常用対数の利用

常用対数の定義

常用対数の定義

常用対数の定義

$10$を底とする対数$\log_{10}x$を常用対数(common logarithm) という.

巻末の付録常用対数表には,$1.00$から$9.99$までの常用対数の値が, その小数第5位を四捨五入して,小数第4位まで載せてある. これを利用して,さまざまな正の数の対数の値を求めることができる.

常用対数表から対数の値を求める

巻末の付録常用対数表を用いて,次の値について小数第4位を四捨五入して小数第3位まで求めよ.

  1. $\log_{10}3250$
  2. $\log_{10}0.0237$
  3. $\log_{10}\dfrac{11}{7}$
  4. $\log_{10}\sqrt{5}$
  5. $\log_{2}3.4$
  6. $\log_{3.19}\sqrt[4]{3}$

  1. 計算していくと

    \begin{align} \log_{10}3250&=\log_{10}(3.25\times10^{3})\\ &=\log_{10}3.25+\log_{10}10^3\\ &=\log_{10}3.25+3\\ &=0.5119+3=3.5119 \end{align}

    和と差に関する対数の性質

    よって,$\log_{10}3250\fallingdotseq\boldsymbol{3.512}$となる.

  2. 計算していくと

    \begin{align} \log_{10}0.0237&=\log_{10}(2.37\times10^{-2})\\ &=\log_{10}2.37+\log_{10}10^{-2}\\ &=\log_{10}2.37-2\\ &=0.3747-2=-1.6253 \end{align}

    和と差に関する対数の性質

    よって,$\log_{10}0.0237\fallingdotseq\boldsymbol{-1.625}$となる.

  3. 計算していくと

    \begin{align} \log_{10}\dfrac{11}{7}&=\log_{10}11-\log_{10}7\\ &=\log_{10}(1.1\times10)-\log_{10}7\\ &=\log_{10}1.1+\log_{10}10-\log_{10}7\\ &=\log_{10}1.1+1-\log_{10}7\\ &=0.0414+1-0.8451\\ &=0.1963 \end{align}

    和と差に関する対数の性質

    よって,$\log_{10}\dfrac{11}{7}\fallingdotseq\boldsymbol{0.196}$となる.

  4. 計算していくと

    \begin{align} \log_{10}\sqrt{5}&=\log_{10}5^\dfrac{1}{2}\\ &=\dfrac{1}{2}{\log_{10}5}\\ &=\dfrac{1}{2}\times0.6990=0.3495 \end{align}

    実数倍に関する対数の性質

    よって,$\log_{10}\sqrt{5}\fallingdotseq\boldsymbol{0.350}$となる.

  5. 計算していくと

    \begin{align} \log_23.4&=\dfrac{\log_{10}3.4}{\log_{10}2}\\ &=\dfrac{0.5315}{0.3010}=1.7657\cdots \end{align}

    底の変換公式

    よって,$\log_23.4\fallingdotseq\boldsymbol{1.766}$となる.

  6. 計算していくと

    \begin{align} \log_{3.19}\sqrt[4]{3}&=\dfrac{\log_{10}\sqrt[4]{3}}{\log_{10}{3.19}}\\ &=\dfrac{\log_{10}3^\dfrac{1}{4}}{\log_{10}{3.19}}\\ &=\dfrac{\dfrac{1}{4}\log_{10}3}{\log_{10}{3.19}}\\ &=\dfrac{\dfrac{1}{4}\times0.4771}{0.5038}=0.2367\cdots \end{align}

    底の変換公式

    実数倍に関する対数の性質

    よって,$\log_{3.19}\sqrt[4]{3}\fallingdotseq\boldsymbol{0.237}$となる.

対数をもちいて積や商の計算を簡単にする

常用対数表を用いて,次の値について小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めよ.

  1. $124^2\times(0.37)^8$
  2. $\dfrac{721^5}{3.1^4\times143^5\times\sqrt{143}}$

  1. $x=124^2\times(0.37)^8$とおき,$x$の常用対数を考えると

    \begin{align} \log_{10}x&=\log_{10}\left\{124^2\times(0.37)^8\right\}\\ &=\log_{10}124^2+\log_{10}(0.37)^8\\ &=2\log_{10}124+8\log_{10}0.37\\ &=2\log_{10}(1.24\times10^2)\\ &+8\log_{10}(3.7\times10^{-1})\\ &=2(\log_{10}1.24+\log_{10}10^2)\\ & +8(\log_{10}3.7+\log_{10}10^{-1})\\ &=2(0.0934+2)+8(0.5682-1)\\ &=0.7324 \end{align}

    よって,表から$x = 5.40$とわかるので,求める値は$\boldsymbol{5.4}$となる.

