集合の要素の個数

集合の表し方より、有限集合の要素の個数は数えることができる。ここでは、集合の要素の個数の表し方や、集合の要素の個数についてに成り立つ関係式を見ていこう。

集合の要素の個数の表し方

集合の要素の個数の表し方

(注)

集合 $A$ の要素の個数を $\boldsymbol{n(A)}$ で表す。

例えば、集合 $A$ を1桁の奇数、すなわち \[A=\{1,3,5,7,9\}\] とすると、$n(A)=5$ となる。空集合 $\emptyset$ には要素がないので、$n(\emptyset)=0$ とする。

集合 $A$ と $B$ が等しいとき、$A$ と $B$ の要素の個数も当然等しい、すなわち \[A=Bならばn(A)=n(B)\] が成り立つ。これより、集合の性質~その1~集合の性質~その2~ でみた集合に関する等式は、集合の要素の個数の場合にもそのまま成り立ち、次のようにまとめられる。

要素の個数の基本


  1. \begin{align} &n((A\cup{B})\cup{C})\\ =&n(A\cup(B\cup{C}))\\ =&n(A\cup{B}\cup{C}) \end{align} \begin{align} &n((A\cap{B})\cap{C})\\ =&n(A\cap(B\cap{C}))\\ =&n(A\cap{B}\cap{C}) \end{align}

  2. \begin{align} &n(A\cup(B\cap{C}))\\ =&n((A\cup{B})\cap(A\cup{C})) \end{align} \begin{align} &n(A\cap(B\cup{C}))\\ =&n((A\cap{B})\cup(A\cap{C})) \end{align}
  3. $n(\overline{\overline{A}})=n(A)$
  4. $n(A\cup\overline{A})=n(U)$、$n(A\cap\overline{A})=0$
  5. ド・モルガンの法則
    $n(\overline{A\cup{B}})=n(\overline{A}\cap\overline{B})$、$n(\overline{A\cap{B}})=n(\overline{A}\cup\overline{B})$

直積の要素の個数

直積の要素の個数

集合 $A$ の要素の個数 $n(A)=l$、集合 $B$ の要素の個数 $n(B)=m$ とする。

$A$ と $B$ の直積 $A\times{B}$ は、$A$ の要素 $l$ 個それぞれに対して $B$ の要素 $m$ 個を対応させることによって作られるので、$n(A\times{B})=l\times{m}$ が成り立つ。

直積の要素の個数

集合 $A$、$B$ と、その直積 $A\times{B}$ の要素の個数に関して \[n(A\times{B})=n(A)\cdot{n(B)}\] が成り立つ。

和集合の要素の個数(包含と排除の原理)

和集合の要素の個数(包含と排除の原理)

包含と排除の原理の図
包含と排除の原理の図

全体集合を $U$ とする、2つの集合 $A$、$B$ について \[n(A)=a~,~n(B)=b~,~n(A\cap{B})=p\] であるとすると図のようになるので \[n(A\cap\overline{B})=a-p~,~n(\overline{A}\cap{B})=b-p\] となるのがわかる。これより \begin{align} &n(A\cup{B})\\ =&\ (a-p)+p+(b-p)\\ =&a+b-p\\ =&\ n(A)+n(B)-n(A\cap{B}) \end{align} が成り立ち、これを包含ほうがん排除はいじょの原理 (principle of inclusion and exclusion) という。

包含と排除の原理(2集合版)

2つの集合 $A$、$B$ に関して \[n(A\cup{B})=n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\] が成り立つ。

特に、$A\cap{B}=\emptyset$ のときには、$n(A\cup{B})=n(A)+n(B)$ となる。

吹き出し和集合の要素の個数(包含と排除の原理)

$n(A\cup{B})$ の要素の個数を数えるのに、$n(A)$ と $n(B)$ を加えたのでは、$n(A\cap{B})$ を2回数えたことになる。そこで、余分な1回分の $n(A\cap{B})$ を引くのだと考えると覚えやすい。イメージは図のようになる。

包含と排除の原理のイメージ

包含と排除の原理のイメージ

包含と排除の原理(2集合版)

$U=\{x|xは100以下の自然数\}$ を全体集合とし、$A=\{x|xは3の倍数\}$、$B=\{x|xは5の倍数\}$ とするとき、次の値を求めよ。

  1. $n(A)$
  2. $n(B)$
  3. $n(A\cap{B})$
  4. $n(A\cup{B})$

  1. $100\div3=33$ あまり $1$ より \[A=\{3\times1,~3\times2,~\cdots,~3\times33\}\] となるのがわかる。よって、$n(A)=\boldsymbol{33}$ である。
  2. $100\div5=20$ より \[B=\{5\times1,~5\times2,~\cdots,~5\times20\}\] となるのがわかる。よって、$n(B)=\boldsymbol{20}$ である。
  3. $A\cap{B}$ は、$3$ の倍数でかつ $5$ の倍数の集合だから、結局 $15$ の倍数の集合である。

