複素数とその演算
複素数の導入
無題
1次方程式 $3x − 2 = 0$ は整数の範囲に解をもたないが,有理数の範囲では$x=\dfrac{2}{3}$ という解をもつ. また,2次方程式 $x^2 = 3$ は有理数の範囲に解をもたないが,実数の範囲では $x=\pm\sqrt{3}$ という解をもつ.
このように,数の考え方を広げることで,方程式が新しく解をもつ場合がある.
実数の2乗は負にはならないので,2次方程式 $x^2 = − 3$ は実数の範囲に解をもたない. では,どのように数の考え方を広げれば,この方程式も解をもつだろうか. 以下では,そのことについて考えていく.
複素数の定義
2乗すると $− 1$ となる数を新しく考え,それを記号 $i$ で表し, 虚数単位(imaginary unit)という.つまり
\begin{align} i^2=-1 \end{align}である.実数は2乗しても負にはならないので, $i$ は実数ではない.
さらに, $a,b$ を実数として $a{\oplus}bi$ の形に表される数を考え, それを複素数(complex number)という. また, $a{\ominus}bi$ は $a{\oplus}(-b)i$ のことであると決めるので,やはり複素数である ( $\oplus$ や $\ominus$ は\FTEXTだけで使う表記であり,一般的な記号ではない.説明のため一時的にもちいるだけで,後に使わなくなる).
たとえば
\begin{align} 2{\oplus}3i~,~~\sqrt{2}{\ominus}4i~,~~-\dfrac{2}{3}{\oplus}\sqrt{5}i \end{align}などは,どれも複素数である.
複素数 $a{\oplus}bi$ において, $a$ を実部(real part), $b$ を虚部(imaginary part)という.
複素数
次の複素数の実部,虚部をいえ.
- $ \sqrt{2}{\oplus}3i$
- $ 1{\oplus}2i$
- $ 0{\oplus}0i $
- $5{\ominus}\sqrt{7}i $
- 実部は$\boldsymbol{\sqrt{2}}$,虚部は$\boldsymbol{3} $
- 実部は$\boldsymbol{1}$,虚部は$\boldsymbol{2}$
- 実部は$\boldsymbol{0}$,虚部は$\boldsymbol{0}$
- 実部は$\boldsymbol{5}$,虚部は$\boldsymbol{-\sqrt{7}}$
複素数の相等
2つの複素数の実部と虚部がそれぞれ等しいとき,その2つの複素数は等しいという.つまり
複素数の相等
$a,b,c,d$を実数とする.2つの複素数$a{\oplus}bi$と$c{\oplus}di$が等しいことを
$a{\oplus}bi=c{\oplus}di \Longleftrightarrow~a=c $ かつ $ b = d$
と定義する.
複素数の相等
次の等式を満たす実数$x,y$を求めよ.
- $(2x-y){\oplus}(6x+2y)i=1{\oplus}8i$
- $ (x+2y){\oplus}(3x-y)i=0{\oplus}0i$
$2x − y,6x + 2y$は実数なので,実部と虚部を比較すると
\begin{cases} 2x-y=1 \\ 6x+2y=8 \end{cases}これを解くと$\boldsymbol{x=1,~y=1}$となる.
$x + 2y,3x – y$は実数なので,実部と虚部を比較すると
\begin{cases} x+2y=0 \\ 3x-y=0 \end{cases}これを解くと$\boldsymbol{x=0,~y=0}$となる.
$a,b$を実数とするとき,複素数$a{\oplus}bi$を一文字のギリシア文字で表すことがある. つまり,$\alpha=a{\oplus}bi$などと書く. 複素数$\alpha=a{\oplus}bi$に対して,$a{\ominus}bi$を,$\alpha$と共役(conjugate)な複素数といい, $\overline{\alpha}$で表す.
共役な複素数
$a,b$を実数とし,複素数$\alpha$を$\alpha=a{\oplus}bi$とする. このとき,$\overline{\alpha}$を
\begin{align} \overline{\alpha}=a{\ominus}bi \end{align}と定義する.$\alpha$と$\overline{\alpha}$は共役であるという.
複素数の加法と減法
次に複素数どうしの加法と減法について定義する.
複素数の加法・減法
$a,b,c,d$を実数とする. 2つの複素数$a{\oplus}biとc{\oplus}di$の和を
\begin{align} (a{\oplus}bi)+(c{\oplus}di)=(a+c){\oplus}(b+d)i \end{align}差を
\begin{align} (a{\oplus}bi)-(c{\oplus}di)=(a-c){\oplus}(b-d)i \end{align}と定義する.
