ベクトルの相等の定義
上記の議論によって,有向線分を利用してベクトルを可視化することができた.
さて本章冒頭で述べたように,ベクトルは「大きさ」に加えて「向き」という新しい概念を含んだ量であった.そのため,等号「$=$」や演算記号「$+$」「$−$」なども新たに定義する必要がある.
吹き出しベクトルの相等の定義
「北2 km」+「東2 km」=「北東$2\sqrt{2}$ km」となるように定義するのが自然であろう.
無題
ここでは,まずは等号「$=$」について定義しよう.
さきほどのp.108 の図1)に登場したベクトル$\overrightarrow{\text{AB}},\overrightarrow{\text{CD}}$ は向きと大きさが等しいので同じベクトルであった.そこで
\[\overrightarrow{\text{AB}} = \overrightarrow{\text{CD}}\]
と書くことにし,このとき,$\overrightarrow{\text{AB}}$ と$\overrightarrow{\text{CD}}$ は等しいということにする.
また,ベクトルは始点と終点を明記しないで,単に$\vec{a},\vec{b}$ と書くこともある.たとえば,右図のようなとき$\overrightarrow{\text{PQ}}$ と$\vec{a}$ は向きと大きさが等しいので
\[\overrightarrow{\text{PQ}} = \vec{a}\]
となる.
ベクトルの相等
無題
右の図のベクトル$\vec{a},\vec{b},\vec{c},\vec{d},\vec{e},\vec{f}$ について,互いに等しいベクトルをいえ.
大きさと向きの等しいものを見つければよいので,$\vec{b}$ と $\vec{c}$ が等しいベクトルである.