多項式の除法
FTEXT数学Iでは、多項式の加法、減法、乗法について学んだ。ここでは、多項式の除法について学ぶ。多項式の除法は、普通の整数の除法(割り算)に相当するものであるが、似て非なるものなので注意して見ていこう。
多項式の除法の基本定理
整数の割り算(多項式の除法)
まず,小学校以来慣れ親しんできた,整数の除法(integer division)について復習する.
たとえば,右図のような計算により,17を3で割ると,商は5で余りは2とわかる.この関係を式で表すと
17=3×5+2となる.
このとき,17を割られる数,3を割る数と呼ぶので,一般的には次のような関係が成り立つ.
(割られる数)=(割る数)×(商)+(余り)
また,(割る数)>(余り)≧の関係がある.
整数の除法とは何か,つまり整数aを整数bで割ったときの商と余りを求めるとはどういうことなのかを きちんと定義すると
\begin{align} a=b\cdot Q+r~~(0\leqq{r}\lt Q) \end{align}を満たす整数Qとrを求めることとなる. そして,この求まった値Qとrをそれぞれ,商と余りと呼ぶのである.
多項式の次数の表し方
まず,多項式の次数を表す記号を定義しておこう.
多項式の次数
多項式f(x)の次数をdeg \ f(x)と表す.
たとえば,f(x) = x3 − 4x2 + 5x − 1,
g(x) = 3x2 − 4x + 5とするとき,deg \ f(x) = 3,deg \ g(x) = 2である.
多項式の除法について
整数の除法に続き,今度は多項式の除法(polynomial division)について考えてみる.
たとえば,「x^3 – x^2 + 2x – 3をx^2 + 2x – 1で割る」とは
\begin{align} &x^3-x^2+2x-3\\ =&(x^2+2x-1)Q(x)+r(x) \end{align}と変形することであると定義する. ただし,このときQ(x),r(x)は共にxの多項式であり,deg(x^2 + 2x − 1) \gt deg \ r(x)であるとする. この結果のQ(x)とr(x)をそれぞれ, 多項式の除法における商(quotient)と 余り(remainder)と呼ぶ.
多項式の除法
多項式f(x),g(x)において
\begin{align} &f(x)=g(x)Q(x)+r(x)\\ &\qquad\left(\deg \ r(x) \lt \deg \ g(x)\right) \end{align}と変形できたとき,Q(x)を商,r(x)を余りという.
特に,余りr(x)が0のとき,f(x)はg(x)で割り切れるという.
さきほどの例では,商Q(x)はx – 3,余りr(x)は9x – 6となる.つまり
\begin{align} &x^3-x^2+2x-3\\ =&(x^2+2x-1)\times(x-3)+(9x-6) \end{align}となる.各自,以下の2点について確認しておこう.
- 上の式の右辺を展開すると左辺と等しいこと
- x^2 + 2x – 1の次数が余り9x – 6の次数より大きいこと
以下では,多項式の除法の計算方法についてみていく.
多項式の除法の計算方法
多項式の除法の計算方法
ここでは, x^4 + 3x^3 – 4x + 3をx^2 − 3x + 1で割ったときの商と余りを求める方法を 例として,具体的な計算方法を見ていく. 計算方法には次の2つの方法がある.
除法の計算方法~筆算形式~
x^4 + 3x^3 − 4x + 3をx^2 − 3x + 1で割ったときの商と余りを求めよ.
STEP1
まず,整数の割り算と同じように,下図のように書いておく.この例題では,割られる多項式にはx^2の項はないが,その場合でも 適度にスペースを空け,計算できるようにしておく.

STEP2
x^2 − 3x + 1に何をかけて引くと,x^4 + 3x^3 − 4x + 2の最高次の項x^4が消えるかを考える. この例題ではx^2なので,x^2を下図のように書く.

STEP3
下図のようにして,x^2 − 3x + 1にx^2をかけた式をx^4 + 3x^3 − 4x + 2から引く.

STEP4
STEP2と同じように,6x^3が消えるようにx^2 − 3x + 1に6xをかけて引く.

STEP5
同じように,17x^2が消えるようにx^2 − 3x + 1に17をかけて引く.

STEP6
最下段の41x – 15の次数が,割る多項式x^2 − 3x + 1の次数より低いので,ここでやめる.

この結果から \begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2+6x+17)(x^2-3x+1)+41x-15 \end{align} となることがわかり,商はx^2 + 6x + 17,余りは41x – 15とわかる.
吹き出し多項式の除法の計算方法
慣れてきたらx^4やx^3などを省略し,係数だけを並べて筆算するとよい. 上の計算では次のようになる.

除法の計算方法~暗算形式~
x^4 + 3x^3 − 4x + 3をx^2 − 3x + 1で割ったときの商と余りを求めよ.
STEP1
まず,右辺を展開したときにx^4が現れるように,下のように書く.
\begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2-3x+1)(x^2~~~~~~~~~~) \end{align}STEP2
このままでは,右辺のx^3の係数は − 3となり,左辺の3と合わなくなるので,つじつまをあわせるために + 6xを下のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにx^3の係数が3となり,左辺とあう.
\begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2-3x+1)(x^2+6x~~~~~) \end{align}STEP3
しかし,このままでは,右辺のx^2の係数は − 17となり,左辺の0と合わなくなるので,つじつまをあわせるために + 17を下のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにx^2の係数が0となり,左辺とあう.
\begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2-3x+1)(x^2+6x+17) \end{align}STEP4
しかし,このままでは,右辺のxの係数は − 45となり,左辺の − 4と合わなくなるので,つじつまをあわせるために + 41xを右のように書く.こうすれば,右辺を展開したときにxの係数が − 4となり,左辺とあう.
\begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2-3x+1)(x^2+6x+17)+41x \end{align}STEP5
最後に,右辺の定数項17と左辺の定数項2を合わせるため,右のように − 15を書く. こうすれば,右辺を展開したときの定数項が17となり,左辺とあう.
\begin{align} &x^4+3x^3-4x+2\\ =&(x^2-3x+1)(x^2+6x+17)\\ &+41x-15 \end{align}この結果から,商はx^2 + 6x + 17,余りは41x – 15とわかる.
吹き出し多項式の除法の計算方法
以上2つの方法を見てきたが,慣れると『暗算形式』の方が『筆算形式』より素早く計算できる. 多項式の係数に分数が含まれる場合など,暗算での計算が難しくなる場合には『筆算形式』を使うとよい.
多項式の除法~その1~
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの,商と余りを求めよ.
- x^2 + 2x + 1,x – 1
- x^3 + 3,x + 1
- x^3 + x^2 + 4x + 3,x^2 − x + 1
- x^4 + 2x^3 − 3x^2 + 5x + 6,x^2 + x − 1
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} x^2+2x+1=(x-1)(x+3)+4 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x+3},余りは\boldsymbol{4}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} x^3+3=(x+1)(x^2-x+1)+2 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2-x+1},余りは\boldsymbol{2}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} &x^3+x^2+4x+3\\ =&(x^2-x+1)(x+2)+5x+1 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x+2},余りは\boldsymbol{5x+1}である.
計算すると(筆算形式は下図を参照)
\begin{align} & x^4+2x^3-3x^2+5x+6\\ =&(x^2+x-3)(x^2+x-1)+9x+3 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2+x-3},余りは\boldsymbol{9x+3}である.
多項式の除法~その2~
x^2 + 2x – 3で割ると,商がx + 1,余りがx + 2になる多項式を求めよ.
2x^3 − 3x^2 + 2x + 4を割ると,商が2x + 1,余りが2x + 3になる多項式を求めよ.
求める多項式をf(x)とすると,商がx + 1,余りがx + 2であるから
\begin{align} f(x) &=(x+1)(x^2+2x-3)+x+2 \\ &=x^3+3x^2-x-3+x+2\\ &=\boldsymbol{x^3+3x^2-1} \end{align}求める多項式をf(x)とおくと
\begin{align} &2x^3-3x^2+2x+4\\ &=f(x)(2x+1)+2x+3\\ \Leftrightarrow~&f(x)(2x+1)=2x^3-3x^2+1 \\ \Leftrightarrow~&f(x)(2x+1)\\ &=(2x+1)(x^2-2x+1)\\ \therefore~&f(x)=x^2-2x+1 \end{align}であるから,求める多項式は\boldsymbol{x^2-2x+1}である.
多項式の除法の一意性
ここまで計算してきた経験から,多項式の除法では,商や余りが必ず存在し,さらにそれらが一通りに定まることは明らかであろう.
一般に,ある定義で定められたものがただ一通りに定まることを一意性(uniqueness)という .次に,多項式の除法の一意性について,まとめておこう.
多項式の除法の一意性
多項式f(x),g(x)において
\begin{align} &f(x)=g(x)Q(x)+r(x)\\ &\qquad(\deg r(x) \lt \deg g(x)) \end{align}を満たす多項式Q(x),r(x)が
ただ一通りに
存在する.
【証明:背理法】
多項式f(x)とg(x)について
f(x)=g(x)Q_1(x)+r_1(x)
\deg r_1(x) \lt \deg g(x) \tag{1}\label{takousikinozyohounoitiisei1}
f(x)=g(x)Q_2(x)+r_2(x)
\deg r_2(x) \lt \deg g(x) \tag{2}\label{takousikinozyohounoitiisei2}
と2通りに表されたとする.
\eqref{takousikinozyohounoitiisei1}-\eqref{takousikinozyohounoitiisei2}より
\begin{align} &0=g(x)Q_1(x)+r_1(x)\\ &-g(x)Q_2(x)-r_2(x)\\ \Leftrightarrow~&g(x)\left\{Q_1(x)-Q_2(x)\right\}\\ &=r_2(x)-r_1(x) \end{align} \tag{3}\label{takousikinozyohounoitiisei3}となる.
\eqref{takousikinozyohounoitiisei3}において,Q_1(x) – Q_2(x)が0ではないとすると,左辺の次数が右辺の次数より大きくなってしまう. よって,Q_1(x) – Q_2(x)は0,つまりQ_1(x) = Q_2(x)である.
また,このとき③の左辺は0となるので
\begin{align} &0=r_2(x)-r_1(x)\\ \Leftrightarrow~&r_1(x)=r_2(x) \end{align}以上より,商と余りが一致することが示されたので,多項式の除法の商と余りは一通りに定まることが証明された.
1次の多項式の除法の計算方法
1次の多項式の除法の計算方法
多項式の除法において,特に1次式で割る場合には,前節で紹介した2つの方法以外にも, 覚えておきたい計算方法が2つある.
組立除法
ここでは,x^3 + 2x^2 + 3x + 1をx – 2で割ったときの商と余りを求めることを例として, 具体的な計算方法を見ていく.
ここではまず,組立除法(synthetic division)という計算方法について学ぶ.
a_0x^3 + a_1x^2 + a_2x + a_3をx – \alpha で割ったときの,商をb_0x^2 + b_1x + b_2,余りをRとすると
\begin{align} &a_0x^3+a_1x^2+a_2x+a_3\\ =&(x-\alpha)(b_0x^2+b_1x+b_2)+R \end{align}と表せるが,右辺を展開して整理すると

となるので,両辺の係数を比較することにより
\begin{align} &a_0=b_0~,~~a_1=b_1-\alpha b_0~,~~\\ &a_2=b_2-\alpha b_1~,~~a_3=R-\alpha b_2 \end{align}が成り立つ.
