。
また、この対応を与えている規則 $f$ による「横浜」の像、つまり $f(横浜)$ は、$450$ である。
定義域・値域
定義域 $A$ を $10$ 以下の自然数とするとき、$A$ の各要素に、その正の約数の個数を対応させる写像 $f$ の値域 $B$ を求めよ。
定義域・値域の図
定義域 $A$ は \[A=\{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10\}\] である。
$A$ の各要素の正の約数と、その個数は表のようにまとめられるので、値域 $B$ は \[B=\{1,2,3,4\}\] となる。
$A$ | 約数 | 約数の個数 |
$1$ | $1$ | $1$ |
$2$ | $1$、$2$ | $2$ |
$3$ | $1$、$3$ | $2$ |
$4$ | $1$、$2$、$4$ | $3$ |
$5$ | $1$、$5$ | $2$ |
$6$ | $1$、$2$、$3$、$6$ | $4$ |
$7$ | $1$、$7$ | $2$ |
$8$ | $1$、$2$、$4$、$8$ | $4$ |
$9$ | $1$、$3$、$9$ | $3$ |
$10$ | $1$、$2$、$5$、$10$ | $4$ |
いろいろな写像
1対1の写像(単射)
単射の図
$A$ からどのような要素 $x$、$y$ をとってきても $f(x)=f(y)$ が成り立つならば、$x=y$ であるとき $f$ を1対1の写像 (one-to-one corespondence)、または単射 (injection) という。
吹き出し1対1の写像(単射)
単射では、$A$ の要素が異なれば、それに対応する $B$ の要素も異なるので、$B$ の要素に2本以上の矢印が向かうことはなく、あっても1本の矢印しか向かわない。それゆえ、単射と覚えるとよい。
上への写像(全射)
全射の図
$B$ のどのような要素 $y$ に対しても $f(x)=y$ となるような $A$ の要素 $x$ が存在するとき $f$ を上への写像 (onto-mapping)、または全射 (surjection) という。
吹き出し上への写像(全射)
全射では、$B$ のどのような要素も考えてみても、矢印の向わないところはなく、全部の要素に最低1本は矢印が向かっている。それゆえ、全射と覚えるとよい。単射と違い、2本以上の矢印が向かっていてもよい点に注意しよう。
上への1対1の写像(全単射)
全単射の図
上への写像であり、かつ1対1の写像でもあるものを、上への1対1写像 (onto and one-to-one corespondence)、または全単射 (bijection) という。
特に、集合 $A$ から集合 $A$ への全単射のことを、置換 (substitution) ともいう。
吹き出し上への1対1の写像(全単射)
全単射であるならば、$B$ の要素の個数は $A$ と必ず等しいことに注意しよう。