空間図形の計量
空間図形は、上手に切り口を選ぶことにより、平面図形の問題へと帰着される。以下では、代表的な空間図形の計量についてみていこう。
直角が1つの頂点に集まった四面体
直角三角錐の計量
1つの頂点に直角が3つ集まった三角錐のことを直角三角錐 (rectangular triangular pyramid) という。
直角三角錐の計量
直角三角錐の計量
図のように、$\angle\text{AOB}=\angle\text{BOC}=\angle\text{COA}=90^\circ$ の直角三角錐 $\text{OABC}$ において、次の問に答えよ。ただし、$\text{OA}=2$、$\text{OB}=3$、$\text{OC}=6$ とする。
- 辺 $\text{AB}$、$\text{BC}$、$\text{CA}$ の長さをそれぞれ求めよ。
- $\angle\text{ACB}=\theta$ とするとき、$\cos\theta$ の値を求めよ。
- $\triangle\text{ABC}$ の面積 $S$ を求めよ。
- $\triangle\text{OAB}$、$\triangle\text{OBC}$、$\triangle\text{OCA}$ それぞれに、三平方の定理を用いて \begin{align} &\boldsymbol{\text{AB}=\sqrt{13}}\\ &\boldsymbol{\text{BC}=3\sqrt{5}}\\ &\boldsymbol{\text{CA}=2\sqrt{10}} \end{align}
- $\triangle\text{ABC}$ に点 $\text{C}$ からみる余弦定理を用いて \begin{align} \cos\theta&=\dfrac{\text{CA}^2+\text{CB}^2-\text{AB}^2}{2\text{CA}\cdot\text{CB}}\\ &=\dfrac{40+45-13}{2\cdot2\sqrt{10}\cdot3\sqrt{5}}=\boldsymbol{\dfrac{3\sqrt{2}}{5}} \end{align}
- 2より \begin{align} \sin\theta&=\sqrt{1-\cos^2\theta}\\ &=\sqrt{1-\left(\dfrac{3\sqrt{2}}{5}\right)^2}\\ &=\sqrt{1-\dfrac{18}{25}}=\dfrac{\sqrt{7}}{5} \end{align} だから、1より $\triangle\text{ABC}$ の面積 $S$ は \begin{align} S&=\dfrac{1}{2}\text{CA}\cdot\text{CB}\sin\theta\\ &=\dfrac{1}{2}\cdot2\sqrt{10}\cdot3\sqrt{5}\cdot\dfrac{\sqrt{7}}{5}\\ &=\boldsymbol{3\sqrt{14}} \end{align}
上の例題で、$\triangle\text{OAB}$、$\triangle\text{OBC}$、$\triangle\text{OCA}$ の面積をそれぞれ $S_1$、 $S_2$、$S_3$ とおくと \[{S_1}^2+{S_2}^2+{S_3}^2=S^2\] が成り立っているのが確認できる。この関係は、一般の直角三角錐で成り立ち、三平方の定理の空間版といえるものである。
三角錐の計量
三角錐の計量
図のような三角錐 $\text{OABC}$ において、次の問に答えよ。
- 辺 $\text{OB}$ の長さを求めよ。
- 辺 $\text{OA}$ の長さを求めよ。
- 辺 $\text{AC}$ の長さを求めよ。
- $\angle\text{ABC}=\theta$ とするとき、$\cos\theta$ の値を求めよ。
- $\triangle\text{OBC}$ に正弦定理を用いて \[\dfrac{\text{OB}}{\sin45^\circ}=\dfrac{6}{\sin60^\circ}\] \begin{align} \Leftrightarrow~\text{OB}=&\dfrac{\sin45^\circ}{\sin60^\circ}\times6\\ =&\dfrac{\dfrac{\sqrt{2}}{2}}{\dfrac{\sqrt{3}}{2}}\times6\\ =&\boldsymbol{2\sqrt{6}} \end{align}
- \[\text{OA}=\text{OB}\sin60^\circ=2\sqrt{6}\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}=\boldsymbol{3\sqrt{2}}\]