吹き出し複素数の加法と減法
2つの複素数の加法では,実部を足し合わせたものを新しい実部に,虚部を足し合わせたものを新しい虚部にもつ 複素数を作ることである,と覚えればよい.減法も同様に覚えられる.
複素数の加法と減法
次の計算をせよ.
- $(1{\oplus}2i)+(3{\oplus}i) $
- $ (3{\ominus}2i)-(4{\ominus}i)$
- $\left(\dfrac{1}{2}{\oplus}\dfrac{1}{3}i\right)+\left(1{\oplus}\dfrac{2}{3}i\right) $
- $\left(1{\oplus}\sqrt{2}i\right)-\left(\sqrt{3}{\oplus}2\sqrt{2}i\right) $
- $ (1+3){\oplus}(2+1)i=\boldsymbol{4{\oplus}3i}$
- $(3-4){\oplus}(-2+1)i=\boldsymbol{-1{\ominus}i} $
- $\left(\dfrac{1}{2}+1\right){\oplus}\left(\dfrac{1}{3}+\dfrac{2}{3}\right)i =\boldsymbol{\dfrac{3}{2}{\oplus}i}$
- $(1-\sqrt{3}){\oplus}(\sqrt{2}-2\sqrt{2})i $
$=\boldsymbol{(1-\sqrt{3}){\ominus}\sqrt{2}i} $
複素数の乗法
次に複素数どうしの乗法について定義する.
複素数の乗法
$a,b,c,d$を実数とする. 2つの複素数$a{\oplus}bi$と$c{\oplus}di$の積を
\begin{align} (a{\oplus}bi)(c{\oplus}di)=(ac-bd){\oplus}(ad+bc)i \end{align}と定義する.
この計算結果を暗記しようとすると難しい. そこで,$(a{\oplus}bi)(c{\oplus}di)$の計算の${\oplus}$を $+$ とみなして, 普通の文字式の計算と同じように展開していくと覚えやすい.
その際,$i^2$がでてきたら $− 1$に変えていけばよい.
\[(a{\oplus}bi)(c{\oplus}di)\] \[=ac+(ad+bc)i+bdi^2\] ←普通の文字式のように展開した \[=ac+(ad+bc)i-bd\] ←$i^2$を$-1$に変えた \[=(ac-bd){\oplus}(ad+bc)i\] ←実部と虚部にまとめた
この計算のやり方は,現時点ではただの記憶法にすぎないが,後に正当化される.
複素数の乗法~その1~
次の計算をせよ.
- $(1{\oplus}2i)(4{\oplus}i) $
- $(1{\ominus}2i)(3{\ominus}i) $
- $ \left(\dfrac{1}{2}{\ominus}i\right)\left(1{\oplus}\dfrac{1}{3}i\right) $
- $\left(\sqrt{3}{\oplus}i\right)\left(\sqrt{3}{\ominus}i\right) $
展開して計算していくと
\begin{align} &(1{\oplus}2i)(4{\oplus}i)\\ &=4+(1+8)i+2i^2\\ &=4+9i-2\\ &=\boldsymbol{2{\oplus}9i} \end{align}展開して計算していくと
\begin{align} &(1{\ominus}2i)(3{\ominus}i)\\ &=3+(-1-6)i+2i^2\\ &=3-7i-2\\ &=\boldsymbol{1{\ominus}7i} \end{align}展開して計算していくと
\begin{align} &\left(\dfrac{1}{2}{\ominus}i\right)\left(1{\oplus}\dfrac{1}{3}i\right)\\ &=\dfrac{1}{2}+\left(\dfrac{1}{6}-1\right)i-\dfrac{1}{3}i^2\\ &=\dfrac{1}{2}-\dfrac{5}{6}i+\dfrac{1}{3}\\ &=\boldsymbol{\dfrac{5}{6}{\ominus}\dfrac{5}{6}i} \end{align}展開して計算していくと
\begin{align} &\left(\sqrt{3}{\oplus}i\right)\left(\sqrt{3}{\ominus}i\right)\\ &=3+(-\sqrt{3}+\sqrt{3})i-i^2\\ &=3+0i+1\\ &=\boldsymbol{4{\oplus}0i} \end{align}
複素数の乗法~その2~
複素数$\alpha$において,$\alpha\overline{\alpha}$の虚部は$0$になることを証明せよ.