    $100\div15=6$ あまり $10$ より \[A\cap{B}=\{15\times1,~15\times2,~\cdots,~15\times6\}\] となるのがわかる。よって、$n(A\cap{B})=\boldsymbol{6}$ である。

  4. 和集合の要素の個数に関して
    $\blacktriangleleft$ 包含と排除の原理(2集合版)参照
    \[n(A\cup{B})=n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\] が成り立つから、1~3より \[n(A\cup{B})=33+20-6=\boldsymbol{47}\]

暗記包含と排除の原理(3集合版)の導出

2つの集合に関する包含と排除の原理 \[n(A\cup{B})=n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\] を使い、3つの集合に関する包含と排除の原理 \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&\ n(A)+n(B)+n(C)\\ &\quad-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})-n(C\cap{A})\\ &\quad+n(A\cap{B}\cap{C}) \end{align} が成り立つのを証明せよ。

\begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&n\{(A\cup{B})\cup{C}\}\\ =&n(A\cup{B})+n(C)-n\{(A\cup{B})\cap{C}\}\\ &\blacktriangle~A\cup{B}を1かたまりとして、\\ &\quad『包含と排除の原理(2集合版)』を使った\\ =&\underbrace{n(A\cup{B})}_{\bigcirc}-\underbrace{n\{(A\cup{B})\cap{C}\}}_{\diamondsuit}+n(C)\\ =&\underbrace{n(A)+n(B)-n(A\cap{B})}_{\bigcirc}\\ &-\underbrace{n\{(A\cap{C})\cup(B\cap{C})\}}_{\diamondsuit}+n(C)\\ &\blacktriangle~\bigcircの部分は『包含と排除の原理\\ &\quad(2集合版)』を、\diamondsuitの部分は\\ &\quad『要素の個数の基本 \text{ii}』を使った\\ =&n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\\ &-\underbrace{n(A\cap{C})-n(B\cap{C})}_{\diamondsuit}\\ &\underbrace{+n\{(A\cap{C})\cap(B\cap{C})\}}_{\diamondsuit}+n(C)\\ &\blacktriangle~さらに\diamondsuitに\\ &\quad『包含と排除の原理(2集合版)』を使った\\ =&n(A)+n(B)+n(C)\\ &-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})-n(C\cap{A})\\ &+n\{(A\cap{C})\cap(B\cap{C})\}\\ =&n(A)+n(B)+n(C)\\ &-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})-n(C\cap{A})\\ &+n\{(A\cap(C\cap{B}\cap{C})\}\\ &\blacktriangle~B\cap{C}を1かたまりとして、\\ &\quad要素の個数の基本を使った\\ =&n(A)+n(B)+n(C)\\ &-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})-n(C\cap{A})\\ &+n(A\cap{B}\cap{C})\\ &\blacktriangle~C\cap{C}=C~『共通部分』 \end{align}

包含と排除の原理(3集合版)

3つの集合$A$、$B$、$C$ に関して \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&n(A)+n(B)+n(C)\\ &\quad-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})\\ &\quad-n(C\cap{A})+n(A\cap{B}\cap{C}) \end{align} が成り立つ。

吹き出し和集合の要素の個数(包含と排除の原理)

包含と排除の原理(3集合版)の図
包含と排除の原理(3集合版)の図

3集合の場合の包含と排除の原理も、包含と排除の原理(2集合版)の場合と似ている。$n(A\cup{B}\cup{C})$ を数えるのに、これを包み込む $n(A)+n(B)+n(C)$ をまず計算する。すると、重なっている部分ができてしまうので、$n(A\cap{B})+n(B\cap{C})+n(C\cap{A})$ を引くことにより除外する。しかし、これでは3つの集合が重なった部分を引きすぎてしまうので、最後に $n(A\cap{B}\cap{C})$ を加えておく。図で確認してみよう。

補集合の要素の個数

“着目しないもの”に着目する

白丸と黒丸
白丸と黒丸

図の中にある白丸(○)の個数を数えるには、実際に白丸の個数を数えるのではなく、丸が横に12個、縦に10個、計120個並んでいるのを確認し、そこから黒丸(●)の個数を引くのが よい。つまり \begin{align} &(白丸の個数)=12\times10-8=112\\ &\quad\therefore~112個 \end{align} と数えるのがよい。

