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高次不等式

高次不等式とは何か

n次不等式

多項式P(x)n次式であるとき,P(x)P(x)<0などで表される不等式を n次不等式(inequality of n-th degree)という.

たとえば,x^3-2x^2+5x+8\geqq0は3次不等式,2x^4-8x^3+\dfrac{7}{3}x^2-2<0は4次不等式である. 特に,3次以上の不等式を高次不等式(inequality of higher degree)という.

なお,方程式の場合とは違い,不等式の場合には数の大小関係を扱うので,複素数については考えない,つまりx は実数の範囲でのみ考える.

簡単な高次不等式

高次不等式を解くことは一般的には難しいが,高次方程式と同様,因数分解できるときには解くことができる. たとえば,方程式x^3\geqq1では

\begin{align} &x^3\geqq1\\ \Leftrightarrow~&x^3-1\geqq0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x^2+x+1)\geqq0&\qquad \end{align}

a^3 – b^3 = (a − b)(a^2 + ab + b^2)を使った

いま,x^2+x+1=\left(x+\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{3}{4}>0なので,

\begin{align} (x-1)&\underbrace{(x^2+x+1)}_{}\geqq0となるのは,x-1\geqq0,\\ & \ \ \ \ \ 常に正 \end{align}

つまりx\geqq1と解くことができる.

簡単な高次不等式

次の不等式を解け.

  1. x^3\geqq27
  2. x^3<-8
  3. x^3-9x<0
  4. x^3-x^2\geqq0


  1. \begin{align} &x^3\geqq27\\ \Leftrightarrow~&x^3-27\geqq0\\ \Leftrightarrow~&(x-3)(x^2+3x+9)\geqq0 \end{align} \blacktriangleleft a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)を使った

    いま,x^2+3x+9=\left(x+\dfrac{3}{2}\right)^2+\dfrac{27}{4}>0なので, (x-3)(x^2+3x+9)\geqq0となるのは,x-3\geqq0,つまり\boldsymbol{x\geqq3}である.


  2. \begin{align} &x^3<-8\\ \Leftrightarrow~&x^3+8<0\\ \Leftrightarrow~&(x+2)(x^2-2x+4)<0 \end{align} \blacktriangleleft a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)を使った

    いま,x^2-2x+4=\left(x-1\right)^2+3>0なので, (x + 2)(x2 − 2x + 4) < 0となるのは,x + 2 < 0,つまり\boldsymbol{x<-2}である.


  3. \begin{align} &x^3-9x<0\\ \Leftrightarrow~&x(x^2-9)<0\\ \Leftrightarrow~&(x+3)x(x-3)<0 \end{align}

    いま,(x + 3)x(x − 3)の符号はx の値に応じて,以下のようにまとめることができる.

    x\cdots-3\cdots0\cdots3\cdots
    x+3-0+++++
    x---0+++
    x-3-----0+
    (x+3)x(x-3)-0+0-3+

    これより,(x + 3)x(x − 3) < 0を満たすのは,\boldsymbol{x\lt -3~,~~0\lt x\lt 3}である.

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】   \blacktriangleleftこの解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    簡単な高次不程式の解答の図その1

    f(x) = x3 − 9x < 0とおくと

    \begin{align} f(x)&=x(x^2-9)=(x+3)x(x-3) \end{align}

    よりy = f (x)のグラフは図となるので,f (x) < 0を満たすのは,\boldsymbol{x \lt -3~,~~0 \lt x \lt 3}である.


  4. \begin{align} &x^3-x^2\geqq0\\ \Leftrightarrow~&x^2(x-1)\geqq0 \end{align}

    いま,x^2(x − 1)の符号はx の値に応じて,以下のようにまとめることができる.

    x\cdots0\cdots1\cdots
    x^2-0+++
    x-1---0+
    x^2(x-3)+0-0+

    これより,x^2(x-1)\geqq0を満たすのは,\boldsymbol{x=0~,~~1\leqq x}である.

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】   \blacktriangleleftこの解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    f(x) = x^3 – x^2 < 0とおくと

    \begin{align} f(x)&=x^2(x-1) \end{align}

    よりy = f (x)のグラフは図となるので,f(x)\geqq0を満たすのは,\boldsymbol{x=0~,~~1\leqq x}である.

    簡単な高次不程式の解答の図その2

因数定理を利用した高次不等式の解法

(注)

高次方程式の場合と同様に, 因数定理を利用して因数分解できれば,高次不等式を解くことができる.

高次不等式

次の不等式を解け.

  1. x^3+3x^2-4>0
  2. 2x^3-7x^2+9\leqq0
  3. x^4-6x^3+7x^2+6x-8<0
  4. x^4-8x^3-2x^2+72x-63\geqq0

  1. f(x)=x^3+3x^2-4 とおく。 f(1)=1+3-4=0

    \blacktriangleleft 先に f(-2)=0 を見つけてもよい
    であるから、因数定理より f(x)x-1 を因数にもつのがわかる。
    組立除法をつかうなら
    1の組立除法の図
    よって、f(x)\gt0\begin{align} &(x-1)(x^2+4x+4)\gt0\\ \Leftrightarrow~&(x-1)(x+2)^2\gt0 \end{align} いま、(x-1)(x+2)^2 の符号は x の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    x\cdots-2\cdots1\cdots
    x-1---0+
    (x+2)^2+0+++
    (x-1)(x+2)^2-0-0+