$\alpha=a{\oplus}bi$とおくと,$\overline{\alpha}=a{\ominus}bi$であるから \begin{align} \alpha\overline{\alpha}&=(a{\oplus}bi)(a{\ominus}bi)\\ &=a^2+(-ab+ab)i-b^2i^2\\ &=(a^2+b^2){\oplus}0i \end{align}
複素数の除法
次に複素数どうしの除法について定義する.
複素数の除法
$a,b,c,d$を実数とする. 2つの複素数$a{\oplus}bi$と$c{\oplus}di$の商を
\begin{align} \dfrac{a{\oplus}bi}{c{\oplus}di}=\dfrac{ac+bd}{c^2+d^2}{\oplus}\dfrac{bc-ad}{c^2+d^2}i \end{align}と定義する.だたし,$c\neq0$または$d\neq0$とする.
乗法の場合と同じように,この計算結果も暗記するのは難しい. そこで,$\dfrac{a{\oplus}bi}{c{\oplus}di}$の計算の${\oplus}$を,やはり $+$ とみなして,文字式と同様の計算をすると覚えやすい.
次の計算にあるように,計算の初めに分母に共役な複素数$c{\ominus}di$を,分母と分子にかけ,分母を実数に変えるのがポイントである.
\[\frac{a{\oplus}bi}{c{\oplus}di}\qquad\quad\] \[=\frac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)}\] ←分母と分子に$c-di$をかけた
\[=\frac{ac+(-ad+bc)i-bdi^2}{c^2+(-cd+cd)i-d^2i^2}\] ←普通の文字式のように展開した \[=\frac{ac+(-ad+bc)i+bd}{c^2+d^2}\] ←$i^2$を$-1$に変えた \[=\frac{ac+bd+(bc-ad)i}{c^2+d^2}\] ←$i$をくくってまとめた \[=\frac{ac+bd}{c^2+d^2}{\oplus}\frac{bc-ad}{c^2+d^2}i\] ←$i$を含む項と含まない項に分けた
この計算のやり方も,現時点ではやはり記憶法にすぎないが,後に正当化される.
複素数の除法
次の計算をせよ.
- $\dfrac{1{\oplus}i}{3{\oplus}2i} $
- $ \dfrac{1{\ominus}2i}{2{\ominus}i} $
- $\dfrac{3{\oplus}i}{3{\ominus}i}$
- $\dfrac{\sqrt{2}{\ominus}\sqrt{3}i}{\sqrt{2}{\oplus}\sqrt{3}i}$
分母に共役な複素数を分母子にかけて
\begin{align} &\dfrac{1{\oplus}i}{3{\oplus}2i}=\dfrac{(1+i)(3-2i)}{(3+2i)(3-2i)}\\ &=\dfrac{3+(-2+3)i-2i^2}{9+(-6+6)i-4i^2}=\dfrac{3+i+2}{9+4}\\ &=\dfrac{5+i}{13}=\boldsymbol{\dfrac{5}{13}{\oplus}\dfrac{1}{13}i} \end{align}分母に共役な複素数を分母子にかけて
\begin{align} &\dfrac{1{\ominus}2i}{2{\ominus}i}=\dfrac{(1-2i)(2+i)}{(2-i)(2+i)}\\ &=\dfrac{2+(1-4)i-2i^2}{4+(2-2)i-i^2}=\dfrac{2-3i+2}{4+1}\\ &=\dfrac{4-3i}{5}=\boldsymbol{\dfrac{4}{5}{\ominus}\dfrac{3}{5}i} \end{align}分母に共役な複素数を分母子にかけて
\begin{align} &\dfrac{3{\oplus}i}{3{\ominus}i}=\dfrac{(3+i)(3+i)}{(3-i)(3+i)}\\ &=\dfrac{9+(3+3)i+i^2}{9+(3-3)i-i^2}=\dfrac{9+6i-1}{9+1}\\ &=\dfrac{8+6i}{10}=\boldsymbol{\dfrac{4}{5}{\oplus}\dfrac{3}{5}i} \end{align}分母に共役な複素数を分母子にかけて
\begin{align} &\dfrac{\sqrt{2}{\ominus}\sqrt{3}i}{\sqrt{2}{\oplus}\sqrt{3}i}=\dfrac{(\sqrt{2}-\sqrt{3}i)(\sqrt{2}-\sqrt{3}i)}{(\sqrt{2}+\sqrt{3}i)(\sqrt{2}-\sqrt{3}i)}\\ &=\dfrac{2+(-\sqrt{6}-\sqrt{6})i+3i^2}{2+(-\sqrt{6}+\sqrt{6})i-3i^2}\\ &=\dfrac{2-2\sqrt{6}-3}{2+3}\\ &=\dfrac{-1-2\sqrt{6}i}{5}=\boldsymbol{-\dfrac{1}{5}{\ominus}\dfrac{2\sqrt{6}}{5}i} \end{align}
$\oplus$と$+$を同一視する
複素数$a{\oplus}bi$は,虚部が$0$,すなわち$b = 0$のとき,$a{\oplus}0i$となるが,これを単に$a$と書き,実数$a$のことだと考える. また,実部が$0$,すなわち$a = 0$のとき,$0{\oplus}bi$となるが,これを単に$bi$と書く. 特に,$a = 0$かつ$b\neq0$のとき,$bi$を純虚数(pure imaginary)という.