これから,b_0,b_1,b_2,b_3,Rを解くことにより,商の係数や余りは
\begin{align} &b_0=a_0~,~~b_1=a_1+\alpha b_0~,~~\\ &b_2=a_2+\alpha b_1~,~~R=a_3+\alpha b_2 \end{align}と計算できる.
この計算の手順は,右上の図のように考えればよい.

たとえば,x^3 − 4x^2 + 2x + 5をx – 2で割ったときには,右図のような計算結果になるので
商はx^2 − 2x − 2 余り1
と求まる.
例題(組立除法)
x^3 + 2x^2 + 3x + 1をx – 2で割ったときの商と余りを組立除法で計算せよ.
組立除法を実行すると

となるので,商は\boldsymbol{x^2+4x+11},余りは\boldsymbol{23}となる.
x-aで展開するということ
たとえば,多項式x^3 − 4x^2 + 2x + 5は
\begin{align} &x^3-4x^2+2x+5\\ =&(x-1)^3-(x-1)^2-3(x-1)+8 \end{align}のように表すことができる(右辺を展開して左辺と等しくなることを確かめてみよ). このような変形を行ったとき,右辺のような形の式のことをx – 1で展開された式という.
このように変形するには,次の手順を踏めばよい.
STEP1
まず,x^3 − 4x^2 + 2x + 5の各項から,無理やり(x − 1)をくくる. このとき,x = (x − 1) + 1とみるのがポイントである.
\begin{align} & x^3-4x^2+2x+5\\ =&\left\{(x-1)+1\right\}^3-4\left\{(x-1)+1\right\}^2\\ &+2\left\{(x-1)+1\right\}+5 \end{align}STEP2
次に,(x − 1)のかたまりを崩さないように,展開していく.
\begin{align} &\left\{(x-1)+1\right\}^3-4\left\{(x-1)+1\right\}^2\\ &+2\left\{(x-1)+1\right\}+5\\ &=\left\{(x-1)^3+3(x-1)^2\right.\\ &\qquad\left. +3(x-1)+1\right\}\\ &\qquad-4\left\{(x-1)^2+2(x-1)+1\right\}\\ &\qquad+2\left\{(x-1)+1\right\}+5 \end{align}STEP3
最後に,同類項どうしで整理する.
\begin{align} &\left\{(x-1)^3+3(x-1)^2+3(x-1)+1\right\}\\ &\qquad-4\left\{(x-1)^2+2(x-1)+1\right\}\\ &\qquad+2\left\{(x-1)+1\right\}+5\\ &=(x-1)^3+3(x-1)^2+3(x-1)+1\\ &\qquad-4(x-1)^2-8(x-1)\\ &\qquad-4+2(x-1)+2+5\\ &=(x-1)^3-(x-1)^2-3(x-1)+8 \end{align}このような変形を利用して,1次式の割り算を考えることもできる.
例題(x-aで展開するということ)
x^3 + 2x^2 + 3x + 1をx – 2で割ったときの商と余りを,x^3 + 2x^2 + 3x + 1をx – 2で展開することにより求めよ.
まず,x^3 + 2x^2 + 3x + 1をx – 2で展開する.
\begin{align} & x^3+2x^2+3x+1 \\ =&\left\{(x-2)+2\right\}^3+2\left\{(x-2)+2\right\}^2\\ &+3\left\{(x-2)+2\right\}+1\\ =&\left\{(x-2)^3+6(x-2)^2+12(x-2)+8\right\}\\ &\quad+2\left\{(x-2)^2+4(x-2)+4\right\}\\ &+3\left\{(x-2)+2\right\}+1\\ =&(x-2)^3+6(x-2)^2\\ &+12(x-2)+8+2(x-2)^2\\ & +8(x-2)+8+3(x-2)+6+1\\ =&(x-2)^3+8(x-2)^2+23(x-2)+23 \end{align}次に,この式を(x − 2)でくくると
\begin{align} & (x-2)^3+8(x-2)^2+23(x-2)+23\\ &=(x-2)\left\{(x-2)^2+8(x-2)+23\right\}\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad+23 \end{align}最後に,中括弧の中を展開すると
\begin{align} & (x-2)\left\{(x-2)^2+8(x-2)+23\right\}+23\\ &=(x-2)(x^2-4x+4+8x-16+23)\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad+23\\ &=(x-2)(x^2+8x+11)+23 \end{align}となるので,結局
\begin{align} &x^3+2x^2+3x+1 \\ =&\overbrace{(x-2)}^{A}\overbrace{(x^2+8x+11)}^{B}+\overbrace{23}^{C} \end{align}と変形できる.
多項式の除法の一意性 より,(Aの次数)\gt(Cの次数)を満たす関係は一通りに定まるので, 商は\boldsymbol{x^2+8x+11}で,余りは\boldsymbol{23}となる.
多項式の除法(再)
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの,商と余りを 組立除法とx – \alphaで展開する方法の2通りで求めよ.
- x^2 + 2x + 1,x − 1
- x^3 + 3,x + 1
- x^3 − 4x^2 − 2x + 5,x − 2
- x^3 − 2x^2 − x + 6,x − 3
【解1:組立除法】
組立除法を行うと
となるので,商は\boldsymbol{x+3},余りは\boldsymbol{4}である.
【解2:x − \alphaで展開する方法】
\begin{align} & x^2+2x+1\\ &=\left\{(x-1)+1\right\}^2+2\left\{(x-1)+1\right\}+1\\ &=(x-1)^2+4(x-1)+4\\ &=(x-1)(x-1+4)+4\\ &=(x-1)(x+3)+4 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x+3},余りは\boldsymbol{4}である.
【解1:組立除法】
組立除法を行うと
となるので,商は\boldsymbol{x^2-x+1},余りは\boldsymbol{2}である.
