因数定理と高次方程式

高次方程式とは何か

$n$次方程式

多項式$P(x)$が$n$次式であるとき,$P(x) = 0$の形に表される方程式を$ n$次方程式(equation of n-th degree)という.

たとえば,$x^3 − 2x^2 + 5x + 8 = 0$は3次方程式,$2x^4-8x^3+\dfrac{7}{3}x^2-2=0$は4次方程式である. 特に,3次以上の方程式を高次方程式(equation of higher degree)という.

簡単な高次方程式

高次方程式$P(x) = 0$を解くことは,一般的には難しいが,因数分解できるときには簡単に解くことができる. たとえば,方程式$x^3 = 1$では

\begin{align} &x^3=1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)=0\\ &←a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)\\ \Leftrightarrow~&x-1=0~,~~x^2+x+1=0\\ \Leftrightarrow~&x=1~,~~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{align}

と解を求めることができる.

簡単な高次方程式

次の方程式を複素数の範囲で解け.

  1. $x^3=27$
  2. $x^3=-8$


  1. \begin{align} &x^3=27\\ \Leftrightarrow~&x^3-27=0\\ \Leftrightarrow~&(x-3)(x^2+3x+9)=0\\ \Leftrightarrow~&x-3=0,~x^2-3x+9=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=3,~\dfrac{3\pm3\sqrt{3}i}{2}} \end{align}

  2. \begin{align} &x^3=-8\\ \Leftrightarrow~&x^3+8=0\\ \Leftrightarrow~&(x+2)(x^2-2x+4)=0\\ \Leftrightarrow~&x+2=0,~x^2-2x+4=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-2,~1\pm\sqrt{3}i} \end{align}

3乗して$a$ になる数を$a$ の3乗根といい,方程式$x^3 = a$ の解として求めることができる. さきほどの例から,1の3乗根は$1,~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$である.

暗記1の3乗根$\omega$

1の3乗根のうち,虚数であるものの1つを$\omega$とするとき,次のことを証明せよ.

  1. $\omega^3 = 1$
  2. $\omega^2 + \omega + 1 = 0$
  3. 別のもう1つの虚数解は$\overline{\omega}$であり$\omega^2$と一致する.

  1. $\omega$は$x^3 = 1$の解であるので明らか.

  2. $x^3 = 1$を解くと

    \begin{align} &x^3=1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)=0\\ \Leftrightarrow~&x-1=0~,~~x^2+x+1=0\\ \Leftrightarrow~&x=1~,~~\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{align}

    このうち,$\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$または$\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}$が$\omega$であるが,これらはどちらも,方程式$x^2 + x + 1 = 0$の解であるので,$\omega^2 + \omega + 1 = 0$である.

  3. $\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}と\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}$は共役の関係にあり

    \begin{align} &\left(\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2\\ &=\dfrac{1-2\sqrt{3}i-3}{4}\\ &=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\\ &\left(\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)^2\\ &=\dfrac{1+2\sqrt{3}i-3}{4}\\ &=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} \end{align}

    より,$\overline{\omega}=\omega^2$が成り立つ.

2次方程式に帰着できる高次方程式

次の方程式を複素数の範囲で解け.

  1. $x^4-13x^2+9=0$
  2. $x^4-2x^2-3=0$
  3. $x^4+x^2-20=0$
  4. $(x^2+2x)^2+4(x^2+2x)+3=0$


  1. \begin{align} &x^4-13x^2+9=0\\ \Leftrightarrow~&x^2=\dfrac{13\pm\sqrt{133}}{2}\\ \Leftrightarrow~&x=\pm\sqrt{\dfrac{13\pm\sqrt{133}}{2}} \end{align}

  2. \begin{align} &x^4-2x^2-3=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+1)(x^2-3)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+1=0,~x^2-3=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\pm{i},~\pm\sqrt{3}} \end{align}

  3. \begin{align} &x^4+x^2-20=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+5)(x^2-4)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+5=0,~x^2-4=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=\pm\sqrt{5}{i},~\pm 2} \end{align}

  4. \begin{align} &(x^2+2x)^2+4(x^2+2x)+3=0\\ \Leftrightarrow~&(x^2+2x+1)(x^2+2x+3)=0\\ \Leftrightarrow~&x^2+2x+1=0,~x^2+2x+3=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-1,~-1\pm\sqrt{2}i} \end{align}

因数定理を利用した高次方程式の解法

すぐに因数分解が思いつかなくても,因数定理を利用して因数を探し当て, 因数分解を行うことができた.因数分解ができれば,高次方程式を解くこともできる.

高次方程式

次の方程式を解け.

