条件の結合

前のセクションでは、ある条件 $p(x)$ を真とする $x$ の集まり、真理集合を学んだ。命題が組み合わされて命題が作れたように、条件の場合にも条件の組み合わせによって、新たに条件を作ることができる。この新たに作られた条件の真理集合は、集合の基礎で学んだ集合と対応させて理解することができる。

条件の「かつ」と「または」

「かつ」の真理集合

条件の「かつ」

2つの条件 $p(x)$、$q(x)$ に対して、「$p(x),q(x)$ は共に真である」という主張は条件となり
「$p(x)$ かつ $q(x)$ 」
と書く。

いま、ある条件 $p(x),q(x)$ において、変数 $x$ のとり得る範囲を考え、それを全体集合 $U$ とし、 $p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とする。

「かつ」の真理集合の図
「かつ」の真理集合の図

命題の「かつ」でみたように、命題 $p(a),q(a)~~(a{\in}U)$ が共に真のときに限り、命題「$p(a)$ かつ $q(a)$」は真になるので、条件「$p(x)$ かつ $q(x)$」の真理集合は $P\cap{Q}$ となる。

「または」の真理集合

条件の「または」

2つの条件 $p(x),q(x)$ に対して、「$p(x),q(x)$ の少なくとも一方は真である」という主張は条件となり
「$p(x)$ または $q(x)$」
と書く。

いま、ある条件 $p(x),q(x)$ において、変数 $x$ のとり得る範囲を考え、それを全体集合 $U$ とし、$p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とする。

「または」の真理集合の図
「または」の真理集合の図

命題の「または」でみたように、命題 $p(a),q(a)~~(a{\in}U)$ が共に偽のときに限り、命題「$p(a)$ または $q(a)$」は偽になるので、それ以外のときを考えて、条件「$p(x)$ または $q(x)$」の真理集合は $P\cup{Q}$ となる。

条件の否定

否定の真理集合

条件の否定

条件 $p(x)$ に対して

「$p(x)$ ではない」

という主張は条件となり、条件 $p(x)$ の否定という。

条件 $p(x)$ の否定は、記号 $\overline{p(x)}$ で表すこともある。

条件の否定を表す図
条件の否定を表す図

いま、ある条件 $p(x)$ において、$x$ のとり得る範囲を考え、それを全体集合 $U$ とし、命題 $p(a)~\left(a{\in}U\right)$ が真となるような要素 $a$ の集合、つまり条件 $p(x)$ の真理集合を $P$ とする。

命題の否定でみたように、命題 $p(a)$ が偽のときに命題 $\overline{p(a)}$ は真になるので、条件 $\overline{p(x)}$ の真理集合は $P$ の補集合 $\overline{P}$ となる。

条件の否定

$x,y$ は実数とする。次の条件の否定を答えよ。

  1. $x=1$
  2. $x\geqq-2$
  3. $x+y\gt0$
  4. $x$ は無理数である

  1. 「$x$ は $1$ である」の否定は「$x$ は $1$ ではない」、よって \[\boldsymbol{x\neq{1}}\]
  2. 「$x$ は$-2$ 以上である」の否定は「$x$ は $-2$ 以上ではない」、つまり「$x$ は $-2$ より小さい」、よって \[\boldsymbol{x\lt-2}\]
  3. 「$x$ と $y$ を足したものは $0$ より大きい」の否定は「$x$ と $y$ を足したものは $0$ より大きくはない」、つまり「$x$ と $y$ を足したものは $0$ 以下である」、よって \[\boldsymbol{x+y\leqq0}\]
  4. 「$x$ は無理数である」の否定は「$x$ は無理数ではない」、つまり
    $\blacktriangleleft$ 無理数とは「有理数ではない数」、有理数とは「整数 $a$ と $0$ でない整数 $b$ によって $\dfrac{a}{b}$ の形で表せる数」である
    「$x$ は有理数である」

条件の「ならば」

「ならば」の真理集合

条件の「ならば」

2つの条件 $p(x),q(x)$ に対して、「もし $p(x)$ が真であるならば、$q(x)$ は真である」という主張は条件となり
「$p(x)$ ならば $q(x)$」
と書き、記号では $\boldsymbol{{p(x)}\Rightarrow{q(x)}}$ と表す。
このとき、初めの条件 $p(x)$ を仮定といい、後の条件 $q(x)$ を結論という。

いま、ある条件 $p(x),q(x)$ において、変数 $x$ のとり得る範囲を考え、それを全体集合 $U$ とし、$p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とする。

「ならば」の真理集合の図
「ならば」の真理集合の図

命題の「ならば」でみたように、$a{\in}U$ として命題 $p(a)$ が真で命題 $q(a)$ が偽のときに限り命題 $p(a){\Rightarrow}q(a)$ は偽になるので、それ以外の場合を考えて、条件 $p(x){\Rightarrow}q(x)$ の真理集合は $\overline{P}\cup{Q}$ となる。

