命題
ものごとの価値を決める尺度には、楽しさ、美しさ、善さなど、いろいろなものがある。数学では、正しさに最大の関心を払う。絶対に正しいといい切れるものを、証明という手段で徐々に積み上げて、数学は構築されている。ここでは、正しさを扱うための基本単位となる
命題と真・偽
“正しい”ということ“正しくない”ということ
次の4つの事柄について、“正しい”か“正しくない”かという点について考えてみよう。
- 日本の首都は東京である
- ペンギンは魚類である
- 実数を2乗すると $0$ 以上になる
- 2つの実数 $a$、$b$ に対し $ab\gt0$ ならば、$a\gt0$ かつ $b\gt0$ である
次に、ii に関して。ペンギンは鳥類なので、この文章は間違っている。“正しい”か“正しくない”かと聞かれたら、“正しくない”といえるだろう。
そして、iii に関して。実数は、正・負・$0$ の3つに分類でき、正の実数の2乗は正、負の実数の2乗は正、$0$ の2乗は $0$ であるから、いずれにしても2乗した結果は $0$ 以上となる。ゆえに、この文章は“正しい”といえる。
最後に、iv に関して。$ab\gt0$ ということはいいかえるならば、$a$ と $b$ が同じ符号 $(+,~−)$ をもつということである。$a$ と $b$ が同じ符号であるということには、$a\gt0$ かつ $b\gt0$ という場合もあるが、$a\lt0$ かつ $b\lt0$ という場合もあるということである。その点において、この文章は“正しい”とはいいきれないため、“正しくない”ということにする。
命題と真・偽について
式や文章で表された事柄で、“正しい”か“正しくない”かのどちらか一方に定まるものを
命題が“正しい”とき、その命題は
数を $a,b,c,\cdots$ などのアルファベットで表すように、命題もアルファベットの $p,q$ などで表す。
命題と真・偽
式や文章で表された事柄で、“正しい”か“正しくない”かのどちらか一方に定まるものを
真・偽の判断
次の命題の真偽をいえ。
- $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}=\dfrac{2}{5}$
- $2^{16}=65536$
- $x^2=9$ ならば $x=3$
- $x=3$ ならば $x^2=9$
- 整数$a$、$b$の積が偶数ならば、$a$または$b$は偶数である。
- 整数$a$、$b$の積が奇数ならば、$a$と$b$はともに奇数である。
- $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}=\dfrac{3}{6}+\dfrac{2}{6}=\dfrac{5}{6}$ なので、この命題は
偽
である。 - 計算すれば正しいとわかる。よって、この命題は
真
である。 - $x^2=9$ のとき、$x=-3,~3$ である。$\blacktriangleleft$ $x=-3,~3$ の「$~,~$」は「または」の意味であるよって、$x=3$ とはいいきれないので、この命題は
偽 である。 - $x=3$ のときは、例外なく $x^2=9$ となるので、この命題は
真
である。 -
$a$ と $b$ の偶奇には、(偶数,遇数)、(偶数,奇数)、(奇数,遇数)、(奇数,奇数)の4つの場合があるが、$ab$ が偶数になるのは、(偶数,遇数)、(偶数,奇数)、(奇数,遇数)の3つの場合、つまり $a$ または $b$ が偶数の場合である。よって、この命題は$\blacktriangleleft$ 「$a$ または $b$ は偶数」には、「$a,b$どちらか一方が偶数」だけでなく「$a,b$両方とも偶数」の場合も含まれる真
である。 - 5と同様に考え、$ab$が奇数であるとき、$a$ と $b$ はともに奇数である。よって、この命題は
真
である。