定積分の基本公式
原始関数とは何か
微分すると $f(x)$ になる関数を、$f(x)$ の原始関数 (primitive function) という。つまり \[F'(x)=f(x)\] のとき、$F(x)$ を $f(x)$ の原始関数という。
原始関数は一通りには定まらない。たとえば、$x^3$、$x^3+2$、$x^3-\sqrt{5}$ などは微分すると、どれも $3x^2$ となるので、これらはすべて $3x^2$ の原始関数である。任意の定数 $A$ を $x$ で微分すると $0$ になるので、一般には $x^3+A$ で表されるものすべてが $3x^2$ の原始関数となる。
これから、次のことがいえる。
原始関数どうしの差は定数
原子関数
$f(x)$ の原始関数 $F_1(x)$、$F_2(x)$ があったとき、各々の原始関数は定数項が違うだけなので \[F_1(x)=F_2(x)+C\] となるある定数 $C$ が存在する。
また、原始関数について次のことがいえる。
原始関数の性質
関数 $f(x)$、$g(x)$ の原始関数をそれぞれ $F(x)$、$G(x)$ とする。つまり $F'(x)=f(x)$、$G'(x)=g(x)$ とすると
- $F(x)+G(x)$ は関数 $f(x)+g(x)$ の原始関数である。
- $kF(x)$ は関数 $kf(x)$ の原始関数である。
【証明】
- $F(x)+G(x)$ を微分すると \begin{align} \left\{F(x)+G(x)\right\}'&=F'(x)+G'(x)\\ &=f(x)+g(x) \end{align} となり、$F(x)+G(x)$ は確かに $f(x)+g(x)$ の原始関数である。
- $kF(x)$ を微分すると \begin{align} \left\{kF(x)\right\}'&=kF'(x)\\ &=kf(x) \end{align} となり、$kF(x)$ は確かに $kf(x)$ の原始関数である。
多項式の関数の原始関数
任意の定数を $A$ として
- $x^n$ の原始関数は $\dfrac{1}{n+1}x^{n+1}+A$
- $(ax+b)^n$ の原始関数は $\dfrac{1}{a(n+1)}(ax+b)^{n+1}+A$
吹き出し原始関数とは何か
ii の式は、$\underbrace{\dfrac{1}{n+1}(ax+b)^{n+1}}_{\text{i}と似ている部分}\times\dfrac{1}{a}$ と覚えよう。
【証明】
- $\dfrac{1}{n+1}x^{n+1}+A$ を $x$ で微分すると \begin{align} &\left(\dfrac{1}{n+1}x^{n+1}+A\right)'\\ =&\dfrac{1}{n+1}\cdot(n+1)x^n\\ =&x^n \end{align} となるので、確かに $x^n$ の原始関数である。
- $\dfrac{1}{a(n+1)}(ax+b)^{n+1}+A$ を $x$ で微分すると(←『微分の計算法則iv)』参照) \begin{align} &\left(\dfrac{1}{a(n+1)}(ax+b)^{n+1}+A\right)'\\ =&\dfrac{1}{a(n+1)}\cdot{a(n+1)(ax+b)^n}\\ =&(ax+b)^n \end{align} となるので、確かに $(ax+b)n$ の原始関数である。
原始関数を求める
次の関数 $f(x)$ の原始関数 $F(x)$ を求めよ。ただし、任意の定数を表すときには $C$ とせよ。
- $f(x)=x^3$
- $f(x)=3x^4$
- $f(x)=3x^2+5x+2$
- $f(x)=2x^5-3x^2+6x-2$
- $f(x)=(x-1)(x+3)$
- $f(x)=x^2(1-x)$
- $f(x)=(x-3)^4$
- $f(x)=(3x-2)^4$
- \[F(x)=\boldsymbol{\dfrac{1}{4}x^4+C}\]
- \begin{align} F(x)&=3\cdot\dfrac{1}{5}x^5+C\\ &=\boldsymbol{\dfrac{3}{5}x^5+C} \end{align}
- \begin{align} F(x)&=3\cdot\dfrac{1}{3}x^3+5\cdot\dfrac{1}{2}x^2+2\cdot x+C\\ &=\boldsymbol{x^3+\dfrac{5}{2}x^2+2x+C} \end{align}
- \begin{align} F(x)&=2\cdot\dfrac{1}{6}x^6-3\cdot\dfrac{1}{3}x^3\\ &\qquad+6\cdot\dfrac{1}{2}x^2-2\cdot{x}+C\\ &=\boldsymbol{\dfrac{1}{3}x^6-x^3+3x^2-2x+C} \end{align}
- $f(x)=(x-1)(x+3)$ を展開すると \[f(x)=x^2+2x-3\] なので \begin{align} F(x) &=\dfrac{1}{3}x^3+2\cdot\dfrac{1}{2}x^2-3\cdot{x}+C\\ &=\boldsymbol{\dfrac{1}{3}x^3+x^2-3x+C} \end{align}
- $f(x)=x^2(1-x)$ を展開すると \[f(x)=x^2-x^3\] なので \[F(x)=\boldsymbol{\dfrac{1}{3}x^3-\dfrac{1}{4}x^4+C}\]
- \begin{align} F(x)&=\dfrac{1}{5}(x-3)^5\times\dfrac{1}{1}+C\\ &=\boldsymbol{\dfrac{1}{5}(x-3)^5+C} \end{align}
- \begin{align} F(x)&=\dfrac{1}{5}(3x-2)^5\times\dfrac{1}{3}+C\\ &=\boldsymbol{\dfrac{1}{15}(3x-2)^5+C} \end{align}