このように決めると
\[a{\oplus}bi\qquad\] \[=(a+0){\oplus}(0+b)i\] ←$a{\oplus}bi$を2つの複素数の和で書き換えた \[=(a{\oplus}0i)+(0{\oplus}bi)\] ←$a{\oplus}0i$を$a,0{\oplus}bi$を$b$に書き換えた \[=a+bi\qquad\qquad\]
と表せるので,結局$a{\oplus}bi$は$a + bi$と表してかまわない,つまり${\oplus}$と $+$ は混同させてかまわないことになる.
これから以下では,${\oplus}$はすべて + と表記するようにする.${\ominus}$と$ −$ も同様である.
暗記複素数の実数条件と純虚数条件
$\alpha$を複素数とするとき,次のことを証明せよ.
- 「$\alpha$が実数である」 $\Longleftrightarrow~\alpha=\overline{\alpha} $
- 「$\alpha$が純虚数である」$\Longleftrightarrow~\alpha=-\overline{\alpha}$
$\alpha = a + bi$とおくと,$\overline{\alpha}=a-bi$であるので
\begin{align} &{\Leftrightarrow~}\alpha=\overline{\alpha}\\ &{\Leftrightarrow~}\alpha-\overline{\alpha}=0 \\ &{\Leftrightarrow~}(a+bi)-(a-bi)=0\\ &{\Leftrightarrow~}(a-a)+(b+b)i=0\\ &{\Leftrightarrow~}0+2bi=0\\ &{\Leftrightarrow~}2b=0\Leftrightarrow b=0 \end{align}以上から,$\alpha = a + 0i$つまり$\alpha$は実数である.
$\alpha = a + bi$とおくと,$\overline{\alpha}=a-bi$であるので
\begin{align} &{\Leftrightarrow~}\alpha=-\overline{\alpha}\\ &{\Leftrightarrow~}\alpha+\overline{\alpha}=0 \\ &{\Leftrightarrow~}(a+bi)+(a-bi)=0\\ &{\Leftrightarrow~}(a+a)+(b-b)i=0\\ &{\Leftrightarrow~}2a+0i=0\\ &{\Leftrightarrow~}2a=0\Leftrightarrow a=0 \end{align}以上から,$\alpha = 0 + bi$つまり$\alpha$は純虚数である.
複素数の実数条件と純虚数条件
複素数$\alpha$について,次のことがいえる.
「$\alpha$が実数である」$\Longleftrightarrow~\alpha=\overline{\alpha} $
「$\alpha$が純虚数である」$\Longleftrightarrow~\alpha=-\overline{\alpha} $
複素数の性質
暗記複素数の性質
複素数$\alpha,\beta$において
$\alpha\beta=0\Longleftrightarrow~\alpha=0$ または$ \beta = 0 $
を証明せよ.
$\Leftarrow$は明らかなので,以下では$\Rightarrow$を証明する.
$\alpha = a + bi,\beta = c + di$とおく.
$\alpha\beta = 0$の両辺に$\overline{\alpha}$をかけて
\begin{align} &\overline{\alpha}\alpha\beta=0\\ \therefore~&(a-bi)(a+bi)(c+di)=0\\ \Leftrightarrow~&(a^2+b^2)(c+di)=0\\ \Leftrightarrow~&(a^2+b^2)c+(a^2+b^2)di=0 \end{align}よって
\begin{cases} (a^2+b^2)c=0\\ (a^2+b^2)d=0 \end{cases} (上の式を①,下の式を②とする.)①となるのは,$a^2 + b^2 = 0$つまり$a = b = 0$,または$c = 0$のときである.