【解2:x − \alphaで展開する方法】
\begin{align} &x^3+3\\ &=\left\{(x+1)-1\right\}^3+3\\ &=(x+1)^3+3(x+1)^2(-1)\\ &\qquad+3(x+1)-1+3\\ &=(x+1)(x^2+2x+1-3x-3+3)\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad+2\\ &=(x+1)(x^2-x+1)+2 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2-x+1},余りは\boldsymbol{2}である.
【解1:組立除法】
組立除法を行うと
となるので,商は\boldsymbol{x^2-2x-6},余りは\boldsymbol{-7}である.
【解2:x − \alphaで展開する方法】
\begin{align} & x^3-4x^2-2x+5\\ &=\!\left\{(x-2)+2\right\}^3\!-\!4\!\left\{(x-2)+2\right\}^2\\ &\qquad-2\!\left\{(x-2)+2\right\}\!+5\\ &=(x-2)\left\{(x-2)^2+2(x-2)-6\right\}\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad-7\\ &=(x-2)(x^2-2x-6)-7 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2-2x-6},余りは\boldsymbol{-7}である.
【解1:組立除法】
組立除法を行うと
となるので,商は\boldsymbol{x^2+x+2},余りは\boldsymbol{12}である
【解2:x − \alphaで展開する方法】
\begin{align} & x^3-2x^2-x+6\\ &=\!\left\{(x-3)+3\right\}^3\!-2\!\left\{(x-3)+3\right\}^2\\ &\qquad-\left\{(x-3)+3\right\}+6\\ &=\ (x-3)^3+9(x-3)^2+27(x-3)\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad+27\\ &\quad-2(x-3)^3-6(x-3)\\ &\quad-18-(x-3)-3+6\\ &=(x-3)(x^2+x+2)+12 \end{align}となるので,商は\boldsymbol{x^2+x+2},余りは\boldsymbol{12}である.
剰余の定理と因数定理
剰余の定理
多項式f(x)のxに数aを代入したときのf(x)の値をf(a)と書く .
たとえば,f(x) = x^3 + 2x^2 + 3x + 1とすると
\begin{align} &f(1)=1^3+2\cdot2^2+3\cdot1+1=7\\ &f(0)=0^3+2\cdot0^2+3\cdot0+1=1\\ &f(2)=2^3+2\cdot2^2+3\cdot2+1=23 \end{align}である.
剰余の定理のための補題
f(x) = x^4 − 3x^2 + 5x – 8とする.
- f(x)をx – 2で割ったときの余りを求めよ.
- f(2)の値を計算せよ.
無題

割り算を実行すると
\begin{align} f(x)=(x-2)(x^3+2x^2+x+7)+6 \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図となるので,余りは\boldsymbol{6}である.
f(2)=2^4-3\cdot2^2+5\cdot2-8=\boldsymbol{6}
上の例題では,f(x)をx – 2で割ったときの余りと,f(2)の値が等しくなっているが, これは,偶然に一致したわけではなく,次の理由による.
多項式f(x)を1次式x – aで割ったときの商をQ(x),余りをrとすると,rは定数であり
\begin{align} f(x)=(x-a)Q(x)+r \end{align}が成り立つ.この式にx = aを代入すると
\begin{align} f(a)=(a-a)Q(a)+r=r \end{align}となり,f(a)がf(x)をx – aで割ったときの余りrと等しいことがわかる.
剰余の定理
多項式f(x)をx – aで割ったときの余りはf(a)である.
剰余の定理の確認問題
次の式の組について,左側の式を右側の式で割ったときの余りだけ求めよ(商は求めなくてよい).
- x^2+2x+1,x-1
- x^3+3,x+1
- x^3-4x^2-2x+5,x-2
- x^3-2x^2-x+6,x-3
剰余の定理より,f(1)=\boldsymbol{4}
剰余の定理より,f(-1)=\boldsymbol{2}
剰余の定理より,f(2)=\boldsymbol{-7}
剰余の定理より,f(3)=\boldsymbol{12}
吹き出し剰余の定理
余りを求めるだけならば剰余の定理が大変な威力を発揮する.
暗記剰余の定理の拡張
多項式f(x)を1次式ax + bで割ったときの余りはf\left(-\dfrac{b}{a}\right)であることを証明せよ.
f(x)を1次式ax + bで割ったときの商をQ(x),余りをrとすると,rは定数であり,次の関係式が成り立つ.
\begin{align} f(x)=(ax+b)Q(x)+r \end{align}この式のxに-\dfrac{b}{a}を代入すると
\begin{align} &f\left(-\dfrac{b}{a}\right) \\ =&\left\{a\cdot\left(-\dfrac{b}{a}\right)+b\right\}Q\left(-\dfrac{b}{a}\right)+r\\ =&(-b+b)Q\left(-\dfrac{b}{a}\right)+r\\ =&r \end{align}となり,f\left(-\dfrac{b}{a}\right)と余りrが等しいことが分かる.
剰余の定理の拡張
多項式f(x)を1次式ax + bで割ったときの余りはf\left(-\dfrac{b}{a}\right)となる.
剰余の定理の利用
次の各問に答えよ.
多項式f(x)をx – 1で割ると2余り,x – 2で割ると3余る. f(x)を(x − 1)(x − 2)で割ったときの余りを求めよ.
多項式f(x)をx – 1で割ると3余り,(x − 2)(x − 3)で割ると3x – 2余る. f(x)を(x − 1)(x − 2)(x − 3)で割ったときの余りを求めよ.
多項式f(x)をx – 1で割ると2余り,(x − 2)^2で割ると3x – 2余る. f(x)を(x − 1)(x − 2)^2で割ったときの余りを求めよ.
