指数の整数への拡張

$3^{-2}$の意味

$3^{ − 2}$の意味

指数法則1.は,指数が自然数の場合,すなわち,正の整数の場合について成り立つ性質であるが, ここでは,指数を$0$や負の整数を含む一般の整数にまで拡張することを考えてみよう.

仮に$3^{ − 2}$という数があったとして,その意味について考えてみよう. $3^2$が「$3$を$2$かけた数」であったから,$3^{ − 2}$は「$3$を $− 2$回かけた数」とでもなるのであろうが, 「 $− 2$回かける」では意味不明である.

そこで,「指数の仲間なのだから指数法則を満たすだろう」と考え,その体系の中で 矛盾が生じないよう「 $− 2$回かける」を決められないか(意味づけられないか) 少し考えてみよう.

たとえば,$3^6\times3^{-2}$という計算があったとして,これが指数法則1.を満たすとすると

\begin{align} 3^6\times3^{-2}=3^{6-2}=3^4 \end{align}

となる.ここで,$3^{ − 2}$を$X$で表すと

\begin{align} 3^6\times{X}=3^4 \end{align}

となる.この式を満たす$X$を求めると,$X=\dfrac{3^4}{3^6}=\dfrac{1}{3^2}$である. つまり,$3^{ − 2}$は$\dfrac{1}{3^2}$であると考えると都合がよい.

$3^0$の意味

$3^0$の意味

また,$3^2\times3^0$という計算があったとして,これが指数法則1. を満たすとすると

\begin{align} 3^2\times3^0=3^{2+0}=3^2 \end{align}

となる.ここで,$3^0$を$Y$で表すと

\begin{align} 3^2\times{Y}=3^2 \end{align}

となる.この式を満たす$Y$を求めると,$Y=\dfrac{3^2}{3^2}=1$である.つまり,$3^0$は$1$であると考えると都合がよい.

指数の整数への拡張について

指数の整数への拡張について

一般に,指数が自然数の場合に成り立つ指数法則1.において,指数$x$が$0$のときにも成り立つとすると

\begin{align} a^0a^y=a^{0+y}=a^y \end{align}

であるから,$a^0 = 1$と考えると都合がよい.

さらに,指数法則1.が$x$を正の整数として,$y = − x$のときにも成り立つとすると

\begin{align} a^{x}a^{-x}=a^{x-x}=a^0=1 \end{align}

であるから,$a^{-x}=\dfrac{1}{a^x}$と考えると都合がよい($x$が負の整数の場合も同様である).

整数に拡張された指数の定義

$0$でない実数$a$に関して,$x$が整数のとき

\begin{align} a^0=1~~,~~~a^{-x}=\dfrac{1}{a^x} \end{align}

とする.

例として$a^n$をいくつか列挙すると次のようになる.

\begin{align} &\cdots~,~~a^3~,~~a^2~,~a^1=a~,~~a^0=1~,\\ &~~a^{-1}=\dfrac{1}{a}~,~~a^{-2}=\dfrac{1}{a^2}~,~~a^{-3}=\dfrac{1}{a^3}~,~~\cdots \end{align}

吹き出し指数の整数への拡張について

「マイナス$x$乗は$x$乗分の$1$になる」と覚えよう.

整数に拡張された指数法則

整数$x,y$について次のような性質が成り立つ. ただし,$a,b$は$0$でない実数とする.

  • 1.$a^xa^y=a^{x+y}$
  • 2.$(a^x)^y=a^{xy}$
  • 3.$(ab)^x=a^xb^x $
  • 1'.$\dfrac{a^x}{a^y}=a^{x-y}$
  • 3'.$\left(\dfrac{a}{b}\right)^x=\dfrac{a^x}{b^x}$

整数に拡張された指数

$x = 3,y = − 2$として,整数に拡張された指数法則1.,2.,3. が成り立つのを確認せよ.

  1. の確認

    (左辺)$=a^3a^{-2}=a^3\times\dfrac{1}{a^2}=a$

    (右辺)$=a^{3+(-2)}=a$

    となり,確かに成立する.

  2. の確認

    (左辺)$=(a^3)^{-2}=\dfrac{1}{(a^3)^2}=\dfrac{1}{a^6}$

    (右辺)$=a^{3\cdot(-2)}=a^{-6}=\dfrac{1}{a^6}$

    となり,確かに成立する.

  3. の確認

    (左辺)$=(ab)^{-2}=\dfrac{1}{(ab)^2}=\dfrac{1}{a^2b^2}$

    (右辺)$=a^{-2}b^{-2}=\dfrac{1}{a^2}\times\dfrac{1}{b^2}=\dfrac{1}{a^2b^2}$

    となり,確かに成立する.

整数に拡張された指数法則1'., 3'.の証明

整数に拡張された指数法則1'.,3'. を,整数に拡張された指数法則1.,2.,3. を用いて証明せよ.

  • 1'.

    の証明

    \begin{align} \dfrac{a^x}{a^y}&=a^x\times\dfrac{1}{a^y}=a^x\times{a^{-y}}\\ &=a^{x-y} \end{align} $\blacktriangleleft$ 整数に拡張された指数法則1.
  • 3'.

    の証明

    \[\left(\dfrac{a}{b}\right)^x=\left(a\times\dfrac{1}{b}\right)^x=\left(a\times b^{-1}\right)^x\] \[=a^x\times \left(b^{-1}\right)^x\] $\blacktriangleleft$ 整数に拡張された指数法則3. \[=a^x\times b^{-x}\] $\blacktriangleleft$ 整数に拡張された指数法則2. \[=a^x\times\dfrac{1}{b^x}=\dfrac{a^x}{b^x}\]

指数の計算-その1-

次の計算をせよ.

  1. $\dfrac{2\cdot2^{-2}}{2^{-3}}$
  2. $\dfrac{10^{10}}{2^7\cdot5^5}$
  3. $\dfrac{(a^2b)^3}{(-ab^3)^2}$
  4. $\dfrac{(a^5b^{-2})^{-3}}{(a^{-2}b)^5}$

  1. 計算していくと

    \[\dfrac{2\cdot2^{-2}}{2^{-3}}=2\cdot2^{-2}\cdot2^{3}\] $\blacktriangleleft$ 整数に拡張された指数法則1'. \[=2^{1-2+3}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1. \[=2^2=\boldsymbol{4}\]
  2. 計算していくと

    \[\dfrac{10^{10}}{2^7\cdot5^5}=(10)^{10}\cdot2^{-7}\cdot5^{-5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1'. \[=(2\cdot5)^{10}\cdot2^{-7}\cdot5^{-5}\] \[=2^{10}\cdot5^{10}\cdot2^{-7}\cdot5^{-5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則3. \[ =2^{10-7}\cdot5^{10-5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1. \[=2^3\cdot5^5=\boldsymbol{25000}\]
  3. 計算していくと

    \[\dfrac{(a^2b)^3}{(-ab^3)^2}=\dfrac{a^6b^3}{a^2b^6}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則3. \[=a^6b^3a^{-2}b^{-6}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1'. \[=a^{6-2}b^{3-6}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1. \[=\boldsymbol{a^4b^{-3}}\]
  4. 計算していくと

    \[\dfrac{(a^5b^{-2})^{-3}}{(a^{-2}b)^5}=\dfrac{a^{-15}b^6}{a^{-10}b^5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則3. \[=a^{-15}b^6a^{10}b^{-5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1'. \[=a^{-15+10}b^{6-5}\] $\blacktriangleleft$整数に拡張された指数法則1. \[=\boldsymbol{a^{-5}b}\]