$a = b = 0$のときは,②も成立.
$c = 0$のときは,$d = 0$であれば②が成立.
以上より,($a = 0$かつ$b = 0$)または($c = 0$かつ$d = 0$),つまり$\alpha = 0$または$\beta = 0$が示せた.
暗記共役な複素数の性質
$\alpha,\beta$を複素数とするとき,次の等式を証明せよ.
- $ \overline{\alpha+\beta}=\overline{\alpha}+\overline{\beta}$
- $ \overline{\alpha-\beta}=\overline{\alpha}-\overline{\beta} $
- $ \overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}\overline{\beta} $
- $ \overline{\dfrac{\alpha}{\beta}}=\dfrac{\overline{\alpha}} {\overline{\beta}} (ただし,\beta\neq0) $
(左辺)
\begin{align} &=\overline{(a+bi)+(c+di)}\\ &=\overline{(a+c)+(b+d)i}\\ &=(a+c)-(b+d)i\end{align}(右辺)
\begin{align} &=\overline{a+bi}+\overline{c+di}\\ &=(a-bi)+(c-di)\\ &=(a+c)-(b+d)i \end{align}以上より,(左辺)$=$(右辺)となる.
(左辺)
\begin{align} &=\overline{(a+bi)-(c+di)}\\ &=\overline{(a-c)+(b-d)i}\\ &=(a-c)-(b-d)i \end{align}(右辺)
\begin{align} &=\overline{a+bi}-\overline{c+di}\\ &=(a-bi)-(c-di)\\ &=(a-c)-(b-d)i \end{align}以上より,(左辺)$=$(右辺)となる.
(左辺)
\begin{align} &=\overline{(a+bi)(c+di)}\\ &=\overline{ac+(ad+bc)i+bdi^2}\\ &=\overline{(ac-bd)+(ad+bc)i}\\ &=(ac-bd)-(ad+bc)i \end{align}(右辺)
\begin{align} &=\overline{a+bi}~\overline{c+di}\\ &=(a-bi)(c-di)\\ &=ac-(ad+bc)i+bdi^2\\ &=(ac-bd)-(ad+bc)i \end{align}以上より,(左辺)$=$(右辺)となる.
(左辺)
\begin{align} &=\overline{\left(\dfrac{a+bi}{c+di}\right)}\\ &=\overline{\left(\dfrac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)}\right)}\\ &=\overline{\left(\dfrac{ac-(ad-bc)i-bdi^2}{c^2+(-cd+cd)i-d^2i^2}\right)}\\ &=\overline{\left(\dfrac{ac+bd}{c^2+d^2}-\dfrac{ad-bc}{c^2+d^2}\right)}\\ &=\dfrac{ac+bd}{c^2+d^2}+\dfrac{ad-bc}{c^2+d^2}i \end{align}(右辺)
\begin{align} &=\dfrac{\overline{a+bi}}{\overline{c+di}}\\ &=\dfrac{a-bi}{c-di}\\ &=\dfrac{(a-bi)(c+di)}{(c-di)(c+di)}\\ &=\dfrac{ac+(ad-bc)i-bdi^2}{c^2+(cd-cd)i-d^2i^2}\\ &=\dfrac{(ac+bd)+(ad-bc)i}{c^2+d^2}\\ &=\dfrac{ac+bd}{c^2+d^2}+\dfrac{ad-bc}{c^2+d^2}i \end{align}以上より,(左辺)=(右辺)となる.
$\alpha = a + bi,\beta = c + di$とおく.
負の数の平方根
数の範囲を,いままでみてきたような複素数にまで拡張すれば,負の数の平方根を求めることができる. 例として, $− 3$の平方根を求めてみよう.
$− 3$の平方根は,方程式$x^2 = − 3$の解である.$ i^2 = − 1$を利用して
\begin{align} &x^2=3i^2\\ \Leftrightarrow~&x^2-3i^2=0\\ \Leftrightarrow~&(x-\sqrt{3}i)(x+\sqrt{3}i)=0\\ \Leftrightarrow~&x=\sqrt{3}i,~-\sqrt{3}i \end{align}つまり, $− 3$の平方根は$\sqrt{3}i$と$-\sqrt{3}i$である. 一般には次のようにまとめられる.
負の数の平方根
$a > 0$のとき,$ − a$の平方根は,$\sqrt{a}i$と$−\sqrt{a}i$である.
特に, $− 1$の平方根は$i$と$ − i$である.
