多変数関数の最大最小

条件を逆にたどる方法

ここでは,2変数関数$f(x,~y)$の最大値や最小値を求める2通りの方法についてみていこう.

条件に動点を含む場合の軌跡で学んだ,条件を逆にたどる方法は,軌跡を求めるだけでなく, 2変数関数の最大値や最小値を求めるときにも有効である. そのことを次の例題で確認しよう.

2変数関数の最大最小〜その1〜

$x,y$が次の4つの不等式を満たすとき,次の問いに答えよ.

\begin{align} &x\geqq0~,~~y\geqq0~,~~\\ &x+2y\leqq8~,~~3x+2y\leqq12 \end{align}
  1. 4つの不等式の表す領域$D$を図示せよ.
  2. $f(x,~y)=x+y$の最大値と最小値およびそのときの$x$と$y$の値を求めよ.

  1. 領域を図示すると次のようになる.

     2変数関数の最大最小〜その1〜の図その1
  2. $x + y = k$ $\tag{1}\label{2hensuukansuunosaidaisaishousono1}$とおくと,これは傾きが$ – 1$,$y$切片が$k$の直線を表す.この直線$\eqref{2hensuukansuunosaidaisaishousono1}$が領域$D$と共有点をもつ ような$k$の値の最大値と最小値を求めればよい.

    ←なぜこのような操作を行うかについては下の本文参照

    次の図より,$k$の値は$\eqref{2hensuukansuunosaidaisaishousono1}$が点$(2,~3)$を通るとき最大となり,原点$O$を通るとき最小となる.

     2変数関数の最大最小〜その1〜の図その2

    よって,$f(x,~y)$は

    $\boldsymbol{x=2},\boldsymbol{y=3}$のとき,最大値$\boldsymbol{5}$

    $\boldsymbol{x=0},\boldsymbol{y=0}$のとき,最小値$\boldsymbol{0}$

上の例題での2変数関数$f(x,~y)$の値の決まり方は,問題文をそのままに読めば, まず不等式の領域$D$が決まり,その領域内の$(x,~y)$を代入して$f(x,~y)$が決まるという順序になっている. しかし,このような理解では,領域$D$内の無数の点に対して$f(x,~y)$を求めなければならなくなる.

そこで,条件に動点を含む場合の軌跡で学んだ方法と同じように,考え方の順序を逆にして, ある値$k$を考えてみて,$f(x,~y)$がその値をとるかどうか調べるという方法をとる.

たとえば,$f(x,~y)$が2をとるかどうかを調べてみよう. $f(x,~y)=3$が成り立つためには

\begin{align} x+y=2 \end{align}

を満たさなくてはならない.この関係を満たす$x,y$は,直線$y = − x + 2$上にあるので,この直線が 領域$D$と共有点をもてば,その点の座標$(x,~y)$を$f(x,~y)$に代入することによって$f(x,~y)$は$2$をとる.

次の図は領域$D$と直線$y = − x + 2$を重ねたものである.この図の太線部分の$(x,~y)$を代入することにより$ f(x,~y)=2$となる.

条件を逆にたどる方法の図

このような作業を具体的な値ではなく,ある値$k$で行うことにより,直線$x + y = k$が 領域$D$と共有点をもつ範囲を調べることで,最大値や最小値を求めることができる.

1変数に帰着させる方法

(注)

2変数関数の最大値や最小値を求めるときには,まず片方の変数をとりあえず定数として固定し, 1変数の問題として最大値と最小値を求めておき,次に固定していた変数を動かし全体の最大値と最小値を求める, という方法もある.

それを次の例題で確認しよう.

2変数関数の最大最小〜その2〜

2変数関数

\begin{align} f(x,~y)=x^2-2xy+2y^2-2x+4y+7 \end{align}

の最小値を求めよ.

まず,$k$を定数として$y = k$の場合について考える.

\begin{align} f(x,~k)&=x^2-2xk+2k^2-2x+4k+7\\ &=x^2-2(k+1)x+2k^2+4k+7\\ &=\left\{x-(k+1)\right\}^2-(k+1)^2\\ &\qquad\qquad\quad\qquad+2k^2+4k+7\\ &=\left\{x-(k+1)\right\}^2+k^2+2k+6\\ \end{align}

となるから,$x=k+1$のとき,最小値$k^2+2k+6$をとる.

←「予選」

次に,$k$を変数$y$とするとき,$y^2 + 2y + 6 = (y + 1)^2 + 5$であるから $y=-1~(x=0)$で最小値$\boldsymbol{5}$となる.

←「決勝」

吹き出し1変数に帰着させる方法

$y$を定数と考えるということがわかっていれば,$y = k$と書き換える必要はなく

\begin{align} f(x,~y)&=x^2-2xy+2y^2-2x+4y+7\\ &=x^2-2(y+1)x+2y^2+4y+7\\ &=\left\{x-(y+1)\right\}^2\\ &\qquad-(y+1)^2+2y^2+4y+7\\ &=\left\{x-(y+1)\right\}^2+y^2+2y+6\\ &=\left\{x-(y+1)\right\}^2+(y+1)^2+5 \end{align}

として最小値$5$を求めてもよい.