瞬間の速度

刻一刻と変化する速度

$x-t$ グラフ

$x-t$ グラフ

図では、$\text{I}$ から $\text{G}$ まではグラフが直線状になっているので、スタートして $5~[\text{s}]$ 後から $10~[\text{s}]$ 後まで走る速度は $14~[\text{m/s}]$ でほぼ一定である。それに対し、$\text{O}$ から $\text{I}$ まではグラフは曲線になっているので、走る速度も刻一刻と変化していると考えられる。以下では例として、スタートしてから $2$ 秒後の点を基準にとり、いろいろな平均速度を考えてみよう。

瞬間の速度について

$x-t$ グラフ

$x-t$ グラフ

図は、スタートしてから $2$ 秒後、$4$ 秒後、$5$ 秒後、$9$ 秒後の位置と時刻の関係をグラフに表したものである。

(注)

$x-t$ グラフ

$x-t$ グラフ

この関係から、$2$ 秒後から $9$ 秒後まで、$2$ 秒後から $5$ 秒後まで、$2$ 秒後から $4$ 秒後までの平均速度 $\bar{v}$ を求めると、下の表のようになる。

$t$$2$~$9$$2$~$5$$2$~$4$
$\Delta{t}$$7$$3$$2$
$x$$5$~$86$$5$~$35$$5$~$20$
$\Delta{x}$$81$$30$$15$
$\bar{v}=\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}$$11.6$$10.0$$7.50$
スタートしてから $2$ 秒後からのずれをさらに小さくしていくと、$\Delta{t}$ の値は $0$ に近づいていき、速度 $\bar{v}$ の値は究極的には図の直線の傾きを表すと考えられる。このような速度のことを、特に $t=2$ における瞬間速度 (instantaneous velocity) という。

今の例では走り出して $2$ 秒たったときを基準として瞬間速度を求めたが、基準は自由にとれるので、任意の時刻 $t$ における瞬間速度を考えることができる。

また、この例のように $\Delta{t}$ を限りなく $0$ に近づけていくような操作のことを、「極限をとる」といい、極限をとることによって決まる値のことを極限値 (limit value) という。

極限値の表し方

$x-t$ グラフ

$x-t$ グラフ

図の太い直線の傾きが $v$ のとき、すなわち $\Delta{t}$ を限りなく $0$ に近づけるときの $\bar{v}=\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}$ の極限値が $v$ のとき $\displaystyle\lim_{\Delta{t}\to0}\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}=v$ などと表す。

瞬間の速度

時刻が $t_1$ で位置が $x_1$ の物体の瞬間の速度 $v$ は \[v=\displaystyle\lim_{\Delta{t}\to0}\dfrac{\Delta{x}}{\Delta{t}}\] と表すことができる。ただし、$\Delta{t}$、$\Delta{x}$ はそれぞれ、時刻 $t_1$、位置 $x_1$ からの変化量を表す。