- まず、$\triangle\text{OBC}$ に点 $\text{B}$ からみる第1余弦定理を用いて \begin{align} \text{OC}&=\text{BO}\cos\angle\text{BOC}+\text{BC}\cos\angle\text{BCO}\\ &=2\sqrt{6}\cos60^\circ+6\cos45^\circ\\ &=2\sqrt{6}\cdot\dfrac{1}{2}+6\cdot\dfrac{\sqrt{2}}{2}=\sqrt{6}+3\sqrt{2} \end{align} これより、$\triangle\text{OAC}$ に三平方の定理を用いて \begin{align} \text{AC}&=\sqrt{\text{OC}^2-\text{OA}^2}\\ &=\sqrt{\left(\sqrt{6}+3\sqrt{2}\right)^2-\left(3\sqrt{2}\right)^2}\\ &=\boldsymbol{\sqrt{6+12\sqrt{3}}} \end{align} $\blacktriangle$ $\sqrt{6+12\sqrt{3}}$ はこれ以上簡単にならない
まず、$\text{AB}=\text{OB}\cos60^\circ=2\sqrt{6}\cdot\dfrac{1}{2}=\sqrt{6}$。
これより、$\triangle\text{ABC}$ に $\angle\text{ABC}$ からみる余弦定理を用いて \begin{align} \cos\theta&=\dfrac{\text{AB}^2+\text{BC}^2-\text{AC}^2}{2\text{AB}\cdot\text{BC}}\\ &=\dfrac{6+36-\left(6+12\sqrt{3}\right)}{2\cdot\sqrt{6}\cdot6}\\ &=\boldsymbol{\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2}} \end{align}
正多面体
正多面体
正多面体
空間図形において、全ての面が合同な正多角形からなり、各頂点に集まる辺の数が全て等しい多面体のことを正多面体 (regular polyhedron) という。
正四面体の計量
正四面体の計量
図のように、1辺の長さが $1$ である正四面体 $\text{ABCD}$ について以下の問に答えよ。
- $\triangle\text{BCD}$ の面積 $S$ を求めよ。
- 頂点 $\text{A}$ から $\triangle\text{BCD}$ に下ろした垂線の足を $\text{H}$ をするとき、$\text{AH}$ の長さを求めよ。
- 正四面体 $\text{ABCD}$ に内接する球の半径を求めよ。
- 正四面体 $\text{ABCD}$ に外接する球の半径を求めよ。
- $\angle\text{CBD}=60^\circ$ であるから
$\blacktriangleleft$ 三角形の面積参照\begin{align} S&=\dfrac{1}{2}\text{BD}\cdot\text{BC}\sin60^\circ\\ &=\dfrac{1}{2}\cdot1\cdot1\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{2}=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{3}}{4}} \end{align}
まず、辺 $\text{BC}$ の中点を $\text{M}$ とおくと、$\text{AM}\perp\text{BC}$、$\text{DM}\perp\text{BC}$ となり、$\text{H}$ は、$\text{A}$ から $\text{MD}$ におろした垂線の足であるとわかる。
まず、$\triangle\text{ABM}$ に三平方の定理を用いて \begin{align} \text{AM}^2=&\text{AB}^2-\text{BM}^2\\ =&1^2-\left(\dfrac{1}{2}\right)^2\\ =&\dfrac{3}{4} \end{align} よって、$\text{AM}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$。同様に、$\text{DM}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ である。
次に、$\angle\text{AMD}=\theta$ とおくと、$\triangle\text{AMD}$ に点 $\text{M}$ からみる余弦定理 $\text{AD}^2=\text{MA}^2+\text{MD}^2-2\text{MA}\cdot\text{MD}\cos\theta$ を用いて \begin{align} \cos\theta&=\dfrac{\text{MA}^2+\text{MD}^2-\text{AD}^2}{2\text{MA}\cdot\text{MD}}\\ &=\dfrac{\dfrac{3}{4}+\dfrac{3}{4}-1^2}{2\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)^2}=\dfrac{1}{3} \end{align}