【解1:除法の式を変形して解く】
f(x)をx – 1で割ったときの商をQ_1(x)とすると,余りが2だから
\begin{align} f(x)=(x-1)Q_1(x)+2 \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりとおける.さらに,Q_1(x)をx – 2で割ったときの商をQ_2(x),余りをaとすると
\begin{align} f(x) &=(x-1)\left\{Q_2(x)(x-2)+a\right\}+2 \\ &=(x-1)(x-2)Q_2(x)\\ &\qquad\qquad\qquad+ax+2-a \end{align} \blacktriangleleft Q_1(x) = Q_2(x)(x − 2) + aであるここで,剰余の定理より
\begin{align} &f(2)=2a+2-a=3 \\ \therefore~ &a=1 \end{align} \blacktriangleleft f(2) = 3を使ったとなる.よって,求める余りは\boldsymbol{x+1}である.
【解2:余りの多項式をおく】 f(x)を(x − 1)(x − 2)で割ったときの,商をQ_3(x),余りをax + bとすると
\begin{align} f(x)=(x-1)(x-2)Q_3(x)+ax+b \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりである.ここで,剰余の定理より
\left(f(1)=\right)a+b=2 \blacktriangleleft f(1) = 2を使った
\left(f(2)=\right)2a+b=3 \blacktriangleleft f(2) = 3を使った
これを解くとa = 1,b = 1であるから,求める余りは\boldsymbol{x+1}である.
【解1:除法の式を変形して解く】
f(x)を(x − 2)(x − 3)で割ったときの商をQ_1(x)とすると,余りが3x – 2だから
\begin{align} f(x)=(x-2)(x-3)Q_1(x)+3x-2 \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりとおける.さらに,Q_1(x)をx – 1で割ったときの商をQ_2(x),余りをaとすると
\begin{align} f(x) &=(x-2)(x-3)\left\{Q_2(x)(x-1)\right.\\ &\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad \left. +a\right\}\\ &\qquad+3x-2 \\ &=(x-1)(x-2)(x-3)Q_2(x)\\ &\qquad+a(x-2)(x-3)+3x-2 \end{align} \blacktriangleleft Q_1(x) = Q_2(x)(x − 1) + aである.である.ここで,剰余の定理より
\begin{align} &f(1)=a(-1)(-2)+3-2=3 \\ \therefore~ &a=1 \end{align} \blacktriangleleft f(1) = 3を使ったとなる.よって,求める余りは(x-2)(x-3)+3x-2=\boldsymbol{x^2-2x+4}である.
【解2:余りの多項式をおく】 f(x)を(x − 1)(x − 2)(x − 3)で割ったときの,商をQ_3(x),余りをax^2 + bx + cとすると
\begin{align} &f(x)=(x-1)(x-2)(x-3)Q_4(x)\\ &\qquad+ax^2+bx+c \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりここで,剰余の定理よりf(1) = 3,f(2) = 4,f(3) = 7なので
\left(f(1)=\right)a+b+c=3 \blacktriangleleft f(1) = 3を使った
\left(f(2)=\right)4a+2b+c=4 \blacktriangleleft f(2) = 4を使った
\left(f(3)=\right)9a+3b+c=7 \blacktriangleleft f(3) = 7を使った
これを解くとa = 1,b = − 2,c = 4であるから,求める余りは\boldsymbol{x^2-2x+4}である.
【解1:除法の式を変形して解く】
f(x)を(x − 2)^2で割ったときの商をQ_1(x)とすると,余りが3x – 2だから
\begin{align} f(x)=(x-2)^2Q_1(x)+3x-2 \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりとおける.さらに,Q_1(x)をx – 1で割ったときの商をQ_2(x),余りをaとおくと,
\begin{align} f(x) &=(x-2)^2\left\{Q_2(x)(x-1)+a\right\}\\ &\qquad+3x-2 \\ &=(x-1)(x-2)^2Q_2(x)\\ &\qquad\qquad+a(x-2)^2+3x-2 \end{align} \blacktriangleleft Q_1(x) = Q_2(x)(x − 1) + aであるここで,剰余の定理より
\begin{align} &f(1)=a(-1)^2+3-2=2 \\ \therefore~ &a=1 \end{align} \blacktriangleleft f(1) = 2を使ったであるから,求める余りは(x-2)^2+3x-2=\boldsymbol{x^2-x+2}である.
【解2:余りの多項式をおく(微分法を使う)】
f(x)を(x − 2)^2で割ったときの商をQ_1(x)とすると,余りが3x – 2だから
\begin{align} f(x)=(x-2)^2Q_1(x)+3x-2 \end{align} \blacktriangleleft多項式の除法の一意性よりとおける.この式をxで微分すると
\begin{align} &f'(x) \\ =&(x-2)Q_1(x)+(x-2)^2{Q_1}'(x)+3 \\ =&(x-2)\left\{Q_1(x)+(x-2){Q_1}'(x)\right\}+3 \end{align} \blacktriangleleft微分の計算法則の関数の積の微分法を使ったQ_1(x) + (x − 2)Q_1'(x)は多項式なので,これをQ_2(x)とおくと
f'(x)=(x-2)Q_2(x)+3
\therefore~ f'(2)=3
\tag{1}\label{zyouyonoteirinoriyou}
いま,f(x)を(x − 1)(x − 2)^2でわったときの商をQ_3(x),余りをax^2 + bx + cとおくと,
f(x)=(x-1)(x-2)^2Q_3(x)
+ax^2+bx+cf'(x)=((x-2)を因数に持つ多項式)+2ax+b
であるから
\begin{align} f'(2)=4a+b=3 \end{align} \blacktriangleleft\eqref{zyouyonoteirinoriyou}を使ったさらに,剰余の定理より
f(1)=a+b+c=2 \blacktriangleleft f(1) = 2を使った
f(2)=4a+2b+c=4 \blacktriangleleft f(2) = 4を使った
これを解くとa = 1,b = − 1,c = 2であるから,求める余りは\boldsymbol{x^2-x+2}である.
