1次不等式の解法
1次不等式の解法とは
不等式 \[2x+3\gt4\cdots\tag{1}\label{futosikinokaihotoha}\] を満たす $x$ はどのような値だろうか。
たとえば、$x=2$ や $x=5$ は $\eqref{futosikinokaihotoha}$ を満たすが、$x=0$ や $x=-2$ は $\eqref{futosikinokaihotoha}$ を満たさない。
一般に、不等式を満たす $x$ の値をその不等式の解 (solution) といい、すべての解を求めることを不等式を解く (solve) という。では、実際にこの不等式 $\eqref{futosikinokaihotoha}$ を解いてみよう。 \begin{align} &2x+3\gt4\\ \Leftrightarrow~&2x\gt4-3&\\ \Leftrightarrow~&2x\gt1\\ \Leftrightarrow~&x\gt\dfrac{1}{2} \end{align} これが、不等式 $\eqref{futosikinokaihotoha}$ の解である。つまり、$x$ は $\dfrac{1}{2}$ より大きければ、$\eqref{futosikinokaihotoha}$ を満たす。
不等式を移項して整理することにより \[(1次式)\gt0,(1次式)\leqq0\] などの形に変形できる不等式を、一般に1次不等式 (linearinequality) という。
連立不等式
$x$ が満たすべき不等式が2つ以上あるとき、それらをまとめて連立不等式 (simultaneous inequalities) という。連立不等式を解くとは、全ての不等式を同時に満たす $x$ の範囲を求めることである。
連立不等式
- \begin{cases} \dfrac{11}{4}x-\dfrac{3}{2}\gt 2x-5\\ \dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2} \end{cases}
- \begin{cases} 0.25x-0.18\geqq 0.6-0.14x\\ \dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq -\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2} \end{cases}
- まず、$\dfrac{11}{4}x-\dfrac{3}{2}\gt2x-5$ を解く。 \begin{align} &\dfrac{11}{4}x-\dfrac{3}{2}\gt2x-5\\ \Leftrightarrow~&11x-6\gt8x-20\\ \Leftrightarrow~&3x\gt-14\\ \Leftrightarrow~&x\gt-\dfrac{14}{3}\tag{1}\label{renritufutosiki1} \end{align} 次に、$\dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2}$ を解く。 \begin{align} &\dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2}\\ \Leftrightarrow~&4x+1\leqq-3x-9\\ \Leftrightarrow~&7x\leqq-10\\ \Leftrightarrow~&x\leqq-\dfrac{10}{7}\tag{2}\label{renritufutosiki2} \end{align} 以上の $\eqref{renritufutosiki1}$、$\eqref{renritufutosiki2}$ を共通して満たす $x$ は $\boldsymbol{-\dfrac{14}{3}\lt{x}\leqq-\dfrac{10}{7}}$
- まず、$0.25x-0.18\geqq0.6-0.14x$ を解く。
\begin{align}
&0.25x-0.18\geqq0.6-0.14x\\
\Leftrightarrow~&25x-18\geqq60-14x\\
\Leftrightarrow~&39x\geqq78\\
\Leftrightarrow~&x\geqq2\tag{3}\label{renritufutosiki3}
\end{align}
次に、$\dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2}$ を解く。
\begin{align}
&\dfrac{2}{3}x+\dfrac{1}{6}\leqq-\dfrac{1}{2}x-\dfrac{3}{2}\\
\Leftrightarrow~&4x+1\leqq-3x-9\\
\Leftrightarrow~&7x\leqq-10\\
\Leftrightarrow~&x\leqq-\dfrac{10}{7}\tag{4}\label{renritufutosiki4}
\end{align}
以上の $\eqref{renritufutosiki3}$、$\eqref{renritufutosiki4}$ を共通して満たす $x$ は、存在しないので、答えは解なし
$\blacktriangleleft$ 条件を満たす $x$ の値がない場合はこのように答える
1次不等式の応用
1次不等式の応用
- $\text{A}$ 地点から $15\text{km}$ 離れた $\text{B}$ 地点まで歩いた。はじめは急ぎ足で毎時 $5\text{km}$、途中から疲れたので毎時 $3\text{km}$ の速さで歩いた。所要時間が $4$ 時間以内のとき、急ぎ足で何 $\text{km}$ 以上歩いたか求めよ。
- $5\%$ の食塩水と $8\%$ の食塩水がある。$5\%$ の食塩水 $800\text{g}$ と $8\%$ の食塩水を何 $\text{g}$ か混ぜて、$6\%$ 以上の食塩水を作りたい。$8\%$ の食塩水を何 $\text{g}$ 以上混ぜればよいか求めよ。
急ぎ足で歩いた距離を $x\text{km}$ として、$x$ について解けばよい。
疲れて歩いた距離は $(15−x)\text{km}$ となり、歩くのにかかる時間はそれぞれ、$\dfrac{x}{5}$ 時間、$\dfrac{15-x}{3}$ 時間となる。
$\blacktriangleleft$ $\dfrac{(道のり)}{(速さ)}=(時間)$全体の所要時間は $4$ 時間以内であるから \[\dfrac{x}{5}+\dfrac{15-x}{3}\leqq4\] を満たす $x$ を求めればよい。 \begin{align} &\dfrac{x}{5}+\dfrac{15-x}{3}\leqq4\\ \Leftrightarrow~&3x+5(15-x)\leqq60\\ \Leftrightarrow~&3x+75-5x\leqq60\\ \Leftrightarrow~&-2x\leqq-15\\ \Leftrightarrow~&x\geqq\dfrac{15}{2}=7.5 \end{align}
$\blacktriangleleft$ 負の数を掛ける・割るときは逆符号よって、急ぎ足では$7.5$km以上歩いた。
$8\%$ の食塩水を $x\text{g}$ 混ぜるとして、$x$ について解けばよい。
食塩水の量(g) 食塩の量(g) $5\%$ $800$ $\dfrac{5}{100}\times800$ $8\%$ $x$ $\dfrac{8}{100}x$ $800+x$ $\dfrac{5}{100}\times 800+\dfrac{8}{100}x$ $5\%$ の食塩水 $800\text{g}$ の中には $\left(\dfrac{5}{100}\times800\right)\text{g}$ の食塩が溶けている。また、混ぜる $8\%$ の食塩水 $x\text{g}$ の中には、$\left(\dfrac{8}{100}\times\text{x}\right)\text{g}$ の食塩が溶けている。
これらを混ぜて、濃度が $6\%$ 以上になるから \begin{align} &\left(\dfrac{5}{100}\times800+\dfrac{8}{100}\times\text{x}\right)\\ &\qquad\div(800+x)\geqq\dfrac{6}{100} \end{align} を満たす $x$ を求めればよい。 \begin{align} &\left(\dfrac{5}{100}\times800+\dfrac{8}{100}\times\text{x}\right)\\ &\qquad\div(800+x)\geqq\dfrac{6}{100}\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{5}{100}\times800+\dfrac{8}{100}\times\text{x}\\ &\qquad\geqq\dfrac{6}{100}\times(800+x)\\ \Leftrightarrow~&5\times800+8\times\text{x}\geqq6\times(800+x)\\ \Leftrightarrow~&4000+8x\geqq4800+6x\\ \Leftrightarrow~&2x\geqq800\\ \Leftrightarrow~&x\geqq400 \end{align} よって、$8\%$ の食塩水は $400\text{g}$ 以上混ぜればよい。