実数の平方
実数の平方について
不等式の性質より, $a \gt 0$ のとき$a^2 \gt 0,a \lt 0$ のとき $a^2 \gt 0$ である. また, $a = 0$ のときは $a^2 = 0$ であるから,次の不等式が成り立つ.
実数の平方
$a$ が実数のとき, $a^2 \geqq 0$ が成り立つ.等号が成り立つのは $a = 0$ のときに限る.
この性質は,2次関数などですでに何度も使われているが,ここであらためて確認しておく.
実数の平方を利用した不定式の証明
次の不等式を証明せよ.等号のあるものについては,等号が成り立つ場合を調べよ.
- $ (x+y)^2-2xy \geqq x^2-y^2 $
- $x^3 \gt y^3$ のとき,$x \gt y$
- $x \geqq y \geqq 0$ のとき,
$\sqrt{x}+\sqrt{y}\leqq \sqrt{2(x+y)}$
(左辺) $−$ (右辺)を計算すると
(左辺) $−$ (右辺) \begin{eqnarray} &=&(x+y)^2-2xy-(x^2-y^2)\\ &=&(x^2+y^2+2xy)-2xy-x^2+y^2\\ &=&2y^2\geqq 0 \end{eqnarray} $\qquad\qquad \blacktriangleleft $実数の平方
より,(左辺) $\geqq$ (右辺)である.
また,等号が成立するのは, $2y^2 = 0$ ,すなわち $y = 0$ のときである.
条件式の(左辺) $−$ (右辺)を計算すると
\begin{align} &x^3-y^3>0 \\ \Leftrightarrow~&(x-y)(x^2+xy+y^2)>0 \\ \Leftrightarrow~&(x-y)\left\{\left(x+\dfrac{y}{2}\right)^2-\dfrac{y^2}{4}+y^2\right\}\\ >&0 \end{align} $\blacktriangleleft$平方完成をした \begin{align} \Leftrightarrow~&(x-y)\left\{\left(x+\dfrac{y}{2}\right)^2+\dfrac{3y^2}{4}\right\}\\ >&0 \end{align}$\tag{1}\label{jissuunoheihouriyouhutousikisyoumei}$
$\left(x+\dfrac{y}{2}\right)^2+\dfrac{3y^2}{4}\geqq0$ であるが,$\left(x+\dfrac{y}{2}\right)^2+\dfrac{3y^2}{4}=0$ のときは,$\eqref{jissuunoheihouriyouhutousikisyoumei}$が成り立たないので, $\left(x+\dfrac{y}{2}\right)^2+\dfrac{3y^2}{4}>0$ である. $\blacktriangleleft$ 実数の平方
よって,$\eqref{jissuunoheihouriyouhutousikisyoumei}$より $x − y > 0$ ,すなわち $x > y$ .
(右辺) $\geqq0$ ,(左辺) $\geqq0$ なので, (右辺) $^2 − $ (左辺)) $^2\geqq0$ を証明すればよい. $\blacktriangleleft$ 平方による比較
(右辺) $^2 − $ (左辺) $^2=\left(\sqrt{2(x+y)}\ \right)^2-\left(\sqrt{x}+\sqrt{y}\ \right)^2 $
\begin{align} &=2(x+y)-(x+2\sqrt{xy}+y)\\ &=x+y-2\sqrt{xy}\\ &=(\sqrt{x}-\sqrt{y}\ )^2\geqq0 \end{align} $\blacktriangleleft$ 実数の平方であるので,(右辺) $^2\geqq$ (左辺) $^2$であり, (右辺) $\geqq$ (左辺)である.
また,等号が成立するのは, $\sqrt{x}-\sqrt{y}=0$ ,すなわち $x = y$ のときである.