このように、着目しないもの(●)の個数を全体の個数から引くことによって、着目するもの(○)の個数を数えることができ、集合では次のようにまとめられる。

補集合の要素の個数について

全体集合と補集合
全体集合と補集合

全体集合を $U$ とする。集合 $A$ と、その補集合 $\overline{A}$ について \[A\cup\overline{A}=U~,~A\cap\overline{A}=\emptyset\] であるから、包含と排除の原理(2集合版)より \[n(U)=n(A)+n(\overline{A})\] となる。

補集合の要素の個数

全体集合を $U$ とする集合 $A$ と、その補集合 $\overline{A}$ に関して \[n(\overline{A})=n(U)-n(A)\] が成り立つ。

吹き出し補集合の要素の個数について

このことは、ある集合 $A$ の要素の個数を数えるのが大変な場合、むしろ $A$ の補集合 $\overline{A}$ の要素の個数に着目すべきである、ということを教えてくれる。

補集合の要素の個数と包含と排除の原理

総世帯数が $191$ のある地区では、新聞をとっている世帯が $170$ ある。このうちA新聞をとっている世帯は $89$、B新聞をとっている世帯は $108$ ある。その他の新聞はこの地区には無いものとして、以下の問に答えよ。

  1. この地区では新聞をとっていない世帯はいくつか。
  2. A、B両方の新聞をとっている世帯はいくつか。

  • $U:$「ある地区の総世帯」
  • $A:$「A新聞をとっている世帯」
  • $B:$「B新聞をとっている世帯」
とおく。
  1. 新聞をとっている世帯は $A\cup{B}$ と表せるので、新聞をとっていない世帯は $\overline{A\cup{B}}$ となる。
    $\blacktriangleleft$ 補集合の要素の個数参照
    \begin{align} &n(\overline{A\cup{B}})\\ =&n(U)-n(A\cup{B})\\ =&191-170\\ =&\boldsymbol{21} \end{align}
  2. A、B両方の新聞をとっている世帯は $A\cap{B}$ と表される。和集合の要素の個数に関して
    $\blacktriangleleft$ 包含と排除の原理(2集合版)参照
    \[n(A\cup{B})=n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\] が成り立つから \begin{align} n(A\cap{B})=&\ n(A)+n(B)-n(A\cup{B})\\ =&\ 89+108-170=\boldsymbol{27} \end{align}

補集合の要素の個数と包含と排除の原理(3集合版)

$300$ 人の高校生にA、B、Cの3種のテストを行った。Aテストに $102$ 人、Bテストに $152$ 人、Cテストに $160$ 人が合格したが、これらの中で、A、B両テストに $42$ 人、B、C両テストに $62$ 人、C、A両テストに $32$ 人が合格している。3種のテストのどれにも合格しなかった人は $10$ 人であった。このとき、3種のテストにすべて合格した人は何人か。

  • $U:$「テストを受けた高校生全員」
  • $A:$「Aテストに合格した人」
  • $B:$「Bテストに合格した人」
  • $C:$「Cテストに合格した人」
とおくと、3種のテストのどれにも合格しなかった人は $\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}$ と表され、3種のテストにすべて合格した人は $A\cap{B}\cap{C}$ で表せる。

$\blacktriangleleft$ 包含と排除の原理(3集合版)参照
3つの集合の和集合に関して \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&\ n(A)+n(B)+n(C)\\ &\quad-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})\\ &\quad-n(C\cap{A})\\ &\quad+n(A\cap{B}\cap{C})\tag{1}\label{hosyugonoyosonokosunituite1} \end{align}
$\blacktriangleleft$ 補集合の要素の個数参照

$\blacktriangleleft$ 全体集合と補集合の3集合の場合のド・モルガンの法則より
が成り立ち、また補集合に関して \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&n(U)-n\left(\overline{A\cup{B}\cup{C}}\right)\\ =&n(U)-n\left(\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}\right)\tag{2}\label{hosyugonoyosonokosunituite2} \end{align} が成り立つ。$\eqref{hosyugonoyosonokosunituite1}$と$\eqref{hosyugonoyosonokosunituite2}$より \begin{align} &n(A\cap{B}\cap{C})\\ =&n(A\cup{B}\cup{C})\\ &\quad-n(A)-n(B)-n(C)\\ &\quad+n(A\cap{B})+n(B\cap{C})+n(C\cap{A})\\ =&\left\{n(U)-n\left(\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}\right)\right\}\\ &\quad-n(A)-n(B)-n(C)\\ &\quad+n(A\cap{B})+n(B\cap{C})+n(C\cap{A})\\ =&300-10-102-152\\ &\quad-160+42+62+32\\ =&\boldsymbol{12}\\ &\therefore~12人 \end{align}