等比数列
等比数列の一般項
等比数列の定義
初項aに順次,一定の数 $r$ (公比(common ratio)という)をかけて得られる数列のことを等比数列(geometric sequence)という.具体的に書き表すと
となる.
また,等比数列は漸化式を用いて
\begin{cases} a_1=a\\ a_{n+1}=a_nr\quad(n=1,2,3,\cdots) \tag{1}\label{touhisuretunoteigi} \end{cases}と表すこともできる.
試しに,この漸化式 $\eqref{touhisuretunoteigi}$ の $n$ に $1,2,3$ を代入すると,確かに $ar,ar^2,ar^3$ が作られるのがわかる.
なお,次のような数列も等比数列となることに注意しておこう.
$a,0,0,0,\cdots$ (初項 $a$ ,公比 $0$ の等比数列)
$a,a,a,a,\cdots$ (初項 $a$ ,公比 $1$ の等比数列)
等比数列の一般項
この等比数列の第 $n$ 項つまり一般項 $a_n$ は
「初項から第 $n$ 項までには $r$ を $n-1$ 個かける」
と考えて
\[a_n=ar^{n-1}\]となるのはすぐにわかるだろう.
また,漸化式 $(1)$ から一般項 $a_n$ を求める方法もみておこう.
STEP1
漸化式 $(1)$ の $n$ に $1,2,3,\cdots,n-2,n-1$ を代入し,得られる式を縦に並べておく.
\begin{align} a_2&=a_1r\\ a_3&=a_2r\\ &\vdots\\ a_{n-1}&=a_{n-2}r\\ a_n&=a_{n-1}r\\ \end{align}STEP2
すべての式の辺々を掛け合わせると, $a_2,a_3,\cdots,a_{n-1}$ が打ち消される.
\begin{align} a_2&=a_1r\\ a_3&=a_2r\\ \vdots\\ a_{n-1}&=a_{n-2}r\\ a_n&=a_{n-1}r\\\hline a_n&=a_1r^{n-1} \end{align}よって, $a_1=a$ に注意して,次式を得る.
\[a_n=ar^{n-1}\]等比数列の漸化式と一般項
初項 $a$ ,公比 $r$ の等比数列の漸化式は
\begin{cases} a_1=a\\ a_{n+1}=a_nr\quad(n=1,2,3,\cdots) \end{cases}初項 $a$ ,公比 $r$ の等比数列の一般項 $a_n$ は
\[a_n=ar^{n-1}\quad(n=1,2,3,\cdots)\]等比数列の一般項~その1~
次の等比数列 $\{a_n\}$ の一般項 $a_n$ を求めよ.また,第10項を求めよ.
- $2,6,18,54,162,\cdots$
- $81,-27,9,-3,1,\cdots$
- 初項が2,公比が3の等比数列であり,第 $n$ 項(一般項)は初項 $a_1$ に公比 $r$ を $n-1$ 回かけることによって求められるので \[a_n=\boldsymbol{2\cdot3^{n-1}}\]
- 初項が81,公比が $-\dfrac{1}{3}$ の等比数列だから \[a_n=\boldsymbol{81\left(-\frac{1}{3}\right)^{n-1}}\]
また,第10項は $a_{10}=2\cdot3^9=\boldsymbol{39366}$ である.
また,第10項は $a_{10}=81\left(-\dfrac{1}{3}\right)^9=\boldsymbol{-\dfrac{1}{243}}$ である.
等比数列の一般項~その2~
次の条件を満たす等比数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ.
- 初項が $2$ ,第4項が $-54$
- 第3項が $\dfrac{3}{4}$ ,第7項が $\dfrac{3}{64}$
- 等比数列は公比が一定であるので,条件からまず公比を求めよう.初項から第4項までは,公比が(4-1=)3回掛けられるので,公比を $r$ とすると \begin{align} &a_1r^3=a_4\\ \Leftrightarrow\ &r^3=\frac{a_4}{a_1}=\frac{-54}{2}=-27\\ \therefore\ &r=-3 \end{align}
- 第3項から第7項までは,公比が(7-3=)4回かけられるので,公比を $r$ とすると \begin{align} &a_3r^4=a_7\\ \Leftrightarrow\ &r^4=\frac{a_7}{a_3}=\frac{3}{64}\div\frac{3}{4}=\frac{1}{16}\\ \therefore\ &r=\pm\frac{1}{2} \end{align}
よって, $a_n=\boldsymbol{2(-3)^{n-1}}$ となる.
【別解】
等比数列の一般項は $a_n=a_1r^{n-1}$ として与えられるので,問題の条件から $a_1$ と $r$ の連立方程式を立てることができる.初項を $a$ ,公比を $r$ とすると
\begin{align} a_1&=a=2\\ a_4&=ar^3=-54 \end{align}となる.これらを連立させて解くと
\[a=2,r=-3\]よって, $a_n=\boldsymbol{2(-3)^{n-1}}$ となる.
