命題の「ならば」

命題の「ならば」について

命題の「ならば」

2つの命題 $p,q$ に対して、「もし $p$ が真であるならば、$q$ は真である」という命題は、簡単に

「$p$ ならば $q$ (if $p$ then $q$)」

と書かれ、記号で $\boldsymbol{{p}\Rightarrow{q}}$ と表す。

このとき、初めの命題 $p$ を

仮定 (assumption)

といい、後の命題 $q$ を

結論 (conclusion)

という。

2つの命題 $p,q$ の真偽それぞれについて、この新しい命題 $p{\Rightarrow}q$ の真偽をまとめると、次の表のようになる。

$p$$q$$p{\Rightarrow}q$
仮定 $p$ が偽のときは、結論 $q$ の真偽にかかわらず、全体として真になることに注意しよう。こうなる理由は次の例を考えてみるとわかりやすい。

ある人が私たちに
「もしテストで100点をとれた $(p)$ ならば、美味しいものをおごってあげる $(q)$」
という約束したとしよう。そのとき、もし私たちがテストで100点をとったのに、美味しいものをおごってもらえなかったら、この人はうそをついたことになる。しかし、テストで100点をとれなかったときには、たとえおごってもらえなくても、この人はうそをついたことにならないし、また、たとえおごってもらったとしても、やはりこの人はうそをついたことにならない。

このように、日常的に用いている「ならば」は、条件が偽のときには結論が真でも偽でも、全体としては偽とはならないという主張なのだと考えられる。それゆえ、「ならば」に対する真偽の割り当ては、上の表のようになるのである。

同値とは何か

命題の同値

2つの命題 $p,q$ に対して、「$p{\Rightarrow}q$ かつ $q{\Rightarrow}p$」という命題は、簡単に \[\boldsymbol{p{\Leftrightarrow}q}\] と書かれる。

$p{\Leftrightarrow}q$ が真であるとき、命題 $p$ と $q$ は同値 (equivalence)であるという。

2つの命題 $p,q$ の真偽それぞれについて、この新しい命題 $p{\Leftrightarrow}q$ の真偽をまとめると、次の表のようになる。

$p$$q$$p{\Rightarrow}q$$q{\Rightarrow}p$$\boldsymbol{p{\Leftrightarrow}q}$
この表からわかるように、$p$ と $q$ が同値となるのは、$p$ と $q$ がともに真であるときか $p$ と $q$ がともに偽であるとき、つまり $p$ と $q$ の真偽が一致するときである。つまり、同値である2つの命題は、真偽に関して意味する内容が等しいということである(その意味で同値と呼ぶ)。

例として $p$ と、$\overline{p}$ の否定すなわち $\overline{\overline{p}}$ の真偽値表を書き並べてみると、次のようになる。

$p$$\overline{p}$$\overline{\overline{p}}$
この表をみると、$\overline{\overline{p}}$ と $p$ の真偽値は一致しているので同値である。これは、2重否定「$p$ でないということはない」は「$p$ である」ことを意味する。

「ならば」のいいかえ

下の真偽値表を埋め、$p{\Rightarrow}q$ と $\overline{p}$ または $q$ が同値、すなわち \[(p{\Rightarrow}q)\Leftrightarrow(\overline{p}またはq)\] が成り立つことを示せ。

$p$$q$$\overline{p}$$p{\Rightarrow}q$$\overline{p}$ または $q$

$p$$q$$\overline{p}$$p{\Rightarrow}q$$\overline{p}$ または $q$

この表より、「$p{\Rightarrow}q$」と「$\overline{p}$ または $q$」の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

「ならば」のいいかえ

2つの命題 $p,q$ に対して \[(p{\Rightarrow}q)\Leftrightarrow(\overline{p}またはq)\] が成り立つ。

ド・モルガンの法則(命題版)

下の真偽値表を埋め、次の関係が成り立つことを示せ。 \[\overline{p\wedge{q}}\Leftrightarrow(\overline{p}\vee\overline{q})\] \[\overline{p\vee{q}}\Leftrightarrow(\overline{p}\wedge\overline{q})\]

$p$$q$$\overline{p}$$\overline{q}$$p\wedge{q}$$p\vee{q}$$\overline{p\wedge{q}}$$\overline{p}\vee\overline{q}$$\overline{p\vee{q}}$$\overline{p}\wedge\overline{q}$

$p$$q$$\overline{p}$$\overline{q}$$p\wedge{q}$$p\vee{q}$$\overline{p\wedge{q}}$$\overline{p}\vee\overline{q}$$\overline{p\vee{q}}$$\overline{p}\wedge\overline{q}$

この表より、$\overline{p\wedge{q}}$ と $\overline{p}\vee\overline{q}$ の真偽と、$\overline{p\vee{q}}$ と$\overline{p}\wedge\overline{q}$ の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

ド・モルガンの法則(命題版)

2つの命題 $p,q$ に対して \[\overline{p\wedge{q}}\Leftrightarrow(\overline{p}\vee\overline{q})\] \[\overline{p\vee{q}}\Leftrightarrow(\overline{p}\wedge\overline{q})\] が成り立ち、これをド・モルガンの法則という。

逆・裏・対偶

逆・裏・対偶の関係

逆・裏・対偶の関係

$p\Rightarrow{q}$ の形をした命題に対して

$q\Rightarrow{p}$ を $p\Rightarrow{q}$ の逆 (converse)

$\overline{p}\Rightarrow\overline{q}$ を $p\Rightarrow{q}$ の裏 (converse of contraposition)

$\overline{q}\Rightarrow\overline{p}$ を $p\Rightarrow{q}$ の対偶たいぐう (contraposition)

という。

対偶は同値であることの証明

下の真偽値表を埋め、次の関係が成り立つことを示せ。 \[(p\Rightarrow{q})\Leftrightarrow(\overline{q}\Rightarrow\overline{p})\]

$p$$q$$\overline{p}$$\overline{q}$$p\Rightarrow{q}$$\overline{q}\Rightarrow\overline{p}$

$p$$q$$\overline{p}$$\overline{q}$$p\Rightarrow{q}$$\overline{q}\Rightarrow\overline{p}$

この表より、$p\Rightarrow{q}$ と $\overline{q}\Rightarrow\overline{p}$ の真偽が一致するのが確かめられるので、次のことがいえる。

対偶は同値

2つの命題 $p,q$ に対して \[(p\Rightarrow{q})\Leftrightarrow(\overline{q}\Rightarrow\overline{p})\] が成り立つ。