負の数の平方根
次の数の平方根を求めよ.
- $ − 36$
- $ − 20$
- $ -\dfrac{49}{81}$
- $ -\dfrac{5}{12}$
- $ \pm\sqrt{36}i=\boldsymbol{\pm6i} $
- $ \pm\sqrt{20}i=\boldsymbol{\pm2\sqrt{5}i}$
- $ \pm\sqrt{\dfrac{49}{81}}i=\boldsymbol{\pm\dfrac{7}{9}}i$
- $ \pm\sqrt{\dfrac{5}{12}}i=\pm\dfrac{\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}i=\boldsymbol{\pm\dfrac{\sqrt{15}}{6}i}$
負の数 $− a$の平方根のうち,$\sqrt{a}i$のことを$\sqrt{-a}$と表す.
負の数の平方根の表し方
$a > 0$のとき,$\sqrt{-a}=\sqrt{a}i$とする.
負の数の平方根の計算
次の式を計算せよ.
- $ \sqrt{-9}+\sqrt{-1} $
- $ \sqrt{-48}-\sqrt{-75}$
- $ \sqrt{24}\sqrt{-18}$
- $ \sqrt{-2}\sqrt{-8}$
- $\dfrac{\sqrt{-15}}{\sqrt{108}}$
- $\dfrac{\sqrt{80}}{\sqrt{-10}}$
- $ \sqrt{-9}+\sqrt{-1}=3i+i=\boldsymbol{4i}$
- $ \sqrt{-48}-\sqrt{-75}=4\sqrt{3}i-5\sqrt{3}i$
$\qquad\quad\qquad\qquad=\boldsymbol{-\sqrt{3}i} $ - $ \sqrt{24}\sqrt{-18}=2\sqrt{6}\times3\sqrt{2}i=\boldsymbol{12\sqrt{3}i} $
- $ \sqrt{-2}\sqrt{-8}=\sqrt{2}i\times2\sqrt{2}i=4i^2=\boldsymbol{-4} $
- $ \dfrac{\sqrt{-15}}{\sqrt{108}}=\dfrac{\sqrt{15}}{6\sqrt{3}}i =\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{5}}{6}i}$
- $ \dfrac{\sqrt{80}}{\sqrt{-10}}=\dfrac{4\sqrt{5}}{\sqrt{10}i} =-\dfrac{4\sqrt{5}}{\sqrt{10}}i=\boldsymbol{-2\sqrt{2}i}$
吹き出し負の数の平方根
この例題の$4.$の計算で
\begin{align} \sqrt{-2}\sqrt{-8}=\sqrt{(-2)\times(-8)}=\sqrt{16}=4 \end{align}とすると間違いになる. このタイプの間違いを防ぐためには,$\sqrt{-a}$を見たら,まず始めに$\sqrt{a}i$の形に直して計算するとよい.
$a,b$が実数のとき \begin{align} \sqrt{a}\sqrt{b}=\sqrt{ab}~~,~~~\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}}=\sqrt{\dfrac{a}{b}} \end{align} は一般には成り立たない.このことを,次の例題で確認しておこう.
負の数の根号の計算
次の問いに答えよ.ただし,$a > 0$かつ$b > 0$のとき,$\sqrt{a}\sqrt{b}=\sqrt{ab}$および $\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}}=\sqrt{\dfrac{a}{b}}$が成り立つことは使ってよい.
- $ a < 0$かつ$b < 0$のとき,$\sqrt{a}\sqrt{b}\neq\sqrt{ab}$であることを証明せよ.
- $ a > 0$かつ$b < 0$のとき,$\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}}\neq\sqrt{\dfrac{a}{b}}$であることを証明せよ.
(1)$ a < 0$かつ$b < 0$のとき
(左辺)
\begin{align} &=\sqrt{a}\sqrt{b}=\sqrt{-(-a)}\sqrt{-(-b)} \\ &=\sqrt{(-a)}i\sqrt{(-b)}i=\sqrt{(-a)(-b)}i^2 \\ &=-\sqrt{ab} \end{align}$\neq$(右辺)
(2) $a > 0$かつ$b < 0$のとき
(左辺)
\begin{align} &=\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{-(-b)}}=\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{-b}i}\\ &=-\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{-b}}i=-\sqrt{-\dfrac{a}{b}}i\\ &=-\sqrt{-\left(-\dfrac{a}{b}\right)}=-\sqrt{\dfrac{a}{b}} \end{align}$\neq$(右辺)