  2. $x=\dfrac{721^5}{3.1^4\times143^5\times\sqrt{143}}$とおき,$x$の常用対数を考えると

    \begin{align} &\log_{10}x\\ &=\log_{10}\dfrac{721^5}{3.1^4\times143^5\times\sqrt{143}}\\ &=\log_{10}\dfrac{721^5}{3.1^4\times143^{5.5}}\\ &=5\log_{10}721\\ &\qquad-(4\log_{10}3.1+5.5\log_{10}143)\\ &=5\log_{10}(7.21\times10^2)-4\log_{10}3.1\\ &-5.5\log_{10}(1.43\times10^2)\\ &=5(\log_{10}7.21+2)-4\log_{10}3.1\\ &-5.5(\log_{10}1.43+2)\\ &=5(0.8579+2)-4\cdot0.4914\\ &-5.5(0.1553+2)\\ &=0.46975 \end{align}

    よって,表から$x = 2.95$とわかるので,求める値は$\boldsymbol{3.0}$となる.

吹き出し常用対数の定義

現代のように計算機(コンピュータ)の発達していなかった時代の天文学者や物理学者は, 大きな数の掛け算や割り算を上の例題のように工夫して計算していた. 当時,付録常用対数表の作成には,ネイピア(Johon Napier) ブリッグス(Henry Briggs) などが何十年もの歳月をかけて行った. 後の数学者ラプラス(Pierre Simonn de Laplace) は,この業績を評価して 「(対数の発見は)天文学者の寿命を2倍にした」と語ったという.

桁数と最高位の数の評価

桁数と最高位の数の評価

$\log_{10}2\fallingdotseq0.3010,\log_{10}3\fallingdotseq0.4771$を利用して次の問いに答えよ.

  1. $5^{101}$は何桁の整数か求めよ.また,$5^{101}$の最高位の数を求めよ.

  2. $\left(\dfrac{1}{3}\right)^{20}$は小数第何位にはじめて$0$でない数があらわれるか求めよ. また,その数はいくつか求めよ.

  1. $5^{101}$の常用対数を考えると

    \begin{align} &\log_{10}5^{101}\\ &=101\log_{10}5\\ &=101(\log_{10}10-\log_{10}2)\\ &=101(1-0.3010)\\ &=70.599 \end{align}

    より,$5^{101}=10^{70.599}$とわかる.

    ここで,$10^{70.599}は10^{0.599+70}$だから

    \begin{align} \underbrace{10^{0.599}}_{A}\times\underbrace{10^{70}}_{B} \end{align}

    と2つの部分に分けることができ,$A$の部分は

    \begin{align} (1=)~~10^0\leqq10^{0.599}<10^1~~(=10) \end{align}

    を満たすので,$B$の指数部分から,$10^{0.599}\times10^{70}$つまり$5^{101}$は

    $71$桁

    とわかる.

    指数を使って数を表す方法〜その1〜

    さらに

    \begin{align} &1=10^0\\ &2=10^{0.3010}\\ &3=10^{0.4771}\\ &4=2^2=10^{0.3010\times2}=10^{0.6020} \end{align}

    などと求まるが,いま$A$の部分は

    \[(3=)~10^{0.4771}\lt10^{0.599}\lt10^{0.6020}~(=4)\]

    を満たすので,$10^{0.599}=3.\cdots$となり,$5^{101}$の最高位の数は$\boldsymbol{3}$とわかる.

    ←$5^{101}=10^{0.599}\times10^{70}=3.\cdots\times10^{70}$

  2. $\left(\dfrac{1}{3}\right)^{20}$の常用対数を考えると

    \begin{align} &\log_{10}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{20}\\ &=\log_{10}3^{-20}\\ &=-20\log_{10}3\\ &=-20\times0.4771\\ &=-9.542 \end{align}

    より,$5^{101}=10^{-9.542}$とわかる.

    ここで,$10^{-9.542}は10^{0.458-10}$だから

    \begin{align} \underbrace{10^{0.458}}_{A}\times\underbrace{10^{-10}}_{B} \end{align}

    と2つの部分に分けることができ,$A$の部分は

    \begin{align} (1=)~~10^0\leqq10^{0.458}<10^1~~(=10) \end{align}

    を満たすので,$B$の指数部分から,$10^{0.458}\times10^{-10}$つまり$5^{101}$は

    小数第10位

    にはじめて$0$でない数字があらわれる.

    指数を使って数を表す方法〜その2〜

    さらに

    \begin{align} &1=10^0\\ &2=10^{0.3010}\\ &3=10^{0.4771} \end{align}

    などと求まるが,いま$A$の部分は

    \[(2=)~10^{0.3010}\lt10^{0.458}\lt10^{0.4771}~(=3)\]

    を満たすので,$10^{0.458}=2.\cdots$となり,$\left(\dfrac{1}{3}\right)^{20}$の求める数は$\boldsymbol{2}$とわかる.

    \begin{align} \left(\dfrac{1}{3}\right)^{20}&=10^{0.458}\times10^{-10}\\ &=2.\cdots\times10^{-10} \end{align}