数学A 第2章 確率 — 確率とは何か
試行と事象
試行・事象とは何か
1個のさいころを投げるとき,その出る目は

のうちのいずれかであるが,このうちどの目が出るかは偶然に左右される.
このさいころ投げのように,同じ条件で何度も繰り返すことができ,その結果が偶然によってきまる実験や観測などを試行(trial)という. また,試行の結果起こる事柄を事象(event)という. 例えば,「1の目が出る」は,さいころ投げという試行における事象の1つである.
事象を集合で表す
試行や事象は,集合で表すことができる. 例えば,さいころ投げの試行の結果起こる事象の全体は
などと表すことができる.
この他にも,
なども,試行の結果起こる事象の全体を表す集合である.
また,この試行では
などの事象を考えることができるが,これらは
と表すことができる.
一般に,ある試行において,起こる事象全体を表す集合を
今後簡単のため,「事象
また,標本空間
の6つである.
標本空間と事象の例1:さいころ投げの場合
ここでは,さいころ投げを例にとり,標本空間の作り方と事象の表し方 をいくつかの視点から見てみよう.同じ試行であっても,標本空間の作り方にはいろいろあるのだ,という点に特に注目してもらいたい.
試行として
「1から4の目が書かれた正四面体のさいころを2回振る」を考えてみる.
この試行は,表のように,1回目に出た目と2回目に出た目の順列で
にまとめることができる.
これをもとに,標本空間
ととれば,例えば
事象
は
と表すことができる.
また,この試行は,表のように,1回目に出た目と2回目に出た目の重複組合せで
これをもとに,標本空間
ととれば
事象
と表すことができる.
標本空間と事象の例2:カード引きの場合
今度は,カード引きを例にとり,標本空間の作り方と事象の表し方をいくつかの視点から見てみる.
試行として
「1から4の数字が書かれた4枚のカードから続けて2回引く」
を考えてみる.
この試行は,表のように,1回目に引いたカードと2回目に引いたカードの順列で
にまとめることができる。
これをもとに,標本空間
ととれば,例えば
事象
は
と表すことができる。
また,この試行は,表のように,1回目に引いたカードと2回目に引いたカードの組合せで
にまとめることもできる.
これをもとに,標本空間
ととれば
事象
は
と表すことができる.
確率の定義
確率の考え方
簡単な例として,さいころを1回投げるという試行を考える. この試行の標本空間
とする。
この試行において,「1の目が出る」という事象
と表すことができる。
今,さいころがいびつではなく正確な立方体で作られているとすれば,
そこで,標本空間
とする.この
また,奇数の目が出るという事象
3の目が出ないという事象
と表すことができるから,それぞれの事象の起こる確率
となる.
確率の定義について
ある試行の標本空間を
となる.
確率を正確に求めるには以下の3点に注意するとよい.
- 「標本空間をしっかりと定める」
- 「根元事象が同様に確からしいことを確認する」
- 「事象が標本空間の部分集合として表されることを確認する」
同じ確率を求めるとしても,標本空間のとり方しだいで問題が難しくなったり間単になったりする. 今後,確率を求める際には,標本空間のとり方について常に気を配りながら学習するとよい.
次はA君の解答である.この解答は正しいか,間違っているかを考え,間違っていれば正しい解答を示せ.
「2枚の硬貨を同時に投げるとき,表と裏の出る枚数について,
解答を見る
この解答は
間違っている
2枚の硬貨をきちんと区別して,表と裏についてまとめると
の4通りがあり,これらは同様に確からしい.
この表の(裏,表)と(表,裏)をまとめて
1から4の目が書かれた正四面体のさいころを2回振るとき, 1回目と2回目の目の積が3の倍数となる確率を求めよ.
解答を見る
正四面体のさいころを2回振ったときの目の出方の重複順列
このうち,1回目と2回目の目の積が3の倍数となるのは
| 1 | 2 | 3 | 4 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1,1 | 2,1 | 3,1 | 4,1 | |
| 2 | 1,2 | 2,2 | 3,2 | 4,2 | |
| 3 | 1,3 | 2,3 | 3,3 | 4,3 | |
| 4 | 1,4 | 2,4 | 3,4 | 4,4 |
表の網掛け部分の7通り.
よって,求める確率は
1から4の数字が書かれたカードから2枚引くとき,1枚目と2枚目の数字の積が3の倍数となる確率を求めよ.
解答を見る
1から4の数字が書かれたカードから2枚引くときの組合せ
このうち,1枚目と2枚目の数字の積が3の倍数となるのは
| 1 | 2 | 3 | 4 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ― | ― | ― | ― |
| 2 | 1,2 | ― | ― | ― |
| 3 | 1,3 | 2,3 | ― | ― |
| 4 | 1,4 | 2,4 | 3,4 | ― |
表の網掛け部分の3通り.
よって,求める確率は
さいころ型では重複順列の数を分母に,くじ引き型では(基本的には)組合せの数を分母にとればよい.
次の問に答えよ.
- 1から4の目が書いてある正四面体のさいころを2回振る.2つの目の和が5となる確率を求めよ.
- 1から4までの数字が書いてある4枚のカードから,連続して2枚のカードを引く.はじめに引いたカードの数の方が,あとに引いたカードより小さくなる確率を求めよ.
- 1から4までの数字が書いてある4枚のカードから,連続して2枚のカードを引く.カードの数の和が5以上となる確率を求めよ.
解答を見る
以下の解答では,表でまとめた場合の解答である.樹形図についてまとめた場合には,それぞれの図を参照のこと.
- 正四面体のさいころを2回振ったときの目の出方の重複順列
通りは,同様に確からしい. - 4枚のカードの中から2枚引いたときの順列
通りは,同様に確からしい. - 4枚のカードの中から2枚引いたときの組合せ
通りは,同様に確からしい.
確率の基本性質
確率の基本性質
ある試行における標本空間を
が成り立つ.根元事象が同様に確からしい場合,
となる.特に標本空間
である.
また,事象
であるから,両辺を
つまり
となる.
ある試行における標本空間を
のとき,
が成り立つ.
元記事: http://www.ftext.org/text/section/97(取得日 2026-08-07)
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