最大公約数と最小公倍数
最大公約数と最小公倍数とは何か
最大公約数と最小公倍数とは何か
最大公約数と最小公倍数
2つ以上の整数において,それらに共通する約数を公約数といい,公約数のうち最大のものを最大公約数という.
最大公約数が1であるとき,その2つ以上の整数は互いに素であるという.
また,2つ以上の整数において,それらに共通する倍数を公倍数といい,正の公倍数のうち最小のものを最小公倍数という.
2つの整数 $a$ と $b$ の最大公約数は,英語表記のgreatest common divisorの頭文字をとって $\text{gcd}(a,b)$ などと表す. また,最小公倍数(least common multiple)も同様に, $\text{lcm}(a,b)$ などと表す.
最大公約数や最小公倍数を求めるには,素因数分解を使う.例えば,42と60をそれぞれ素因数分解すると
\begin{align} 42&=2\cdot3\cdot7\\ 60&=2^2\cdot3\cdot5 \end{align}となる.
これら2つの数に共通する素因数は2と3であり,1はすべての数の約数となるので,公約数はこれら自身と積で組み合わせたもの,すなわち
\[1,2,3,6\]が公約数となる.最大公約数は6である.
また,これら2つの数を共に因数にもつ $2^2\cdot3\cdot5\cdot7=420$ の倍数が公倍数である.最小公倍数は420である.
最大公約数と最小公倍数
次の各組の多項式の最大公約数と最小公倍数を求めよ. ただし,答えの式は展開しなくてもよい.
- $x^2-1,x+1$
- $x^2-4x+4,x^2-4$
- $x^2+2x-3,x^2+x-6$
- $x^3-27,x^2-2x-3$
- $x^2-1=(x+1)(x-1)$ なので,
- $x^2-4x+4=(x-2)^2,$
- $x^2+2x-3=(x-1)(x+3),$
- $x^3-27=(x-3)(x^2+3x+9),$
最大公約数は $\boldsymbol{x+1}$ ,
最小公倍数は $\boldsymbol{(x+1)(x-1)}$ である.
$x^2-4=(x-2)(x+2)$ なので,
最大公約数は $\boldsymbol{x+2}$ ,
最小公倍数は $\boldsymbol{(x+2)(x-2)^2}$ である.
$x^2-x+6=(x+3)(x-2)$ なので,
最大公約数は $\boldsymbol{x+3}$ ,
最小公倍数は $\boldsymbol{(x-1)(x+3)(x-2)}$ である.
$x^2-2x-3=(x-3)(x+1)$ なので,
最大公約数は $\boldsymbol{x-3}$ ,
最小公倍数は $\boldsymbol{(x-1)(x+3)(x^2+3x+9)}$ である.
公倍数は最小公倍数の倍数
2つ以上の整数の公倍数は最小公倍数の倍数である.
公約数は最大公約数の約数
2つ以上の整数の公約数は最大公約数の約数である.
最大公約数と最小公倍数の積
整数 $a,b$ の最大公約数を $g$ ,最小公倍数を $l$ とすると
\[ab = gl\]が成り立つ.
互いに素な数の性質
互いに素な数の性質
互いに素な数については,次のような性質がある.
互いに素な数の性質
$a,b$ が互いに素であるとき,
$bc$ が $a$ で割り切れるならば, $c$ が $a$ で割り切れる.
が成り立つ.ただし, $c$ は整数である.
【証明】
$a$ と $b$ は互いに素であるから,最大公約数と最小公倍数の積より, $a$ と $b$ の最小公倍数は $ab$ である.
$bc$ は $b$ の倍数であり,仮定より $a$ の倍数でもあるから, $ab$ の公倍数である.
公倍数は最小公倍数の倍数より, $bc$ は $ab$ の公倍数である.すなわち,適当な整数 $m$ を使って
\[bc = abm\]と表せる.この両辺を $b$ で割って, $c=am$ ,すなわち $c$ は $a$ で割り切れる.
ユークリッドの互除法
ユークリッドの互除法
最大公約数を求めるには素因数分解を行えばよいが, $1961$ のように大きな数を素因数分解するのは難しい( $1961=37\cdot53$ ).
素因数分解しにくい大きな数の最大公約数を求めるには,次の定理を使うと良い.
ユークリッドの互除法
2つの自然数 $a,b$ において, $a$ を $b$ で割った余りを $r$ とすると,
$a$ と $b$ の最大公約数は, $b$ と $r$ の最大公約数と等しい
すなわち
\[\text{gcd}(a,b)=\text{gcd}(b,r)\]が成り立つ.
暗記ユークリッドの互除法
ユークリッドの互除法を証明せよ.
例として1071と1029の最大公約数を求めてみよう.
1071を1029で割ると,商は1余りは42,すなわち
\[1071=1029\cdot1+42\]となるので,1071と1029の最大公約数は,1029と42の最大公約数と等しい. ここで得られた,1029と42に関して,再び割り算を行うと
\[1029=42\cdot24+21\]となるので,1029と42の最大公約数は,42と21の最大公約数と等しい.同様にして
\[42=21\cdot2+0\]となるので,42と21の最大公約数は21であることがわかる.すなわち,1071と1029の最大公約数は21である.
ユークリッドの互除法の利用
なし