Processing math: 49%

難度の高い因数分解

次数の低い文字に着目する因数分解

2つ以上の文字を含む多項式では、最も次数の低い文字に着目して整理すると、因数分解がしやすくなることが多い。

a2+ab3a+b4 という式には、共通因数も無く、どの公式にも当てはまらないが a2+ab3a+b4=(a+1)b+a23a4=(a+1)b+(a4)(a+1)=(a+1)(a+b4)

a については 2 次式、b については 1 次式
次数の低い b について、降べきの順に整頓
定数項を因数分解したら a+1 が共通因数になった
b+a4 は順番を入れ替えておこう

次数の低い文字に着目する因数分解

次の式を因数分解せよ。

  1. a2+ab+bc+ca
  2. x22xy+2y1
  3. x2+2xy+3x+4y+2
  4. a3+ab2+b2+1

  1. b について降べきの順に整理すると a2+ab+bc+ca=(a+c)b+(a2+ca)=(a+c)b+(a+c)a=(a+b)(a+c) c で整理してもよい
    共通因数を見抜いて因数分解してもよい。また、a の2次式と見て、次に学ぶ2文字2次式の因数分解で考えてもよい。
  2. y について降べきの順に整理すると x2+2xy2y1=(x1)2y+(x21)=(x1)2y+(x1)(x+1)=(x1)(x+2y+1) x の次数は 2y の次数は 1
  3. y についての降べきの順に整理すると x2+2xy+3x+4y+2=(2x+4)y+(x2+3x+2)=(x+2)2y+(x+1)(x+2)=(x+2)(x+2y+1) x の次数は 2y の次数は 1
  4. b についての降べきの順に整理すると a3+ab2+b2+1=(a+1)b2+(a3+1)=(a+1)b2+(a+1)(a2a+1)=(a+1)(a2+b2a+1) a の次数は 3b の次数は 2

2文字2次式の因数分解

ここでは、x についても y についても次数が同じ x2+4xy+3y2+x+5y2 という式の因数分解について考えてみよう。

【方法1:1次式の積の公式の逆利用を使う】

まず、x2+4xy+3y2+x+5y2x の式とみて、降べきの順に整理する。 x2+(4y+1)x+3y2+5y2 次に、x を含まない項について因数分解する。 x2+(4y+1)x+(3y1)(y+2)

1次式の積の公式の逆利用のときと同じように、下のような表を描き、隙間を埋めていく。 xy+2xx23y1(3y1)(y+2) より xy+2xx2(y+2)x3y1(3y1)x(3y1)(y+2) と表を作れるから (x+y+2)(x+3y1) と因数分解できる。

【方法2:3 マス × 3 マスの表を書く】

STEP1
因数分解する式 x2+4xy+3y2+x+5y2 の、x2の項(x2)、y2の項(3y2)、定数項(2)を下図のように、3×3の表に書き込む x23y22

STEP2
左上から順にます目を埋めていく。
まずは x2 の分解を考えたものが下図である。 xxx23y22

STEP3
3y2=3y×y と分解できるから、ます目を埋めると下図のようになる。このとき、新しくできた xy3xy を足したものが、因数分解する式の 4xy x2+4xy+3y2+x+5y2 と等しくなるような分解を考える(3y2=(3y)×(y) の分解では、4xy となるので考えなくてよい) xyxx2xy3y3xy3y22

STEP4
最後に、定数項(2)の分解を考える。
下の2つは、x2x を足しても x2+4xy+3y2+x+5y2 にならないのでその時点で失敗。 ×xy1xx2xyx3y3xy3y222x2 ×xy2xx2xy2x3y3xy3y21x2 最後の空欄を埋め、その和が x2+4xy+3y2+x+5y2 となるものが正解の表となる。

×xy1xx2xyx3y3xy3y23y22x2y2 xy2xx2xy2x3y3xy3y26y1xy2 以上から (x+3y1)(x+y+2) と因数分解できることがわかる。