$\blacktriangleleft$ 拡張された三角比の相互関係参照であり、$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ より \begin{align} \sin\theta=&\sqrt{1-\cos^2\theta}\\ =&\sqrt{1-\left(\dfrac{1}{3}\right)^2}\\ =&\dfrac{2\sqrt{2}}{3} \end{align} よって、$\text{AH}$ の長さは \[\text{AH}=\text{AM}\sin\theta=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cdot\dfrac{2\sqrt{2}}{3}=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{6}}{3}}\] 【別解:$\text{H}$ が $\triangle\text{BCD}$ の重心であることを使う】まず、辺 $\text{BC}$ の中点を $\text{M}$ とおくと、$\text{AM}\perp\text{BC}$ となるので、$\triangle\text{ABM}$ に三平方の定理を用いて \begin{align} \text{AM}^2=&\text{AB}^2-\text{BM}^2\\ =&1^2-\left(\dfrac{1}{2}\right)^2\\ =&\dfrac{3}{4} \end{align} よって、$\text{AM}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$。同様に、$\text{DM}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ である。
$\blacktriangleleft$ ここまでは上の解答と共通次に、正四面体の対称性から、点$\text{H}$ は $\triangle\text{BCD}$ の重心となるので $\text{MH}:\text{HD}=1:2$、つまり \[\text{MH}=\dfrac{1}{3}\text{DM}=\dfrac{\sqrt{3}}{6}\]
最後に、$\triangle\text{AMH}$ に三平方の定理を用いて \begin{align} \text{AH}^2 &=\text{AM}^2-\text{MH}^2=\dfrac{3}{4}-\dfrac{3}{36}\\ &=\dfrac{27-3}{36}=\dfrac{2}{3} \end{align} よって、$\text{AH}=\sqrt{\dfrac{2}{3}}=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{6}}{3}}$ となる。内接球の中心の点を $\text{O}$ とし、その半径を $r$ とおく。このとき、正四面体は4つの正三角錐 $\text{OABC}$、$\text{OACD}$、$\text{OADB}$、$\text{OBCD}$ に分けることができる。
これらの正三角錐の体積は、どれも $\dfrac{1}{3}\times{S}\times{r}$ であるから、正四面体 $\text{ABCD}$ の体積 $V$ は \begin{align} V=&4\times\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{4}r\\ =&\dfrac{\sqrt{3}r}{3}\tag{1}\label{seitamentai1} \end{align} また、1、2より正四面体 $\text{ABCD}$ の体積 $V$ は \begin{align} V=&\dfrac{1}{3}\times{S}\times\text{AH}\\ =&\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{\sqrt{3}}{4}\cdot\dfrac{\sqrt{6}}{3}\\ =&\dfrac{\sqrt{2}}{12}\tag{2}\label{seitamentai2} \end{align} よって、$\eqref{seitamentai1}$、$\eqref{seitamentai2}$ より \begin{align} &\dfrac{\sqrt{3}r}{3}=\dfrac{\sqrt{2}}{12}~~\Leftrightarrow~~r=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{6}}{12}} \end{align}
$\text{M}$ を辺 $\text{BC}$ の中点にとり、$\text{H}$、$\text{H'}$ を右図のようにとる。
図形の対称性から、外接球の中心 $\text{O}$ は $\text{AH}$ 上および $\text{DH'}$ 上にあるのがわかる。