必要条件と十分条件

一般に

A:「全体集合内のすべての $x$ において、$p(x){\Rightarrow}q(x)$ は真となる」

という主張は命題となる。

条件の「ならば」の図のような場合では、白抜きの部分の要素 $a$ では、$p(a)$ は真、$q(a)$ は偽だから命題「$p(a){\Rightarrow}q(a)$」は偽つまり、命題Aは偽となる。

この要素 $a$ のことを、この命題の反例 (counterexample) という。

必要条件と十分条件の図
必要条件と十分条件の図

しかし、右図のように、条件 $p(x),q(x)$ の真理集合 $P,Q$ が $P\subseteqq{Q}$ となる場合には、全体集合内のいかなる要素をとろうとも、$p(x){\Rightarrow}q(x)$ は真となるので、この命題Aは真となる。

(注)

全体集合内のすべての $x$ に対して、$p(x){\Rightarrow}q(x)$ が真であるとき

  • $q(x)$ は $p(x)$ であるための必要条件 (neccessary condition) である
  • $p(x)$ は $q(x)$ であるための十分条件 (sufficient condition) である
という。

必要十分条件の図
必要十分条件の図

また、$p(x){\Rightarrow}q(x)$ と $q(x){\Rightarrow}p(x)$ がともに真であるとき

  • $q(x)$ は $p(x)$ であるための必要十分条件 (neccessary and sufficient condition) である
または同値 (equivalence) であるといい、$p(x){\Leftrightarrow}q(x)$ と書く。この場合は、右図のように真理集合 $P$ と $Q$ は等しく、$p(x)$ は $q(x)$ であるための必要十分条件でもある。

吹き出し必要条件と十分条件

“必要”や“十分”という言葉の意味についてはこだわらず、真理集合 $P,Q$ において「小さい方が十分条件」、「大きい方が必要条件」と単純に覚えてしまおう。

必要条件と十分条件

次の四角の中に

  • (ア) 必要条件であるが十分条件ではない
  • (イ) 十分条件であるが必要条件ではない
  • (ウ) 必要十分条件である
  • (エ) 必要条件でも十分条件でもない
のうち、適当なものを選んで入れよ。
  1. $p(x)$ は $q(x)$ であるための、$\fbox{A}$ \[p(x):\lceil\,x^2=2x\rfloor~~q(x):\lceil\,x=2\rfloor\]
  2. $p(x,~y)$ は $q(x,~y)$ であるための、$\fbox{B}$ \begin{align} &p(x,~y):\lceil{x}\geqq0かつy\leqq0\rfloor\\&q(x,~y):\lceil{xy}\leqq0\rfloor \end{align}
  3. $p(x,~y)$ は $q(x,~y)$ であるための、$\fbox{C}$ \begin{align} &p(x,~y):\lceil{xy}=0かつx+y=0\rfloor\\ &q(x,~y):\lceil{x}=0かつy=0\rfloor\ \end{align}
  4. $p(x)$ は $q(x)$ であるための、$\fbox{D}$ \[p(x):\lceil{x}\gt0\rfloor~~q(x):\lceil{x}\neq1\rfloor\]


  1. \begin{align} &p(x)\\ \Leftrightarrow~&x(x-2)=0\\ \Leftrightarrow~&x=0\vee2 \end{align} これより
    1の図
    $\blacktriangleleft$ $p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とすると図のような関係になっている
    • $p(x){\Rightarrow}q(x)$ は偽 (反例 $x=0$)
    • $p(x){\Leftarrow}q(x)$ は真
    となるので、$\fbox{A}$ には(ア)が入る。

  2. \begin{align} &q(x,~y)\\ \Leftrightarrow~&(x\geqq0\wedge{y}\leqq0)\vee(x\leqq0\wedge{y}\geqq0) \end{align} これより
    2の図
    $\blacktriangleleft$ $p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とすると図のような関係になっている
    • $p(x,~y){\Rightarrow}q(x,~y)$ は真
    • $p(x,~y){\Leftarrow}q(x,~y)$ は偽 (反例 $x=-1$ かつ $y=1$ など)
    となるので、$\fbox{B}$ には(イ)が入る。
  3. $p(x,~y)$ に関して、まず \begin{align} &xy=0\\ \Leftrightarrow~&x=0\vee{y}=0 \end{align} このうち、さらに $x+y=0$ を満たす $x,y$ は $x=0$ かつ $y=0$ である。これより
    3の図
    $\blacktriangleleft$ $p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とすると図のような関係になっている
    • $p(x,~y){\Rightarrow}q(x,~y)$ は真
    • $p(x,~y){\Leftarrow}q(x,~y)$ は真
    つまり、$p(x,~y){\Leftrightarrow}q(x,~y)$ であるから、$\fbox{C}$ には(ウ)が入る。

  4. 4の図
    $\blacktriangleleft$ $p(x),q(x)$ の真理集合をそれぞれ $P,Q$ とすると図のような関係になっている
    • $p(x,~y){\Rightarrow}q(x,~y)$ は偽 (反例 $x=1$)
    • $p(x,~y){\Leftarrow}q(x,~y)$ は偽 (反例 $x=-1$ など)
    となるので、$\fbox{D}$ には(エ)が入る。