ボールと箱のモデル5

例えば, $_{5}\mathrm{H}_{3}$ の定義は

「区別する5個のものから,繰り返し用いることを許して,3個とりだしてつくる組の総数」

であったが,これはボールと箱のモデルを使って

「区別しない3個のボールを,区別する5個の箱に配る(何個でもよい)場合の総数」

といいかえることができる.それには,次のように考えるとよい.

説明文

説明文

準備として,ボールは区別しないので,それを $\bigcirc,\bigcirc,\bigcirc$ とし, 箱は区別するので番号をつけ,それを としておく.

例えば,区別しない3個のボールを,区別する5個の箱に,図のように配ったとする.

このときは,5−3重複組合せのうちの $\{2,2,5\}$ と対応すると考えることができる.

また逆に,5−3重複組合せのうちの $\{2,2,5\}$ は,図のようなボールの配り方に対応すると考えることができる.

これ以外の5−3重複組合せも,ボールの箱への配り方と1対1に対応するので, 結局,ボールの箱への配り方の総数は $_{5}\mathrm{H}_{3}$ と一致するといえる.

一般に,次のようにまとめることができる.

重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ のボールと箱のモデル

重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ はボールと箱のモデルを用いて

「区別しない $r$ 個のボールを,区別する $n$ 個の箱に配る(何個でもよい)場合の総数」

と考えることができる.

吹き出し無題

ただし,この考え方ではうまく計算できないので,実際に計算するときには重複組合せ $_{n}\mathrm{H}_{r}$ の定義でみたように,“ $\bigcirc$ と $\mid$ の並べ方”の問題へ帰着することになる.

重複組合せ

  1. 3種類の果物,りんご,かき,なしを使って,7個入りの果物かごを作る.1つも入らない種類があってもよいとすると,何通りの果物かごができるか求めよ.
  2. 1. で,3種類の果物を最低1個は入れるものとすると,何通りの果物かごができるか求めよ.

  1. 【解1:重複組合せで考える】
  2. 区別する3種類のものを,重複を許して7つ取り出し組を作ればよいので

    $_{3}\mathrm{H}_{7}=\ _{3+7-1}\mathrm{C}_{7}=\boldsymbol{36}$ 通り

    $\uparrow\ _{3}\mathrm{H}_{7}=\dfrac{3\cdot4\cdot5\cdot6\cdot7\cdot8\cdot9}{7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}$

    と計算してもよい

    【解2:同じものを含む順列に帰着させる】

    7個のものを $\bigcirc$ を使って

    と表すことにする.

    これらを2つの“しきり” $\mid$ によって,3つの区間に分け,左から順にりんご,かき,なしと対応させる. こうすると,例えば

    \begin{align} \bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}

    は,りんご1個,かき2個,なし4個を表し

    \begin{align} \bigcirc\bigcirc\bigcirc\mid\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}

    は,りんご3個,かき0個,なし4個を表す.

    7個の $\bigcirc$ と2個の $\mid$ の計9個のものを1列に並べる並べ方の数が,考える果物かごの数である. よって

    $\text{C}(7,2)=\ _{7+2}\mathrm{C}_{2}=\boldsymbol{36}$ 通り

    $\uparrow$ 同じものを含む順列

  3. 【解1:重複組合せで考える】
  4. まず,りんご,かき,なしから1つずづ計3個取り出しておく.残りの4つについて,重複を許して組を作ればよいので

    $_{3}\mathrm{H}_{4}=\ _{3+4-1}\mathrm{C}_{4}=\boldsymbol{15}$ 通り

    $\uparrow\ _{3}\mathrm{H}_{4}=\dfrac{3\cdot4\cdot5\cdot6}{4\cdot3\cdot2\cdot1}$

    と計算してもよい

    【解2:『資源配分』に帰着させる】

    $\uparrow$ この解法について詳しくは,次の資源配分を参照のこと

    1. と同様に,7個のものを $\bigcirc$ を使って

    と表すことにする.

    りんご,かき,なしそれぞれから,最低1個はとりだすので,今度は2つの“しきり” $\mid$ を6ヶ所ある $\bigcirc$ の“すきま”にいれ,3つの区間に分け,左から順にりんご,かき,なしと対応させる.こうすると,例えば

    \begin{align} \bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc \end{align}

    は,りんご1個,かき2個,なし4個を表し

    \begin{align} \bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc \end{align}

    は,りんご4個,かき1個,なし2個を表す.

    7個の $\bigcirc$ によって作られる,6ヶ所の“すきま”から2個の $\mid$ の入る場所を選ぶ選び方の数が,考える果物かごの数である.よって

    $_{6}\mathrm{C}_{2}=\boldsymbol{15}$ 通り