2文字2次式の因数分解

次の式を因数分解せよ。

  1. 2x2+5xy+3y2+2x+4y4
  2. 6x25xy6y2+4x+7y2

    • 【方法1】
      与式を x について降べきの順に整理すると 2x2+5xy+3y2+2x+4y4=2x2+(5y+2)x+3y2+4y4=2x2+(5y+2)x+(3y2)(y+2) となり、表は x2x2x2(3y2)(y+2)xy+22x2x2(2y+4)x3y2(3y2)x(3y2)(y+2) と作れるので、 2x2+5xy+3y2+2x+4y4=(2x+3y2)(x+y+2) となる。
    • 【方法2】
      3 マス × 3 マスの表は x2x2x23y24xy2x2x22xy3y3xy3y24xy22x2x22xy4x3y3xy3y26y22x2y4 と作れるので、 2x2+5xy+3y2+2x+4y4=(2x+3y2)(x+y+2) となる。
    • 【方法1】
      与式を x について降べきの順に整理すると 6x25xy6y2+4x+7y2=6x2+(5y+4)x(6y27y+2)=6x2+(5y+4)x(3y2)(2y1) となり、表は 3x2x6x2(3y2)(2y1)3x2y12x6x2(4y2)x(3y2)(9y+6)x(3y2)(2y1) と作れるので、 6x25xy6y2+4x+7y2=(2x3y+2)(3x+2y1) となる。
    • 【方法2】
      3×3 の表は 3x2x6x26y223x2y2x6x24xy3y9xy6y223x2y12x6x24xy2x3y9xy6y23y26x4y2 と作れるので、 6x25xy6y2+4x+7y2=(2x3y+2)(3x+2y1) となる。

複2次式の因数分解

ここでは、x2 を1つのかたまりとして表される多項式のなかでも、特に複2次式とよばれる多項式についての因数分解について考えよう。

複2次式の定義

abc を実数の定数とするとき ax4+bx2+c という形の多項式を複2次式 (compound quadratic expression) という。 ただし、a0 とする。

例として、次の2つの複2次式の因数分解についてみてみよう。

  1. x413x2+36
  2. x4+2x2+9

  1. x413x2+36 の因数分解
    この複2次式は、x2=X とおくと、X213X+36=(X4)(X9) であるから \begin{align} &x^4-13x^2+36\\ =&(x^2-4)(x^2-9)\\ =&(x+2)(x-2)(x+3)(x-3) \end{align} と因数分解できる。
  2. x^4+2x^2+9 の因数分解
    この複2次式は、x^2=X とおいても、X^2+2X+9 となるだけで因数分解が進まない。
    そこで、x^49 に着目すると \begin{align} &x^4+2x^2+9\\ =&x^4+6x^2+9-4x^2\\ &\blacktriangleleft 2x^2に4x^2を加え\\ &\qquad平方の形が作れるようする\\ =&\underbrace{(x^2+3)^2}_{平方の形にする。}-(2x)^2\\ &\blacktriangleleft \bigcirc^2-\triangle^2の形\\ =&\left\{(x^2+3)+2x\right\}\left\{(x^2+3)-2x\right\}\\ =&(x^2+2x+3)(x^2-2x+3) \end{align} となり因数分解ができる。

複2次式の因数分解

複2次式 ax^4+bx^2+c の因数分解には

  1. x^2=X とおくことにより因数分解できる場合
  2. ax^4c に着目し、x^2 の項を付け加えて因数分解できる場合
の2つの場合がある。

吹き出し無題

1.の方法でうまくいかない場合に、2.の方法を試すと覚えておくとよい。 詳しくは『付録A.2』参照

複2次式の因数分解

次の式を因数分解せよ。

  1. x^4−7x^2−8
  2. x^4+x^2+1

  1. x^2=X とおくと \begin{align} &x^4-7x^2-8\\ =&X^2-7X-8\\ =&(X+1)(X-8)\\ =&\boldsymbol{(x^2+1)(x^2-8)} \end{align}
  2. x^41 に着目して \begin{align} &x^4+x^2+1\\ =&x^4+2x^2+1-x^2\\ =&(x^2+1)^2-x^2\\ =&(x^2+1+x)(x^2+1-x)\\ =&\boldsymbol{(x^2+x+1)(x^2-x+1)} \end{align}

3文字3次式の因数分解

立方の公式1でも触れたが、(a+b)^3 を展開すると (a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3 であるから \begin{align} &a^3+b^3=(a+b)^3-3a^2b-3ab^2\\ \Leftrightarrow&a^3+b^3=(a+b)^3-3ab(a+b)\tag{1}\label{3moji3jisikinoinsubunkai} \end{align} が成り立つ。これを用いることにより、a^3+b^3+c^3−3abc は、次の例題でみるように因数分解できる。