    これより、(x-1)x^2\gt0 を満たすのは、\boldsymbol{1\lt{x}} である。

    \blacktriangleleft この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】

    1のグラフ

    f(x)=x^3+3x^2-4 とおくと f(x)=(x-1)(x+2)^2 より y=f(x) のグラフは図となるので、f(x)\gt0 を満たすのは、\boldsymbol{1\lt{x}} である。

  2. f(x)=2x^3-7x^2+9 とおく。 f(-1)=-2-7+9=0

    \blacktriangleleft 先に f(3)=0f\left(\dfrac{3}{2}\right)=0 を見つけてもよい
    であるから、因数定理より f(x)x+1 を因数にもつのがわかる。
    組立除法をつかうなら
    2の組立除法の図
    よって、f(x)\leqq0\begin{align} &(x+1)(2x^2-9x+9)\leqq0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(2x-3)(x-3)\leqq0 \end{align} いま、(x+1)(2x-3)(x-3) の符号はx の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    x\cdots-1\cdots\dfrac{3}{2}\cdots3\cdots
    x+1-0+++++
    2x-3---0+++
    x-3-----0+
    f(x)-0+0-0+

    これより、(x+1)(2x-3)(x-3)\leqq0 を満たすのは、\boldsymbol{x\leqq-1,~\dfrac{3}{2}\leqq{x}\leqq3} である。

    \blacktriangleleft この解法について詳しくは3次関数のグラフを使った3次不等式の解法で学ぶ

    【別解:3次関数のグラフを使う方法】

    2のグラフ

    f(x)=2x^3-7x^2+9 とおくと f(x)=(x+1)(2x-3)(x-3) より y=f(x) のグラフは図となるので、f(x)\leqq0 を満たすのは、\boldsymbol{x\leqq-1,~\dfrac{3}{2}\leqq{x}\leqq3} である。

  3. f(x)=x^4-6x^3+7x^2+6x-8 とおく。 f(1)=1-6+7+6-8=0

    \blacktriangleleft 先に f(-1)=0f(2)=0 などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より f(x)x-1 を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    3の組立除法の図

    よって \begin{align} &f(x)=(x-1)(x^3-5x^2+2x+8) \end{align} さらに、g(x)=x^3-5x^2+2x+8 とおくと g(-1)=-1-5-2+8=0

    \blacktriangleleft 先に g(2)=0g(4)=0 などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より g(x)x+1 を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    3の組立除法の図

    よって \begin{align} g(x)&=(x+1)(x^2-6x+8)\\ &=(x+1)(x-2)(x-4) \end{align} である。以上から、f(x)\lt0\begin{align} &(x-1)(x^3-5x^2+2x+8)<0\\ \Leftrightarrow~&(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)<0 \end{align} いま、(x+1)(x-1)(x-2)(x-4) の符号は x の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    x\cdots-1\cdots1\cdots2\cdots4\cdots
    x+1-0+++++++
    x-1---0+++++
    x-2-----0+++
    x-4-------0+
    f(x)+0-0+0-0+

    これより、(x+1)(x-1)(x-2)(x-4)\lt0 を満たすのは、\boldsymbol{-1\lt{x}\lt1,~2\lt{x}\lt4} である。

    3のグラフ

    【別解:4次関数のグラフを使う方法】

    f(x)=x^4-6x^3+7x^2+6x-8 とおくと f(x)=(x+1)(x-1)(x-2)(x-4) より y=f(x) のグラフは図となるので、f(x)\lt0 を満たすのは、\boldsymbol{-1\lt{x}\lt1,~2\lt{x}\lt4} である。

  4. f(x)=x^4-8x^3-2x^2+72x-63 とおく。 f(1)=1-8-2+72-63=0

    \blacktriangleleft 先に f(3)=0f(-3)=0 などを見つけてもよい
    であるから、因数定理より f(x)x-1 を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    4の組立除法の図

    よって f(x)=(x-1)(x^3-7x^2-9x+63) さらに、g(x)=x^3-7x^2-9x+63 とおくと g(3)=27-63-27+63=0

    \blacktriangleleft 先に g(-3)=0g(7)=0 などを見つけてもよい。
    であるから、因数定理より g(x)x-3 を因数にもつのがわかる。

    組立除法をつかうなら
    4の組立除法の図

    よって、 \begin{align} g(x)&=(x-3)(x^2-4x-21)\\ &=(x-3)(x+3)(x-7) \end{align} である。以上から f(x)\geqq0\begin{align} &(x-1)(x^3-7x^2-9x+63)\geqq 0\\ \Leftrightarrow~&(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)\geqq0 \end{align} いま、(x+3)(x-1)(x-3)(x-7) の符号は x の値に応じて、以下のようにまとめることができる。

    x\cdots-3\cdots1\cdots3\cdots7\cdots
    x+3-0+++++++
    x-1---0+++++
    x-3-----0+++
    x-7-------0+
    f(x)+0-0+0-0+

    これより、(x+3)(x-1)(x-3)(x-7)\geqq0 を満たすのは、\boldsymbol{x\leqq-3,~1\leqq{x}\leqq3,~7\leqq{x}} である。

    4のグラフ

    【別解:4次関数のグラフを使う方法】

    f(x)=x^4-8x^3-2x^2+72x-63 とおくと f(x)=(x+3)(x-1)(x-3)(x-7) より y=f(x) のグラフは図となるので、f(x)\geqq0 を満たすのは、\boldsymbol{x\leqq-3,~1\leqq{x}\leqq3,~7\leqq{x}} である。