直線の通る1点と方向ベクトルが与えられたとき

無題

無題 (注)

点$\text{A}(\vec{a})$ を通り$\vec{0}$ でない$\vec{d}$ に平行な直線を$l$ とする.このとき,この直線上を動く点$\text{P}$ の位置ベクトル$\vec{p}$ の 表し方を考えよう.

まず,点$\text{P}$ が直線$l$ 上にある限り,必ず$\overrightarrow{\text{AP}} \parallel \vec{d}$ であるから,ベクトルの平行条件より

\[\overrightarrow{\text{AP}} = t\vec{d}\]

となる実数$t$ が存在する.

また,$\overrightarrow{\text{OP}}$ はベクトルの分解を考えて

\[\overrightarrow{\text{OP}} =\overrightarrow{\text{OA}} +\overrightarrow{\text{AP}}\]

つまり

\[\vec{p} = \vec{a} + t\vec{d} \tag{1}\label{chokusennotooru1tentohoukoubekutorugaataeraretatoki1}\]

が成り立つ.

この$\eqref{chokusennotooru1tentohoukoubekutorugaataeraretatoki1}$のことを,「点$\text{A}(\vec{a})$を通り$\vec{d}$ に平行な直線のベクトル方程式(vector equation) 」といい,$t$ をその媒介変数(parameter) という.また,$\vec{d}$ を,この直線の方向ベクトル(direction vector) という.

$\eqref{chokusennotooru1tentohoukoubekutorugaataeraretatoki1}$で$t$ がすべての実数をとって変化すれば,点$\text{P}$ は直線$l$ 上のすべての点を動く.また,$t$ がある範囲で変化すれば,点$\text{P}$ は直線$l$ 上の一部の点を動く.

【例1】

【例1】

【例2】

【例2】

【例3】

【例3】

次に,座標平面上で成分表示されたベクトルのベクトル方程式を考えてみよう.

点$\text{A}(x_0, y_0)$ を通り,方向ベクトルが$\vec{d} =\dbinom{d_x}{d_y}$である直線上の点$\text{P}$ の座標を$\text{P}(x, y)$ とおくと,$\vec{a} =\dbinom{x_0}{y_0},\vec{p} =\dbinom{x}{y}$であるから, $\eqref{chokusennotooru1tentohoukoubekutorugaataeraretatoki1}$より

\begin{align} &\vec{p} = \vec{a} + t\vec{d}\\ &\Longleftrightarrow \dbinom{x}{y}=\dbinom{x_0}{y_0}+t\dbinom{d_x}{d_y}\\ &\Longleftrightarrow \left\{ \begin{array}{l} x = x_0 + d_xt\\ y = y_0 + d_yt\\ \end{array} \right. \end{align}

と表せる.これを,$t$ を媒介変数とする直線$l$ の方程式という.

$d_x \neq 0$ かつ$d_y \neq 0$ のとき,この式から媒介変数$t$ を消去すると

\[(t =)\dfrac{x − x_0}{d_x}=\dfrac{y − y_0}{d_y}\] \[\Leftrightarrow y =\dfrac{d_y}{d_x}(x − x_0) + y_0\]

となり,これは点$(x_0, y_0)$ を通る傾き$\dfrac{d_y}{d_x}$の直線の方程式として,FTEXT数学II の『図形と方程式』ですでに学んだものと一致している.

直線のベクトル方程式~その1~

以下のそれぞれについて,点$\text{A}$ を通り方向ベクトルを$\vec{d}$ とする直線$l$の方程式を,媒介変数$t$ を用いて表せ.また,媒介変数を用いない形で直線の方程式を表せ.

  1. $ \text{A} (2, 1),\vec{d} =\dbinom{4}{3}$
  2. $ \text{A} (4, 0),\vec{d} =\dbinom{-3}{2}$
  3. $ \text{A} (−1, 3),\vec{d} =\dbinom{2}{0}$
  4. $ \text{A} (−2, 1),\vec{d} =\dbinom{0}{-3}$

  1. 直線のベクトル方程式~その1~の図1
    \begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l}\boldsymbol{x=2+4t}\\\boldsymbol{y=1+3t}\\\end{array}\right. \end{eqnarray}

    上式と下式を $t$ について解くと,$t=\dfrac{x-2}{4},t=\dfrac{y-1}{3}$ となるから

    \begin{align} &\dfrac{x-2}{4}=\dfrac{y-1}{3}\\ &{\Leftrightarrow}y-1=\dfrac{3}{4}(x-2)\\ &\Leftrightarrow\boldsymbol{y=\dfrac{3}{4}x-\dfrac{1}{2}}. \end{align}
  2. 直線のベクトル方程式~その1~の図2
    \begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l}\boldsymbol{x=4-3t}\\\boldsymbol{y=2t}\\\end{array}\right. \end{eqnarray}

    上式と下式を $t$ について解くと,$t=\dfrac{x-4}{-3},t=\dfrac{y}{2}$ となるから

    \begin{align} &\dfrac{x-4}{-3}=\dfrac{y}{2}\\ &{\Leftrightarrow}y=\dfrac{2}{-3}(x-4)\\ &\Leftrightarrow\boldsymbol{y=-\dfrac{2}{3}x+\dfrac{8}{3}}. \end{align}
  3. \begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l}\boldsymbol{x=-1+2t}\\\boldsymbol{y=3}\\\end{array}\right. \end{eqnarray}
    直線のベクトル方程式~その1~の図3

    $t$ が変化すると $x$ はすべての実数をとるが,$y$ は常に $3$ であるから

    $\boldsymbol{y=3}$ ($x$ はすべての実数).

  4. 直線のベクトル方程式~その1~の図4
    \begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l}\boldsymbol{x=-2}\\\boldsymbol{y=1-3t}\\\end{array}\right. \end{eqnarray}

    $t$ が変化すると $y$ はすべての実数をとるが,$x$ は常に $-2$ であるから

    $\boldsymbol{x=-2}$ ($y$ はすべての実数).