絶対値
絶対値とは何か
絶対値についての数直線の図
数直線上で、原点 $\text{O}$ と点 $\text{A}(a)$ の距離のことを $a$ の絶対値 (absolute value) といい、$|a|$ と書く。たとえば \[|2|=2,~|-4|=4\] である。この例からわかるように
- 正の数はその値がそのまま絶対値となり、
- 負の数は符号を変えた数が絶対値となる。
絶対値
$|a|$ は場合に分けて \[|a|=\begin{cases}a&(a\geqq0)\\-a&(a\lt0)\end{cases}\] と表すことができる。絶対値について \[|a|\geqq0~~,~~|a|=|-a|\] が成り立つ。
絶対値を示す数直線
数直線上の2点 $\text{A}(a)$ と $\text{B}(b)$ の距離 $\text{AB}$ は、$a{\leqq}b$ のときでも、$b{\lt}a$ のときでも、ともに \[\text{AB}=|b-a|\] で表すことができる。
暗記絶対値の性質
$a$、$b$ に関して次の等式が成り立つことを証明せよ。ただし、3.では $b\neq0$ とする。
- $|a|^2=a^2$
- $|ab|=|a||b|$
- $\left|\dfrac{a}{b}\right|=\dfrac{|a|}{|b|}$
絶対値の中身が「$0$ 以上か」「負か」で、絶対値の外れ方が違ってくるので、場合に分けて証明する。
- a) $a\geqq0$ のとき、$|a|=a$ であるから \[(左辺)=|a|^2=a^2=(右辺)\]
- b) $a\lt0$ のとき、$|a|=-a$ であるから \begin{align}(左辺)&=|a|^2=(-a)^2\\&=a^2=(右辺)\end{align}
- 右欄外の表のように、4つの場合に分けて考える。
- 1) $a\geqq0$、$b\geqq0$ のとき
$ab\geqq0$、$|a|=a$、$|b|=b$ であるから \[(左辺)=|ab|=ab\] \[(右辺)=|a||b|=ab\] となり成立。 - 2) $a\geqq0$、$b\lt0$ のとき
$ab\leqq0$、$|a|=a$、$|b|=-b$ であるから \[(左辺)=|ab|=-ab\] \[(右辺)=|a||b|=a(-b)=-ab\] となり成立。 - 3) ii)の証明において、$a$ と $b$ を入れ替えればiii)の証明になっているので、成立する。
- 4) $a\lt0$、$b\lt0$ のとき
$ab\gt0$、$|a|=-a$、$|b|=-b$ であるから \[(左辺)=|ab|=ab\] \[(右辺)=|a||b|=(-a)(-b)=ab\]
- 1) $a\geqq0$、$b\geqq0$ のとき
- まず、
$\left|\dfrac{1}{b}\right|=\dfrac{1}{|b|}\tag{1}\label{zettaiti1}$ であることを示す。
- a) $b\gt0$ のとき
$\dfrac{1}{b}\gt0$、$|b|=b$ であるから \[(\eqref{zettaiti1}の左辺)=\left|{\dfrac{1}{b}}\right|=\dfrac{1}{b}\] \[(\eqref{zettaiti1}の右辺)=\dfrac{1}{|b|}=\dfrac{1}{b}\] となり成立。 - b) $b\lt0$ のとき
$\dfrac{1}{b}\lt0$、$|b|=-b$ であるから \[(\eqref{zettaiti1}の左辺)=\left|{\dfrac{1}{b}}\right|=-\dfrac{1}{b}\] \[(\eqref{zettaiti1}の右辺)=\dfrac{1}{|b|}=\dfrac{1}{-b}=-\dfrac{1}{b}\] となり成立。
- a) $b\gt0$ のとき
絶対値の性質
$a$、$b$に関して次の等式が成り立つ。ただし、3では$b\neq0$とする。
- $|a|^2=a^2$
- $|ab|=|a||b|$
- $\left|\dfrac{a}{b}\right|=\dfrac{|a|}{|b|}$
吹き出し絶対値の性質
絶対値に関するこれらの等式は、式変形の方法の1つとしてこれからよく用いる。初めは、
- は2乗すると絶対値は外れる(付く)
- は掛け算のところで絶対値は切れる(つながる)
- は割り算のところで絶対値は切れる(つながる)