ベクトルの定義
有向線分は「位置」が固定されているものであった.そして,この「位置」条件の存在のために,図1) の有向線分AB と有向線分CD は互いに異なる有向線分となっていた.
これに対して,有向線分であるための条件b. から「位置」条件を無視したものは「向き」と「大きさ」だけとなるのでベクトルを表すと考えることができる.
この有向線分AB の表すベクトルを,記号で
→ABと書く.
このように有向線分から「位置」条件を無視し,ベクトルとみなすことでどのようなメリットがあるかを説明しよう.
右図のような2 次関数の平行移動を考える.
このとき,各有向線分AA’,BB’,CC’ は全て異なる有向線分となるが,各ベクトル→AA’,→BB’,→CC’ は全て同じベクトルを表している.
このように,有向線分は位置条件が存在するため,「平行移動」という事象に対して統一的に考えられないが,ベクトルは位置条件を無視するため,「平行移動」という事象に対して統一的に考えることができるようになる.