暗記3文字3次式の因数分解

a^3+b^3+c^3-3abc を因数分解せよ。

\begin{align} &a^3+b^3+c^3-3abc\\ =&\left\{a^3+b^3\right\}+c^3-3abc\\ &\blacktriangleleft a^3+b^3に着目して\cdots\\ =&\left\{(a+b)^3-3ab(a+b)\right\}+c^3-3abc\\ &\blacktriangleleft \eqref{3moji3jisikinoinsubunkai}を使った\\ =&(a+b)^3-3ab(a+b)+c^3-3abc\\ =&\underbrace{(a+b)^3+c^3}_{◯}\underbrace{-3ab(a+b)-3abc}_{□}\\ &\blacktriangleleft 今度は(a+b)^3+c^3に着目する\\ =&\underbrace{\left\{(a+b)+c\right\}\left\{(a+b)^2-(a+b)c+c^2\right\}}_{◯}\\ &\qquad\underbrace{-3ab\left\{(a+b)+c\right\}}_{□}\\ &\blacktriangleleft ◯の部分は、a+b=X、c=Yとみて\\ &{\qquad}X^3+Y^3=(X+Y)(X^2−XY+Y^2)\\ &\qquadの因数分解を使った\\ =&(a+b+c)\left\{a^2+2ab+b^2-ac-bc+c^2\right\}\\ &\qquad-3ab(a+b+c)\\ =&(a+b+c)\\ &\qquad(a^2+2ab+b^2-ac-bc+c^2-3ab)\\ &\blacktriangleleft 共通因数(a+b+c)でくくった\\ =&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\ \end{align}

3変数3次式の因数分解

\begin{align}&a^3+b^3+c^3-3abc\\ =&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\end{align}

吹き出し無題

この因数分解は忘れやすいので、上のように結果を導出できるように練習しておくとよい。

3文字3次式の因数分解

次の式を因数分解せよ。

  1. 27a^3+8b^3+c^3-18abc
  2. x^3+y^3-1+3xy

  1. \begin{align} &(3a)^3+(2b)^3+c^3-3(3a)(2b)c\\ =&\boldsymbol{\left(3a+2b+c\right)}\\ &\boldsymbol{(9a^2+4b^2+c^2}\\ &\qquad\boldsymbol{-6ab-2bc-3ca)} \end{align}
  2. \begin{align} &x^3+y^3+(-1)^3-3xy(-1)\\ =&\boldsymbol{\left(x+y-1\right)}\\ &\qquad\boldsymbol{\left(x^2+y^2+1-xy+y+x\right)} \end{align}

いろいろな因数分解

どの因数分解の手段を用いるかどうかは、だいたい次の優先順位で考えるとよい。 方針がわからないときは、ひとまずこの順序で考えてみよう。

  1. 共通因数を見つける
  2. 次数の小さい文字に注目し、降べきの順に並べる。
  3. 公式を使えないか考える。

因数分解の練習~その2~

次の式を因数分解せよ。

  1. xy-x-y+1
  2. a^2+b^2+ac-bc-2ab
  3. x^2(y-z)+y^2(z-x)+z^2(x-y)
  4. ab(a-b)+bc(b-c)+ca(c-a)
  5. x^4+x^2+1
  6. a^4+64
  7. x^2-xy-12y^2+5x+y+6
  8. 2x^2-y^2-xy+3x+3y-2