因数定理
多項式f(x)を1次式x – aで割ったときの商をQ(x),余りをrとすると,rは定数であり
\begin{align} f(x)=(x-a)Q(x)+r \end{align}が成り立つ.この式にx = aを代入すると
\begin{align} f(a)=(a-a)Q(a)+r=r \end{align}となり,f(a) = rがわかり,これが剰余の定理だった.
特に,f(x)がx – aで割り切れる,つまり\left(r=\right)~f(a)=0のとき
\begin{align} f(x)=(x-a)Q(x) \end{align}と表すことができる. さらにいいかえるならば,x – aはf(x)の因数になっている.
因数定理
f (x)を多項式とすると
「x – aがf (x)の因数である」\Longleftrightarrow「f (a) = 0」
この因数定理(factor theorem)を利用して,多項式の因数分解をすることができる. 次の例題で具体的にみていこう.
因数定理による因数分解-その1-
因数定理を利用して,次の式を因数分解せよ.
- x^3+3x^2-4
- 2x^3-7x^2+9
- x^4-6x^3+7x^2+6x-8
- x^4-8x^3-2x^2+72x-63
f(1)やf( − 1)などを計算してみて0になるものをみつける.
f(x) = x3 + 3x2 – 4とおく.
\begin{align} f(1)=1+3-4=0 \end{align}であるから,因数定理よりf(x)はx – 1を因数にもつ. \blacktriangleleft先にf( − 2) = 0を見つけてもよい
よって説明文
\begin{align} f(x)&=(x-1)(x^2+4x+4)\\ &=\boldsymbol{(x-1)(x+2)^2} \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図f(x) = 2x3 − 7x2 + 9とおく.
\begin{align} f(-1)=-2-7+9=0 \end{align}であるから,因数定理よりf(x)はx + 1を因数にもつ. \blacktriangleleft先にf(3) = 0やf(\dfrac{3}{2})=0を見つけてもよい
よって説明文
\begin{align} f(x)&=(x+1)(2x^2-9x+9)\\ &=\boldsymbol{(x+1)(2x-3)(x-3)} \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図f(x) = x4 − 8x3 + 7x2 + 6x – 8とおく.
\begin{align} f(1)=1-6+7+6-8=0 \end{align}であるから,因数定理よりf(x)はx – 1を因数にもつ. \blacktriangleleft先にf( − 1) = 0やf(2) = 0などを見つけてもよい
よって説明文
\begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図さらに,g(x) = x3 − 5x2 + 2x + 8とおくと
\begin{align} g(-1)=-1-5-2+8=0 \end{align}であるから,因数定理よりg(x)はx + 1を因数にもつ. \blacktriangleleft先にg(2) = 0やg(4) = 0などを見つけてもよい
よって説明文
\begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図より,f(x)=\boldsymbol{(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)}.
f(x) = x4 − 8x3 − 2x2 + 72x – 63とおく.
\begin{align} f(1)=1-8-2+72-63=0 \end{align}であるから,因数定理よりf(x)はx – 1を因数にもつ. \blacktriangleleft先にf(3) = 0やf( − 3) = 0などを見つけてもよい
よって説明文
\begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図さらに,g(x) = x3 − 7x2 − 9x + 63とおくと
\begin{align} g(3)=27-63-27+63=0 \end{align}であるから,因数定理よりg(x)はx – 3を因数にもつ. \blacktriangleleft先にg( − 3) = 0やg(7) = 0などを見つけてもよい.
よって説明文
\begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} \blacktriangleleft組立除法を使うなら図より,f(x)=\boldsymbol{(x-1)(x-3)(x+3)(x-7)}である.
多項式f(x)を因数定理を利用して因数分解するとき,f(a) = 0となるaを見つけることが大切である. このaを見つける手段として,次の定理を知っておくとよい.
多項式の因数を見つけるための定理
係数a_0,~a_1,~\cdots,~a_nがすべて整数である多項式
\begin{align} f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0 \end{align}に対し,既約分数\dfrac{p}{q}が,f\left(\dfrac{p}{q}\right)=0を満たすとき
pはa_0の約数,qはa_nの約数
である(ただし,約数には負の数も含めるとする).
この定理の証明は多項式の因数を見つけるための定理を参照のこと.
吹き出し因数定理
\dfrac{p}{q}は\pm(定数項の約数) / (最高次の係数の約数)と覚えるとよい.
たとえば,f(x) = 2x^3 − 5x^2 + 7x – 6の因数分解について考えてみると,最高次の係数の約数には 1~,~~2があり,定数項の約数には1~,~~2,~~3,~~6 があるので,f(a) = 0となるaの候補は
\begin{align} \dfrac{1}{1}~,~~\dfrac{2}{1}~,~~\dfrac{3}{1}~,~~\dfrac{6}{1}~,~~\dfrac{1}{2}~,~~\dfrac{2}{2}~,~~\dfrac{3}{2}~,~~\dfrac{6}{2} \end{align}と,これらにマイナスをつけた数がある.
これらを順に
\begin{align} &f(1)=2-5+7-6\neq0\\ &f(2)=2\cdot2^3-5\cdot2^2+7\cdot2-6\neq0\\ &\qquad\qquad\vdots \end{align}などと調べていくと,f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0となるので
\begin{align} f(x)=(2x-3)(x^2-x+2) \end{align}と因数分解できる.