  1. $x^3+3x^2-4=0$
  2. $2x^3-7x^2+9=0 $
  3. $x^4-6x^3+7x^2+6x-8=0$
  4. $x^4-8x^3-2x^2+72x-63=0$

  1. $f(x) = x^3 + 3x^2 − 4$とおく.

    \begin{align} f(1)=1+3-4=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.       $\blacktriangleleft$先に$f ( − 2) = 0$を見つけてもよい

    よって,$f(x) = 0$は

    \begin{align} &(x-1)(x^2+4x+4)=0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-2} \end{align}  $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その1
  2. $f(x) = 2x^3 − 7x^2 + 9$とおく.

    \begin{align} f(-1)=-2-7+9=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f (3) = 0$や$f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0$を見つけてもよい

    よって,$f(x) = 0$は

    \begin{align} &(x+1)(2x^2-9x+9)=0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(2x-3)(x-3)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=-1,~\dfrac{2}{3},~3} \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その2
  3. $f(x) = x^4 − 8x^3 + 7x^2 + 6x – 8$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-6+7+6-8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f(x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.  $\blacktriangleleft$先に$f ( − 1) = 0$や$f (2) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その3

    さらに,$g(x) = x^3 − 5x^2 + 2x + 8$とおくと

    \begin{align} g(-1)=-1-5-2+8=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x + 1$を因数にもつのがわかる. $\blacktriangleleft$先に$g(2) = 0$や$g(4) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その4

    より,$f(x) = (x + 1)(x − 1)(x − 2)(x − 4)$である.

    以上より,$f (x) = 0$の解は,$\boldsymbol{x=-1,~1,~2,~4}$となる.

  4. $f (x) = x^4 − 8x^3 − 2x^2 + 72x − 63$とおく.

    \begin{align} f(1)=1-8-2+72-63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$f (x)$は$x – 1$を因数にもつのがわかる.$\blacktriangleleft$先に$f(3) = 0$や$f ( − 3) = 0$などを見つけてもよい

    よって

    \begin{align} f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) \end{align}   $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その5

    さらに,$g(x) = x^3 − 7x^2 − 9x + 63$とおくと

    \begin{align} g(3)=27-63-27+63=0 \end{align}

    であるから,因数定理より$g(x)$は$x – 3$を因数にもつのがわかる$\blacktriangleleft$先に$g( − 3) = 0$や$g(7) = 0$などを見つけてもよい.

    よって

    \begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} $\blacktriangleleft$組立除法を使うなら図
    高次方程式の解答その6

    より,$f(x) = (x − 1)(x − 3)(x + 3)(x − 7)$である.

    以上より,$f (x) = 0$の解は,$x=1,~3,~-3,~7$となる.

上の例題の(1)のように,方程式$(x − 1)(x + 2)^2 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の2重解(double solution)という. また,たとえば方程式$(x − 1)(x + 2)^3 = 0$の解$x = − 2$を,この方程式の3重解(triple solution)という.

複素数の範囲では,方程式の2重解を重なった2個の解,3重解を重なった3個の解などと数えることにすると, 2次方程式では2個の解,3次方程式は3個の解,4次方程式では4個の解をもつ. 一般の場合では,次のことが知られている.

代数学の基本定理

$n$次方程式では,複素数の範囲で,$n$個の解をもつ.

方程式の重解条件

3次方程式$3x^3 − (3 + a)x^2 + a = 0$が重解をもつとき,定数$a$ の値とそのときの解をすべて求めよ. ただし,$a $は実数である.

$3x^3 − (3 + a)x^2 + a$
$= (x − 1)(3x^2 − ax − a)$であるので,$f (x) = 3x^2 − ax – a$とおくと,

3次方程式が重解をもつためには,$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつか,$f (x) = 0$が重解をもてばよい.

1)$f (x) = 0$が$x = 1$に解をもつとき

$f (1) = 0$より

\begin{align} 3-a-a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=\dfrac{3}{2}} \end{align}

このとき,$f(x)=3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}$であるから,3次方程式の解は

\begin{align} &(x-1)\left(3x^2-\dfrac{3}{2}x-\dfrac{3}{2}\right)=0\\ \Leftrightarrow~&\dfrac{3}{2}(x-1)^2(2x+1)=0\\ \Leftrightarrow~&\boldsymbol{x=1,~-\dfrac{1}{2}} \end{align}

2)$f (x) = 0$が重解をもつとき

判別式を考えて

\begin{align} D=a^2+12a=0\Leftrightarrow~\boldsymbol{a=0,~-12} \end{align}

となる.

$a = 0$のとき

\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2=0\Leftrightarrow~x=0 \end{align}

であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=0}$である.

$a = − 12$のとき

\begin{align} &f(x)=0\\ \Leftrightarrow~&3x^2+12x+12=0\\ \Leftrightarrow~&3(x+2)^2=0\\ \Leftrightarrow~&x=-2 \end{align}

であるので,3次方程式の解は$\boldsymbol{x=1,~x=-2}$である.