  1. \begin{align} &xy-x-y+1\\ =&(y-1)x-(y-1)\\ =&\boldsymbol{(x-1)(y-1)} \end{align} \blacktriangleleft xy はともに1次式なので、とりあえず x で整理する
  2. c について降べきの順に整理すると \begin{align} &(a-b)c+a^2+b^2-2ab\\ =&(a-b)c+(a-b)^2\\ =&(a-b)c+(a-b)(a-b)\\ =&\boldsymbol{(a-b)(a-b+c)} \end{align} \blacktriangleleft ab は2次であり c は1次であるから c で整理する
  3. x について降べきの順に整理すると \begin{align} &(y-z)x^2-(y^2-z^2)x+y^2z-yz^2\\ =&(y-z)x^2\\ &\qquad-(y+z)(y-z)x+yz(y-z)\\ =&(y-z)\left\{x^2-(y+z)x+yz\right\}\\ =&\boldsymbol{(y-z)(x-y)(x-z)} \end{align} \blacktriangleleft すべての文字は2次で等しいので、とりあえず x で整理する
  4. aについて降べきの順に整理すると \begin{align} &(b-c)a^2-(b^2-c^2)a+b^2c-bc^2\\ =&(b-c)a^2\\ &\qquad-(b+c)(b-c)a+bc(b-c)\\ =&(b-c)\left\{a^2-(b+c)a+bc\right\}\\ =&\boldsymbol{(b-c)(a-b)(a-c)} \end{align} \blacktriangleleft すべての文字は2次で等しいので、とりあえず a で整理する
  5. x^41 に着目して \begin{align} &x^4+1+x^2\\ =&(x^2+1)^2-2x^2+x^2\\ =&(x^2+1)^2-x^2\\ =&(x^2+1+x)(x^2+1-x)\\ =&\boldsymbol{(x^2+x+1)(x^2-x+1)} \end{align} \blacktriangleleft 複2次式の因数分解参照
  6. a^464 に着目して \begin{align} &(a^2+8)^2-16a^2\\ =&(a^2+8+4a)(a^2+8-4a)\\ =&\boldsymbol{(a^2+4a+8)(a^2-4a+8)} \end{align} \blacktriangleleft 複2次式の因数分解参照
  7. x について降べきの順にし、定数項を因数分解すると \begin{align} &x^2-xy-12y^2+5x+y+6\\ =&x^2+(-y+5)x-(12y^2-y-6)\\ =&x^2+(-y+5)x-(3y+2)(4y-3) \end{align} となる。これを元に表を書けば \begin{array}{c||c|} &x&3y+2\\\hline{x}&x^2&(3y+2)x\\\hline-(4y-3)&(-4y+3)x&-(3y+2)(4y-3)\\\hline \end{array} となるので、\boldsymbol{(x-4y+3)(x+3y+2)} と因数分解できる。
    \blacktriangleleft 難度の高い因数分解 2文字2次式の因数分解参照 \begin{array}{c||c|} &x&-3y&2\\\hline{x}&x^2&3xy&2x\\\hline-4y&-4xy&-12y^2&-8y\\\hline3&3x&9y&6\\\hline \end{array} という表を作ってもよい。
  8. x について降べきの順にし、定数項を因数分解すると \begin{align} &2x^2-y^2-xy+3x+3y-2\\ =&2x^2+(-y+3)x-(y^2-3y+2)\\ =&2x^2+(-y+3)x-(y-1)(y-2) \end{align} となる。これを元に表を書けば \begin{array}{c||c|} &x&-(y-2)\\\hline2x&2x^2&(-2y+4)x\\\hline(y-1)&(y-1)x&-(y-1)(y-2)\\\hline \end{array} となるので、\boldsymbol{(x-y+2)(2x+y-1)} と因数分解できる。
    \blacktriangleleft 難度の高い因数分解 2文字2次式の因数分解参照 \begin{array}{c||c|} &x&-y&2\\\hline2x&2x^2&-2xy&4x\\\hline{y}&xy&-y^2&2y\\\hline-1&-x&y&-2\\\hline \end{array} という表を作ってもよい。

因数分解と式の値

因数分解には、式の因数を見えるようにする働きがある。 この点を生かせば、値を整数や自然数に限った次のような問題を解くことができる。

因数分解と式の値

  1. 多項式 F=ab-3a+2b-6 について、次の問いに答えなさい。
    1. F を因数分解しなさい。
    2. F=6 を満たす自然数 (a,~b) の組をすべて求めなさい。
  2. mn+2m-n=3 を満たす整数 (m,~n) の組をすべて求めなさい。

    1. \begin{align} F&=a(b-3)+2(b-3)\\ &=\boldsymbol{(a+2)(b-3)}\\ &\quad\blacktriangleleft aについて整理した \end{align}
    2. a.の結果から (a+2)(b-3)=6 となる自然数 ab を求めればよい。

      6 を自然数の範囲で約数の積に分解すると、6=6\times1~3\times2~2\times3~1\times6 である。a+23 以上でないといけないことに注意すれば

      \blacktriangleleft 自然数は、1 以上の値である。 \begin{cases} a+2=6\\ b-3=1 \end{cases} \begin{cases} a+2=3\\ b-3=2 \end{cases} のいずれかが必要である。それぞれの式から \boldsymbol{(a,~b)=(4,~4),~(1,~5)} と求められる。

  1. 文字 mn を含む項を因数分解する。 \begin{align} &mn+2m-n=3\\ \Leftrightarrow~&m(n+2)-n=3\\ &\quad\blacktriangleleft mで整理した\\ \Leftrightarrow~&m(n+2)-(n+2)=3-2\\ &\quad\blacktriangleleft 両辺から 2 を引いた\\ \Leftrightarrow~&(m-1)(n+2)=1 \end{align} 1=1\times1または(-1)\times(-1)であるので \begin{cases} m-1=1\\ n+2=1 \end{cases} \begin{cases} m-1=-1\\ n+2=-1 \end{cases} のいずれかが必要である。それぞれの式から \boldsymbol{(m,~n)=(2,~-1),~(0,~-3)} と求められる。