因数定理による因数分解-その2-
次の多項式を因数分解せよ
- 3x^3-4x^2+4x-1
- 24x^3-22x^2+x+2
f(x) = 3x^3 − 4x^2 + 4x – 1とおくと \blacktriangleleft f(a) = 0となるaの候補は\pm\dfrac{1}{1}~,~\pm\dfrac{1}{3}がある
\begin{align} f\left(\dfrac{1}{3}\right)=0 \end{align}であるから
\begin{align} f(x)=\boldsymbol{(3x-1)(x^2-x+1)} \end{align} \blacktriangleleft x^2 − x + 1は判別式の値が負となるので,これ以上因数分解できないとなる.
f(x) = 24x^3 − 22x^2 + x + 2とおくと
\blacktriangle f(a) = 0となるaの候補は \pm\dfrac{1}{1}~,~\pm\dfrac{1}{2}~,~\pm\dfrac{1}{3}~,~\pm\dfrac{1}{4}~,
~\pm\dfrac{1}{6}~,~\pm\dfrac{1}{8}~,~\pm\dfrac{1}{12}~,~\pm\dfrac{1}{24}~, ~\pm\dfrac{2}{3} がある
\begin{align} f\left(\dfrac{1}{2}\right)=0 \end{align}であるから
\begin{align} f(x)=(2x-1)(12x^2-5x-2) \end{align}となる.また,12x^2 − 5x − 2 = (3x − 2)(4x + 1)と因数分解できるので
\begin{align} f(x)=\boldsymbol{(2x-1)(3x-2)(4x+1)} \end{align}となる.
多項式の約数と倍数
多項式の約数と倍数について
多項式の約数と倍数について
多項式f(x)が多項式g(x)で割り切れるとき,すなわち
\begin{align} f(x)=g(x)Q(x) \end{align}となる多項式Q(x)が存在するとき
f(x)はg(x)の倍数(multiple),g(x)はf(x)の約数(divisor)
という
たとえば,x^2 − 4x + 3 = (x − 1)(x − 3)であるから,x^2 − 4x + 3はx – 1の倍数であり,x – 1はx^2 − 4x + 3の約数である
公約数・公倍数
いくつかの多項式に共通な約数を,それらの多項式の公約数(common divisor)といい, 公約数の中で次数の最も高いものを最大公約数(greatest common divisor)という.
また,いくつかの多項式に共通な倍数を,それらの多項式の公倍数(common multiple)といい, 公倍数の中で次数の最も低いものを最小公倍数(least common multiple)という.
最大公約数と最小公倍数
次の各組の多項式の最大公約数と最小公倍数を求めよ. ただし,答えの式は展開しなくてもよい.
- x^2-1~,~~x+1
- x^2-4x+4~,~~x^2-4
- x^2+2x-3~,~~x^2+x-6
- x^3-27~,~~x^2-2x-3
x^2 − 1 = (x + 1)(x − 1)なので,最大公約数は\boldsymbol{x+1},
最小公倍数は\boldsymbol{(x+1)(x-1)}である.
x^2 − 4x + 4 = (x − 2)^2,x^2 − 4 = (x − 2)(x + 2)なので,最大公約数は\boldsymbol{x+2}, 最小公倍数は\boldsymbol{(x+2)(x-2)^2}である.
x^2 + 2x − 3 = (x − 1)(x + 3),x^2 − x + 6 = (x + 3)(x − 2)なので, 最大公約数は\boldsymbol{x+3},最小公倍数は\boldsymbol{(x-1)(x+3)(x-2)}である.
x^3 − 27 = (x − 3)(x^2 + 3x + 9),x^2 − 2x − 3 = (x − 3)(x + 1)なので, 最大公約数は\boldsymbol{x-3}, 最小公倍数は\boldsymbol{(x-1)(x+3)(x^2+3x+9)}である.
分数式の計算
分数式とは何か
f(x)を多項式,g(x)を定数でない多項式とするとき, \dfrac{f(x)}{g(x)}の形で表した式のことを分数式(fractional expression)という.
たとえば
\begin{align} \dfrac{2x-1}{x-1}~,~~\dfrac{3a}{x-4b}~,~~\dfrac{x-5}{x^2-2x+3} \end{align}などは,どれも分数式である.
多項式と分数式を合わせて,有理式(rational expression)という.
分数式では,普通の分数と同じように,分母,分子に0以外の同じ式をかけてもよいし, 分母,分子に共通な因数で割ってもよい.
分数式の基本演算
分数式\dfrac{f(x)}{g(x)}に関して,次の式が成り立つ.
\begin{align} &\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(x)\times h(x)}{f(x)\times h(x)}~,\\ &\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(x)\div h(x)}{g(x)\div h(x)} \end{align}ただし,h(x)\neq0とする.
これらの変形を行えば,普通の分数と同じように約分(reduction of fraction to its lower terms)や通分(reduction fractions to common denominator)ができる.
分数式の約分
次の分数式を約分せよ.
- \dfrac{2x-2}{6}
- \dfrac{x^2-1}{x+1}
- \dfrac{x^2-x-12}{x^2+2x-3}
- \dfrac{x^2+x-2}{x^3-1}
実際に約分をすると
\begin{align} \dfrac{2x-2}{6}=\boldsymbol{\dfrac{x-1}{3}} \end{align}分子を因数分解すると
\begin{align} \dfrac{x^2-1}{x+1}=\dfrac{(x-1)(x+1)}{x+1}=\boldsymbol{x-1} \end{align}分母・分子を因数分解すると
\begin{align} \dfrac{x^2-x-12}{x^2+2x-3}=&\dfrac{(x+3)(x-4)}{(x-1)(x+3)}\\ =&\boldsymbol{\dfrac{x-4}{x-1}} \end{align}分母・分子を因数分解すると
\begin{align} \dfrac{x^2+x-2}{x^3-1}&=\dfrac{(x-1)(x+2)}{(x-1)(x^2+x+1)}\\ &=\boldsymbol{\dfrac{x+2}{x^2+x+1}} \end{align}
分数式の分母と分子に共通な因数がないとき,この分数式は既約(irreducible)であるという.
分数式の乗法と除法
分数式の乗法と除法は,普通の分数の場合と同じように,次の規則にしたがって計算する.
