図形の面積比・体積比
相似な図形どうしでは面積比や体積比について、一定の法則が成り立つ。ここでは、相似な図形をもちいた平面や空間図形の計量について考えていこう。
相似と相似比
相似
2つの図形が相似 (similar) であるとは、一方の図形を、ある1点に対して拡大・縮小すれば、他方の図形と合同になる関係のことをいった。
これらの定義は、空間図形の相似についても当てはまる。
下の図において、図形 S と図形 T はいずれも相似である。
相似な図

相似比
相似な二つの図形の、対応する辺の長さの比を相似比 (ratio of similitude) という。上の図の S と T の相似比は、たとえば AB:CD で与えられる。
相似な図形の比
平面図形の面積比
平面図形の面積比

右の図のように、相似比が m:n である2つの三角形の面積比 S:S′ を考えてみよう。
相似比が m:n であるから、底辺の比は m:n、高さの比も m:n となるので、左側の三角形の底辺と高さをそれぞれ a、h とすると、左の図の右側 の三角形の底辺と高さは a×nm、h×nmとなる。
これより、S:S′ は S:S′=12ah:12anm⋅hnm=1:n2m2=m2:n2 となる。
三角形でなく任意の多角形の場合でも、ある頂点から他の頂点に対角線を引くことで三角形の分割できるので、この式は任意の多角形で成り立つ。
また、多角形に限らず一般的な平面図形においても、この式は成り立つ。
相似な平面図形の面積比
相似比が m:n である2つの平面図形について、その面積比は m2:n2 である。
相似な図形の相似比
相似な図形の相似比

右の図において、AD:DB=1:2、AE:EC=1:2 であるとする。
- 相似な三角形の組を2つ見つけ、それぞれについて面積の比を求めよ。
- △DEF と △ABC の面積比を求めよ。
△ADE と △ABC について、AD:AB=AE:AC=1:3、∠A は共通であるので、△ADE∼△ABC である。
◂ 相似比が m:n のとき、面積比は m^2:n^2相似比は 1:3 なので、面積比は 1^2:3^2=\boldsymbol{1:9} である。
また、\triangle\text{ADE}\sim\triangle\text{ABC} より \angle\text{ADE}=\angle\text{ABC} なので \text{DE}\parallel\text{BC}。これより、\triangle\text{FDE}\sim\triangle\text{FBC} である。
相似比は \text{DE}:\text{BC}=1:3 なので、面積比は 1^2:3^2=\boldsymbol{1:9} である。
\triangle\text{DEF} の面積を S とおくと、1より \triangle\text{FCB}=9S である。また
- \text{EF}:\text{FB}=1:3 より \triangle\text{DBF}=3S
- \text{DF}:\text{FC}=1:3 より \triangle\text{EFC}=3S
ここで、1より \triangle\text{ADE}\sim\triangle\text{ABC}=1:9 より
四角形\text{DECB}:\triangle\text{ABC}=8:9となるので、\triangle\text{ABC}=16S\times\dfrac{9}{8}=18S。
よって、\triangle\text{ADE} と \triangle\text{ABC} の面積比は S:18S=\boldsymbol{1:18} である。
空間図形の表面積比と体積比
相似比が m:n である、2つの相似な三角錐について、表面積比 S:S' と体積比 V:V' を考えてみよう。
空間図形の表面積比と体積比

右の図のように、2つの立体が相似ならば、対応する表面の図形も互いに相似である。
それゆえ、相似比が m:n の図形の表面比は S:S'=m^2:n^2 となる。
また、左の三角推の底面積と高さを T、h とすると、右の三角錐の底面積と高さは T\times\dfrac{n^2}{m^2}、h\times\dfrac{n}{m} となるから \begin{align} V:V'=&\dfrac{1}{3}Th:\dfrac{1}{3}\times\dfrac{Tn^2}{m^2}\times\dfrac{hn^2}{m^2}\\ =&1:\dfrac{n^3}{m^3}\\ =&m^3:n^3 \end{align} となる。
また、一般の空間図形においても、次のことが成り立つ
相似な空間図形の表面積比と体積比
相似比が m:n である2つの空間図形について
- それぞれの表面をなす図形は相似であり、その相似比は m:n である。
- 表面積比は m^2:n^2 である。
- 体積比は m^3:n^3 である。
相似比と面積比・体積比
相似比と面積比・体積比

右図のような円錐 \text{T} を切り、上にできた円錐を \text{S} とする。
- \text{S} と \text{T} は相似である。相似比を求めよ。
- \text{S} と \text{T} の表面積比を求めよ。
- \text{T} から \text{S} を除いた図形を \text{U} とする。\text{S} と\text{U} の体積比を求めよ。
- 母線の長さの比から、\boldsymbol{3:5}
- 1より、表面積比は 3^2:5^2=\boldsymbol{9:25}
- 1より、\text{S} と \text{T} の体積比は 3^3:5^3=27:125 つまり、\text{S} と \text{U} の体積比は 27:(125-27)=\boldsymbol{27:98}
空間図形の表面積比と体積比
空間図形の表面積比と体積比

正四面体のそれぞれの辺の中点を結ぶと、正八面体ができる。このとき、つぎの問に答えよ。
- この正四面体と正八面体の表面積比を求めよ。
- この正四面体と正八面体の体積比を求めよ。
まず、正四面体の1つの面も、正八面体の1つの面も正三角形であり、互いに相似である。相似比は 2:1 であるから、面積比は 2^2:1^2=4:1 である。
正四面体の1つの面の面積を S とすると、正四面体の表面積は 4S、正八面体の表面積は 8\times\left(\dfrac{S}{4}\right)=2S である。
よって、求める比は 4S:2S=\boldsymbol{2:1} である。
正八面体は、もとの正四面体から4つの小さい正四面体を除いたものである。
もとの正四面体と小さい正四面体の相似比は 2:1 だから、体積比は 2^3:1^3=8:1、つまり、正四面体の体積を V とすると小さい正四面体の体積は \dfrac{V}{8}。よって、正八面体の体積は V-4\times\left(\dfrac{V}{8}\right)=\dfrac{V}{2} となり、求める比は V:\dfrac{V}{2}=\boldsymbol{2:1} である。