2直線のなす角
2直線のなす角
正接の加法定理を利用すると,2直線のなす角の正接の値を求めることができる. そのことを次の例題で確認しよう.
2直線のなす角〜その1〜
直線$l:y=2x-1,m:y=\dfrac{1}{3}x+\dfrac{1}{3}$について,以下の問いに答えよ.
直線$l,m$が$x$軸の正の向きとなす角を$\alpha,\beta$とするとき,$\tan\alpha,\tan\beta$の値を求めよ. ただし,角は反時計回りを正の向きとする.
2直線$l,m$のなす鋭角を$\theta$とする.正接の加法定理を利用し$\theta$の値を求めよ.
無題
直線$l$と$m$の傾きはそれぞれ,$2,\dfrac{1}{3}$なので,
$\tan\alpha=\boldsymbol{2},\tan\beta=\boldsymbol{\dfrac{1}{3}}$である.
$\theta = \beta − \alpha$なので
\begin{align} &\tan\theta\\ &=\tan(\alpha-\beta)\\ &=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}\\ &=\dfrac{2-\dfrac{1}{3}}{1+2\cdot\dfrac{1}{3}}\\ &=1 \end{align}$0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2}$より,$\theta=\boldsymbol{\dfrac{\pi}{4}}$となる.
以下では,交わる2直線$y=m_1x+n_1,y=m_2x+n_2$のなす鋭角$\theta$について,一般的に考えてみよう.
図のように,直線を平行移動しても2直線のなす角は変わらないので,$y=m_1x,y=m_2x$の場合について考えてゆけばよい.
直線$y=m_1 x,~y=m_2 x$が$x$軸の正の向きとなす,正の角をそれぞれ$\alpha,\beta~(\alpha>\beta)$とする.
正接の値は直線の傾きを表していたので,$\tan\alpha=m_1,~\tan\beta=m_2$である.
いま,正接の加法定理から
\begin{align} \tan(\alpha-\beta)&=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}=\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2} \end{align}と計算できる.
$\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}>0$,すなわち$0<\alpha-\beta <\dfrac{\pi}{2}$のとき
\begin{align} \tan\theta=\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}~(>0) \end{align}$\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}<0$,すなわち$\dfrac{\pi}{2}<\alpha-\beta<\pi$のとき
\begin{align} \tan\theta&=\tan\left\{\pi-(\alpha-\beta)\right\}\\ &=-\tan(\alpha-\beta)\\ &=-\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}~(>0) \end{align}いずれにしても,$\tan\theta > 0$なので,次のようにまとめられる.
2直線のなす角
無題
直交しない2直線
\begin{align} &y=m_1x+n_1~~~~~y=m_2x+n_2 \end{align}のなす鋭角を$\theta$とすると
\begin{align} \tan\theta=\left|\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right| \end{align}と表すことができる.
2直線のなす鋭角〜その2〜
2直線$y=2x-1,~y=-x+3$なす角を$\theta$とするとき,$\tan\theta$の値を求めよ.
直線$y=2x+3$とのなす角が$\dfrac{\pi}{4}$である直線の傾き$m$を求めよ.
それぞれ傾きは$2,~-1$なので
\begin{align} \tan\theta =\left|\dfrac{2 -(-1)}{1+2\cdot (-1)}\right| =|-3| =\boldsymbol{3} \end{align}傾きは$2,~m$である2直線のなす角が$\dfrac{\pi}{4}$なので
\begin{align} \tan\dfrac{\pi}{4}=\left|\dfrac{2 -m}{1+2\cdot m}\right| \Leftrightarrow~ &1=\left|\dfrac{2-m}{2m+1}\right| \end{align}よって,$2m+1=2-m$または$2m+1=m-2$であればよいので, $\boldsymbol{m=\dfrac{1}{3},~-3}$.