補集合の要素の個数

“着目しないもの”に着目する

白丸と黒丸

白丸と黒丸

図の中にある白丸(○)の個数を数えるには、実際に白丸の個数を数えるのではなく、丸が横に12個、縦に10個、計120個並んでいるのを確認し、そこから黒丸(●)の個数を引くのが よい。つまり \begin{align} &(白丸の個数)=12\times10-8=112\\ &\quad\therefore~112個 \end{align} と数えるのがよい。

このように、着目しないもの(●)の個数を全体の個数から引くことによって、着目するもの(○)の個数を数えることができ、集合では次のようにまとめられる。

補集合の要素の個数について

全体集合と補集合

全体集合と補集合

全体集合を $U$ とする。集合 $A$ と、その補集合 $\overline{A}$ について \[A\cup\overline{A}=U~,~A\cap\overline{A}=\emptyset\] であるから、包含と排除の原理(2集合版)より \[n(U)=n(A)+n(\overline{A})\] となる。

補集合の要素の個数

全体集合を $U$ とする集合 $A$ と、その補集合 $\overline{A}$ に関して \[n(\overline{A})=n(U)-n(A)\] が成り立つ。

吹き出し補集合の要素の個数について

このことは、ある集合 $A$ の要素の個数を数えるのが大変な場合、むしろ $A$ の補集合 $\overline{A}$ の要素の個数に着目すべきである、ということを教えてくれる。

補集合の要素の個数と包含と排除の原理

総世帯数が $191$ のある地区では、新聞をとっている世帯が $170$ ある。このうちA新聞をとっている世帯は $89$、B新聞をとっている世帯は $108$ ある。その他の新聞はこの地区には無いものとして、以下の問に答えよ。

  1. この地区では新聞をとっていない世帯はいくつか。
  2. A、B両方の新聞をとっている世帯はいくつか。

  • $U:$「ある地区の総世帯」
  • $A:$「A新聞をとっている世帯」
  • $B:$「B新聞をとっている世帯」
とおく。
  1. 新聞をとっている世帯は $A\cup{B}$ と表せるので、新聞をとっていない世帯は $\overline{A\cup{B}}$ となる。
    $\blacktriangleleft$ 補集合の要素の個数参照
    \begin{align} &n(\overline{A\cup{B}})\\ =&n(U)-n(A\cup{B})\\ =&191-170\\ =&\boldsymbol{21} \end{align}
  2. A、B両方の新聞をとっている世帯は $A\cap{B}$ と表される。和集合の要素の個数に関して
    $\blacktriangleleft$ 包含と排除の原理(2集合版)参照
    \[n(A\cup{B})=n(A)+n(B)-n(A\cap{B})\] が成り立つから \begin{align} n(A\cap{B})=&\ n(A)+n(B)-n(A\cup{B})\\ =&\ 89+108-170=\boldsymbol{27} \end{align}

補集合の要素の個数と包含と排除の原理(3集合版)

$300$ 人の高校生にA、B、Cの3種のテストを行った。Aテストに $102$ 人、Bテストに $152$ 人、Cテストに $160$ 人が合格したが、これらの中で、A、B両テストに $42$ 人、B、C両テストに $62$ 人、C、A両テストに $32$ 人が合格している。3種のテストのどれにも合格しなかった人は $10$ 人であった。このとき、3種のテストにすべて合格した人は何人か。

  • $U:$「テストを受けた高校生全員」
  • $A:$「Aテストに合格した人」
  • $B:$「Bテストに合格した人」
  • $C:$「Cテストに合格した人」
とおくと、3種のテストのどれにも合格しなかった人は $\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}$ と表され、3種のテストにすべて合格した人は $A\cap{B}\cap{C}$ で表せる。

$\blacktriangleleft$ 包含と排除の原理(3集合版)参照
3つの集合の和集合に関して \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&\ n(A)+n(B)+n(C)\\ &\quad-n(A\cap{B})-n(B\cap{C})\\ &\quad-n(C\cap{A})\\ &\quad+n(A\cap{B}\cap{C})\tag{1}\label{hosyugonoyosonokosunituite1} \end{align}
$\blacktriangleleft$ 補集合の要素の個数参照

$\blacktriangleleft$ 全体集合と補集合の3集合の場合のド・モルガンの法則より
が成り立ち、また補集合に関して \begin{align} &n(A\cup{B}\cup{C})\\ =&n(U)-n\left(\overline{A\cup{B}\cup{C}}\right)\\ =&n(U)-n\left(\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}\right)\tag{2}\label{hosyugonoyosonokosunituite2} \end{align} が成り立つ。$\eqref{hosyugonoyosonokosunituite1}$と$\eqref{hosyugonoyosonokosunituite2}$より \begin{align} &n(A\cap{B}\cap{C})\\ =&n(A\cup{B}\cup{C})\\ &\quad-n(A)-n(B)-n(C)\\ &\quad+n(A\cap{B})+n(B\cap{C})+n(C\cap{A})\\ =&\left\{n(U)-n\left(\overline{A}\cap\overline{B}\cap\overline{C}\right)\right\}\\ &\quad-n(A)-n(B)-n(C)\\ &\quad+n(A\cap{B})+n(B\cap{C})+n(C\cap{A})\\ =&300-10-102-152\\ &\quad-160+42+62+32\\ =&\boldsymbol{12}\\ &\therefore~12人 \end{align}