第3項から第 $n$ 項までは,公比の $n-3$ 乗がかかるので,
\begin{align} a_n&=a_3r^{n-3}\\ &=\frac{3}{4}\left(\pm\frac{1}{2}\right)^{n-3}\\ &=\boldsymbol{3\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1},3\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}} \end{align}【別解】
初項を $a$ ,公比を $r$ とすると
第3項が $\dfrac{3}{4}$ であるから $ar^2=\dfrac{3}{4}$
第7項が $\dfrac{3}{64}$ であるから $ar^6=\dfrac{3}{64}$
となる.これらを連立させて解くと
\[a=3,r=\pm\frac{1}{2}\]よって, $a_n=\boldsymbol{3\left(\pm\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}}$ となる.
等比数列の和
等比数列の和の求め方
ここでは,等比数列の初項 $a$ から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めてみよう. $r\neq1$ のときは次のようになる.
STEP1
等比数列の一般項 $a_n=a_1r^{n-1}$ に, $1,2,3,\cdots,n-2,n-1,n$ を代入して足し合わせる式を書く.
\begin{array}{ll} &&&\fbox{1}&&\fbox{2}&&\fbox{3}\\ &S_n&=&a&+&ar&+&ar^2\\ &&&&&\fbox{n-2}&&\fbox{n-1}&&\fbox{n}\\ &&+&\cdots&+&ar^{n-3}&+&ar^{n-2}&+&ar^{n-1} \end{array}STEP2
この式の辺々 $r$ 倍した式を書く.
\begin{array}{ll} &&&\fbox{1}&&\fbox{2}&&\fbox{3}\\ &rS_n&=&ar&+&ar^2&+&ar^3\\ &&&&&\fbox{n-2}&&\fbox{n-1}&&\fbox{n}\\ &&+&\cdots&+&ar^{n-2}&+&ar^{n-1}&+&ar^n \end{array}STEP3
上の2 つの式を並べる.このとき, $r$ 倍した式の方を右に1段ずらして書いておく.
STEP4
上の式から下の式を引く.そのとき,各項のかたまりを崩さないようにする.
$r\neq1$ ならば,この式の両辺を $1-r$ で割ることができるので, $(1-r)S_n=a(1-r^n)$ より
\[S_n=\frac{a(1-r^n)}{1-r}\ \left(=\frac{a(r^n-1)}{r-1}\right)\]を得る.
また, $r=1$ のときは, $S_n=\overset{n個}{\overbrace{a+a+a+\cdots+a+a}}=an$ となる.
以上,まとめておこう.
等比数列の和
初項 $a$ ,公比 $r$ の等比数列の,初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ は
- $r\neq1$ のとき \begin{align} S_n&=\frac{a(1-r^n)}{1-r}\\ &=\frac{a(r^n-1)}{r-1} \end{align}
- $r=1$ のとき $S_n=an$
吹き出し無題
この式は
\[(等比数列の和)=\frac{(初項)\times\left(1-(公比)^{(項数)}\right)}{1-(公比)}\]と覚えておくとよい.つまり,等比数列の和は「初項」と「公比」と「項数」という3 つの要素がわかれば簡単に計算することができる.
等比数列の和~その1~
次の等比数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めよ.また, $S_6$ を求めよ.
- $2,6,18,54,162,\cdots$
- $81,-27,9,-3,1,\cdots$
初項が2,公比が3の等比数列だから,初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ は
\[S_n=\frac{2(3^n-1)}{3-1}=\boldsymbol{3^n-1}\]また, $S_6=3^6-1=\boldsymbol{728}$ である.
また
\begin{align} S_6&=\frac{243}{4}\left\{1-\left(-\frac{1}{3}\right)^6\right\}\\ &=\frac{243}{4}\left(1-\frac{1}{729}\right)\\ &=\boldsymbol{\frac{182}{3}} \end{align}等比数列の和~その2~
毎年の初めに100万円ずつ,年利 $3\%$ ,1年ごとの複利法で10年積み立てたときの元利合計 $S$ 円を求めよ.ただし $1.03^{10}=1.34$ とする.なお,複利法とは1年ごとに利子を元金にくり入れ,その合計額を次年の元金として利子を計算する手法のことである.
毎年の元利がいくらになるかを考えると
\begin{align} 1年目&\colon\ 100\times1.03\\ 2年目&\colon\ (100+100\times1.03)\times1.03\\ &=100\times1.03+100\times1.03^2\\ 10年目&\colon\ 100\times1.03+100\times1.03^2+100\times1.03^3\\ &\qquad+\cdots+100\times1.03^{10} \end{align}これは初項 $100\times1.03$ ,公比 $1.03$ ,項数 $10$ の等比数列の和なので
\begin{align} S_{10}&=\frac{100\times1.03(1.03^{10}-1)}{1.03-1}\\ &=\frac{100\times1.03(1.34-1)}{1.03-1}\\ &=\frac{100\times1.03\times0.34}{0.03}\\ &\simeq\boldsymbol{1167} \end{align}