多項式の除法の基本定理
整数の割り算(多項式の除法)
無題
(注)まず,小学校以来慣れ親しんできた,整数の除法(integer division)について復習する.
たとえば,右図のような計算により,$17$を$3$で割ると,商は$5$で余りは$2$とわかる.この関係を式で表すと
\begin{align} 17=3\times5+2 \end{align}となる.
このとき,$17$を割られる数,$3$を割る数と呼ぶので,一般的には次のような関係が成り立つ.
(割られる数)$=$(割る数)$\times$(商)$+$(余り)
また,(割る数)$\gt$(余り)$\geqq 0$の関係がある.
整数の除法とは何か,つまり整数$a$を整数$b$で割ったときの商と余りを求めるとはどういうことなのかを きちんと定義すると
\begin{align} a=b\cdot Q+r~~(0\leqq{r}\lt Q) \end{align}を満たす整数$Q$と$r$を求めることとなる. そして,この求まった値$Q$と$r$をそれぞれ,商と余りと呼ぶのである.
多項式の次数の表し方
まず,多項式の次数を表す記号を定義しておこう.
多項式の次数
多項式$f(x)$の次数を$deg \ f(x)$と表す.
たとえば,$f(x) = x3 − 4x2 + 5x − 1,$
$g(x) = 3x2 − 4x + 5$とするとき,$deg \ f(x) = 3,deg \ g(x) = 2$である.
多項式の除法について
整数の除法に続き,今度は多項式の除法(polynomial division)について考えてみる.
たとえば,「$x^3 – x^2 + 2x – 3$を$x^2 + 2x – 1$で割る」とは
\begin{align} &x^3-x^2+2x-3\\ =&(x^2+2x-1)Q(x)+r(x) \end{align}と変形することであると定義する. ただし,このとき$Q(x),r(x)$は共に$x$の多項式であり,$deg(x^2 + 2x − 1) \gt deg \ r(x)$であるとする. この結果の$Q(x)$と$r(x)$をそれぞれ, 多項式の除法における商(quotient)と 余り(remainder)と呼ぶ.
多項式の除法
多項式$f(x),g(x)$において
\begin{align} &f(x)=g(x)Q(x)+r(x)\\ &\qquad\left(\deg \ r(x) \lt \deg \ g(x)\right) \end{align}と変形できたとき,$Q(x)$を商,$r(x)$を余りという.
特に,余り$r(x)$が$0$のとき,$f(x)$は$g(x)$で割り切れるという.
さきほどの例では,商$Q(x)$は$x – 3$,余り$r(x)$は$9x – 6$となる.つまり
\begin{align} &x^3-x^2+2x-3\\ =&(x^2+2x-1)\times(x-3)+(9x-6) \end{align}となる.各自,以下の2点について確認しておこう.
- 上の式の右辺を展開すると左辺と等しいこと
- $x^2 + 2x – 1$の次数が余り$9x – 6$の次数より大きいこと
以下では,多項式の除法の計算方法についてみていく.