球の体積と表面積
ここでは、球とその切り口に現れる円の計量について考えていこう。
球の表面積と体積
球の体積
球の体積について考えるため、まず次の例題を解いてみよう。
球と円柱
球と円柱

右の図において、円柱から半球 T を除いた図形を S とする。0<x<r のとき
- 高さ x の水平面で S を切ったときの、切り口に現れる小さい方の円の半径を求めよ。
- 高さ x の水平面による、S の断面積を求めよ。
底面に垂直な平面で立体を半分に切れば、左の断面図となる。高さ x の平面による半球 T の切り口は、左図の線分 HA を半径とした円になるので、線分 HA の長さを求めればよい。
よって、求める長さは HA=√OA2−OH2=√r2−x2
- 求める面積は「高さ x の平面による円柱の切り口の面積」(これは半径 r の円)から「高さ x の平面による半球 T の切り口の面積」(これは半径 √r2−x2 の円)を引けばよいので、求める面積は πr2−π(√r2−x2)2=πr2−π(r2−x2)=πx2
一般に、2つの立体について、どの高さに対する切り口の面積も等しいならば、これら2つの立体の体積は等しいことが知られている。上の例題において、底面の半径 r、高さ r の円錐を逆さにしたものを U とすると、高さ x における U の断面積は S と等しく πx2 になる、つまり、S と U は体積が等しく (半球Tの体積)=(円柱の体積)−(Uの体積)=πr3−13πr3=23πr3 と計算できる。この T の体積を 2 倍して、半径 r の球の体積 43πr3 を得る。
球の体積
半径 r の球の体積 V は、V=43πr3 である。
球の表面積
まず、中心 O、半径 r の球の体積と表面積の関係について考えてみよう。
球の表面に小さい三角形を描き、その 3 頂点と球の中心 O を結ぶと三角錐ができあがる。今度は、その三角形の一辺を使ってまた別の三角形を描き、頂点と中心 O を結ぶと別の三角錐ができあがる。このような操作を繰り返していけば、球全体を三角錐の集まりとして分割することができる。
球の表面積

球体である地球の地面を、通常私たちは平らであると感じている。つまり、球の表面に描く三角形も十分に小さければ、平らであると扱ってもよいだろう。すると、球体は三角錐の集まりとして扱ってもよいだろう。また、このときひとつひとつの三角錐は大変細長いものとなるので、その高さはすべて r と考えてもよいだろう。
すべての三角錐の体積が 13×(底面積)×(高さ) であるから、三角錐の体積の和は、13×(底面積の和)×(高さ) となる。三角錐の底面積の和は球の表面積と考えてよいので、半径 r の球の体積を V、表面積を S とすると、V=13Sr である。『球の体積』より V=43πr3 なので 43πr3=13Sr ∴ である。
球の表面積
半径 r の球の表面積 S は、S=4{\pi}r^2 である。
球の表面積、体積
- 半径 4\text{cm} の球の、表面積と体積をそれぞれ求めよ。
- 1辺 8\text{cm} の立方体の表面積と直径 10\text{cm} の球の表面積では、どちらが大きいか。
- 1辺 10\text{cm} の立方体に高さ 9\text{cm} まで水を入れてある。この水の中に半径 3\text{cm} の球を静かに入れると、何 \text{cm}^3 の水があふれるか。ただし、表面張力は考えない。
- 表面積は 4\pi\cdot4^2=\boldsymbol{64\pi\text{cm}^2}
- 体積は \dfrac{4}{3}\pi\cdot4^3=\boldsymbol{\dfrac{256}{3}\pi\text{cm}^3}
1辺 8\text{cm} の立方体の表面積は、6\times8^2=384\text{cm}^2
直径 10\text{cm} の球の半径は 5\text{cm} なので、表面積は \begin{align} 4\pi\cdot5^2=&100\pi\\ \fallingdotseq&100\times3.14\\ =&314\text{cm}^2 \end{align} よって、1辺 8\text{cm} の立方体の表面積の方が大きい。
- 水中に入れた球の体積は \dfrac{4}{3}\pi\cdot3^3=36\pi\text{cm}^3 なので、水の体積と球の体積の和は 10\cdot10\cdot9+36\pi=900+36\pi\text{cm}^3 である。実際には 10^3=1000\text{cm}^3 しか入らないので、あふれる水の体積は (900+36\pi)-1000=\boldsymbol{36\pi-100\text{cm}^3}
円錐と内接球
円錐と内接球

底面の半径が 4、母線の長さが 10 の円錐がある。
- この円錐に内接する球 O_1 の半径を求めよ。
- 球 O_1 の上に外接し、さらに円錐に内接する球 O_2 の半径を求めよ。
円錐の頂点を \text{A}、球 O_1、O_2 の中心をそれぞれ \text{P}、\text{Q} とし、\text{A} から底面に下ろした垂線の足を \text{H} とする。このとき、線分 \text{AH} は \text{P}、\text{Q} を通る。
直線 \text{AH} を含むように、この立体図形を縦に垂直に切る。すると、断面図は右図のようになり、 球 O_1 の断面は、\triangle\text{ABC} の内接円になる。
\triangle\text{ABC} の面積を S、球 O_1 の半径 r_1 とすると S=\dfrac{1}{2}(10+10+8)r_1\tag{3}\label{kyunohyomenseki} が成り立つ。
面積 S は、\text{AH}=\sqrt{10^2-4^2}=2\sqrt{21} より S=\dfrac{1}{2}\cdot8\cdot2\sqrt{21}=8\sqrt{21} であるので、これを \eqref{kyunohyomenseki} に代入して \begin{align} 8\sqrt{21}&=\dfrac{1}{2} (10+10+8)r_1\\ \therefore~~ r_1&=\dfrac{8}{14}\sqrt{21}=\boldsymbol{\dfrac{4}{7}\sqrt{21}} \end{align}
1と同じ断面を考え、右図のように \text{E} をとると \triangle\text{AQE}\sim\triangle\text{ACH} である。
よって、球 O_2 の半径を r_2 とすれば \begin{align} &\text{AQ}:\text{QE}=\text{AC}:\text{CH}\\ &\left(\text{AH}-2r_1-r_2\right):r_2=10:4=5:2\\ &2\left(2\sqrt{21}-\dfrac{8}{7}\sqrt{21}-r_2\right)=5r_2\\ &\dfrac{12}{7}\sqrt{21}=7r_2\\ &\therefore~r_2=\boldsymbol{\dfrac{12}{49}\sqrt{21}} \end{align}