$\text{H}$ は $\triangle\text{BCD}$ の重心だから \[\text{DH}=\text{DM}{\times}\dfrac{2}{3}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}{\times}\dfrac{2}{3}=\dfrac{\sqrt{3}}{3}\] となる。同様に、$\text{AH'}=\dfrac{\sqrt{3}}{3}$ である。
ここで、$\text{AO}=r$ とおくと、$\triangle\text{AH'O}\sim\triangle\text{AHM}$ より \begin{align} &\text{AH'}:\text{AO}=\text{AH}:\text{AM}\\ \therefore~&\dfrac{\sqrt{3}}{3}:r=\dfrac{\sqrt{6}}{3}:\dfrac{\sqrt{3}}{2}\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{\sqrt{6}}{3}r=\dfrac{1}{2}\\ \Leftrightarrow~&r=\dfrac{3}{2\sqrt{6}}=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{6}}{4}} \end{align}
正多角錐
正多角錐
空間図形において、底面が正多角形で、側面が二等辺三角形で作られ、側面の頂点が一点に集まっている多面体のことを正多角錐 (regular pyramid) という(正角錐ともいう)。底面が正 $n$ 角形の正多角錐のことを正 $n$ 角錐といい、$n$ は $3$ 以上の自然数をとりうる。
正三角錐と正四角錐
右の図は正三角錐と正四角錐である。底面の形状がわかり易いように底面を上にしてある。
正四角錐の計量
正四角錐の計量
右図のように、底面の1辺の長さが $2$、高さ $\text{OH}$ が $1$ である正四角錐 $\text{OABCD}$ について以下の問に答えよ。
- 底面と側面のなす角 $\alpha$ を求めよ。
- $\text{A}$ から辺 $\text{OB}$ に下ろした垂線 $\text{AE}$ の長さを求めよ。
- 隣り合う2つの側面のなす角 $\beta$ を求めよ。
辺 $\text{AB}$ の中点を $\text{M}$ とおくと、$\triangle\text{OAB}$、$\triangle\text{HAB}$ は共に二等辺三角形であるから、$\text{OM}\perp\text{AB}$、$\text{HM}\perp\text{AB}$ である。よって、$\angle\text{OMH}$ が底面と側面のなす角 $\alpha$ である。
いま、直角三角形 $\text{OMH}$ において、$\text{OH}=\text{HM}=1$ より、$\boldsymbol{\alpha=45^{\circ}}$ となる。これは、他の側面についても同様である。
$\angle\text{OBA}=\theta$ とおくと、三平方の定理より
\begin{align} \text{OB}=&\sqrt{\text{OH}^2+\text{BH}^2}\\ =&\sqrt{1^2+\left(\sqrt{2}\right)^2}\\ =&\sqrt{3}\\ \text{OM}=&\sqrt{2} \end{align} である。$\triangle\text{OBM}$ に着目して、$\sin\theta=\dfrac{\text{OM}}{\text{OB}}=\dfrac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}=\dfrac{\sqrt{6}}{3}$ となる。ここで、$\triangle\text{ABE}$ に着目すれば、$\text{AE}=\text{AB}\sin\theta=2\cdot\dfrac{\sqrt{6}}{3}=\boldsymbol{\dfrac{2\sqrt{6}}{3}}$ である。
$\triangle\text{OAB}\equiv\triangle\text{OCB}$ であり、$\text{AE}\perp\text{OB}$ より、$\text{CE}\perp\text{OB}$。よって、$\angle\text{AEC}$ が求める角 $\beta$ である。
$\triangle\text{AEC}$ に点 $\text{E}$ からみる余弦定理を用いると \begin{align} \cos\beta=&\dfrac{\text{AE}^2+\text{CE}^2-\text{AC}^2}{2\text{AE}\cdot\text{CE}}\\ =&\dfrac{2\text{AE}^2-\text{AC}^2}{2\text{AE}^2}\\ =&1-\dfrac{\left(2\sqrt{2}\ \right)^2}{2\left(\dfrac{2\sqrt{6}}{3}\right)^2}\\ =&-\dfrac{1}{2} \end{align} よって、$\boldsymbol{\beta=120^{\circ}}$ となる。