分数の乗法・除法
\begin{align} \dfrac{f(x)}{g(x)}\times\dfrac{h(x)}{i(x)}&=\dfrac{f(x)\times h(x)}{f(x)\times i(x)}~,\\ \dfrac{f(x)}{g(x)}\div\dfrac{h(x)}{i(x)}&=\dfrac{f(x)}{g(x)}\times\dfrac{i(x)}{h(x)}\\ &=\dfrac{f(x)\times i(x)}{g(x)\times h(x)} \end{align}
たとえば
\begin{align} &\dfrac{by^2}{ax^2}\div\dfrac{b^2y}{a^2x}=\dfrac{by^2}{ax^2}\times\dfrac{a^2x}{b^2y}\\ &=\dfrac{by^2\times a^2x}{ax^2\times b^2y}=\dfrac{ay}{bx}\\ &\dfrac{x+1}{x}\times\dfrac{x-2}{x(x+1)}\\ &=\dfrac{(x+1)\times(x-2)}{x\times x(x+1)}=\dfrac{x-2}{x^2} \end{align}と計算することができる.
分数式の乗法と除法
次の式を計算せよ.
- \dfrac{x-1}{x(x+2)}\times\dfrac{x(x+1)}{x-2}
- \dfrac{x+2}{x+4}\times\dfrac{x^2-8x+16}{x(x-4)}
- \dfrac{x-3}{x^2+x}\div \dfrac{x+2}{x}
- \dfrac{x^3-1}{x+2}\div \dfrac{x-1}{x+4}
\dfrac{(x-1)\times x(x+1)}{x(x+2)(x-2)}=\boldsymbol{\dfrac{(x+1)(x-1)}{(x-2)(x+2)}}
\dfrac{(x+2)(x-4)^2}{x(x+4)(x-4)}=\boldsymbol{\dfrac{(x+2)(x-4)}{x(x+4)}}
\dfrac{(x-3)x}{x(x+2)(x+2)}=\boldsymbol{\dfrac{x-3}{(x+2)^2}}
\dfrac{(x-1)(x^2+x+1)(x+4)}{(x+2)(x-1)}
=\boldsymbol{\dfrac{(x^2+x+1)(x+4)}{x+2}}
分数式の加法と減法
分数式の加法と減法は,普通の分数の場合と同じように,次の規則にしたがって計算する.
分数式の加法・減法
\dfrac{f(x)}{g(x)}+\dfrac{h(x)}{g(x)}=\dfrac{f(x)+h(x)}{g(x)}~,
\dfrac{f(x)}{g(x)}-\dfrac{h(x)}{g(x)}=\dfrac{f(x)-h(x)}{g(x)}
分母が異なる分数式どうしは,通分してから計算する.
たとえば
\begin{align} &\dfrac{2}{x-2}+\dfrac{1}{x+1}\\ =&\dfrac{2(x+1)}{(x-2)(x+1)}+\dfrac{x-2}{(x-2)(x+1)}\\ =&\dfrac{2(x+1)+x-2}{(x-2)(x+1)}=\dfrac{3x}{(x-2)(x+1)} \end{align}と計算することができる.
分数式の加法と減法
次の式を計算せよ.
- \dfrac{2}{x^2+1}+\dfrac{x}{x^2+1}
- \dfrac{1}{x+1}+\dfrac{1}{x^2-1}
- \dfrac{x}{x+2}-\dfrac{-x+5}{x+2}
- \dfrac{3}{x^2-x-2}+\dfrac{1}{x^2-5x+6}
\dfrac{2+x}{x^2+1}=\boldsymbol{\dfrac{x+2}{x^2+1}}
\dfrac{x-1}{x^2-1}+\dfrac{1}{x^2-1}=\boldsymbol{\dfrac{x}{x^2-1}}
\dfrac{x-(-x+5)}{x+2}=\boldsymbol{\dfrac{2x-5}{x+2}}
\dfrac{3}{(x-2)(x+1)}+\dfrac{1}{(x-2)(x-3)}
=\dfrac{3(x-3)+x+1}{(x-2)(x+1)(x-3)}
=\boldsymbol{\dfrac{4x-8}{x^3-4x^2+x+6}}
分数式の恒等式
次の式が恒等式となるように,定数a,b,cの値を定めよ.
\dfrac{3x^2-x}{x^3-x^2-x+1}
=\dfrac{a}{x+1}+\dfrac{b}{x-1}+\dfrac{c}{(x-1)^2}\dfrac{1}{x^3+7x^2+14x+8}
=\dfrac{a}{x+1}+\dfrac{b}{x+2}+\dfrac{c}{x+4}
両辺に,(x + 1)(x − 1)^2を掛けると
\begin{align} &3x^2-x\\ =&a(x-1)^2+b(x-1)(x+1)+c(x+1) \end{align}となる.
両辺にx = 1を代入すると
\begin{align} &3-1=c(1+1) \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{c=1} \end{align}両辺にx = − 1を代入すると
\begin{align} &3+1=a(-1-1)^2 \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{a=1} \end{align}両辺にx = 0を代入すると
\begin{align} &0=a(0-1)^2+b(0+1)(0-1)\\ &\qquad\qquad+c(0+1) \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{b=2} \end{align} \blacktriangleleft a = 1,c = 1を用いた両辺に,(x + 1)(x + 2)(x + 4)を掛けると
\begin{align} 1= &a(x+2)(x+4)+b(x+1)(x+4)\\ &+c(x+1)(x+2) \end{align}となる.
両辺にx = − 1を代入すると
\begin{align} &1=a(-1+2)(-1+4) \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{a=\dfrac{1}{3}} \end{align}両辺にx = − 2を代入すると
\begin{align} &1=b(-2+1)(-2+4) \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{b=-\dfrac{1}{2}} \end{align}両辺にx = − 4を代入すると
\begin{align} &1=c(-4+1)(-4+2) \\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{c=\dfrac{1}{6}} \end{align}