単調増加関数と単調減少関数
単調増加関数と単調減少関数
いままでみてきた結果から,$y = 2^x$のグラフは右に進むにつれ,上にあがっていく形になることが予想されるが, それを厳密に示すためにはどうすればよいだろうか.
$x$の値が増えるにつれ,$2^x$の値も増えることを示したいのだから,さまざまな(任意の)値$x_1,x_2$に対して
\begin{align} x_1\lt x_2~\Longrightarrow~2^{x_1}\lt2^{x_2} \end{align}が証明できればよい.次の例題でそのことを確認してみよう.
指数関数の単調性
関数$y = 2^x$について,次のことを証明せよ.ただし,$x,x_1,x_2$は任意の有理数とする.
- $x \gt 0~\Longleftrightarrow~2^x \gt 1 $
- $x_1 \lt x_2~\Longrightarrow~2^{x_1} \lt 2^{x_2}$
$\boldsymbol{\Rightarrow}$の証明(背理法)
$\blacktriangleleft$結論$2^x \gt 1$の否定$2^x\leqq1$を仮定して矛盾を導く
有理数$x~(>0)$は$x=\dfrac{m}{n}$($m,~n$は自然数) とおける.
いま
\begin{align} 2^x\leqq1 \end{align} $\tag{1}\label{shisuukansuunotanchouseinokaitou1}$と仮定すると
\begin{align} &(2^x)^n\leqq1^n\\ \Leftrightarrow~&(2^\dfrac{m}{n})^n\leqq1\\ \Leftrightarrow~&2^m\leqq1 \end{align}となるが,$m$は自然数であるから
\begin{align} & \begin{array}{c} \qquad m個の積 \\ 2^m=\overbrace{2\times 2\times 2 \times \cdots \times 2}^{} \end{array} \\ & \quad \ \ \gt 1\times 1\times 1 \times \cdots \times 1=1 \end{align}であることに矛盾する.よって,$x$が有理数であるとき,$x \gt 0~\Rightarrow 2^x \gt 1$がいえる.
$\boldsymbol{\Leftarrow}$の証明(背理法)
$\blacktriangleleft$結論$x \gt 0$の否定$x\leqq0$を仮定して矛盾を導く
有理数$x$は$x=\dfrac{m}{n}$($m$は整数,$n$は自然数)とおける. いま,$x\leqq0$,すなわち
\begin{align} m\leqq0 \end{align}$\tag{2}\label{shisuukansuunotanchouseinokaitou2}$と仮定すると
\begin{align} &(2^x)^n>1^n\\ \Leftrightarrow~&(2^\dfrac{m}{n})^n>1\\ \Leftrightarrow~&2^m>1 \end{align}となるが,$2 \gt 1$であり$m$は正でない整数であるから
\begin{align} 2^m&=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{-m}\end{align} \begin{align} & \begin{array}{c} − m個の積\\ =\overbrace{\dfrac{1}{2}\times\dfrac{1}{2}\times\cdots\times\dfrac{1}{2}}^{} \end{array} \\ & \lt \dfrac{1}{1}\times \dfrac{1}{1}\times\cdots\times\dfrac{1}{1}=1 \end{align}であることに矛盾する.よって,$x$が有理数であるとき,$x \gt 0~\Leftarrow 2^x \gt 1$がいえる.
- \begin{align} &x_2-x_1>0\\ \Rightarrow~&2^{x_2-x_1}>1\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{2^{x_2}}{2^{x_1}}>1\\ \Leftrightarrow~&2^{x_2}>2^{x_1} \end{align}$\blacktriangleleft$ $\eqref{shisuukansuunotanchouseinokaitou1}$より
無題
以上を参考に,$y = 2^x$のグラフを描くと,右図のような曲線を描くことがわかる. この$y = 2^x$のように,$x$の値が増加すると常に$y$の値も増加するような関数を単調増加関数という. このことを次にまとめておこう.
単調増加関数と単調減少関数の定義
関数$f(x)$の定義域内の任意の実数$x_1,x_2$について
- $x_1 \lt x_2~\Longrightarrow~f(x_1) \lt f(x_2)$
が成り立つとき,関数$f(x)$は単調増加関数(monotone increasing function) という.
- $x_1 \lt x_2~\Longrightarrow~f(x_1) \gt f(x_2)$
が成り立つとき,関数$f(x)$は単調減少関数(monotone decreasing function)という.
ある関数が単調増加関数であるか単調減少関数である場合に,その関数を単に単調(monotone)な関数という.
無題
次に,関数$y=\left(\dfrac{1}{2}\right)^x$のグラフを考えてみよう.
関数$y=\left(\dfrac{1}{2}\right)^x$の$x$に $− x_1$を代入すると
\begin{align} \left(\dfrac{1}{2}\right)^{-x_1}=(2^{-1})^{-x_1}=2^{x_1} \end{align}と計算できるが,これは関数$y = 2^x$の$x$に$x_1$を代入したときの値と等しい. これより,$y=\left(\dfrac{1}{2}\right)^x$のグラフは,図のように$y = 2^x$のグラフと$y$軸に関して対称となるのがわかる. 関数$y=\left(\dfrac{1}{2}\right)^x$は単調減少関数になっている.
関数$y = a^x$ は$a$の値に応じて,次のように変化する.